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No.783 保険適用が2剤となった新規認知症治療薬 巨大な市場規模が医療保険財政に多大な影響
2024年11月15日
◇「保険適用が2剤となった新規認知症治療薬、巨大な市場規模が医療保険財政に多大な影響」から読みとれるもの
・2050年に軽度認知障害を含め1200万人と推計される認知症患者
・ピーク時に年間1000億円超となる高額医薬品が医療保険財政に及ぼす影響
・薬価は、先行のエーザイのレカネマブを参考に設定
■国内で2例目の早期アルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」
厚労省は9月24日、アメリカの製薬大手イーライリリーが開発した早期アルツハイマー病治療薬「ドナネマブ(ケサンラ®)」について、 アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)及び軽度の認知症の進行抑制」を効能又は効果として、国内での製造販売を正式に承認した。 アルツハイマー病の原因物質に直接働きかけ取り除く薬としては、エーザイの「レカネマブ(レケンビ®)」に続き、国内で2例目の抗アミロイドβ医薬品となる(図1 ケサンラについて)。
レカネマブを巡っては、年間1000億円超となる可能性のある高額医薬品として薬価収載が議論された際に、「本剤と同様の薬剤を薬価収載する場合には、必要に応じて中医協総会で本剤を含む取扱いを改めて検討する」とされたことを踏まえ、中医協は2024年9月25日、ドナネマブの薬価収載に向けて、レカネマブと同様に議論を進めることを了承した。 認知症患者の増大を踏まえ、市場規模が巨大化する高額医薬品が医療保険財政に及ぼす影響を巡る議論が注目される。
ドナネマブは、アミロイドβプラークを標的とする早期アルツハイマー病治療薬で、アルツハイマー病の患者のうち、認知症を発症する前の「軽度認知障害」の人や軽度の認知症の人が対象。認知機能低下の自覚があるものの、 日常生活は問題なく送ることができる状態を「軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)と呼ぶ。 MCIは、健常な状態と認知症の中間の状態であり、認知症だけでなく、健常な状態にも移行しうる状態であるともいえる。放置していると、そのうち認知症に進行するが、原因によっては適切な予防をすることで健常な状態に戻る可能性もある。 MCIのうち、1年で約5~15%の人が認知症に移行する一方で、1年で約16~41%の人は、健常な状態に戻るとされる。MCIの有病率は、65歳以上でおおむね15~25%程度と推定され、また健忘型MCIに限れば、65歳以上で2.4~23.8%という幅のある報告がある。
■2050年に軽度認知障害を含め1200万人を超えると推計される認知症患者
令和6年版高齢社会白書によると、2022年における認知症当事者数は443.2万人と推計される。そこから、さらに将来の当事者数を推計すると、 2030年には500万人を突破、2060年には645万人に上ると推計。認知症と認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)632万人を合計すると、2050年には1200万人を超えるとされる。
認知症の分類のうちアルツハイマー型認知症が多くを占めている。進行度によって、軽度、中等度、高度となり、レケンビやドナネマブの効能効果は軽度のアルツハイマー型認知症が該当。 軽度認知障害(MCI)は、健常な状態と認知症の中間の状態であり、効能効果はアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)が該当する。また、製造販売業者の推計によれば、 アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)及び軽度の認知症の2023年度推定有病者数は、約542万人(MCI約381万人+軽度のアルツハイマー型認知症約161万人)とされる。
疾患の治療費に加えて、介護費及びインフォーマルケアコスト(家族や近親者が無償で行う介護にかかるコスト)まで含めると、認知症は非常に大きな社会的及び経済的負担となる。 厚労省の報告(2018年10月5日「全世代が安心できる社会保障制度の構築に向けて」)によると、認知症の社会的コストの増加は続いており、2030年には21兆円を上回る見込みだ。 同報告によると、認知症にかかるコストのうち、医療費の割合が最も低く、介護費及びインフォーマルケアコストの割合が高いことが分かる。 そのため、認知症の進行を遅らせる治療薬は、一時的には医療費を増やすように見えても、治療の結果として介護の負担が減れば、介護費及びインフォーマルケアコストの削減効果が期待できると考えられる(図2 認知症予防への重点的取組)。
■ドナネマブは現行薬価基準で算定へ、費用対効果評価もレカネマブ同様の取り扱い
抗アミロイドβ医薬品として2023年12月20日に薬価収載されたエーザイの新たな認知症治療薬レカネマブ(レケンビ点滴静注)の薬価は、200mg2mL1瓶4万5777円、500mg5mL1瓶11万4443円。10mg/kgを、2週間に1回、 約1時間かけて点滴静注する。1回当たり500mg5mL1瓶を使用すると仮定、年間26回投与した場合の年間薬剤費は患者1人約298万円になる。
また、ピーク時は販売から2031年で3.2万人 予測販売額は986億円。類似薬がないため、原価計算方式で薬価が算定され、有用性加算(I)は付いたが、画期性加算の対象外となった。レカネマブは2023年9月25日に薬事承認、12月20日に薬価収載された。 投与対象の患者要件と医師・施設要件などを定めた最適使用推進ガイドラインを策定、その内容を基に保険診療上の注意事項を定めた留意事項通知を発出する。従って、投与患者数は限定的になると推計されている。 全症例を対象とした調査(使用成績調査)も、薬価収載後に行うことになった(図3 レケンビ(レカネマブ)の薬価収載時対応状況)。
レカネマブに次いで2剤となった新規のアルツハイマー病治療薬の製造承認。高額医薬品が医療保険財政に及ぼす影響を巡る議論が高まっている(図4 新規のアルツハイマー病治療薬の薬価収載に向けた論点等)。
中医協は2024年10月9日に薬価専門部会と費用対効果評価専門部会の合同部会を開催し、アルツハイマー病の新薬ドナネマブ(ケサンラ®)の薬価算定方式や費用対効果評価の扱いについて議論。 厚労省は先行のレケンビ®点滴静注(一般名:レカネマブ)と同様に現行の薬価基準に基づき算定し、費用対効果評価も「レケンビに対する費用対効果評価について」に準ずることなどを提案、診療・支払各側が了承した。
現行の薬価基準に基づき、薬価算定を実施。急激な市場拡大に備えて、薬価算定方法や2年度目の販売予想額にかかわらず NDB(レセプトなどナショナル・データベース)により市場規模を把握、 四半期での速やかな再算定の適否を判断する。市場規模が大きく著しく単価が高い医薬品・医療機器を評価する費用対効果評価は算定方法により、新規収載品として有用性系加算が算定された品目「H1」、または類似品目「H5」に該当。 「特例的な対応として、価格調整範囲を見直した新たな価格調整の方法を設定」するレケンビの費用対効果評価を踏まえた形で対応することになった。
「きみの色」
「ルックバック」
「がんばっていきまっしょい」
今年の8月以降に見た映画で、何の事前情報もなく観たアニメ映画だ。
単身赴任になると「映画をよく観ることになりますよ」、と単身赴任の先輩にアドバイス(?)を受けたのだが、果たしてその通りであった。なのでどうしても観たいと思わなくても、観る映画のジャンルは必然的に拡大する。
であるので、他にも映画を観はしたものの、特に先の3作は大変失礼ながら、動機は「なんとなく」で観たことになるのだが、いや、どれも良かった。いわゆる「当たり」だったと思う(あくまで個人の構想です)。
「水金地火木土っ天アーメン」、漫画家 藤野を演じた、河合美優の独特の声、コックス(と言うのだそう)の「キャッチ、ロー!、キャッチ、ロー!」、「スパート!、スパート!」、それぞれの映画の特徴的なフレーズは、どの作品も鑑賞後、しばらく頭から離れなかった(※1)。
少なくとも、まだ筆者はこれらの映画がどんな映画だったか、当分忘れることはないだろう。
公衆衛生の向上、医療技術の進歩などこれまでの人類の努力により、日本では人生100年時代も見えてきた。戦国時代の「人間50年」から時代を経て、太古の昔から人類が渇望してきた「永遠の命」に近づくべく、人類の寿命は倍化を実現した。永遠の命には程遠いかもしれないが、それでも100年は「1世紀」だ。 戦国時代から比較すれば、長寿社会はすでに実現したといっても良いだろう。それは喜ばしい一方で、お金(財源)、認知症、要介護のなどの、新たな社会問題も生まれてしまった。
実は、永遠の命を渇望し、長生きを目指して人類が本当に望んでいた「長生きの姿」とは、健康で、よく食べ、よく遊び、バリバリ働けて子どもたちの生活も活力があって…と、心身ともに充実している頃を理想とした事象ばかりに目が行ってしまった願いであり、年を経るにつれて足腰もフラフラしてよぼよぼになり、字も読みにくくなり耳も聞こえづらい、孫からはテレビの音がうるさいと言われ、昨日聞いたこともすぐ忘れ、転んだらすぐ骨折、くしゃみをするだけで骨折など、若い頃とは相当勝手が違うことになるというような、身体にとってのネガティブ要素は、あまり考えのうちに入っていなかったのではあるまいか?(もちろん、いつまでも若々しく、張りのある高齢者も一定数存在しているのだが)
今回のテーマは、人類の高齢化・社会の高齢化とともに、切っても切り離せない社会問題でもある認知症、その認知症の治療薬、 「レカネマブ」が保険適用となったのも記憶に新しいが、何と2剤目の新規認知症治療薬が保険適用になった、というのがテーマである。
21兆円か。
【図-2】によれば、認知症の社会的コストは2030年に21兆円を上回るのだそうだ。うち、家族等が無償で提供するコスト、インフォーマルケアコストが9兆円なのだとか。 ある意味社会的資源としては損失と言えなくもない9兆円、残る12兆円のうち医療費は2.7兆円、介護費は9.7兆円と試算されている。
現在、医療福祉関連市場の規模は、切り口にもよるが、約70兆円と言われている。少なくとも筆者はそう定義づけている。 インフォーマルケアコストの9兆円を(除いて良いか分からないが)除いた12兆円は、その17%を占める。
「市場」という表現が適切かどうか判然としないが、そういう見方をすれば12兆円市場だ(さらにプラス隠れ市場が9兆円)。とてつもなく大きい。
たまに、3位に「肺炎」のような呼吸器系疾患が来る時もあるが、それでも基礎疾患としての、やはり がん・脳卒中・心筋梗塞が現代日本における日本人の三大死因だ。 この勢力分布図に変化が起きるかどうかは別として、認知症に悩まされる本人、本人もであるが、むしろ周りの近親者こそが、推計から察するに、これからますます増加の一途を辿ることになるのだろう。
であるから、画期的な認知症治療薬が世に出るのは、いわば「朗報」と言ってよいのではあるまいか。
コメントを紹介したい。
〇田村元厚生労働大臣:薬価制度改革を進め、国民皆保険制度の維持と創薬力強化
3月4日開かれた日本製薬工業協会主催の第35回 製薬協政策セミナーで基調講演をした元厚生労働大臣の田村憲久衆院議員(自民党政調会長代行)は、「今回の2024年度薬価制度改革では、市場拡大再算定の“共連れ”ルールの見直しを図る。費用対効果評価制度は、新たに開発された認知症薬に対して特例的な対応を実施する。また、小児用の薬があまり作られないことに対する加算の見直しを行い、確保できるようにしていく。海外で承認されて6か月以内に優先審査の品目になったものは、迅速導入加算をつけて新薬創出等加算に入れていく見直しをしている」と、薬価制度改革を進め、国民皆保険制度の維持と創薬力強化を図っていきたいと述べた。
田村元厚労大臣(三重一区)は、政権与党にとっては逆風であった衆院解散選挙で見事当選(10回目)を果たした。他の候補者を圧倒しての当選だ。これまでの実績がそうさせたのだろう。
「薬価制度改革を進め、国民皆保険制度の維持と創薬力強化」をこれからの(おそらくは)難局を乗り切り、是非ともご推進いただきたい。
今度はこんなコメントを。
〇経産省官僚:米国ボストンでバイオ分野の日本の取り組みをPRする初のイベント開催
経産省は2023年6月8日米国ボストンで開かれた、バイオ分野世界最大級のビジネスマッチングイベント「BIO International Convention 2023」に合わせて、バイオ分野における日本の取組をPRするため、「Japan Innovation Night」を開催した。経済産業省では、ワクチン開発・生産体制強化戦略(2022年6月1日閣議決定)に基づき、新薬創出の鍵を握る創薬スタートアップの支援を行うため、総額3500億円の基金を活用し、「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」を立ち上げた。イベントでは、経済産業省や経団連、自治体による講演を行うとともに、日本のスタートアップによるプレゼンテーションを行い、当該事業で支援しているスタートアップも登壇した。
「総額3500億円」の基金は先月ご紹介した厚労省の「近未来健康活躍社会戦略」で触れた内容のことなのだろう(W・M・N 10月号No. 781 厚労省「近未来健康活躍社会戦略」公表、医師偏在対策、医療・介護DXなどを強力に推進 https://www.watakyu.jp/medicalnews/5336/参照)。
ところが、財務行政・厚労行政的な論調は、新薬登場を手放しで喜んでいるとは言い難い。
〇財務省官僚:単価が高額な高額薬剤の登場が増え、保険医療財政への影響が懸念
今年4月の財務省財政制度等審議会財政制度分科会の資料説明で主計局主計官は、①単価が高額な高額薬剤の登場が増え、保険医療財政への影響が懸念される。②医薬品の適正な使用に向けては、諸外国と同様に費用対効果評価の本格適用が必要である。③一般の人にも薬の適正な在り方に意識を高めてもらう必要がある-などと説明した。
〇厚労省保険局薬剤管理官:市場急拡大対応でNDB活用、四半期再算定の適否を速やかに判断
新規認知症治療薬など高額医薬品の市場規模の拡大に速やかに対応するためには、レセプトデータなどNDB(ナショナルデータベース)を活用する方法があるが、薬価制度抜本改革の骨子には、高額薬剤であっても「収載時に2年度目の販売予想額が100億円(原価計算)または150億円(類似薬効比較方式)以上とされたもの」などの要件を満たす必要がある。厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「ケサンラ収載後の実際の販売予想額を大きく上回る可能性があり、この場合はNDBでデータの把握はされないという課題がある」と説明。薬価算定方式や2年度目の販売予想額などにかかわらず、NDBにより把握し、四半期での速やかな再算定の適否を判断することを提案した。
財政面への影響、かけるお金に比して効果のほどは?、良い薬が出たからと言って寄ってたかって使うな!
金庫番的お役所のコメントは「らしい」と言えば「らしい」。
一方の厚労省は爆発的に売れた後の価格再算定が従来通りのルールに則ってやるのでは時間がかかりすぎる(もしかするとあまりにも一挙に企業に保険財源が行ってしまいかねない)ので、その予防線なのだろうか。監督官庁ともなると手放しで喜ぶのでなく、その後のことまで考えねばならない。少し気の毒な気もするが。
中医協委員のコメントだ。
(支払側)
〇健保連理事:両剤の使い分け、棲み分けの報告を
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)。「レケンビとケサンラとでは、作用機序ポイントが若干異なるようだ。このため『レケンビとケサンラとを併用する』や『レケンビ使用後にケサンラを使用する』などのケースが出てくる可能性もある。レケンビとケサンラとで市場を分け合うのか、新たな市場拡大が生じるのかなどを慎重に見極める必要がある。また、臨床現場においてレケンビとケサンラとのいずれを『優先的に使用する』のか、なども含めた『両剤の使い分け、棲み分け』なども専門家で検討し、報告してほしい。これらの治験は認知症治療薬領域における市場拡大算定の在り方を議論する際に極めて重要となる」と指摘した。
(診療側)
〇日医常任理事:「薬価算定方式を変えるほどの理由は、見当たらない」
診療側の長島公之日医常任理事は、ドナネマブとレカネマブで「臨床上、治療上の使い分けはあるとは思うが、医薬品としては類似性がかなり高いと思われる。薬価算定方式を変えるほどの理由は、見当たらない」として厚労省の提案に同意。日本薬剤師会副会長の森昌平氏も同様の見解を示した上で、収載後の薬価調整については、対象となり得る患者数が多く当初の予想より大きく市場拡大することも考えられるとして、「四半期での速やかな再算定の適否を判断するために、2年度目の販売予想額などにかかわらず、NDBによる使用量の把握は必要な対応だ」と述べた。また、有害事象についてはARIA(アミロイド関連画像異常)の発現割合がレカネマブに比べると多いとして、最適使用推進ガイドラインや添付文書での注意喚起や、把握した安全性情報を医療現場にフィードバックしていくことを求めた。
財源が重要な支払側と、臨床現場の代表たる診療側の立場は、どうしても対比されてしまいがちだが、どちらもこの大型新薬の登場を強く意識していることは間違いない。
次は医師のコメントだ。
〇認知症治療薬研究開発に患者・市民の意見を
「アルツハイマー病の診断・治療の画期的なイノベーションへの医療システムの対応 認知症と共生する社会に向けて国と地域の関係者に求められる変化」をテーマに10月11日開かれた第7回ヘルスケア・イノベーションフォーラムで、日本認知症学会理事長で東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野の岩坪 威氏は、「アルツハイマー病の臨床社会的課題は巨大であり、個別のステークホルダーの努力だけでは解決できない。日本国内だけでなくグローバルに世界中がつながるようなエコシステムの構築が求められる」と指摘。その上で、「研究に患者・市民が参画するペイシェント・アンド・パブリック・インボルブメント」(PPI)の思想を実践の中に取り入れることがカギになると強調した。
「PPI(Patient & Public Involvement)」。
Pから始まるローマ字3文字は、何となく英国発のような匂いがする。調べてみれば、果たして英国で最初に採り入れられた考え方なのだそうだ。先の医師のコメントにもあるように、医療政策等において、意思決定の場に患者・市民が参画すべき という考え方だ。本来は患者(現在は未病であっても)の視点こそが重要なのは言われてみればその通りだ。
翻って我が国においてはどうだろうか。まだその機運が高まっている、とは言い難いかもしれない…。
創薬メーカーのコメントだ。
〇米イーライリリーCEO:認知症領域の新薬登場で、公衆衛生の制度を適用させていくという変化が必要
第7回ヘルスケア・イノベーションフォーラムで新規アルツハイマー病治療薬「ケサンラ」のメーカー米国イーライリリー会長兼CEOのデイビッド・A・リックス氏は、「認知症領域で新薬が出るということは、公衆衛生の制度を適用させていくという変化が必要。こうした制度的な変革や環境整備が、将来の医療的なブレークスルーにつながる。そしてケアとイノベーションをさらに増強することができる」と強調した。
ケアとイノベーションのさらなる増強と、制度も時代の変化に合わせて対応すべき か。創薬メーカーの研究開発費はとてつもなく大きい。それだけのリスクテイクをしているのだという矜持も感じさせるコメントである。
医業系コンサルタントからはこんなコメントだ。
〇高額医薬品の費用増加の見える化について、データ収集を
高度急性期病院として高度専門治療に力を入れている病院では、手術件数や化学療法件数が増加し、各診療科における収益が増加する一方、高額医薬品や高額診療材料の使用が増えたことで、費用も大きく増加しているのも実情である。そこで診療科別に費用増加の状況を「見える化」する必要がある。
「見える化」か。確かに重要だ。
病院経営面において薬剤によって医業収入が上がったことで「増収」だと軽々に喜ぶことの無いように、きちんと準備しなさいということか?
はたまた、病院が増収で好調だから診療報酬は上げなくても良いのでは(むしろ下げるべき)?というような、財務省からの提言に対し、きちんと理論武装しておきなさい、ということか。
両方かな。何にしても正しい現状把握は最も重要だ。
ところで、先ほど少しだけ登場した英国は、今回取り上げている認知症新薬についての成分と、その前に登場していた成分、両成分に対して辛口なコメントである。
〇英国国立医療技術評価機構:「納税者にとって良い価値があるとは考えられない」
英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は8月22日、エーザイと米バイオジェンのアルツハイマー病治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」を認可したと発表した。MHRAはレカネマブについて、国内での使用が許可された初めてのアルツハイマー病治療薬であり、「病気の進行を遅らせるのに有効であることを示す一定のエビデンスがある」と指摘。一方、国立医療技術評価機構(NICE)はガイダンスの草案で、同薬は高額で、副作用に対する集中的な監視が必要なことから、「納税者にとって良い価値があるとは考えられない」との見解を示した。
…なるほど。
さすがは「PPI」発祥国の考え方、P&Pということか。
最後にこんなコメントを紹介して締めくくりとしたい。
〇「専門用語の使用で、患者・家族など当事者が発言を控える場合がある」
公益社団法人認知症の人と家族の会代表理事の鎌田松代氏は、「専門用語の使用などにより、患者・家族など当事者が発言を控える場合がある」と指摘。マルチステークホルダーによるフラットな対話とコラボレーションが不可欠であり、思いやりを持ちながらお互いの立場を尊重し合うべきだと述べた。
研究をしているが故の、長年携わってきているが故の共通言語、であると同時に結果的にできてしまう専門用語は、時として、素人からすれば「謎の呪文」である。「話にならない」、「素人が出てくるな」などと考えてしまう有識者だっているかもしれない。
医療を取り巻く、専門家と患者の、その情報の非対称性故に巻き起こってしまう問題だ。
「ステークホルダー」という言葉が日本でも浸透しつつある中、今度は「マルチステークホルダー」という言葉も使用されるようになってきた現在、図らずも今回「PPI」という言葉も登場したが、なにもそういう横文字で広まらずとも、 真に患者を含め情報的に弱い立場にも立った議論、そういった考え方・視点こそが、これからの我が国の社会保障政策には必要だ。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※1)…
もう一つ、未だ頭を離れないフレーズ、「ボルテスVレガシー」。
名場面である合体シーンで流れる主題歌だ。小学生時代に憧れていた(のだろうな)、超電磁マシーンの合体シーンがとてつもなくかっこ良かった。当時、超合金を買ってもらっていた同級生がとても羨ましかったことを思い出す(筆者が当時現物に触らせてもらったのは、ボルテスVではなく、コンバトラーVの合体超合金であったが)。
しかし、なぜフィリピンで当該作品が大人気なのかが全く不明だ。カッコ良さなら断然コンバトラーVではないか(あくまで筆者個人の感想)。ボルテスの方が、ストーリーが重厚なことに軍配が上がったのかもしれないが(というかフィリピンでコンバトラーVが放映されたかどうかも分からない)。
とにもかくにも、日本の何十年も前の作品が、現代のCG技術によって他国で甦り、実に数十年の時を経て日本に逆輸入されるなんて、とても凄いことである。
突っ込みどころも沢山あったが、とにかく合体シーンが見られただけでも感動ものであった。ただ、ボルテスチームのユニホームは、少し「うーん」であったなぁ。
<筆者>
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