- 米 -
日本人の祖先は朝鮮半島より移り住んだと、今でも歴史の教科書に載っているが、以前日本人の37%は中国の四川省辺りから移動してきた人種だと聞いた事があった。四川省といえば今の中国であるが、チベット人の目線で見ると今の四川省の西半分が大チベットのカム地方でありチベット人が多数住んでいる地域である。最近の研究では、我々の祖先である縄文人は世界人類的にかなり特殊な遺伝子を持っていた事が判明している。母系のミトコンドリアDNAは、日本と東アジアは似通っているが、男性が持つY染色体に至っては日本と近隣諸国でははっきりと異なるハプログループD1bのY染色体というのを持っているらしい。
日本人男性の40%が持つこのY染色体のハプログループD系統は、縄文人や一部の地域でしか見られない世界的に稀な系統らしく、似た系統だとチベットやインド東部のアンダマン諸島等、限られた地域にしか分布しておらず、D1b系統となると他国には存在しない特殊な遺伝子で、外国における遺跡人骨の中には未だに出土していない様だ。古代中国大陸では異民族同士の闘いが尽きなかった為、同じD1b保持者が絶滅したと考えれば今のDNA分布の実態も頷ける。
20代の頃、バングラディシュのチッタゴンと言う港町で仕事をしていた時に日本人を見かけたので話し掛けたら、流暢な日本語が返ってきた。
てっきり日本人だと思って話をしていると「自分はチベタン(チベット人)で名前はアコイといい仏教徒、JICA職員でチッタゴンに出張に来ている。」との事だった。また、彼の話ではバングラディシュにもチベット人は多数住み着いているとの事だった。どおりで日本の事を良く知っている訳だ。それにしてもチベット人は日本人に実によく似ていた。名前を名乗らなかったら日本人と見間違えていた。
日本の稲作も遺伝子解析の結果、遺伝子はRM1-a~cの3種類判明しており、中国稲の遺伝子の6割がRM1-b、朝鮮半島の稲の遺伝子はRM1-bはゼロで、中国から直接伝播したというのが最近の学説の様だ。水田稲作については約3000年前(紀元前10世紀)に九州北部に最初に伝わったと考えられているが、何れにせよ縄文人が複数のルートを通じて日本列島に到着し、地域毎に異なる特徴を持っていた事が示されている。稲作の起源はインドから中国に掛けての「アッサム―雲南説」が通説であったが、長江流域で7000年前の遺跡が発掘され、長江流域より弥生時代に日本に伝わったという説が有力になっている。ところが紀元前3000~2500年頃に突然消滅している。これらの事実から縄文人と同じY染色体をもつ古代人の居住地域と米の発祥地が重なるのは何とも因縁深い。
よくよく考えると、米は昔から日本人の生活に欠かせないものとなっており食生活のみならず祭事、税金、給料等、殆ど米を中心としたものが多い。大陸の国々と違い昔から外敵に襲撃される事が少ない一方、土着の日本人にとっては地震・台風等の自然災害が最大の敵となっている。そのせいもあってか自然を畏れ、敬い、自然と共生する意識を持っているのも稲作とは切っても切れない関係であったと考えられる。日本の様に、米が経済、社会、文化等、幅広い面で大きな影響を与えた国は世界的にも珍しい。日本の四季、風土とマッチして発酵食品と共に発展してきた和食や日本酒製法は、今やユネスコ世界遺産に登録されている。世界的にも注目される商品の原点は「米」だ。
今年に入ってから日本も世界も米に振り回されてトンネルからの出口が見えない。備蓄米が放出されるという事で米の価格が下がるのを待ちわびて米無し生活を一週間おくってみたが、遂に屈して高値な米を買ってしまった。もう少し待っても良かったのだが、米が今より高くなるのではないかという不安が脳裏を掠めて取り敢えず買っておくか、と自然に体が反応してしまい少し悔しい。政府の入札も脇が甘い。
44万トンのコメが市場から消えて相場が上がり切っている所に小出し小出しの入札で市場価格が下がるわけがない。買い占めている悪徳流通業者を潰すならもっと大量に浴びせ倒さねば相場なんて下がりっこない。今まではアメリカの保護の下で生活してきた様なものなので減反政策に対して仮に違和感があったとしても見過ごしてきたものの、米は日本人にとってはかけがえのない国家財産だったという事を、改めて実感させられた。中国政府が国民感情を逆撫でしない様に豚肉価格に気を遣っている様に、日本政府も真剣に米の安定確保を考えて欲しいものだ。
同じ米でもこちらは世界を振り回している米、昨今のトランプ大統領の振舞は暴挙と見えるが、ここまでアメリカを突き動かせたのは、常任理事国が別々のベクトルへ動き出し国連安全保障理事会が機能しなくなってきている証なのかもしれない。アメリカ大統領による世界旋風が、今月に入り更に風速を増強させており、嵐からの脱出口がなかなか見つからず世界各国が翻弄され続けている。関税政策にしても貿易不均衡なら為替だけの操作で良いじゃない?と思うけど。だって、コロナ前迄$=¥108で輸出していたんだから、輸出企業はそれなりの体力が有る筈だ。
欧州では安全保障のアメリカ依存低減論が出てきた。フランスではマクロン大統領が、フランスが保有する核兵器による抑止力の対象を欧州の同盟国に広げる為の議論に入るとの意向を表明し世界を震撼させている。また、日本以上に緊縮財政を敷き国債発行を禁じていたインフレ嫌い国家、ドイツが憲法改正に動いた事は大きな驚きだ。ドイツ基本法(憲法)改正して国防費についてGDP比1%超の部分については無制限に国債を発行できるようになる。更にインフラ投資基金を80兆円分作り、これから10年間で追加的に150兆円分を使う事が決定されている。この財源も勿論国債だ。NATOの最前線ではロシアとの戦争準備が始まっている。
遅まきながら、日本も漸く長い呪縛から解き放たれようとしている。厳しいトランプ大統領の相互関税政策ではあるが、考えようによっては日本に自立する機会を与えてくれたと考えた方が良いのかも?中国共産党やアメリカの言いなりになるのはそろそろ卒業し、あるべき将来像に向かって国家を軌道修正する時期が来たのかもしれない。日本人は西欧列強に植民地化されて衰退する清国や東南アジア諸島の実情を目の当たりにして脅威に怯え、一丸となって富国強兵政策で植民地化を防いできた過去の歴史が蘇る。ここでアメリカがタガを外す事で改めてロシア、中国、北朝鮮と直接向き合わねばならなくなる。そろそろ覚悟が必要だ。
戦後80年続く親方日の丸体制もSNSの影響で最近は綻びがよく目立つ。日本にとって親方であるアメリカ大統領が目を覚ませと言ってるわけだ。周辺国と一緒になって報復関税を発するよりはどうすれば世界の荒波に巻き込まれないかを考えるべきである。103万円の年収の壁問題に続き農業政策、国防対策、少子化対策等、解決すべき問題は山積だ。収入の48%の税金を払っている国民にとってトランプ関税が生活に与える影響は計り知れない。生活への防衛策を練る中、次のターゲットは廃止論が噴出している消費税かもしれない。
元々の起源はフランス政府が1947年にGATT(関税と貿易の一般協定)を締結し輸出企業に出せなくなった補助金を国営企業のルノーを救済するために1954年に名称を付加価値税に挿げ替えた「隠れ輸出補助金」であった。故に本来は間接税なのだ。日本はこの制度を逆輸入して「消費税」と称し直接税としているのに、何故か預り金として間接税で処理している。名称こそ消費税というものの性格は付加価値税であり、自分たちの粗利の一部を徴収されている。この日本版消費税については1990年の東京地裁、大阪地裁での判決も消費税ではなく、「対価としての性格しか有せず、事業者が当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を消費者との関係で負うものではない」と認定されている。つまり日本の消費税は単なる値上げの一部であり、輸出企業への還付制度なのである。経団連、経済同友会の輸出企業が還付金で潤うシステムになっているのだ。
インバウンドが買ったお土産は免税なのに外貨を稼ぐ直需産業である観光業には還付の恩恵がないのは不公平である。今や自動車産業に次ぐ第二の外貨獲得産業として日本経済発展に貢献している観光業界が何故そっちのけなのだ?そろそろ矛盾した消費税を議論する時が来ている。今後も消費税を継続するなら輸出還付金を廃止するか、観光業でいうと宿泊施設、土産店等の外貨獲得企業にも還付するのがフェアというものだ。消費税はスタート当初から意味不明な部分があり今一腑に落ちない。
というより騙されているのかな?だから此処にきて意味不明な消費税を廃止しろという意見が出るのも納得出来る。
最近は外食時に人手不足の弊害を感じる頻度が多くなってきた。お店に入ってもなかなか注文を聞きに来ないので苛立ちを感じた人も少なくないと思う。店内を見回しても従業員がいない。従業員に愚痴を零そうにも可哀そうなのでいえない。しかし、これ等サービスの低下は品質の低下を招く。大手外食チェーン店でミッキーゴキちゃん事件が起きているが、これらは明らかに人手不足の弊害による品質低下だ。落ちた品質に慣れてしまうと元に戻すのは苦しい。「安かろう悪かろう」は自転車操業に繋がり、ひいては倒産の第一歩なのだ。結局は防衛問題、人手不足、少子化問題も親方日の丸時代に蓋をしてきたツケなのだから、正面から向き合い一つずつ対処していく他ない。
縄文時代以来、幾多の品種改良を続けここまでの品質を作り上げてきたジャポニカ米でしか作れない日本料理や酒になる米。日本人が普段口にしている「ジャポニカ」米は世界ではブランドなのだ。
米は「御もてなし」を看板に掲げる日本が、貿易戦争に巻き込まれずに生き残って行くヒントを我々に与えてくれるかもしれない。