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No.754 地域フォーミュラリ(疾患別の推奨医薬品リスト)運用で厚労省が通知 次期診療報酬改定でフォーミュラリ導入に影響及ぼすか注目

2023年08月15日

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◇「地域フォーミュラリ(疾患別の推奨医薬品リスト)運用で厚労省が通知 次期診療報酬改定でフォーミュラリ導入に影響及ぼすか注目から読みとれるもの

・通知の背景、骨太の方針2021や第4期医療費適正化計画でフォーミュラリ活用

・次期診療報酬改定でのフォーミュラリ導入論議にも影響か

・厚生労働科学特別研究「フォーミュラリの運用について」をもとにした通知

 

■保険局通知が診療報酬改定でフォーミュラリ導入を巡る論議に影響を及ぼすのか注目

 厚生労働省保険局は7月7日付で、地域単位で「疾患別の推奨医薬品リスト」(フォーミュラリ)を作成・運用することで、地域医療の標準化が進み、医療費適正化の効果も期待できるなど、地域フォーミュラリの基本的な考え方をまとめた通知「フォーミュラリの運用について」を各都道府県、医療関連団体などに発出した。

 

 通知が発出された背景には、2021年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針2021)」において、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、新目標についての検証、保険者の適正化の取組にも資する医療機関等の別の使用割合を含む実施状況の見える化を早期に実施し、バイオシミラーの医療費適正化効果を踏まえた目標設定の検討、新目標との関係を踏まえた後発医 薬品調剤体制加算等の見直しの検討、フォーミュラリの活用等、更なる使用促進を図る」などと、フォーミュラリの活用が盛り込まれたこと。これを受け、後発医薬品も含めた医薬品の適正使用に資するフォーミュラリガイドラインを策定するため、2022年度厚生労働科学特別研究事業で「フォーミュラリの運用について」がとりまとめられたことがある。

 また、来年度から始まる第4期医療費適正化計画(2024~2029年度の中で、「後発医薬品の使用促進について、個別通知やフォーミュラリなどの取組を進める」とされるなど、後発医薬品の使用を促進する取り組みの一つとして、フォーミュラリの活用があげられ、計画の目標達成に向けて都道府県が取り組む施策の後発医薬品の使用促進として「保険者等による差額通知の実施の支援、フォーミュラリに関する医療関係者への周知をはじめとした必要な取組を行うこと等が追記されたことがある。後発医薬品の使用割合(数量シェア・全国平均)については、2020年9月までに全国ベースで80%にするという目標が未達となり、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上にするという新たな目標が掲げられたものの、伸び率が高止まり傾向にあるからだ(8 第四期医療費適正化基本方針のポイント 目標達成に向けて都道府県が取り組む施策)。

 

 フォーミュラリの導入促進に向けた診療報酬による評価は、日本医師会の「評価には適さない」日本薬剤師会の「時期尚早」など反対意見もあり、2000年度、2022年度の2回の診療報酬改定で見送られた。しかし、2022年度改定では年末の予算編成において財務大臣と厚生労働大臣の大臣折衝で、改定財源確保として財務省の肝いりでリフィル処方箋が急遽導入されたことは記憶に新しい。年末の2024年度予算編成に向け、2024年度トリプル改定の財源確保に関する論議が本格化する。保険局通知「フォーミュラリの運用について」発出が、中医協におけるフォーミュラリ導入を巡る論議に影響を及ぼすのか注目される。

 

■対象は同種同効薬が多く存在する疾患領域の医薬品

 今回の通知は、2022年度厚生労働科学特別研究事業「フォーミュラリの運用について」をもとに、(1)同文書は、「わが国ではこれまでも医療機関単位で『病院フォーミュラリ』といわれる採用医薬品リストとその関連情報が活用される事例があったが、近年では地域の関係者が協働することで、地域レベルでフォーミュラリを作成し、運用している事例も見られるようになってきている。地域においてより良質な薬物療法を提供するために関係者が協働した上でフォーミュラリを作成・運用する際に参考となる基本的な考え方を提示することを目的」であると述べた上で、(2)地域フォーミュラリの目的・考え方、(3)地域フォーミュラリの作成と運用、(4)地域フォーミュラリ導入の効果・影響の評価-について、以下の通り解説した。

 通知ではフォーミュラリについて、「わが国においてフォーミュラリの厳密な定義はないが、米国病院薬剤師会では、医療機関等において医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針を意味するものとして用いられてきている」と定義(9 フォーミュラリについて:中医協資料より)。

 フォーミュラリの作成主体は、「医療機関の医師・薬剤師、薬局の薬剤師、地域医療を担う関係者からなる組織を設置し、地域医師会・薬剤師会等の関係団体の協力を得ながら、関係者の協働と合議の下で契約関係などの利益相反の開示を含め透明性を確保し対応するべきである。また、地域の医療事情をきめ細かく反映させ、かつ実効性を高めるためには、行政機関や保険者などの関与も可能な限り検討する」という考えを示した。先行してフォーミュラリを実施・検討している事例として、①地域の三師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会)が連携して主導(大阪府八尾市、茨城県つくば市)②地域の中核病院が主導し、地域の医師会・薬剤師会と連携して運用(宮城県仙台市宮城野区)③地域医療連携推進法人による実施(山形県北庄内の日本海ヘルスケアネット)などを紹介している。

 

 フォーミュラリ収載薬の選定には、「医薬品の安定供給を含めた製造販売業者の体制に関する事項のほか、医薬品の適正使用のために有効性・安全性の評価を重視することは当然として、経済性の観点にも留意しつつ検討する」とした上で、「具体的には、検討対象の医薬品の適応範囲(効能・効果、用法・用量)、品質、有効性、安全性等に関するデータ、製剤の特徴などについて、例えば以下に示すポイントを参考に検討を行う。検討に当たっては、添付文書、インタビューフォームといった資料だけではなく、先発医薬品の承認審査時の審査報告書、製造販売後の副作用の発生状況、製造販売後臨床試験・調査の状況、医薬品リスク管理計画の実施状況、学術論文などのデータを積極的に収集・分析することが求められる」と説明した。選定のポイントとして、①経済性の観点から「後発医薬品を選定」することが考えられるが、必ずしも最も低い価格の医薬品を選定する必要はない。②同種同効薬で適応の範囲が異なる場合、「広い範囲の適応を有する医薬品」を選定する。③服薬アドヒアランスを考慮し、「1日あたり投与回数(服用回数)の少ない医薬品」の選定を検討する-ことを示した。

 収載薬の表記は、①原則として有効成分の一般的名称による(特定の銘柄を示す販売名は記載しない)。②製剤の特性(例:バイオ後続品における注入器など)、製造販売業者としての品質確保、安定供給等の取組などの理由により「特定の銘柄の製剤を選定する必要がある」場合には、具体的な販売名を明記できる(この場合、選定の合理的な理由(製剤の特性、企業の対応等)を記しておく)-といったリスト化に当たっての注意点も示した。

 

フォーミュラリの導入と運用、更新、利益相反管理など

 実際にフォーミュラリを運用するに当たっては、①作成されたフォーミュラリについては、地域の医療機関、薬局のほか、医師会、薬剤師会等の関係団体、行政等の関係機関に丁寧に周知し、必要に応じて説明会を行う。②フォーミュラリの導入により、医薬品の使用に制限が生じるものではなく、既に治療を始めている患者については、あえてフォーミュラリの収載薬に切り替える必要はなく、投薬中の医薬品を継続することで差し支えない。③フォーミュラリの作成・運用にあたっては透明性を確保することが必須であるため、後述の利益相反に十分配慮し、作成や更新に関する情報、運用の状況などについて定期的に公表するとともに、重要な情報については適時適切に公表することが必要である-との考え方を示した。

 医学・医療の進歩に伴う「新たな優れた医薬品」「新たな診療ガイドライン」「新たな効能・効果」などに対応したフォーミュラリの更新については、①フォーミュラリは、作成した後も最新の情報に基づき適時適切に更新する必要がある。例えば、新医薬品の薬価収載(年4回)や後発医薬品の薬価収載(年2回)などの時期にあわせて定期的に行うことや、診療ガイドラインの改訂など作成している疾患領域の薬物療法に変化が生じた際に行うことなどが想定される。②フォーミュラリを更新する際には、地域の医療機関や薬局等の意見を聴くことなどにより、フォーミュラリの運用状況を把握し、改善点などについて検討を行い、その結果を活用する-との留意をあげた。

 

 また、フォーミュラリの作成・運用を適正に行うためには、作成主体や関係者の利益相反(COI;Conflict of Interest)管理が重要となるとし、①製薬企業等の外部の関係者からの経済的、その他の関連する利益提供により、特定の医薬品の優遇など、「医薬品の選定過程で必要な公正かつ適正な判断が損なわれる、または損なわれるのではないか」と第三者から懸念が表明されないようにする。②作成主体(上述)はCOI対応を明確にし、フォーミュラリの作成・運用にあたり公正かつ適正な判断が損なわれないようにしなければならない。③COIに関する対応は、手続等の透明性と信頼性を確保するため、日本医学会のCOI管理ガイドラインや関係学会のガイドラインを参考にCOIに関する指針等を策定・公表し、これを遵守することが必須である-との注意点を示した。

 

地域フォーミュラリ導入の効果・影響の評価

 フォーミュラリを導入したことによって、医療の標準化、医療費適正化が進んだのか、医療現場に悪影響が生じていないか、効果・影響を定量的に評価することを強調。

 また、フォーミュラリの導入による薬剤費の適正化も重要な視点であることから、医療経済的な分析により、具体的にどの程度の効果があったか評価する。例えば、後発医薬品の使用による適正化効果額の試算などを実施することが考えられる。その際、地域の行政機関や保険者、大学・研究機関の協力が得られれば、地域保健の情報やレセプト情報等を利活用したより具体的な評価・分析が期待できると、フォーミュラリ拡大に向けた考え方も示した。

 

 


 

 魔の川死の谷ダーウィンの海

技術の社会実装の過程における3つの難所のことだ。

 

 <魔の川>

・研究において

・製品開発において

の難所のこと。

 

 <死の谷>

・製品開発

・事業化において

の難所のこと。

 

 <ダーウィンの海>

・事業化の過程

・市場・産業化の過程

における難所のこと。

 

である。

 それらの難所を越え、厚労省の承認を受け、薬価表に掲載されただけでも相当な苦労が製薬メーカーにはある事は想像に難くない。

 今度は、推奨医薬品リストに載るか乗らないかで、メーカーにとっては、まさに死活問題ともいえるほどの衝撃(か?)、地域フォーミュラリ運用について厚労省が通知を出したという。

 様々なステークホルダーの思いが交錯する、いわゆる「利権」が最も絡みそうな「地域フォーミュラリ」をテーマにしたサスペンス映画でも作られそうなほどの話題ではないか、と筆者は感じてしまった(※2)。

 それが今回のテーマである。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇保険局長:リフィルやフォーミュラリ策定等で医療の効率的な提供に取り組む

 2023年1月の令和4年度全国厚生労働関係部局長会議で厚労省の伊原和人保険局長は、2024年度からの第4期医療費適正化計画に向けた見直しとして、リフィル処方箋やフォーミュラリ策定等により、医療資源の効果的・効率的な活用や医療の効率的な提供に取り組むことが記載されることを紹介。一方で、フォーミュラリの診療報酬での評価は効果が見えてからと、慎重な姿勢を示した。


 なるほど。効果はある。つまりかかるお金が減る。財源が生まれる。減らしたことを評価する。点数が付く。報酬が付く。収入が増える。

 このサイクルにもっていく前に、まずは効果を出すのみ)、ということか

 

続いては中医協委員のコメントだ。

 

〇日医委員:診療報酬で評価し強引に誘導させていくことは適さない

 前回2022年度診療報酬改定を巡る2021年12月8日の中医協で、日本医師会常任理事の城守国斗氏はフォーミュラリに関して、「医療機関、法人経営の観点から活用されることは理解している」とする一方、「リストの作成について医薬品関連企業が指導するなど恣意的な内容になる危険性もあり、その定義もはっきりしない。策定の方法やプロセスも明確になっておらず診療報酬で評価し強引に誘導させていくことは適さないと考えている」「医薬品の選定はあくまで治療方針として学会等が示している医薬品を中心に医療機関が一定程度の自由度をもって導入を検討するものである」との考えを示した。

 

〇日薬:院内フォーミュラリの報酬上の評価については時期尚早

 同じく2021年12月8日の中医協で、日本薬剤師会の有澤賢二常務理事は、「フォーミュラリをつくっていない病院が一定数いることや、作成したくても時間や人手が足りないという医療機関が一定いる。院内フォーミュラリの報酬上の評価については時期尚早と考える」とした。一方で、「医学的妥当性は充分に担保されているのか、実際にどれくらい経済的な有用性が示されるのか、フォーミュラリについて引き続き調査していく必要があると考える」と述べた。

 

〇健保連:前回改定と比べ環境も整ってきた

 2022年度診療報酬改定を巡る中医協の論議で、健保連の幸野庄司理事は、「厚労省の研究班がフォーミュラリガイドラインの策定に取り組むなど、前回改定と比べ環境も整ってきた」と述べたうえで、「フォーミュラリをさらに推進していくためには、診療報酬上の評価は必要」と改めて強調し、具体的な対応について検討を進めていくべきとの見解を示した。


 おかれた立場によって取り組もうとする傾斜具合が非常に異なる。中医協の支払側と診療側は、いわば対をなしている立場でもあるので、当然といえば当然か。

 

 日本医師会のコメントを紹介したい。

 

〇中医協による薬価基準収載品リストこそ、国のフォーミュラリ

 松本吉郎日医会長は中医協委員を務めた際に、「そもそも中医協の審議を経て薬価収載されることが、国のフォーミュラリではないか。われわれ医師は、患者の状態を診て、それぞれの患者に最適な治療を選択する責任がある。医療は、医学・薬学的知見に基づき一定程度の自由度を持って行われるべきである」と述べた。


 確かに松本会長の仰ることも一理ある。反面、薬価収載されるというだけでは(それでも大したものだが)、メーカーにとっては手放しで喜べる状況ではない。創薬メーカーにおいては、次なる新薬効開発費も稼がなくてはならない。後発医薬品メーカーにおいても、開発費がかからないとされる所以から、単価が低く抑えられているためか、採算が取れない商品もあるという。その結果生産体制・品質の維持すら危うく、そんなことを背景として、現在の薬剤供給が覚束ない現状をも引き起こしている、ということも忘れてはならない。

 製薬メーカーの獲得するNET薬価(薬品卸への納入価格からマージンを支払った後)から、企業活動における営業利益を、研究開発・機械の更新も含め、その薬剤の流通する数量ベースだけで長期的に確保するのは、至難の業なのだということを物語っている。売れ筋商品でなければ生き残れないのは、どの業界でも一緒か。

 

 今度はこんなコメントを。

 

〇日本薬剤師会:地域連携パスの一部として使用医薬品の情報共有を

 日本フォーミュラリ学会設立記念シンポジウムで講演した日本薬剤師会の磯部総一郎専務理事は、地域フォーミュラリの推進について、「地域連携のために必要だから(薬剤師が)やらなくてはいけないと思い、それを応援してほしいというふうにもっていかないと、なかなか現場で進んでいかないのではないか。地域に患者を戻していく中で、地域でどう薬剤を使っていくのかという視点で進め、地域連携パスの一部として使用医薬品の情報共有をすることはできるのではないか」との考えを示した。


 地域フォーミュラリ学会設立記念シンポジウムなので、少なくとも地域フォーミュラリを肯定する方々が多いのだろうし、地域フォーミュラリの推進における薬剤師の役割は、いかに重要か?という問いかけでもあるのだろう。

 

 医師のコメントだ。

 

〇診療所と病院の間で使用薬剤の相違が回避でき、安全な薬物治療が推進できる

 後発医薬品使用促進による医療財源の節減効果ばかり強調されるが、何よりも地域フォーミュラリの導入によって、診療所(外来診療)と病院(入院診療)間で使用薬剤の相違を回避でき、安全な薬物治療が進められるメリットが大きい。


 至極真っ当なご意見である。患者の視点に立っている、ともいえる。

 

 薬剤師のコメントだ。

 

〇フォーミュラリは同種同薬効の中で最善の薬剤選択する過程を学ぶのに有用

 薬科大学の教授。薬学教育の現場で薬剤師を目指す学生が同種同薬効の中で患者に最適な薬剤を選択するツールは、一部の書籍以外にほとんどない。フォーミュラリは、同種同薬効の多数の薬剤の中で、患者に望ましい医薬品を1つや2つ選択する過程を学ぶのに有用である。


 数ある商品群の中から、お店の棚に並ぶべき商品を、総合的に判断して決定し、仕入れの権限が与えられた存在を、流通業では「バイヤー」という。裏を返すと、綺羅星のごとく生まれる新商品を、棚の容量に制限がある以上選択する必要があるので、採用される商品以外の殆どの商品を「切る(切らねばならない)」ことこそが、バイヤーの真の姿なのかもしれない。非常に「お辛い」立場だ。

 

 フォーミュラリに携わった方々のコメントである。

 

〇一番の懸念は、医師が自由に処方できなくなること

 厚労省による地域フォーミュラリのモデル地域に指定された日本海総合病院の島貫隆夫院長。「山形県酒田地域において地域フォーミュラリ運用前の懸念事項で最も多かったのが、医師が自由に処方できなくなることだった。また、医療費適正化をはじめとする経済面が最優先されるのではないか、診療報酬で評価されていないという不信感が多かった」ことを紹介した。

 

〇地域フォーミュラリ作成で様々なステークホルダーが協議する場がない

 地域フォーミュラリ作成には、医師会医師、中核病院医師、薬剤師会薬剤師(病院薬剤師)、地域保険者(職域保険者)、行政など様々なステークホルダーの参画が必要とされるが、地域によっては様々なステークホルダーが協議する場がないようだ。


 地域医療構想における「協議の場」は、厚労省の立場としては少なくとも確固たる存在なのだろうが、言われてみるとフォーミュラリの「協議の場」についての議論が醸成されるのは、これからなのかもしれない。

 

 続いて製薬メーカーのコメントを。

 

〇「医薬品データプラットフォーム」運用検証、地域フォーミュラリ推進支援機能も開発予定

 日本IBMは、先発品4社・後発品3社製薬メーカー、医薬品卸、物流といった医薬品物流を担う企業が参加し、ブロックチェーン技術を活用し医薬品の流通経路および在庫を可視化する「医薬品データプラットフォーム」の運用検証を2023年4月から開始した。参加・協力各社は、医薬品について、工場出荷から医療機関および薬局における処方、調剤、投与までの一連の流れを医薬品データプラットフォーム上で検証。また、地域医療への貢献を目指し、医療機関等における薬剤使用情報を地域フォーミュラリ推進支援に役立てるための機能も開発予定だ。

 

〇後発品メーカー:製薬企業の矜持である品質力維持、安定供給を怠ってきた

 フォーミュラリ対象薬の選定に当たり後発品が有利など、国の後発医薬品使用促進の数値目標達成に「おんぶ」して、われわれ後発品メーカーは「イケイケどんどん」で、後発品の営業をかけてきた。一方で、製薬企業の矜持である品質力維持、安定供給を怠ってきた。それが、今ツケとして回ってきたことに反省している。


 最先端の取り組みと、先にも触れたが現在起こってしまっている薬剤供給の不安定の問題。

 

「国の後発医薬品使用促進の数値目標達成」

 

はいわば 錦の御旗 だった。

 錦の御旗を振っていた国は、現在とてもお怒りであるが、こういった未来は国にとって果たして「想定外」だったのだろうか?

 マイナンバー保険証で物議をかもしているの現状と、どこかカブってしまう、と感じてしまうのは筆者だけなのだろうか?

 

医薬品卸のコメントはこうだ。

 

〇フォーミュラリ策定に当たっては地域の医薬品卸の参画は必須

 フォーミュラリ策定に当たっては、医薬品の安定供給に責任を持つ地域の医薬品卸の参画は必須である。


 流通業における「バイヤー」について先ほど触れたが、卸にもバイヤー機能は存在する。誰もが知っている、さしてCMを打たずとも放っておいても誰もが勝手に売れてくれる商品、「真の定番品」のように、小売での最終消費者のマインドを掴むことのできる商品はそれほど多くない。

 殆どの新商品は、何らかのマーケティング活動を経てようやく世に出され、競争を経て店に並び、勝った(売れた)と思っても真の定番品に敵うことはなかなかなく、そして消えていく…。その繰り返しだ。

 そこにはメーカーの、卸に対する営業、卸・メーカーのバイヤーに対する営業、そういった地道な営業活動があって成り立っている。

 卸がバイヤーに対して発言力がない、なくなる、などということを、少なくとも流通業の中で、黙って見過ごすなんてことはあり得ないだろう。

 薬品の流通過程においても同様ではなかろうか?

 簡潔なコメントの中に強い自信と決意を感じた。

 因みに、薬品流通業界における「バイヤー」的な立場は、病院等の薬剤部長なのか?はたまた処方権を持つ医師なのだろうか?

 

 今度はこんなコメントを。

 

〇医薬品の合理的な使用は先進諸国と比較して優れているとは言い難い

 第1回日本フォーミュラリ学会学術総会(大会長:今井博久帝京大学教授)で基調講演をした医療経済が専門である今井教授は、「わが国における医薬品の合理的な使用は先進諸国と比較して優れているとは言い難い。最近では、保険者はもとより厚労省や日本医師会がポリファーマシー対策に乗り出しガイドライン作成など啓発活動を行っている。しかしながら、実効性に乏しく目立った成果は報告されていない。ポリファーマシーや不適切な処方は依然として深刻な状況に陥っている。これまで不適切処方、多剤処方、非効率な処方が放置されてきた。患者のアウトカムが侵害され、膨大な医療費が無駄になり、医薬品流通を非効率化し、薬局薬剤師の空洞化をもたらしてきた」と指摘。その上で地域フォーミュラリの導入によって、①標準的な薬物治療の普及②患者アウトカムの向上③無駄な費用の削減④医薬品卸業務の効率化⑤薬局の在庫軽減、知識習熟化連携促進など、「地域医療への革命をもたらす。中医協で日医はフォーミュラリ導入に反対してきたが、低成長で膨大な借金を抱え少子高齢化の今は、対立している時代ではない。患者の真の幸福を考え医薬品の使用方法に知恵を出し合い勇気を持って進むべきだ」などと強調した。

 

〇『薬剤選択の手法』を学んではどうか

 採用医薬品を集約化することで「経営の質」が向上する(医薬品の購入コストを抑えることが可能)とともに、何よりも「医療の質」向上が期待できる。フォーミュラリ策定に当たっては、地域や病院によって、どの医薬品へ集約するかは異なってくる。まず、地域の医師が大学病院でフォーミュラリ導入に向けた『薬剤選択の手法』を学んではどうか。


 どうやら、薬品流通の過程におけるステークホルダーも、登場人物が多いらしい。それを想起させるコメントだ。

 

 最後に医業系コンサルタントのコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇健保連は米国で普及している「保険者フォーミュラリ」に関心

 米国では、保険者が保険償還し得る医薬品リストをフォーミュラリと呼び、薬剤給付の適正マネジメントを行う薬剤給付管理会社(Pharmacy benefit management:PBM)がフォーミュラリを策定、段階的処方のほかに、処方数量に対する制限等がある。健康保険組合連合会(健保連)は2019年8月、2020年度診療報酬改定に向けた5つの政策提言を発表。その中で、生活習慣病治療薬の選択にフォーミュラリを導入することによる経済効果を試算し、診療報酬制度にフォーミュラリを組み込むことで、年間3100億円を超える薬剤費削減効果があると発表した。健保連は、米国で普及している「保険者フォーミュラリ」に関心が高いようだ。


 支払側という立場上、健保連がフォーミュラリに関心を示すのはもっともなことだ。PBMの適正マネジメントが「適正」なのであれば、米国での運用は、当然「適正」なのだろうが…。

 資本主義の最右翼、米国で、日本でこれだけ苦労しているのに、適正マネジメントを可能にしているものとは一体何なのか?

筆者は経済効果より、むしろそちらの方に興味がある。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 (※2)…すでに還暦を迎えたトム・クルーズ主演のミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEは、昨今話題のチャットGPTに代表されるような、生成的AI(人工知能)がテーマの超大作だ。3時間にもわたって見続けた頃、蓄光が薄くなりかけた腕時計の目盛を見ると、もうそろそろ上映終了の時間。これで事件が解決か!?と思った時、よく考えてみると

 あ、そうか。これは「PART ONE」だったっけ。ハタと気が付いた。

 あれだけ見て、「始まりに過ぎない」って…。
 この先が楽しみだ、というより、早く結末を見せて。とじれったい思いに駆られた。

 スタントマンなしの体当たり撮影をされるトム・クルーズ様は、一体、いつまで撮影をお続けになられるのか?結末は気になるが、一体何年後に(おそらくは悲しくも)スカッとするエンディングを迎えてくれるのだろうか?

 そしてデッドレコニングが完結したら、次回作のテーマには「フォーミュラリ」なんて如何だろう?あくまでフィクションとしてなら、陰謀渦巻くストーリーとしてスリルとハラハラ感が期待できるかも?

<筆者>

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