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No.787 2027年度から順次開始「新たな地域医療構想」 2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革を目指し医療法改正
2025年01月15日
◇「2027年度から順次開始「新たな地域医療構想」 2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革を目指し医療法改正」から読みとれるもの
・外来・在宅、介護連携等も対象とした「新たな地域医療構想」
・医療計画で定める「基準病床数」は、「病床の必要量」を上限に
・「医療提供体制の総合的な改革」目指し医療法を改正
■外来・在宅、介護連携等も対象とした「新たな地域医療構想」、2027年度から順次開始
2040年頃を見据えた「新たな地域医療構想」策定論議が、厚労省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で精力的に進められ、2024年12月10日の会合で一応の決着を見た。厚労省は12月6日の第14回検討会で「新たな地域医療構想に関するとりまとめ案」を提示、構成員の了承を経て18日の検討会で公表された(図1 新たな地域医療構想に関するとりまとめの概要)。
新たな地域医療構想は、2025年度に国がガイドラインを作成、2026年度に都道府県で体制全体の方向性や必要病床数の推計等、2028年度までに医療機関機能に着目した協議を行い、2027年度から順次開始される(図2 新たな地域医療構想と医療計画の進め方(案))。
新たな地域医療構想の基本的な考え方は、①2040年に向け、外来・在宅、介護との連携、人材確保等も含めたあるべき医療提供体制の実現に資するよう策定・推進。②新たな構想は、2025年度に国でガイドライン作成、2026年度に都道府県で体制全体の方向性や必要病床数の推計等、2028年度までに医療機関機能に着目した協議等を行い、2027年度から順次開始。③新たな構想を医療計画の上位概念に位置付け、医療計画は新たな構想に即して具体的な取組を進める-ことになった。
新たな地域医療構想のポイントは、①新地域医療構想は「入院医療の機能分化・連携の強化」にとどまらず、外来医療や在宅医療、医療・介護連携なども包含した「総合的な医療提供体制改革ビジョン」とする。②新地域医療構想を、医療計画の言わば上位計画に位置付ける。③病床機能報告に加え、新たに「医療機関機能」の報告を求める。
懸案の病床機能については、これまでの「回復期機能」に「高齢者等の急性期患者への医療提供機能」を追加し「包括期機能」として位置づける。厚労省事務局は「包括期機能」について、2024年度診療報酬改定で新設された「地域包括医療病棟」を参考にしたと説明した。
■新たな地域医療構想では、医療計画の「基準病床数」は「病床の必要量」を上限に
厚労省は12月3日の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で、「地域医療構想」と「医療計画」の関係を整理。医療計画で定める「基準病床数」について、地域医療構想で推計する「病床の必要量」を上限とすることを提案、構成員の了承を得た。
2024年度からの第8次医療計画では、第7次医療計画からの受療率の変化等に伴い、多くの都道府県で基準病床数が増加。一方で、入院日数は減少傾向で病床利用率も低下しており、医療機関の経営が悪化している。そこで、厚労省事務局は、原則6年ごとに策定する医療計画の基準病床数について、新たな地域医療構想で推計する「将来の病床数の必要量を上限とする」ことを提案した。
また、現行の医療法上、「地域医療構想」は「医療計画」の一部となっているが、「地域医療構想」をビジョン・方向性を示すものとし、「医療計画」は実行計画と位置づけるよう法改正を行う。新たな地域医療構想では、①地域の医療提供体制全体の将来のビジョン・方向性を定める。②医療機関機能に着目した医療機関の機能分化・連携、病床の機能分化・連携等を定める。③介護保険事業支援計画等の関係する計画との整合性を図るものと整理。「医療計画」は「地域医療構想の6年間(一部3年間)の実行計画として、新たな地域医療構想に即して、5疾病・6事業及び在宅医療、医師確保、外来医療等に関する具体的な取組を定めることとした(図3 新たな地域医療構想と医療計画の関係の整理(案))。
■医師偏在対策「外来医師多数区域」での新規開業に歯止め
政府の「骨太の方針2024」では、2024年内の「医師偏在是正の総合的な対策パッケージ」策定を求めていた。これに対し厚労省は、12月10日の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で、「医師偏在対策に関するとりまとめ案」を提示、構成員は大筋で了承した。医師偏在対策の柱は、「医師確保計画の実効性の確保」「地域の医療機関の支え合いの仕組み」「経済的インセンティブ等」など。このうち、医師確保計画の実効性を確保するため、「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」の設定、「医師偏在是正プラン(仮称)」の策定を行う。
焦点の外来医師過多区域における新規開業については、新規開業希望者への地域で不足する医療や医師不足地域での医療の提供の要請・勧告・公表を行い、保険医療機関の指定(6年から3年等への短縮)を連携して運用する。
経済的インセンティブ等については、重点医師偏在対策支援区域における支援を実施。具体的には、①診療所の承継・開業・地域定着支援、②派遣医師・従事医師への手当増額(保険者から広く負担を求め、給付費の中で一体的に捉える)、③医師の勤務・生活環境改善、派遣元医療機関へ支援。特に、医師偏在への配慮を図る観点から診療報酬の対応をさらに検討する(図4 医師偏在対策に関するとりまとめの概要)。
■新たな地域医療構想、医師偏在対策、医療DX、オンライン診療の法制化など「医療提供体制の総合改革」を目指す
2040年頃を見据えた新たな地域医療構想が2027年度から順次開始されるのを受け、厚労省は、「新たな地域医療構想」「医師偏在対策」「医療DX」「オンライン診療の法制化」など「医療提供体制の総合改革」を目指すことになった。同省は、2024年12月18日開かれた社会保障審議会・医療部会で、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想、医療DXの推進、オンライン診療の推進、医師偏在対策、美容医療への対応-の5つの柱からなる「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革(案)」を提示。今後、医療法等の改正案を厚労省で作成し、2025年の通常国会提出を目指す(図5 2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革(案))。
団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年度以降、高齢者人口そのものは高止まりしたまま、重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる85歳以上の高齢者比率が大きくなる。一方で、医療・介護の支え手となる生産年齢人口が急激に減少し医療・介護人材の確保が極めて困難となる。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってくる。「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築を進めるため、厚労省は、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」となる「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革(案)」を作成することにした。
2025年の幕開けである。
「乙巳(きのと み)」。
昨年「甲辰(きのえ たつ)」は、十干十二支の四柱推命的な考え方によれば、非常に良い年回りであった筈だった。
新型コロナウイルスによる呼吸器系感染症も第5類相当に位置づけられた後、いろいろな意味で、こと移動に関する制約(マインドも含め)が殆どない、いわゆる「コロナ前」に戻ったかのような、そんな年末年始の姿を誰もが想像していたのだろうが…。
その年明け、元日の夕方に、日本において何が起こったか?敢えて書くことはしないが、さらに、1年経っても大きな傷跡はいまだ癒えたとは言えない状況である。
「乙(きのと)」は十干では2番目。困難があっても紆余曲折しながら進むことや、しなやかに伸びる草木を表すのだそうだ
一方の「巳(み)」。脱皮し強く成長する 蛇 は、その生命力から「不老長寿」を象徴する動物、または神の使いとして信仰されてきた。「巳(み)」はそんな蛇のイメージから「再生と変化」を意味するのだそうだ。
この2つの組み合わせである「乙巳(きのと み)」には、「努力を重ね、物事を安定させていく」といった、縁起のよさを表しており、年回りとしては昨年に引き続き、好調をキープしていると言って良いだろう。
2025年は今度こそ多くの人にとって、「良い年回りであった」と言えるような一年であってほしい。
とは言え、何もせずに果報が向こうからやってくる、というのはいささか虫が良すぎるだろう。少なくとも、
「人事を尽くして天命を待つ」
と言えるくらいの努力をすることは、大前提にあるのだろう。
「再生と変化」は、ここ数年、何度も耳にしたキーワードでもある。
努力・再生・変化
あらゆる業種に言えることなのだろうが、近年のビジネスの盛衰サイクルは非常に目まぐるしい。ついこの前まで業界トップだった企業が、まったく別の業種から来たカテゴリーキラーの後塵を拝してしまうことなど、まったく不思議ではない。
そんな時代にぴったりのキーワードである。
古臭い表現だが、
「現状維持、是則脱落」
という名言にも通じる。つまり、古くからこういう考え方があったということは、
「再生と変化」は何も今に始まったことではなく、常にベスト(或いはモアベター?)を追求し続ける姿勢が大事だ というのは今も昔も変わらないということだ。
今回のテーマ、「新たな地域医療構想」、医療法改正もそれに通じる動きなのだろう。
戦後復興を経て、我が国においては、人口増が前提とされ、多くの市場が拡大傾向であり より多く、より良質で、より効率的に提供できていれば、企業の成長を望むことができていた時代から、高齢者は増加の一途、支え手である現役世代は減少傾向、それまでなら現役リタイア、悠々自適だった世代さえ、まだまだ働き手とならなければない時代、作れば良いという時代から、社会的責任の観点から、使われたあとのことまで考えなければならず、規制も増え、悪く言えば「生きにくい」、「世知辛い」世の中であり、よく言えば環境にやさしい、地球にやさしい時代だ。その上市場規模は人口減少に伴い縮小傾向、医療や介護も、社会保障費はいまだ増加傾向であるが、厚労省としては極力方々に影響が出ないように、将来的に減ると分かっている医療ニーズに対し、まずは高齢患者のピークまでは提供体制を構築(維持)する、という至難の業、一言でいえば「上手な手じまい」に向けて医療提供体制を逐次見直していく必要がある。
そのための「新たな地域医療構想」、医療法改正である。
コメントを紹介したい。
〇福岡厚労相:医師偏在対策パッケージ「中堅やシニア世代を含む全ての世代の医師を対象とし、一保険医療対策を超えた取り組みである」
12月25日に開催された「厚生労働省医師偏在対策推進本部」で、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」が取りまとめられたのを受け、対策推進本部の本部長を務める福岡資麿厚生労働大臣は、「これまでの医師偏在対策の考え方を転換し、経済的インセンティブ、地域の医療機関の支え合いの仕組み、医師養成過程を通じた取り組みを組み合わせた総合的な取り組みとするほか、中堅やシニア世代を含む全ての世代の医師を対象とし、一保険医療対策を超えた取り組みにすることを基本的な考え方として掲げ、具体的な取り組みを進めていく」と意欲を述べた。
地域医療構想と並んで不可欠の医師偏在対策が「総合的な対策パッケージ」として取りまとめられた意義は大きい。
のだろう。ただ、もう少し話が先に進まないと、その意義の大きさが今一つ判然としない。後述で紹介するコメントまで少し話を止めておく。
というわけで次のコメントを。
〇厚労省医務技監:地域医療構想は、「気づいてみたら、目の前に“氷山”」回避の方策
迫井正深 厚生労働省医務技監は、9月28日開かれた第65回全日本病院学会の学会企画「地域医療構想前夜」の基調講演で、85歳以上人口の増加・担い手不足という将来推計可能な「未来予想図」にも対応しなければ、「気づいてみたら、目の前に“氷山”だ」という事態に陥る懸念があるとし、地域医療構想の意義を理解する必要性を強調した。
…つまり、このままの状態で行けば、せっかく未来予想図を見通せているにもかかわらず、日本の医療提供体制は暗闇をレーダーなしで航行するかの如く、気づいた時には氷山に激突。もしかしたら、タイタニック号よりも大変な状況になりかねない、という警鐘なのだろうか(※1)。
新たな地域医療構想に関する検討会についてのコメントだ。
〇日本医師会 今村常任理事:病床機能転換・減少の都道府県による勧告・公表、民間病院の倒産招く懸念
12月3日の新たな地域医療構想等に関する検討会で厚労省事務局は、既存病床数が基準病床数を上回る場合などで、病床の機能転換・減少等が必要となった場合、「必要な医療機関に対し、調整会議への出席を求めることができることとし、必要な場合は、都道府県の要請・勧告・公表等の対象とすること」を提案した。これに対して、日本医師会常任理事の今村英仁氏は「調整会議の議論という形にしろ、都道府県から公表となると風評被害を含めて問題を起こす可能性がある。特に民間病院が倒産となると、非常に大きな問題になる。ぜひ再考をいただければ」と要望した。
〇国際医療福祉大学教授 高橋 泰氏:「包括期機能」という名称、分かりづらい
「包括期機能」という名称については、多くの構成員から分かりづらいといった指摘がなされた。これに対して、国際医療福祉大学教授の高橋泰氏は「治し支える機能」、「地域包括リハビリ機能」を代替案として提案した。
確かに、個別具体的な勧告・公表となると、風評含め、その影響度合いは計り知れない。いわゆる「424リスト」が公表された時の世論の動きが記憶に新しいか。
総論として言うならば、できる限り穏便に進めようとしてきた地域医療構想調整会議の議論の延長線上では生ぬるく、新たな地域医療構想にはつながっていかない、だからこその「勧告・公表」ということなのだろう。マクロ的な視点(全体論)とミクロ的な視点(地域の個別的な状況を勘案)とでは、対極とまではいかないまでも、その狭間には相当な距離があるだろうことは想像に難くない。
もし。
自分の住む自治体の医療機関が(仮に)なくなる、なんてことになれば、それは住民としては黙っていられない、一大事だ、ということになるだろう。
回復期機能→包括期機能は「分かりづらい」か。「治し支える機能」、「地域包括リハビリ機能」ならば、これまで幾度も使われてきた表現なので幾分馴染み深い、そんな意図があるのかもしれない。
しかし、
「唐突に出てきた表現だから」。
構成員による「分かりづらい」とは、果たしてそんな理由から出てきた指摘だったのだろうか?
思わず深読みしてしまうなぁ。
医師のコメントだ。
厚労省は新たな地域医療構想で、各医療機関に自院の役割を「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「急性期拠点機能」「専門等機能」「医育及び広域診療機能」から選び、報告を求める制度を導入する方針を示した。
これに対して、
〇開業医:特定の病院へコンビニ受診する患者が殺到する懸念
開業医。フリーアクセスを止めない限り、制度は機能しない。時間外診療(救急外来)の機能を持つ病院に、コンビニ受診の患者が殺到することが懸念される。
〇勤務医:制度・分類を複雑多岐にしすぎている
勤務医。単に現状の機能を報告するだけであり、新たな分類用語を作らなくても地域の各医療機関が認識していることである。医療政策全般に言えることだが、制度・分類を複雑多岐にしすぎているように感じる。複雑化するだけで手間が増えて迷惑だ。
〇人口減少が著しい北海道の開業医:北海道の診療所医師数は2040年には半減
北海道の人口減少が著しい二次医療圏の開業医。国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」によると、北海道の人口は2020年の522.5万人から2040年には431.9万人へと17.3%も減少するとの推計に衝撃を受けた。人口減少に伴い医療機関も減少、診療所医師数も2020年の3384人から2040年には1786人へと半減するとの推計もあり、地域医療体制を維持することは困難になる。国は、人口減少を踏まえた具体策を示した新たな地域医療構想のガイドラインを策定して欲しい。
「国民皆保険」、「フリーアクセス」、「現物給付」。これまでの日本の成長を支えてきた医療制度の特徴を挙げるとすればこの3点だろう。
フリーアクセスを止める、か。そうすると直結して連想してしまうのは英国のGP(General Practitioner)制度だ。うーん、何にでもタイパ(Time Performance)を求める現代人にはとても生きにくい世の中になってしまうのかもしれない。そうなると日本人は「セルフメディケーション」に走ってしまうのだろうなぁ(すでに「今も」なりつつあるのかもしれないが)。
手に入り易いような薬で何とかなるような症状にしかならないのであればそれも良いのかもしれないが、いつなんどき、どんな病気に罹ってしまうのか分からない。だからこその互助的精神から生まれた医療保険制度、国民皆保険制度であったはずなのだが…。
医業系コンサルタントのコメントだ。
〇「患者減少を踏まえた新たな地域医療構想」という視点を
新たな地域医療構想では、2040年頃をゴールに、医療ニーズの変化に応じて、今後必要となる病床数や医療機能の集約などを考え、地域医療の将来像を示した。そこで重要な視点は、2040年をピークに入院患者数が減少するということである。厚労省「患者調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」などによると、入院患者数は2030年に全国の一日当たり150万人を超え、2040年にピークを迎える見込みで、その後は減少に転じるとされている。高齢者の占める割合は上昇し続け、2050年には65歳以上の割合が82.8%、75歳以上の割合が68.6%になると推計される。高齢者の割合が増えることで求められる医療機能も変化していく。
そうなんですけどね。厚労省もそれを分かった上で、これまで法改正や診療報酬点数改定を含め、医療制度改革を行ってきたのでしょうけどね。
このあたりの認識は、日本医師会においても同様の見解なのだとは思うのだが…。
今度は、冒頭で触れた医師偏在に対する総合的なパッケージ対策についてのコメントだ。
〇外来医師多数区域における新規開業を巡る議論
検討会の論議の焦点が、外来医師多数区域における新規開業希望者へ『地域で必要な医療機能』を要請する仕組みの実効性である。実効性を確保するため、①要請に従わないクリニックには、都道府県医療審議会での理由等の説明を求めた上で、やむを得ないと認められない場合は「勧告」「公表」などを行うことを可能とする。②「保険指定」(保険指定期間の短縮、保険指定をしない、保険指定を取り消すなど)を組み合わせて、より「地域で不足する機能提供」の実効性を確保してはどうかとの議論であった。
「要請に従わない場合に保険指定を行わない」ことなどを提唱する積極派からは、「事後に効果検証を行い、十分な効果が出ていない場合にはさらに必要な対策(厳格な対策)を検討すべき。また外来医師確保計画は「3年」単位であり、5年後を待たずに状況をウォッチしていくべき。「保険指定を行わない」仕組みを準備しておけば、牽制効果が生まれる点にも留意すべき」「踏み込みが甘く、実効性に欠ける」との指摘が出された。一方、慎重派の診療側構成員からは、「不正請求などを行っておらず、単に一定の機能を果たさないだけで保険指定取り消しを行うことは論理的にあり得ない。憲法にも抵触する。保険指定取り消し論には明確に反対する」と反論した。
〇医師偏在対策は、多数対策と少数対策をセットで実施すべき
保険者側の立場から健保連理事の松本真人氏は、「医師偏在対策は、多数対策と少数対策をセットで実施すべきものだと考えている。これまでの医師不足対策で十分な成果が得られなかったことを踏まえ、地域偏在だけではなく、診療科偏在や病院の医師不足も念頭に入れて、多数地域での過剰な開業を抑制するための規制が不可欠であり、とりわけ過多区域で厳しい規制をかけるべきというのが我々の基本的な考え方である」と述べた。
〇医師偏在対策、「おおむね日医の提案が盛り込まれた」
松本日医会長は12月11日の定例記者会見で、医師偏在対策に関する厚生労働省の取りまとめ案について、「おおむね日医の提案が盛り込まれた」として基本的には評価するとの見解を示した。日医は8月21日に、医師少数地域での開業支援や全国レベルで医師をマッチングする仕組みの創設などを盛り込んだ「医師偏在に対する日本医師会の考え方」を公表。松本会長は、この「考え方」がおおむね盛り込まれた状態であり、細かなところは除いて基本的には評価するとコメントした。
「支払側」と「診療側」の意見は当然割れる。
日本医師会 松本会長の「おおむね日医の提案が盛り込まれた」というのは、日本医師会が公表した「医師偏在に対する日本医師会の考え方」の主張がおおむね盛り込まれたことによる。
読者におかれては「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001363488.pdf)も是非ご参照されたいところだが、医師会の考え方の
6.医師偏在対策基金の創設、「1,000億円規模の基金を国において創設」というのは特に書いていなかったように見えたのだが、
「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」11頁の最後の「〇」部分(大臣折衝事項(抜粋)令和6年12月25日)
○ その際、令和8年度診療報酬改定において、外来医師過多区域における要請等を受けた診療所に必要な対応を促すための負の動機付けとなる診療報酬上の対応とともに、その他の医師偏在対策の是正に資する実効性のある具体的な対応について更なる検討を深める。併せて、重点医師偏在対策支援区域における医師への手当増額の支援については、当該事業と診療報酬を給付費の中で一体的に捉える観点から、当該事業の財源について、給付費や保険料の増とならないようにする形で、診療報酬改定において一体的に確保する。
の
当該事業の財源について、給付費や保険料の増とならないようにする形で、診療報酬改定において一体的に確保する。
が、それに該当するのだろうか。霞が関文書を正しく理解するのは非常に難しい。
医師偏在対策について、続いてこんなコメントを。
【日本病院会会長】
〇日本病院会長、「規制より温かい医師偏在対策を」
日本病院会(相澤孝夫会長)は11月19日、福岡資麿厚生労働相宛に「医師偏在対策等についての提言」を提出した。医師少数区域で働くためのインセンティブとして、「医師としても人としても楽しいこと、良いことがある」方策や税制優遇、リカレント教育などの一方、美容医療など営利主体の自由診療は規制を求める。相澤会長は「規制的手段よりは、医師が良かったと思える、あるいは安心して働けるような温かい偏在対策、また、医師の年齢に応じてやり方を変えたらいいのではないか」と提案した。
【医師】
〇医師偏在の度合いが今よりも良くなることが期待される
地方の公的病院長。「医師偏在をゼロにすることは極めて困難であるが、経済的インセンティブなどにより、医師偏在の度合いが今よりも良くなることが期待される。その意味で偏在対策は80~90点の評価ができる」。
〇40代勤務医のライフスタイルを考慮した医師偏在対策を
へき地の市立病院の40代の勤務医。「ここ5年余り所属学会学術集会・総会にほとんど出席できず、オンライン研修で何とか学会認定専門医資格を更新している。専門的な医療技術を学びたい、子どもの進学といった家庭事情もあり、都会の病院に転職を考えている。40代勤務医のライフスタイルを考慮した医師偏在対策を強く望む」。
なんだか「ほわん」としているように感じなくもないが、総合的な対策パッケージは、臨床現場には好意的に受け止められているようだ。
筆者としては、これまで何度も必要性が訴えられながら、何故このような政策がこれまで打たれてこなかったのかが、非常に疑問に思うところであり、一方で、それだけにこの問題の根の深さも感じてしまうところでもある。
最後にこんなコメントを紹介して締めくくりとしたい。
〇病院の集約化は地域を衰退、地域から病院がなくなる日が近づく
日本海側のへき地の市立病院に通う患者。「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」では、外科医師の集約化、急性期病院の集約化をあげているが、かえって病院の集約化は地域を衰退、医師不足を招く。今受診している市立病院は数年前に3つの病院が統合再編してできた病院だが、統合再編で勤務医が次々と辞め、かえって医師不足となっている。地域から病院がなくなる日が近づく。
毛利元就の「三本の矢」以上の効果をもたらすことは容易に想像できる「集約化」。
今度は集約化した結果、患者が集まることで(ここまでは狙い通りのはず)、忙しすぎて、大変過ぎて勤務医が次々と去っていく…。
これもまた、事実の一側面であるのだろう。
いったい、何を、どうすればよいのか。
世の中、なかなか思い通りにはいかないものである。
忙しいが、仕事があるのはありがたい。というのは、当の忙しい現場の当事者にとっては、そのことをあまり思うことができないのかもしれない。
コロナ禍時、一気に冷え込んだ飲食店。去っていく働き手も多かった。その後、徐々に客足も戻ったが、それでも当時はピーク時の8割くらいが関の山だったのではないか。
客足も戻ってきたので求人募集し、コロナ禍後に新しく雇用した働き手は、
「こんなに忙しいなんてやってられない」
そうこぼしたのだそうだ。
「ほんまのピークの忙しさを分かってへんから、あんなんで『忙しい』っちゅうねんな。すぐ『もう辞めたい』って…」
「…それでも少しずつ慣れていってもらって、仕事の楽しさが分かってもらえるまで、お客さんが来てくれはることがどんだけ有難いか、ってことを、心から感じてもらえるまで、気張っていかんとな」
コロナ禍が明けだした数年前の、筆者と飲食店の経営者との会話だ。
百貨店が元日営業をやめる(これはこれで良いと思うが)。
「明日来る(極端な話、今日来る)」が、明後日(あさって)来るでも、無事運んできてくれるだけでもありがたいと思わざるを得ない時代。
ワークライフバランスが叫ばれる時代。
ハラスメントの種類は数知れず、お客側のカスハラ対策ですら叫ばれる時代。
お客のモラルも問われる時代…。
サービスを受ける側、サービスを提供する側、双方が敬意を払いながらサービスを完成させていく…。
あれ?これは医療福祉の分野において最も必要とされることではなかったか。
人々の思想は少しずつ変化してきているが、今年の十干、「乙(きのと)」。困難があっても紆余曲折しながら進む。しなやかに伸びる草木を表す。
新年にあやかり、我々もこうでありたい。そう願ってやまない、そんなことを考えさせてくれたテーマであった。
本年もワタキューメディカルニュースをどうぞよろしくお願いします。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※1)…
「そんな奴おらんやろう」。 そういえば今年は聞かなかったなあ(大木こだま・ひびきの鉄板ネタ)。 さすがに氷山に激突する前には気づき、回避行動にはいるのでは?医務技監は、それくらい我が国の国民は地域医療構想の意義に対する理解が不足している、と仰りたいのだろうか。政治家か?いや、それとも?…
<筆者>
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