◇「厳しさ増す病院経営、2024年度補正予算で「医療施設等経営強化緊急支援事業」
病床削減には410万円支給する「病床数適正化支援事業」など」から読みとれるもの
・2024年度補正予算で7事業からなる「医療施設等経営強化緊急支援事業」
・病床数削減を行う医療機関を対象に410万円支給する「病床数適正化支援事業」
・将来の医療需要を見据えた病床削減のメリット・デメリット
■2024年度補正予算「医療施設等経営強化緊急支援事業」
物価・人件費の高騰などを背景に病院経営が非常に厳しい状況となっている。物価・人件費を中心に病院の支出が増加する一方、収益の柱である診療報酬は公定価格のため、病院がコスト増を理由に引き上げる」ことができない。政府もこうした状況を重くみて、2024年度補正予算の「人口減少や医療機関の経営状況の急変に対応する緊急的な支援パッケージ」(1311億円)として「医療施設等経営強化緊急支援事業」を盛り込んだ。
これを受け厚労省は2月12日、医政局長通知「令和6年度医療施設等経営強化緊急支援事業の実施について」を発出、詳細を示した。同事業は、「高齢化や新型コロナ後の受診行動の変容も含めた患者像の変化等によって、足元の経営状況の急変に直面する医療機関のうち、病床削減を早急に実施する医療機関に対しては、医療機関の連携・再編・集約化に向けた取組を加速する観点から、必要な支援を実施する」「現下の物価高騰を含む経済状況の変化により、地域医療構想の推進や救急医療・周産期医療体制の確保のための施設整備等が困難となっている場合への対応を図る」「更なる賃上げに向けて、生産性向上・職場環境改善等を支援し、医療人材の確保・定着を図る」ことが目的で、①生産性向上・職場環境整備等支援事業、②病床数適正化支援事業、③施設整備促進支援事業、④分娩取扱施設支援事業・小児医療施設支援事業、⑤地域連携周産期支援事業(分娩取扱施設)、⑥地域連携周産期支援事業(産科施設)、⑦医療施設等経営強化緊急支援執行事業の7事業からなる。
■病床数の削減を行う病院・診療所を対象に410.4万円支給する「病床数適正化支援事業」
7事業のうち、医療需要の急激な変化を受けて病床数の適正化を進める医療機関に対し、診療体制の変更等による職員の雇用等の様々な課題に際して生じる負担を支援する「病床数適正化支援事業」(医療需要等の変化を踏まえた医療機関に対する支援:428億円)は、2024年12月17日(2024年度補正予算成立日)から2025年3月31日までの間に病床数(一般病床、療養病床、精神病床の病床数)の削減を行う病院または診療所を対象に、①実施主体となる都道府県毎に積み上げ、予算の範囲内で削減病床1床につき410万4000円を支給。②支給対象の稼働病床が地域医療介護総合確保基金における病床機能再編支援事業(単独支援給付金支給事業)による給付金の支給を受けていた場合は、差額のみを支給する(図1 医療需要等の変化を踏まえた医療機関に対する支援)。
今後も人口減少、高齢化が続く中、将来の医療需要を見据えつつ、新型コロナウイルス感染症のような新興感染症等や自然災害など緊急事態が発生した際にも機動的・弾力的に対応できるような質の高い効率的な医療提供体制を整備・強化するため、厚労省は2025年度予算案で、地域医療構想の実現に向けた取組の推進に620.0億円と2024年度補正予算585億円を計上。①医療需要等の変化を踏まえた医療機関に対する支援、②出生数・患者数の減少等を踏まえた産科・小児科の支援、③重点医師偏在対策支援区域(仮称)における診療所の承継・開業支援事業、④地域医療構想の実現に向けた医療機能分化・連携支援、⑤入院・外来機能の分化・連携推進等に向けたデータ収集・分析事業、⑥・地域医療提供体制データ分析チーム構築支援事業などを進める。
2024年12月18日の厚労省「新たな地域医療構想等に関する検討会とりまとめ」では、医療提供体制の現状と目指すべき方向性として、①85歳以上の増加や人口減少がさらに進む2040年とその先を見据え、全ての地域・世代の患者が、適切に医療・介護を受けながら生活し、 必要に応じて入院し、日常生活に戻ることができ、同時に、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を構築。②「治す医療」と「治し支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療・介護提供体制を構築。③外来・在宅、介護連携等も新たな地域医療構想の対象とする-ことを示した。
「病床数適正化支援事業」により、厚労省は、「足元の経営状況の急変等に直面している医療機関等へ必要な財政支援を行うことで、医療機関の連携・再編・集約化に向けた取組を加速するとともに、地域に必要な医療提供体制を確保する」という成果イメージを描いている。一方でデメリットとして、①病床数の削減に伴い、医療従事者の雇用に影響が出る可能性がある。特に、職員の再配置や解雇が必要になる場合がある(雇用への影響)。②床数の削減が地域医療に与える影響も考慮する必要がある。特に、病床数が減少することで、地域住民が必要な医療サービスを受けられなくなるリスクがある(地域医療への影響)。③病床数の適正化を進める過程で、病院や診療所に一時的な負担がかかることがある。例えば、診療体制の変更や職員の再配置などが必要になる場合がある(短期的な負担)-などが懸念される。
「効率化」。
頻繁に使用される言葉だが、これを別の言葉で言い換えるとどうなるか。生成AIに問うてみた。
・無駄を省く
・合理化・最適化
・コスト削減
・コストカット
・無駄の圧縮
・カイゼン
・能率化
・無駄の排除
・最適化
・効果的な運用
彼の国の「政府効率化省」トップの目指す、連邦政府の縮小、解体に向けた動きが世界の注目を集めている。
一転して「減量」。
こちらもまた、多くの人が取り組み、なかなか実現できていない。
・超加工食品の摂取を避ける
超加工食品とは、ビスケット、ポテトチップス、炭酸飲料、アイスクリームなどの集中的な工業的加工を受けて作られるこれらの製品に使用されている人工甘味料、香料、色素、増粘剤、膨張剤、乳化剤は食品を魅力的にし、原料や加工から生じる不快な色やにおい、食感を隠すために添加される。
これら超加工食品は食べてはいけないと分かりつつも、やめることが難しい。それは我々の意志力が足りないのではなく、これらの食品が我々の体内の生理的な働きをハッキングするように作られているからだという。
これらの食品は脳の報酬中枢に作用されるように設計されており、報酬中枢は、脳内化学物質、ドーパミンが分泌されることで快感を覚える脳の部位で、砂糖による「甘い味」は麻薬性のある薬物を摂取することよりも魅力的なものなのだ というから驚きだ。
昨年末公開の映画、いまだロングラン上映中の「はたらく細胞」でも、芦田茉菜演じる人間側の主人公の父親(演:阿部サダヲ)が、連日のように酒をのみ、油ものを摂取し、いわゆる「暴飲暴食」を繰り返すことで、体の中の細胞たちが、そんなブラックな身体の中に住む自分たちを呪うシーンが描かれているが、砂糖ではないものの、そういった油物やアルコール類も、摂取を避けることは、強力な意志力を伴わなければ非常に困難な時代である。それくらい、世の中には「おいしい」と感じるもので溢れかえっているのだ。
最新の減量プログラムでは、そういった食べ物を最初から家に置いておかないことが最も我慢できる方法だと紹介しているそうだ。当たり前の話であるが、非常に難しい。筆者の家には、いつか食べようと思って衝動買いした、そんな食べ物で溢れかえっている。食べてなくすのでは元も子もない。となれば、あれを全て「捨てよ」というのか。殺生な話である…(現在はSDGsなので、食品リサイクルBox行き ということか)。
今回は、厳しさ増す病院経営に「経営強化緊急支援事業」が2024年度補正予算が成立したというのがテーマだ。
【図-1】医療需要等の変化を踏まえた医療機関に対する支援 によれば、令和6年度補正予算額は428億円だ。で、交付額は1床あたり4,104千円だ
428億円÷4,104千円≒10,429床分
の予算計上だということになる。
1病院当たりの平均床数約190床で割ってみる(160万床÷8,200(病院))。
10,429÷190≒約55病院 分
(有床診療所の場合は1医療機関あたり、最大で19床なので、この際計算上考慮に入れていない)だ。
190床クラスの医療機関(病院)は結構大きな規模だ。その規模の病院が55病院分のベッドが削減されることを、厚労省は「病床数の適正化」と考えているようだ。
(今号執筆は3月7日時点。後日、厚生労働省の病床削減目標数は7,000床であると報道された)
コメントを紹介したい。
〇病院経営支援パッケージの早期執行に努めたい
年頭恒例の四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)の会員交流会で来賓挨拶を行った福岡資麿厚生労働大臣は、「医療分野の現下の課題には2024年度診療報酬改定で一定の対応を図ったが、依然、人材確保、物価高騰、医療需要の急激な変動といった厳しい状況があり、2024年度補正予算に盛り込んだ病院経営支援パッケージの早期執行に努めたい」と述べ、医療界の声を聞きなが進めていくことを強調した。
先月号でも触れたのだが、筆者はその場にいたので、それまでの病院団体の代表の挨拶を受けての福岡大臣は、さぞや居心地の悪い来賓挨拶だったに違いない。せめて2024年度補正予算パッケージが成立した後だったので(補正予算案は2024年12月17日に成立)、救いがあったのかもしれない。少しはその場にいた多くの医療機関経営層のご留飲が収まったのだろうか。
続いてのコメントを。
〇医政局長:緊急支援パッケージは、医療機関の連携・再編・集約化に向けた取組や更なる賃上げを加速する
令和6年度全国厚生労働関係部局会議で森光医政局長は、令和6年度補正予算の「人口減少や医療機関の経営状況の急変に対応する緊急的な支援パッケージ」の成果イメージとして、「足元の経営状況の急変等に直面している医療機関等へ必要な財政支援を行うことで、医療機関の連携・再編・集約化に向けた取組や更なる賃上げを加速するとともに、地域に必要な医療提供体制の確保を図るものである」などと説明した。
今回のテーマ「医療施設等経営強化緊急支援事業」についてだが、タイトル中の「病床数適正化支援事業」の428億円は、総予算1,311億円の支援パッケージの内訳である。
「早期の病床数削減」を前提とした支援金か。
新年の挨拶で福岡大臣はこんなニュアンスでお話しされていただろうか?
単純に、すぐの診療報酬改定では対応できないので、
「緊急支援パッケージでひとまずは急場を凌いでいただく」
のように聞こえたのは筆者の気のせいか。
本文によれば緊急支援パッケージの1,311億円とは、
- ① 生産性向上・職場環境整備等支援事業
- ② 病床数適正化支援事業
- ③ 施設整備促進支援事業
- ④ 分娩取扱施設支援事業・小児医療施設支援事業
- ⑤ 地域連携周産期支援事業(分娩取扱施設)
- ⑥ 地域連携周産期支援事業(産科施設)
- ⑦ 医療施設等経営強化緊急支援執行事業
の7事業で構成されている。
②の428億円を差し引いた残る883億円の使い道は、①と③~⑦で、字面から見ると、物価も急上昇し、大変だから出すという意味に捉えられなくもないのは⑦番くらいのものである。
厚労省のホームページで確認したところ、さらにそのうち55億円は産科・小児科の支援だそうで、残る828億円がそれにあたるのだろうか。
厚労省医政局令和7年度予算案の概要も調べてみた
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/25syokanyosan/dl/gaiyo-01.pdf
なるほど。
「また、現下の物価高騰を含む経済状況の変化により、地域医療構想の推進や救急医療・周産期医療体制の確保のための施設整備等が困難となっている場合への対応を図る。」
の文言がかかっているが、428億円と55億円にはロックがかかっており、さらに828億円には生産性向上や職場環境改善・更なる賃上げが強調されている。
いったいどれだけの「真水(支援策)」がこの状況下で注入されようとしているのか。「ただ大変だろうから手当てした」と単純に理解することで良いのか。霞が関文学を読み解くのはなかなか難しい。
続いてはこんなコメントだ。
〇医療政策の内容や制度設計、診療報酬体系や改定項目について財政当局や財政制度等、審議会が具体的に提言する事は当然の責務
岸田内閣では「子ども・子育て関連予算倍増計画」の「下絵を描いた」とされ、大蔵省・財務省での経歴から「社会保障分野のプロ中のプロ」とも評された財務省大臣官房審議官の一松旬氏(元厚生労働担当主計官)は、奈良県副知事として出向していた際に、当時の荒井正吾奈良県知事が打ち出した、国が例外的に認める「地域別診療報酬」(1点9円)の陰の仕掛け人といわれている。主計官時代に一松氏は都内で開催された「医療費の削減策」をテーマとした講演の中で、「診療報酬に医療提供体制改革を進める為の牽引役は期待していない。歪みをもたらしたり、必要な制度改革を曖昧にしたりしかねない点を厳しくチェックすべきというのが、『医療提供体制改革無くして診療報酬の改定無し』との考え方だ。多額の医療費について、ワイズスペンディングを徹底する事は国民的な要請であり、医療政策の内容や制度設計、診療報酬体系や改定項目について財政当局や財政制度等、審議会が具体的に提言する事は当然の責務と考えている」と述べた。
今や厚労行政にとっては「敵役(かたきやく)」の感すらある一松審議官。
確かに医療提供体制を診療報酬だけで軌道修正するという手法は難しいのだろうな。そこは同感。
「国民的な要請」か。時代の要請とか、これも時折出てくる用語だが、アンケートでもしたのか。少なくとも筆者はそのアンケートに回答した記憶はない。
いったい国民の何%が要請しているのか?
「医療費が多額なこと」に、国民がワイズスペンディングを求めているならば、「ワイズ」つまり「賢い」ならば、現在、高額療養費制度で問題になっているような議論、「たった4回の会議で決められて国民が置き去りにされている。ひどいじゃないか。」というような感情論的展開には、なかなかならないのではないのか。
もう一つ。医療従事者、医師も看護師も、病院経営者も、薬剤師も技師も、医療関連サービス提供事業者も、国民なのだが…。
今度は中医協委員のコメントを。
【診療側】
〇物価・賃金上昇にタイムリーに対応する何らかの仕組みの導入が必要ではないか
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)。「物価高騰や賃金上昇に報酬が追いついていない状況にあるため、物価・賃金上昇にタイムリーに対応する何らかの仕組みの導入が必要ではないか。今後の対応について中医協で議論が必要である」。
【支払側】
〇高度急性期の入院は、特に重点化が必要な分野
支払側の松本真人健保連理事。「高度急性期の入院については、特に重点化が必要な分野であり、患者の状態と医療資源の投入量を適切に反映した報酬体系とするために、ICU、HCUの施設基準は改善すべき点がある」。
物価・賃金上昇にタイムリーに対応する何らかの仕組みか。年金で、仕組みは存在してたものの、なかなか発動に踏み切れずにいたマクロ経済スライド方式は、いざ発動してみれば、当たり前の話だが、手取りが減った、とか、なんとか救済できないか、のような話になっていると記憶しているが。「ワイズ」な議論とは思い難い。いざ自分に降りかかれば、どうしても現状や感情の方が先に出てしまう、それが人間というものではないだろうか。
自治体のコメントを。
〇急性期病床から回復期病床へと病床転換進む新潟県「上越医療圏」
上越市、妙高市、それに糸魚川市からなる新潟県の「上越医療圏」では人口減少などの影響で患者数の減少や医療従事者の不足が深刻になっていて、地域内の中核となる病院に診療機能の集約化を進めるなど、医療機関の再編が進んでいる。上越市の地域医療構想による必要病床数は、「高度急性期」と「急性期」をあわせた急性期病床が2023年度903床だったが、2024年度は497床に急減する。一方、リハビリなどを行う「回復期」は2023年度298床が2024年度は563床が必要になる。県の担当者は病床数を実態に合わせて適正化することが必要だと説明している。そのような中、医師不足が続いていた上越市の新潟労災病院が医療機能を県立中央病院や上越総合病院など市内6つの病院に移して再編し、2026年末に閉院する。
全体論として病床数は削減されるのだろうから、この医療圏の状況は、病床数適正化支援事業の428億円にヒットするのだろうか。
今朝の情報誌を読んでいると(3月7日)、昨年の震災で大きな打撃を被った、能登の有名な病院もこの支援事業を活用して、許可床数を40床減少に踏み切るのだという。
「戦略的手仕舞い」に向けた「大盤振る舞い」。428億円にはそんな背景も見え隠れする。
病院経営層のコメントだ。
〇日病協:医療費4兆円削減ではまっとうな医療提供を継続できなくなる
2025年度政府予算の成立を目指した自由民主党・公明党・日本維新の会の3党合意で「国民医療費を年間で最低4兆円削減」を検討することになった。2月28日に開かれた日本病院団体協議会の代表者会議で、「2022年度国民医療費46兆6967億円の約1割を削減することとなれば、まっとうな医療提供を継続できなくなる」と警戒感を示す声が多数出た。
〇一般のホテルのコストが上がっている。入院に関する負担も上げざるを得ない
一般のホテルのコストが上がっている中で、入院に関する負担も上げざるを得ないのでは。消費者、国民の負担が増えている中で非常に心苦しいが、病院の経営が非常に大変で、どんどん減っているということを国民に知ってもらい、考えていく必要があるのではないか。
政治家も国民である。「国民医療費を年間で最低4兆円削減」は国民的な要請か。
医師のコメントを。
〇保険診療が先細りする
保険診療が先細りする一方、エビデンスの乏しい自由診療や、表面だけの儲かる美容などばかりが繁栄している。しかも、その尻拭いは保険診療。
〇相対的に医師の仕事への対価が下がっている
公定価格の診療報酬改定が原資による医療界では、一般企業のような柔軟な賃上げは不可能。相対的に医師の仕事への対価が下がっている。優秀な人材は、IT業界など業界に移ってしまう。
国民皆保険制度の完成と、全国一律価格の診療報酬により、故 稲盛和夫氏の教えでは、「経営は値決め」とさえ言われる中、値決めする権利もないが、反面、全国一律価格が保証され、安心して医療に打ち込める環境が醸成され、今日に至ったという多大な恩恵があったという事実も忘れてはならないだろう。
コメントを頂戴した医師もまた国民だ。確かに現在は「相対的に」医師の仕事への対価は下がっているのかもしれない。
こんなコメントも。
〇伊豆半島南部ではお産はできなくなる
伊豆半島南部の医療機関で唯一、出産を受け入れてきた下田市の産婦人科医院が2025年1月の予約分で分べんの対応を終了した。同医院は、伊豆半島南部の賀茂地区で出産を受け入れてきた唯一の医療機関で、今後も助産院は残るもののこの地域での出産は困難になる見通しだ。産科医療機関は、出産にあたっては助産師や看護師などスタッフが24時間体制で対応する必要があるが、少子化に伴って地域の出生数は減少が続き収入が減少、地方の産科医療機関の多くが赤字経営といわれる。
「時代の要請」。これもまた、国民が望んできたことで起こった現象なのだろうか。
これを国民が願ったことはおそらくないだろう。
より仕事がある地へ、より収入が得やすい地へ、より安心で便利で快適な地へ。
これこそが国民が求めている要請だろう。つまり都市間競争の結果なのだろうな。「効率化」を追い求めてきた結果がもたらした、一つの姿なのかもしれない。
「効率化」の名の下に、あらゆる場面で常にそれに似た行動が要求されているのが現在だ。
「失われた20年」以降、日本がこれまで経験したことの無いインフレ社会の中、これまで同様か、それ以上に、企業では常に効率化を追い求め、さらにそれは医療も介護も同様であり、当然政治も効率化が求められ(ているのだろう)、私生活においては超加工食品摂取等による「おいしさ」を感じることを極力避け…息の休まる暇がなさそうな未来。それでいて「ホワイト」な社会。
それが今、我々が口を揃えて目指している社会なのかもしれない。時代の要請か?
だが、少なくとも筆者は、このすべてを要請しているわけではない。
世界の超富豪のご発言は、ある意味において正しいのだろう。もし、あらゆることの「効率化」が実現できた社会があるとして、我々人間は、果たしてそこに「住みたい」と思っているのだろうか?
一方、学校教育現場において「ゆとり教育」が最も重視されていた頃の世代(2002~2011年の間に義務教育を受けた1987年~2004年生)、いわゆる「ゆとり世代」。皮肉なことに、今は彼ら彼女らが、飽くなき「効率化」を追求する世界・社会の、若き担い手たちなのである。一松審議官が「時代の要請」と仰っている以上、彼ら彼女らの要請も効率化なのだろう。
仮にそうだとすれば、「ゆとり」とはいったい、何だったのだろうか…。
<ワタキューメディカルニュース事務局>