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No.776 マイナ保険証利用が低迷する中、10月から「医療DX推進体制整備加算」 施設基準に「マイナ保険証利用実績」が適用
2024年07月16日
◇「マイナ保険証利用が低迷する中、10月から「医療DX推進体制整備加算」施設基準に「マイナ保険証利用実績」が適用」から読みとれるもの
・2024年度診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」
・一時金の上限を診療所に最大20万円、病院に最大40万円の利用促進策
・マイナ保険証の利用経験は2024年5月で約3人に1人
■「マイナ保険証利用実績に関する基準」論議を中医協で進め、10月から適用
マイナ保険証の利用が低迷する中、2024年度診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」算定の施設基準として、 2024年10月から「マイナンバーカードの健康保険証利用の使用について、実績を一定程度有していること」が適用される。 基準値設定に関する議論の素材を収集するため、厚労省は6月中旬・下旬に病院・医科診療所・歯科診療所・調剤薬局からそれぞれ10施設程度を抽出し、 「各医療機関・薬局におけるマイナンバーカードの保険証利用状況、利用促進に向けた取り組み状況などについてヒアリングを行うことなどが6月12日の中医協総会で承認された。 2024年7月中旬からヒアリング結果も踏まえて、「マイナ保険証利用実績に関する基準」設定論議を中医協で進め、10月から適用する。
2024年度診療報酬改定では、質の高い医療を提供するための医療DXの推進に対応する体制の確保に係る評価として、 「医療DX推進体制整備加算」「在宅医療DX情報活用 加算」「訪問看護医療DX情報活用加算」等が新設された。
このうち、「オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備、電子処方箋および電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を確保」した場合の点数 「医療DX推進体制整備加算」では、医療DXの入り口となる「マイナンバーカードによる医療機関受診の実績」が施設基準に盛り込まれていた。
例えば、医科の「医療DX推進体制整備加算」(月1回に限り、8点)では、施設基準の解釈通知の中で「マイナ保険証の利用率が一定割合以上であること」とされ、あわせて、このマイナ保険証利用実績基準に関して 「2024年度診療報酬改定年10月1日から適用する。なお、利用率の割合については別途示す予定である」との経過措置が置かれている(図6 医療DX推進体制整備加算の新設)。
■5月のマイナ保険証利用率は過去最高だが、7.73%と一桁台
ところが、「医療DX推進体制整備加算」の施設基準となる「マイナンバーカードによる医療機関受診の実績」が、5月のマイナ保険証利用率は過去最高となったものの、7.73%と1桁台とふるわない(図7 オンライン資格確認の利用状況)。
厚労省は6月21日の社会保障審議会医療保険部会に、マイナ保険証の利用促進に向け利用者を一定以上増やした病院に支給する一時金の上限を現在の2倍となる40万円に引き上げることを報告した。5月のオンライン資格確認でのマイナ保険証の利用率は前月比1.17ポイント増の7.73%で過去最高となったが低迷が続いており、利用促進を図る狙いだ。
マイナ保険証の利用状況を見ると、2023年12月に、直近では最も低い4.29%に低下したが、本年(2024年)に入ってから、1月:4.60%、2月:4.99%、3月:5.47%、4月:6.56%、5月:7.73%と上昇している。ただし、1桁台と「依然としてマイナ保険証の利用率が低調である」状況そのものは変わっておらず、さらなる利用促進を図っていく必要がある。
厚労省によると、①マイナンバーカードの保有状況は2024年4月末で9238万人(全人口の)、②マイナ保険証の登録者は2024年4月末で7255万人(カード保有者78.5%)、③マイナンバーカードの携行者は5月に50%、④マイナ保険証の利用経験は5月に約3人に1人となっている。
■利用者数の増加に応じた一時金を従来の2倍にするマイナ保険証利用促進策
既に厚労省は2024年5~7月を「マイナ保険証利用促進集中取組月間」として、従来の「マイナンバーカードによる受診率アップ度合いに応じた支援金」を「マイナンバーカードによる受診実績等をもとにした最大で病院20万円、クリニック10万円の一時金支給」に改組した。その効果もあり、利用率が20%を超える施設は、2023年12月の14.8%から、2024年5月の22.3%と増加しており、2024年5月時点で従来の一時金の上限に達している施設が多くなってきた。
さらに、これらの施設の利用率向上のインセンティブが必要として、利用者数の増加に応じた一時金を従来の2倍に引き上げ、診療所に最大20万円、病院に最大40万円を支給することを決め、 医療保険部会に報告した(図8 医療機関等におけるマイナ保険証利用促進のための支援(一時金の見直し))。
一時金はマイナ保険証の利用人数実績の増加量に応じて支給し、窓口での指定したポスターの掲示やチラシの配布も支給条件となる。厚労省が2024年2月、5月に実施したオンライン請求を実施している 全約17万施設を対象に実施したアンケート調査では、マイナンバーカードの所持を確認する窓口での声かけをしている施設は40.8%から63.6%に増加したものの、「取り組みを行っていない」と答えた施設は17%から15%とほぼ横ばいだった。
「スピードのみを重視し、トラブルが出れば国民の不信・不安につながり、それが最大のマイナ保険証利用のブレーキになっている」「一時金目当てにマイナ保険証利用の声掛けをしているなどを思われることは心外だ」「マイナンバーカードの取得は任意であり、マイナ保険証利用は100%にならない。国で対応を考えるべき」と意見もあり、今回の一時金引き上げによって利用率向上が図られるか注目される。
税務署をして 世紀の大盤振る舞い と言わしめた、
保有促進に向けたマイナポイント付与により、いや、それだけの大盤振る舞いをもってしても、マイナンバーカードの保有者数は2024年4月末時点で9,238万人なのだという。人口減少と言われながらも、日本の人口は約1.2億人だ。保有していない0.3億人、3千万人とはいったいどれだけの人数か。
東京都 約1,400万人
神奈川県 約900万人
埼玉県 約700万人
魔夜峰央原作(まや みねお)の「翔んで埼玉」的視点からすると「一緒にするな!」となるのかもしれないが、首都圏の人口が約4,400万人いる中、 3,000万人とは決して侮れない数字だ。
それだけの数の日本人がマイナンバーカードを保有していないのだ。
ご本人それぞれにどのような理由があるのかはそれぞれなのだろうが、4人に1人を、はたして少数派とみて良いのかどうか、非常に悩ましい。
その上、マイナ保険証の利用率は向上したとはいえ、あえて言うなら「たったの」7%台後半だ。国の思惑は全く思い通りにいっていないという現状がある。
いったいどうするのか?
こと行政サービス、証紙等の発行の際、もはや地域における生活のインフラとなった感のあるコンビニエンスストアとマイナンバーカードの効用は「素晴らしい」の一語に尽きる。最初に一つだけ、褒めさせてほしい。
今回のテーマは、低迷するマイナ保険証利用率向上に向け、10月から「医療DX(出た!)推進体制整備加算」の 施設基準にマイナ保険証利用実績が適用される、というものだ。利用率の低さに業を煮やした厚労省の(もしかしたら厚労省もお尻に火がついているのかもしれないが)、なりふり構わないルールが登場しようとしている。
さらには、今朝の朝刊(7月9日付)では、介護保険証もペーパレスに向けてマイナンバーカードと紐づけしようとする考え方があるのだとか。
サービス提供側目線としてのメリットは当然、計り知れないのだろうが、本当に大丈夫か?
まずはこんなコメントを。
〇河野デジタル大臣:SNSで「マイナ保険証を利用しています」と投稿
マイナカードの保有や、健康保険証との紐づけを行っているかの問い合わせを受け、河野太郎デジタル大臣は昨年7月7日、自身の旧Twitterアカウント(@konotarogomame)で「私はマイナンバーカードを持ってますし、保険証としても利用しています」と投稿した。
デジタル大臣ですからね。当然意識もされておられるのでしょうが。マイナンバーカードの保有者、約9,200万人、うち7.7%は708万人。国会議員の人数は衆院465人、参院248人の計713人、国家公務員の人数は約58.9万人、地方公務員が約280万人だそうなので、約338万人は少なくともこの708万人の中におられることだろう。となると、ちょうどこの人数と同数の方々が、マイナ保険証を利用している(?)、というのは、いささか無理があるか…
続いて総務省のコメントを。
〇「マイナンバーカードの国家公務員身分証化」に身内の省庁が反対していた
マイナンバーカード普及のため、政府は2016年から、霞が関の中央省庁でマイナカードの身分証利用を実施し、霞が関の省庁ではマイナカードが入構証として使われている。ところが、その直前の2015年11月、「個人情報漏えいの恐れがある」との理由で反対する文書を内閣官房と警察庁、公安調査庁、外務省、防衛省が連名で政府に提出していたことが2022年11月衆議院内閣委員会で明らかになった。
個人情報保護法か。この法律を厳格に守ろうとするが故、現在様々な問題が官公庁や企業で起こっている。情報がどこかに保存されている以上、それが暴かれれば漏れるものだ。100%安全だ、などということはない。
と言ってしまったらもとの木阿弥か…。
武見厚労相のコメントだ。
〇武見大臣、厚労省職員のマイナ保険証利用低迷にしびれを切らし利用促す動画メッセージ
マイナ保険証の普及を促す立場の厚労省職員らが入る共済組合の利用率も昨年11月時点で4.88%と低調なことから、武見厚生労働大臣は2024年2月29日の省内放送動画メッセージで職員に積極的に利用するよう求めた。
そうか。さっき書いた筆者の予想は、もろくも崩れていたわけだ。
厚労省のコメントはといえば。
〇マイナンバーカードは入構証としてしか使わない
霞が関の省庁ではマイナカードが入構証として使われている。多くの職員は、省内ではケースに入れて首から下げ、退庁するとバッグにしまう。保険証は財布の中にいつも入れているので、病院に行くと保険証の方を使っているそうだ。
…。
折角なのでバッグからそのマイナンバーカードを出して医療機関を受診していただけないでしょうか。
そんな言い訳(失礼!)を、会社としてルールを決めている一般企業なら、その社員は少なくとも上長から注意を受けることだろう。
ルールは決めたら守る必要があるのではないか?
あ、マイナ保険証を利用するというのは、義務ではない、そういうことなのか?
そんな厚労省がマイナ保険証利用促進策として支援金のルールを打ち出した。評判のほどはいかがだろうか?
〇「雀の涙」。インセンティブにならない
病院に最大で20万円、診療所に最大で10万円の一時金支給では、雀の涙。インセンティブにならない。たださえ、顔認証システムにお金をかけて導入したが、導入後わずか数カ月で不調に。患者さんへの説明にも時間と手間がかかり、コストパフォーマンスが悪い。
〇そもそもマイナ保険証は、信用できない
そもそもマイナ保険証は、従来の保険証との内容不一致が時にあり、信用できない。午前8~9時のレスポンスが異常に遅く、過去歴紹介に10分以上を要し、次の患者の受付ができないことも、日常茶飯事。医師会の指示で仕方がなく導入したが、マイナ保険証の利用者は少ない。
何とも芳しくない。データ上の交通ラッシュともいえるようなその時間帯のレスポンスの悪さは、保険証として使おうとしている以上、致命的な問題ではないのか?
否定的な意見ばかりでもない。医師からのコメントであった。
〇保険証の不正使用を防ぐためにマイナ保険証に一本化すべきと
とても便利で、患者、医療機関、行政、三方一両得なのになぜ批判されるのか分からない。周囲の医師の間では、保険証の不正使用を防ぐためにマイナ保険証に一本化すべきとの意見が多い。
〇先駆けて導入していた医療機関にとっては不公平感
一時金を支給すればさすがに増えるだろう。ただ、先駆けて導入していた医療機関にとっては不公平感があるかもしれない。
不公平感か。
わが国では最初に飛び込んだ、いわば「ファーストペンギン」にはあまり経済的恩恵がないのだろうか。この問題に関しては、もしかしたら将来「ごね得」になる可能性すらあるな。そう感じたのは筆者だけか?
医療機関で受け付け業務をなさっている方からのコメントだ。
〇マイナ保険証で認証する方の時間がかかっているのが現実
新規の登録が楽になる以外は、マイナ保険証で認証する方の時間がかかっているのが現実で、診察券を出すときに一緒に保険証を出す人が多い。顔認証がうまくいかないためにいら立ったり、暗証番号を忘れてしまい、慌てふためいて、結局保険証を出す来院者もいる。
今度は暗証番号か。
マイナンバーカードではないが、筆者も暗証番号ではこれまでいったいどれほど苦労したことか。
4桁の暗証番号ではないが、昨今、数字、アルファベット大文字小文字、さらには記号も織り交ぜて12桁以上、などという条件で設定する必要のあるログイン方法のなんと多き事よ。
「安全なパスワードの生成」などという便利なボタンを押下すれば、悪用されにくい(予想されにくい)ものができるのだろうが、本人が忘れてしまうことだって大いにあるだろう。しかも、悪用の恐れがあるのであらゆる場面で別のパスワードを設定することが推奨されている。
当然どこかにメモしなければ常に覚えられるわけもなく、そのメモの管理は、当然必要であり、いってみれば「アナログ」だ。紛失の可能性は大いにある。さらにはリスク分散のためにそれぞれ別なところにパスワードを書いたメモを控えておく、なんてことは実際に必要な時に本人がとても困るというリスクを大いに孕んでいる。人間が使うことを想定しているルールとは、到底思えないのだが…(※2)。
保険証を出す必要はあまりないが、調剤薬局運営事業者からのコメントだ。
〇マイナ保険証とお薬手帳との連携が不十分
患者さんに現在の内服薬の確認のためお薬手帳の提示を求めたところ、「マイナ保険証を持っているので、もうお薬手帳はない」と言われた。マイナ保険証で薬歴などを見る環境が整ってはおらず、結局処方元などに問い合わせして困った。マイナ保険証とお薬手帳との連携が不十分な中、無理やりに始まった気がする。
いやあ、今度はえらく先進的な患者もおられたものだ。こういう方ばかりがいらっしゃる前提でも、おそらく不具合は起こり、そこから修正が加えられていく、というのでもなければ、国が目指すゴールへの道のりはかなり遠いのかも?
どこかの銀行のシステムがトラブルを起こして140万件に影響、などとニュースで見たような記憶があるが、政府はその銀行を笑えない、のだろうな(まさか行政指導が入るのか?いや、メガバンク二行には、確か行政指導が入っていた)。
医業系コンサルタントのコメントだ。
〇今後、かかりつけ医機能向上を意識した診療が重要に
2024年度改定では生活習慣病報酬が大幅見直され、これまで糖尿病や高血圧、脂質異常症を主病とした患者に対して特定疾患療養管理料を算定していた医療機関は、2024年6月以降は算定ができなくなった。生活習慣病関連の見直しや再編は、患者の生活習慣に今まで以上に深く関わり、生活習慣を改善させていくというかかりつけ医機能向上を、医療機関に対して強く求めたと言える。
こちらは先月号で触れた内容だ。記憶が薄れた方は一度読み直されては如何?
さすがのコンサルタントも、マイナ保険証の現状については二の句が継げないのかもしれない。
最後にIT系企業からのコメントを紹介して締め括りとしたい。
〇お薬手帳導入の際と同様、「マイナ保険証はお持ちですか」という声掛け
「マイナ保険証はお持ちですか」という声掛けという“アナログな”手法が普及率向上につながる。オンライン資格システムを導入された中規模の調剤薬局グループでは、処方箋を持ってきた患者さん全員に、「マイナンバーカードはお持ちですか?」と直接伺うように、スタッフ全員が必ずお声がけするよう徹底しているという。マイナンバーカードをお持ちの場合は、初回はスタッフ1名が必ずそばについて、顔認証付きカードリーダーの操作をサポートする。特に高齢者には丁寧に説明する。お薬手帳導入の際も丁寧に声掛けした結果、約9割の患者さんがお薬手帳を持参しているという。
この企業姿勢を、お役所も見習わねばなるまい。
医療DXのための「アナログ」か。
ところで筆者はデジタル時計よりアナログ時計派だ。
もしかしたら、デジタルは「新しい」、アナログは「古い」といった二極論では、少なくとも様々な考え方をする人間で構成されているこの社会を語ることはできないのかもしれない。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※2)…Google chromeを使えば、今度はソフトがパスワードを記憶してくれていて、サクサクどんどんと効率よく進めることができるのだが、シングルサインオンというのか、つまり、一番最初のパスワードがばれてしまえば、あとは情報取り放題なのだ。
セキュリティのルールって、専門家が作ったのかもしれないが、それってどうなの?
筆者が素人だからそう思ってしまうのか?
<筆者>
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