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No.782 2023年度の医療費47.3兆円、過去最高を更新。後期高齢者で4割占める

2024年10月15日

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◇「2023年度の医療費47.3兆円、過去最高を更新。後期高齢者で4割占める」から読みとれるもの

・2021年度から3年連続で過去最高を更新

・後期高齢者で医療費47.3兆円の4割占める

・後期高齢者2割負担導入の受診抑制効果は、見込み等よりも小さいとの分析報告

 

■2023年度医療費は1.3兆円増の47.3兆円、2021年度から3年連続で過去最高を更新

 厚労省は9月3日「2023年度医療費の動向」を公表、2023年度の概算医療費が2022年度から2.9%(1兆3000億円)増え、47兆3000億円となり、過去最高を更新した。 うち75歳以上の後期高齢者の医療費は2022年度比4.5%増の18兆8000億円に上り、全体の39.8%を占めた。医療費全体への影響は小さいが、未就学者1人当たりの受診延べ日数が12.1%と大幅に増え、診療所の受診延べ日数も小児科で16.3%、耳鼻咽喉科で13.3%それぞれ増えた。医療費は高齢者の増加に伴い、2019年度(43兆6000億円)まで増え続けていたが、コロナ禍の受診控えや感染症の減少などで2020年度は42兆2000億円に減少した。 2021年度以降再び増加に転じ、3年連続で過去最高を更新している(図3 制度別概算医療費の推移)。

 

図3 制度別概算医療費の推移

 

 医科診療所の受診延べ日数は全体で3.0%増加。診療科別では特に、小児科で16.3%増、耳鼻咽喉科で13.3%増だった。ただし、小児科は1日当たりの医療費が15.1%減となり、医療費全体は1.2%減だった。未就学者1人当たりの医療費は6.7%増、受診日数は12.1%増。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の規制がなくなり、子どもの間でさまざまな疾患が流行した影響とみられる。未就学者全体の医療費は2022年度比2.2%増の1兆5000億円だった。さらに、産婦人科については2022年度から不妊治療が保険適用になった影響により、1日当たり医療費の伸びが大きくなっている。

 

 2023年度の医療費の医療保険別の内訳は、75歳以上の後期高齢者で2022年度比4.5%増の18兆8000億円で構成割合は39.8%と4割を占め、75歳未満で同1.7%増の26兆2000億円だった。後期高齢者1人当たりの受診延べ日数は2022年10月に窓口負担が1割から2割に引き上げられた影響もあり、0.5%減となったが、1日当たりの医療費は1.4%増だったため、1人当たりの医療費は0.9%増えた。

 

■「一定以上所得高齢者の2割負担」導入、「制度改正による受診抑制効果は、見込み等よりも小さかった」との分析結果

 医療費の4割を占め、高齢化とともに増大する高齢者の医療費。2022年10月に一定以上所得(単身世帯では課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上、複数世帯では後期高齢者の年収合計が320万円以上の後期高齢者ついて、医療機関等の窓口負担割合を従前の1割から2割に引き上げる)の高齢者に対して2割負担が導入。2割負担導入が受診・受療行動に及ぼす影響が注目されていた。

 

 「負担増により高齢者の医療機関の受診が過度に抑制されてしまわないか?」との指摘を受け、令和4・5年度厚生労働科学研究費補助金による研究班が、2割負担導入(2022年10月)をはさんだ20カ月(2021年11月~2023年6月)の単身かつ特定の所得層のレセプトデータ(10万人程度)を使用した長期間のデータに基づく分析を実施。 2024年8月30日の社会保障審議会医療保険部会で、当該対象となった被保険者の受診・受療行動に与えた影響について分析結果が報告された。

 報告では、①一定以上所得者では、窓口負担が1割から2割になる直前(2022年9月)に「駆け込み需要」が生じたと考えられる。 ②「一定以上所得者で窓口負担が2割になった」グループと、「一定未満所得者で窓口負担が1割のままであった」グループとを比較すると、負担割合変更後(1割→2割)は、医療サービスの利用割合は1%程度減少、医療費総額は3%程度減少、医療サービスの利用日数は2%程度減少。 ③制度改正時の影響見込みでは「受診日数2.6%減」、2023年度厚労省が実施した短期的なデータによる検証では受診日数が3.1%減少-と、「制度改正による受診抑制効果は、見込み等よりも小さかった」との分析結果が示された。 (図4 後期高齢者医療の窓口2割負担導入の影響に関する研究について①

 

図4 後期高齢者医療の窓口2割負担導入の影響に関する研究について①

 

  2023年度医療費が過去最高を更新、医療費の4割が後期高齢者医療費という調査結果が、高齢者医療制度の見直し論議にどのような影響を及ぼすのか、注目される。

 

 

 


 

「50‐50」

どころではないほどの偉業を達成した日本人スラッガー(今年度に関しては)、大谷翔平氏。連日のニュースでその記録更新が手放しで喜ばれ、たたえられた。今後、彼がもたらす経済効果も、おそらくは跳ね上がる一方で、(妬み や やっかみ はあるかもしれないが)それが「けしからん」という論調になることは、おそらくないだろう。

 

大谷翔平が本塁打記録、打点、盗塁記録を更新。過去最高。

日経平均株価40,000円超、過去最高。

2023年度の医療費47.3兆円、過去最高を更新。

 

上2つの過去最高に対して、医療費の過去最高だけは、なんだか

「更新」して素晴らしい!!

という喜ばしい、ポジティブなイメージではなく、

「『また』更新」してしまった!!(財源が枯渇しかねないので警鐘!!)

のような、戒め、ネガティブなイメージがあると感じたのは筆者だけだろうか?

 

 よくよく考えてみればその分、医療業界の総生産は上がったわけだ。GDPが過去最高を更新するなら手放しで喜ぶのが日本の論調なら、これはもしかしたら喜ぶべきことではないのか?

 

 だが、実際はそうではない。増え続ける医療費の伸びを「何とか」抑制するというのが、財務省が厚労省に示し、厚労省が政策的に実現しようとしていることなので、仮に素晴らしい!!

とポジティブに表現されるためには、

○○年度の医療費、昨年度を下回り〇〇年度並みに!!

とならなければならない。

「素晴らしい!!」と考える主体が 誰か によって、まあ見方は大いに変わるのだが。

 

 戦後日本の衛生環境の向上、国民皆保険制度の導入、医療提供体制の確保、医療技術の進歩、支えるサービスのレベル向上…関わる方々の努力の結果がこの国の長寿化を実現してきたのだと思う。その総費用(経済効果とは言うまい)が、過去最高を更新すると警鐘が鳴らされるわけだ…。

 

 今回のテーマは、「2023年度の医療費47.3兆円、過去最高を更新。後期高齢者で4割を占めるについてである。

 

 コメントを紹介したい。

【中医協委員】

〇健保連理事:医療の高度化によって1日当たり医療費が増加する側面

 2023年度の医療費の動向報告を受けた意見交換で健保連の松本真人理事は、「医療の高度化によって1日当たり医療費が増加する側面がある。医療保険制度の持続可能性の観点からも、どう対応していくかが重要だ」と指摘した。

 

〇物価高騰、価格転嫁できない公定価格で経営している薬局、保険医療機関にとって影響は大

 日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、物価や人件費の高騰について「価格転嫁できない公定価格で経営している薬局、保険医療機関にとって影響は大変大きい」と述べた上で、「(薬価の)中間年改定の実施について慎重に検討する必要がある」と指摘した。


 持続可能性の観点、サステナビリティか。このコメントからも、伸びを抑制しようという考えが根底に根付いていると感じる。

 

 医師のコメントだ。

〇コンビニ受診と時間潰しのおしゃべり受診が多い

 勤務医。コンビニ受診と時間潰しのおしゃべり受診が多い。お金のための受診控えはなくしていかなければならないが、どうせ安いから、といった安易な不必要な受診は減らしたい。

 

〇ギリギリなんとか払えている事情をもつご家庭も少なくない

 開業医。払えない、または、ギリギリなんとか払えている事情をもつご家庭も少なくない。

 

〇高齢者で高額な収入のある人については、自己負担増

 勤務医。高齢者で高額な収入のある人については、自己負担を増やしてもいいだろう。資産状況なども把握して、正直者が馬鹿を見ないようにすることが課題だ。


 患者が医療機関に行く理由も、治療以外にもいろいろあるのかもしれない。

外来待合で、「あの人最近顔を見かけないわね。病気にでもなったのかしら…」などというブラックジョークが生まれたのは、老人医療費が無料化した頃からだったか?

 

 受診日数が伸びたとされる耳鼻科、小児科医師のコメントだ。

〇一人当たりの診療単価は低いため、多くの患者を診療する“構造的問題”が

 耳鼻咽喉科の診療単価は、他の診療科と比較すると低めの傾向にあり、平均的な診療単価3800円程度と言われている。診察後に検査を経ず処置に移ることが多いため、診療単価が低い。診療単価が低い分、多くの患者を診る必要がある。開業にかかる投資が大きい診療科目と言える。導入設備によっては開業費用が多くかかる一方で、一人当たりの診療単価は低いため、売上をあげるためには多くの患者を診療する必要がある。

 

〇人手や手間がかかる割には薬剤の量や検査が少なく不採算性が高い

 小児科の診療報酬に関する問題点の背景には、①人手や手間がかかる割には薬剤の量や検査が少なく不採算性が高い。②小児科を標榜している病院数は年々減少傾向にある。③少子化に伴い小児の入院患者は減少しているが、外来患者は減少していない-ことが考えられる。


 薄利 かどうかは分からないが、耳鼻科は「多売」でないと採算割れしてしまいかねない、ということか。導入設備と仰っておられるので、装置産業的側面は開業医でも変わらないだろうから、投資回収のためには回転を上げなければならない、というのは、一般企業と変わらない。

 一方で、小児科も「手間の割に実入りが少ない」ということなのだろう。ゆえに標榜する医療機関が年々減少か…。

 

 医療費が伸びた とされる産科医師のコメントだ。

〇出産費用の地域格差の行方が気になる

 出産費用の地域格差については、全国平均と都道府県別の金額に大きな差がある。出産費用が保険適用となれば、全国一律の診療報酬が設定されるため、地域格差は考慮されなくなる。全国一律の診療報酬点数の設定が気になる。


 かの稲森和夫氏は、「経営とは『値決め』である」と説かれた。医療は値決めができず、「公定価格」である。産科医療は、通常分娩はまだ自費扱い(値決めが可能:但しそれも出産祝金との兼ね合いがあるが)であるものの、不妊治療については保険診療となった。

 もし、通常分娩も保険適用になるとしたら…たしかに大いに気になるところだ。

 

 医業系コンサルタントのコメントだ。

〇患者に納得いく形で説明可能な体制づくりが重要

 医療費が増えると経済的な負担はもちろんだが、支出が従来の倍になると患者にとっては心理的な負担が大きくなり、長期処方を望まれたり、必要な検査であっても検査に否定的な感情を抱いたりする可能性が高くなる。検査の必要性を患者に納得いく形で説明可能な体制づくりが重要。


 説明可能な体制づくり。確かに重要だ。

 今年の12月6日が締め切りだが、「第6回 上手な医療のかかり方 アワード」への取り組み絶賛募集中である(https://kakarikata.mhlw.go.jp/award/index_05.html 参照)。

 この10月からは、主に調剤薬局事業者に対し、長期収載品の選定療養費化に伴う説明の体制づくりが要望されているところだ。もちろん院内処方を行っておられる医療機関も同様だが。

 

 一定の収入のある高齢者の窓口負担割合が2割になったことについてのコメントだ。

【高齢者】

〇この国は、いつまで高齢者をいじめるのか

 実質的な年金受給額は下がり続け、物価高が家計を襲うなかでの一定所得のある人の自己負担2割化は、高齢者の生活をさらに深刻な状況にしている。課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合200万円以上、複数世帯の場合合計320万円以上が2割負担の対象者だが、年金受給者のほとんどが対象となる。この国は、いつまで高齢者をいじめるのか。

 

【厚労省研究班】

〇健康への影響を最小化するのに国民皆保険制度が十分に機能することが明らかに

 研究代表者の野口晴子氏(早稲田大学政治経済学術院教授)。有事・平時にかかわらず、また、所得階層によらず、日本の後期高齢者間での医療サービスへのアクセスの公平性が担保されたことを意味しており、COVID-19をはじめとする自然災害等の有事の際に、個人間での社会経済的資源の格差による健康への影響を最小化するのに、国民皆保険制度が十分に機能することが明らかとなった。


 実質負担額増となった高齢者の切実なコメント

 それも「受診抑制効果」を狙った制度改正であり、その効果がエビデンスとして示された。見込みよりも小さかったが、制度改正による受診抑制効果は機能を果たした、ということらしい。

 

 ご長寿。

 

 「ご」が付くだけで、すでにめでたい表現のように感じる言葉だ。先月(9月)にあった祝日、「敬老の日」は、そのご長寿を素直にお祝いする日だったはずだ。

 一方で ご長寿≒高齢化 が直接もたらしたわけではないものの、

「少子高齢化」は、なんだか先細りそうで、目の前が暗くなりそうな表現だ。その上「超少子高齢化」社会に足を踏み入れている我が国である。そこに来てなお且つ、

「医療費が過去最高を更新(うち後期高齢者4割が費用増の立役者)」

である…。3段論法的に考えても「素晴らしい!!」と言いかねてしまう紹介のされ方だ。

 

では、

「多子化、人生60年、競争社会、勝ち残れ、替わりはいくらでもいる」

だったら良いのだろうか?これなら国としては勢いがありそうだし活気がありそうだ。

しかしなんだかそれも、歴史的に憧れが強いかもしれないものの、現実に住んでみたらおそらくはとんでもない社会であっただろう、日本の戦国時代のようでもある。

 しかし現代日本では、それはもはや受け入れがたい社会背景が出来上がっている。

 

 2024年診療報酬改定を経て、来年は2026年診療報酬改定に向けた議論もスタートする。

少なくとも、

「2023年度医療費が過去最高を更新、医療費の4割が後期高齢者医療費」

という言葉に、議論が引っ張られていくことは、高齢者には大変お気の毒であるが、間違いないのかもしれない。

 筆者も一日一日、その高齢者に近づいていっていることも忘れてはならない…。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

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