- 信仰 -
インバウンドの日本旅行中の楽しみの一つはラーメンを食べる事らしく、寿司よりも人気が高い。元々は支那そば、中華そばと呼ばれていたが、日本風にアレンジして今や日本を代表するソウルフードになっている。日本にはラーメン信仰というものが出来上がっており宗派の違いを受け容れるのは中々難しい。シルクロードの終着点である日本には古代から様々なものを受け入れる素地があり、その独特の風土の中でアレンジされ日本文化を形成してきている。聖徳太子が制定した十七条の憲法では「和を以て貴しとなす」とされているので八百万の神を受け入れた多神教国家になったせいなのか、外国と比べて宗教同士の激しい戦いは然程行われていないのも日本の特徴かも知れない。そのせいか日本人は意外と無頓着だが、海外の人と接する時には相手の宗教・宗派を理解して接する事はマナーである。
宗教は生活習慣を規定しその地域の文化を作り上げる。過激になるとカルト教団の部類に大別されるものもあるが、それを信仰することで人間の性格を変えたり、時に不思議な力を宿す。プロテスタントにもドイツで生まれたルター派とスイスで生まれたカルバン派があり、教義は全く異なる。簡単に言えばルター派は「教会は要らない、聖書だけで十分。」という考えに対してカルバン派は「予め運命は決まっている」という予定説を唱える。だから、カルバン主義者は、「魂が救われるかどうかは予め決まっており、その人の職業も生まれる前から決まっている。」
という考えだ。カトリックでは、金儲け=「悪」なので、お金を沢山もっている事は良い事ではないと教えているのに対し、カルバン派は、職業は予め神が決めている事なので仕事に精を出してお金儲けをする事は「善」と説いている。儲けた金は神に返さねばならないが、神はこの世に居ない為、儲けは隣人に奉仕せよと説いている。
カルバン派はプロテスタントの中でもルター派よりも強硬で、神の主権によって人の運命が決まっているとし、選ばれた人間はどんな試練にも耐え抜く事が出来る。だから打たれ強い、そして勤勉家だ。仕事や蓄財を神の意志にしたがう証と考えている。彼らはフランスではユグノー、オランダではフーゼン、スコットランドではプレスビテリアン(=長老派)と呼ばれ、1567年にはスコットランドの国教にもなっている。
カトリック教徒との間で激しい宗教紛争が繰り広げられた挙句、弾圧によりヨーロッパからアメリカ新大陸に移住した多くはカルバン派である。
長老派とは、教職者と一般信徒から選ばれた長老による合議によって個々の教会を運営する制度で現在の議会制民主主義のベースになっている。
先月から本格的に世界中を渦に巻き込んでいるトランプ大統領はスコットランド出身の母親の影響でカルバン派の一派プレスビテリアンであることが知られている。教義と数々の暴言から、自分が大統領になったのは運命であり、民主的選挙のお陰ではなく神によって任命されたものという確信を持っていることが解る。悪く言えば意固地、傲慢な人という事になる。歴代のアメリカ大統領で国際連盟設立に固執したウィルソン、誰もが無謀だといったノルマンディー上陸作戦の指揮官だったアイゼンハワーもカルバン派だ。無理だ、無謀だといわれたことでも、自分が正しいと思ったらひるまず突き進む。これがカルバン派の人達の本質だ。
日本の石破総理も筋金入りのカルバン派だ。総理の曽祖父である金森通倫(みちとも)氏は熊本バンドとして同志社の礎を築いた方で、新島襄から洗礼を受け晩年は湘南の嶺山で原始的な洞穴生活をされ「今仙人」と呼ばれた人だ。だからこのお二方の考えの真髄には共通点が垣間見える。トランプさんは自身を神の命により大統領に選ばれた人だと信じている。だから4年前バイデンさんに選挙で敗れても敗北を認めず往生際の悪さが目立ったが、執念深く這い上がってきた。石破さんも並みの人ではないから5度も自民党総裁選に挑戦したのだ。その根底には神から総理大臣になるという運命を託されていると確信しているからに他ならない。それにしても豪い人が日米揃って同時期に政権のトップに就いたものだ。さらにいうと、トランプ大統領と馬が合うハンガリーのオルバン首相もカルバン派らしい。だから、この御三方は目に見えない所で何かが繋がっている筈だ。
子供の頃の記憶では、日本列島改造論という言葉が出て来たかと思うや否や新幹線が開通し、何処やかしこの無用な土地が買われ土地神話という言葉迄出てきて国中が慌しかったのを覚えている。その後オイルショックによる経済混乱、日米貿易摩擦を経てバブル経済に突入し、失われた30年を経て今に至っている所で「列島改造論」という言葉を聞いて懐かしく思った。1月の石破首相の施政方針演説の肝いりの令和の日本列島改造論には「『楽しい日本』を実現する為の政策の核心は地方創生2.0だ。令和の日本列島改造として強力に進める」と力説された。久々に聞く「列島改造」という響きだが、その中に「楽しい日本」という言葉を聞いてズッコケた人も何人かいただろう。
然しこれら一連の流れから、カルバン派の敬虔なクリスチャンである首相は真剣モードで「楽しい日本」発言している事が読み取れる。だから「楽しい日本創りを必ずや成し遂げる」と一度決めたら梃子でも動かない性格なのだろう。地方創生担当大臣として第2次安倍内閣に入閣されてからずっと温めていた列島改造論を発表されたのも中途半端ではない筈だ。だって自分は生まれながらにして日本国の総理大臣になる運命の人だったのだから。色々といわれているけど、政策の一つである地方創生と観光は切っても切れない関係なので観光業界としては順風満帆だ。
2024年のインバウンドは3687万人、インバウンド消費額も8兆1395億円で過去最高を記録した。更に2025年のインバウンドは4,000万人を超えると予想されており、着実に6000万人、15兆円目標に突き進んでいる。
但し、目標のハードル6000万人超えのためには地方創生を欠かす事が出来ない。こじつけになるけれど、失われた30年の緊縮財政時代に国内のインフラ整備を怠ったツケが、今頃になって道路陥没やトンネル崩落事故の形で繋がっているのではと最近疑われているだけに、放置すると第2第3の事故が発生するのは時間の問題ではないかと、ハインリッヒの法則に当て嵌めると恐ろしい事態が予想出来る。オーバーツーリズム問題解決の為にも空港、高速道路、港湾の拡張整備、そして配管の整備等々、インフラ案件だけを並べても怠ったツケは莫大で、これ以上緊縮財政を続けていて本当に良いのだろうか?IMFにピカピカのバランスシートを見せて良い子気取りをしている場合ではない。
国民の生命と財産を保障するのが一国の総理の責務である事を考えれば、政府はこの機会をチャンスと捉え、信用創造を駆使して特別地方創生国債を発行し、先ずは経済を活性化させ将来の為の列島改造を進めて頂きたいものだ。
総理!!
列島改造の予算を幾らで試算されておりますか?
緊縮財政で国民が窮しているのにどうやって財源を確保されるのですか?ところで、総理のお膝元の鳥取砂丘に、2028年外資系高級リゾートホテルの開業準備をしておられるそうですが、これも地方創生一環として総理の肝いりで、絶対にやるんでしょうか?