再生医療の技術を応用した薄毛治療を開始
女性の頭髪の悩みに福音
紀元前1550年頃に書かれた古代エジプト医学に関する書物であるエーベルス・パルスにはすでに薄毛治療についての記載があり、動物や爬虫類の脂肪や糞にはちみつを混ぜ薄毛部に塗り込むというものだったそうだ。以来人類は薄毛を克服しようと様々な努力を積み重ね、現在では飲み薬、塗り薬、植毛、ウィッグなど多くの薄毛治療が実用化されている。
しかしながらこれらの治療法はまだまだ完全なものではなく、人類の薄毛との闘いはいまだ継続されている。
そんな中2024年7月から、東邦大学医療センター大橋病院は毛髪再生医療による薄毛治療の提供を開始するとの発表を行った。この毛髪再生医療は、脱毛していない後頭部の頭皮から毛球部毛根鞘(DSC)細胞を採取し、体外で細胞を増やしてから脱毛部に投与するもので、東邦大学医療センター大橋病院、東京医科大学病院、杏林大学医学部付属病院および株式会社資生堂の共同研究の一環として実施された二度の臨床研究を経て安全性と有効性が確認された事を受け、再生医療等の安全性の確保に関する法律下で、この分野における世界で初めて実用化に至った医療技術となるという。
東邦大学医療センター大橋病院においては、患者の脱毛していない後頭部の頭皮から採取したDSC細胞を、資生堂による管理・監督下で適切に輸送・培養・凍結保管した後、投与日に大橋病院で解凍し、専用の注入器を用いて脱毛部に投与する。DSC細胞を移植することで、毛髪の成長に重要な役割を果たす毛乳頭(DP)細胞の活動を活発化させることにより、髪が太く長く成長し、ヘアサイクルや頭皮環境が整うことが期待できるとのことである。またこの治療は、自分の細胞を用いることで拒絶反応などのリスクが極めて低く、性別に関わらず受けていただくことができることに加えて、服薬が不要なため治療の負担も大幅に軽減されるとされている。
現在最も広く適用されている薄毛治療はフィナステリドやデュタステリドの内服による治療であるが、これら内服薬は女性に対しては適用にならず、近年増加している薄毛に悩む女性の治療選択肢が限られていた。DSC細胞を用いた毛髪再生医療が、このような女性や既存治療が選択できない男性にとって、一つの選択肢となることが期待されている。
*治療に関する詳細
よくわかるS-DSC毛髪再生医療:https://www.s-dsc.com
以上
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東邦大学医療センター大橋病院事務部総務課
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参考文献
Tsuboi R, et al., J Am Acad Dermatol 83(1): 109-116, 2020
Harada K, et al., J Dermatol 50(12): 1539-1549, 2023