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No.745 地域医療構想実現のカギ握る複数医療機関の再編統合。厚労省認定の再編統合に新メリットを付与
2023年04月17日
◇「地域医療構想実現のカギ握る複数医療機関の再編統合。厚労省認定の再編統合に新メリットを付与」から読みとれるもの
・地域医療構想実現のため、インセンティブ付与で複数医療機関の再編統合をさらに後押し
・医療機関を併設する際に設備等の一部供用認めるコスト軽減などのインセンティブ付与
・厚労省検討会WGで公立・民間病院統合・再編の実践例が報告
■厚労省認定の複数医療機関の再編統合は2件のみ
地域で複数医療機関の再編統合を推進することが地域医療構想実現に向けたカギとなる。3月1日に開催された厚生労働省の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織)で、複数医療機関の再編統合について、地域の地域医療構想調整会議で計画を整え、厚労省の認定を得た場合(認定再編計画)に対して税制優遇に加えて医療機能に関連する施設・整備の共有を認めるなどさらなるインセンティブを付与する方針が了承。発出予定の第8次医療計画等の作成方針(厚生労働省医政局長通知、同地域医療計画課長通知)に盛り込まれることになった。
「地域医療構想」は、主に二次医療圏をベースとする地域医療構想調整区域における2025年度の医療需要と病床の必要量について、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期等」の医療機能別に推計し策定するもの。その上で、一般病床・療養病床を持つすべての医療機関には、毎年度自院の各病棟がどの機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)を持つと考えているのか、自院の診療実績や人員配置・構造設備などはどのような状況なのかについて都道府県に報告する「病床機能報告」が義務付けられている。「地域医療構想」と「病床機能報告」をもとに、各地域の地域医療構想調整会議において、地域医療構想の実現に向けて、医療機関の機能改革・連携強化に向けた論議が行われている。
地域医療構想実現に向けては、地域の複数医療機関の再編統合が焦点となる。厚労省は、複数医療機関の再編統合を推進するため、地域医療構想調整会議で「複数医療機関の再編計画」を整え、厚労省が認定する場合、①当該計画に基づき取得した不動産に対する税制優遇措置(登録免許税、不動産取得税)②当該計画に基づく増改築資金、長期運転資金に関する金融優遇措置などのインセンティブを付与している。
(図1 再編計画の認定に基づく地域医療構想実現に向けた税制上の優遇措置)
(図2 独立行政法人福祉医療機構による地域医療構想に係る優遇融資)
これまで、この仕組み(認定再編計画)が利用されたのは、①「病院と有床診療所を再編し、急性期機能と慢性期機能の一部を転換し、構想区域で不足する在宅復帰に向けた医療やリハビリを提供する回復期医療を担う」を目指した北海道札幌市(記念塔病院+北31条内視鏡クリニック→交雄会新さっぽろ病院)、②2病院を再編し、急性期機能を回復期機能に転換、急性期病院等から紹介された在宅復帰を目指す患者に対し、充実したリハビリテーションを提供し主に回復期機能を担う兵庫県神戸市(荻原みさき病院+荻原整形外科病院→荻原記念病院)に2件とどまっている。
そこで、厚労省は複数医療機関の再編・統合をさらに推進するため、①認定再編計画の枠組みを利用した場合、併設する医療機関について「医療法の施設基準の特例」を認める。②認定再編計画の枠組みを利用した場合、病床過剰地域における医療機関の再編統合のうち「勧告をしないことが適当と認められる場合」について明確化するなど(図3 今後の対応方針)、
「認定再編計画における新たなインセンティブ付与」ついて、3月1日に開催された地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループに提示、了承された。
①は、「医療機関を併設する際に設備等の一部供用」を認めてコスト軽減のインセンティブを付与するもの。②は、「認定再編計画を活用して複数医療機関の再編・統合を行う場合」であっても、一定の要件(総病床数の増加を伴わない、地域で過剰となっている機能区分(例えば急性期)の病床数増加を伴わないなど)を満たせば、中止勧告を行わない旨を明確化する考えである。明確化により、複数医療機関の再編について予見可能性を確保することが可能となり、複数医療機関の再編・統合のさらなる推進その上での地域医療構想実現が進みやすくなると期待される。
■地域医療構想実現に向けた公立・民間病院統合・再編の実践例
3月1日の地域医療構想・医師確保計画ワーキンググループでは、地域医療構想の実現に向けたさらなる知見を得るために、石川県・大阪府・山形県の三友堂病院からヒアリングを行った。
このうち、石川県健康福祉部部長の永松聡一郎氏は地域医療構想の進め方として、次のような取り組みを進めていることを報告した。①「私たちの地域のことは、私たちで決める」をスローガンに、医療機関、自治体、市民の代表者など多くのステークホルダーに参加してもらう議事運営。②従来の病床機能報告に基づく機能分類ではなく、より細分化した機能分類の使用と各医療機関のマッピング(専門医療、重症急性期、軽症・中等症急性期、ポストアキュート、回復期リハビリテーション、長期療養)。③地域医療構想調整会議の場において、県が医療機関に対し「どのような考え方で病床機能報告における病床機能を選択したのか」を質問する。④公立・公的病院など200床以上の病院について重点的に協議を行う医療機関に選定し、特に地域医療構想、地域包括ケア、機能分化・連携強化について協議を実施。協議の結果を構想区域ごとの調整会議で共有し、医療機関同士で議論する。⑤厚労省の技術的支援を活用し、各病院からのDPCデータ、国民健康保険組合からのKDBデータ、消防からの救急搬送実績データ等を活用し、患者数予測などの経営分析の実施。⑥周産期医療の提供体制について検討するための「赤ちゃん協議会」の発足と、議論に基づく各ステークホルダーの今後の取り組み方針の合意。
また、大阪府健康医療部保健医療室保健医療企画課の岡田敦子課長は、「大阪府は民間病院の割合90.2%と高く、地域医療構想の推進には公民一体で取り組むことが必要である」と指摘。①NDBデータや病床機能報告等に基づく独自の診療実態分析、②病床機能報告の内容では2025年に向けた病院の体制把握が不十分なため、全病院に具体的対応方針(病院プラン)提出を依頼、③全病院参加型会議の実施-といった「大阪アプローチ」を進めることによって、大阪府内の99.8%が独自の病院プランを提出した現状を報告。その上で、地域医療構想推進の課題として、「2013年の実績を基に推計された2025年の病床数の必要量は実態と乖離しており、地域医療構想調整会議における協議の根幹をなすメルクマールとしての信頼度が低下している」「回復期という名称が今後増やすべき機能(ポストアキュート、サブアキュート)を表しきれていない」「国による報告基準が定められていないため、病床機能についての共通認識を持ちにくい」ことをあげた。
さらに、山形県米沢市の一般財団法人三友堂病院の仁科盛之理事長が、2023年10月に開設予定の新三友堂病院・新米沢市立病院について、地域医療連携推進法人を活用した民間病院と市立病院の統合・再編による併設事例を紹介した。三友堂病院と米沢市立病院がある置賜二次医療圏は少子高齢化や人口減少が進み、医師不足・高齢化が問題となり米沢市においても救急医療の維持が非常に厳しい状況に置かれている。将来を見据えた地域医療の確立という観点から、米沢市立病院が24時間365日の救急医療を含めた急性期医療を担い、三友堂病院が回復期医療を担いながら、医療の機能分化および医療連携の充実を目指す統合・再編を進める。2023年11月に新病院を開院するとともに地域医療連携推進法人を設立することを報告した。新病院は併設し、2階から5階までは渡り廊下でつながる予定(図4置賜区域の再編の概要)。
仁科氏は、「地域医療連携推進法人は、ゆるやかな組織形態であり、決して強固な経営形態ではないが、資産的な縛りもなく、それゆえソフト面で自由な発想ができる。官・民融合、お互いの独立採算性、双方の経営形態を維持しながら、目的とする機能分化を図る。官の良さ、民の良さを補完し、地域医療のあるべき姿を追求しつつ、常に市民の目線に立った医療の提供を行いたい」と抱負を述べた。
「宇宙列車」
筆者が大学生の頃、主に小学校低学年を対象とした、子どもたちとの関りを持つサークルに所属していたのだが、体を使って遊ぶ「ゲーム」と称されるカテゴリの中のメニューの一つだ。
・その前のゲームでの流れから、数十名の子どもたちはほぼバラバラな集団を形成している。
・そこで近くの子ども(誰でも良い)と二人一組のペアを作ってもらう。
・集団が奇数の時は、余った子どもが出ないようにお兄さんお姉さんがフォローする。
・準備ができたら二人でじゃんけんをしてもらう。
・じゃんけんに負けた子どもは勝った子どもの後ろに回り、勝った子どもの両肩に手を添える(肩もみする形といえば分り易いか)。
・まずは二人一組の「宇宙列車」完成だ。
・そこでお兄さんお姉さんが宇宙列車の歌を歌い出す。
・宇宙列車たちは、思い思いの方向に走り、歌が止んだ時に一番近くの宇宙列車(二人一組のペア)の先頭の子どもとじゃんけんする。
・負けた宇宙列車は勝った宇宙列車の後ろに回り、勝った宇宙列車の後ろの子の両肩に手を添える(背丈に大きな違いがあれば腰に手を回す)。
・今度は4人一組の宇宙列車の完成だ。
・またお兄さんお姉さんの歌が始まる。最後の二組になるまでこれを繰り返す。
・最後の二組になったら、ゲーム終了。かなりの人数で構成された宇宙列車が2台、存在しているはずだ。お兄さんお姉さんがたくみに誘導し、次のゲームにつながっていくべく、整列させていく(このゲームだけで完結するならば、最後の勝者を決めても良いかもしれない)。
・そして、一度もじゃんけんに負けなかった二人の強者を紹介し、次のゲームにつながっていく(ちなみに次のゲームは集団で大声を出し合い、より声の大きかった方が勝利というゲームになる)。
ようするに、じゃんけんのトーナメント戦のアレンジ版である。
先月開催された野球イベント。そのうち一つは世界的な盛り上がりを見せ、またさらに最高の結果を日本にもたらした。また、春の選抜甲子園では、春夏連覇を目指した東北勢の雄、仙台育英高等学校は、準々決勝で涙をのむ結果となり、新たに生まれた勝者は山梨学院となった。
一度でも負けたら、三位決定戦などがなければそこで試合終了。それだけに熱い戦いが観るものの心を揺さぶる。連帯感を生み、そして感動を生む。それがトーナメント戦の醍醐味だ。
今回のテーマは、地域医療構想のカギを握る複数医療機関の再編統合についてである。トーナメント戦とはいかないまでも、何らかの序列?、役割分担?、など言い方は工夫する必要があるが、その結果が意味するところは、病院数の減、ベッド数の減である可能性が高い。
コメントを紹介したい。
〇病床削減は、結果として過疎地域の高齢者の医療アクセス権利を抑制
2023年2月14日の衆議院総務委員会の地域医療構想を巡る論議で湯原俊二衆院議員(立憲民主党 鳥取県選出)は、「厚労省としては、中長期的に、病床削減ではなく、質の高い、言葉ではすごくきれいにおっしゃっているが、質の高い、2025年までに新たな見直しをしていく、こういう方向であったと思うが、私は、結果的に、一昨年来ずっとあるように、過疎地域における公立病院等の統廃合につながっていくのではないかと懸念する。コスト意識はあるべきだが、結果として、特に過疎地域の高齢者の医療アクセスの権利を抑制してしまうことになるのではないかと懸念している」などと述べた。
議員のご懸念はごもっとも。どの立場で発言するかだ。過疎地域の立場ならばこのようなご発言だろうし、全体最適を求めたい国の立場であれば全く正反対のご発言になる可能性がある。国を背負って立つ大臣級のご発言ならば、それに近いものになることだろう。
今度は総務省のコメントだ。
〇過疎地域においても持続可能な医療提供体制が確保されるよう、公立病院の経営強化を推進
2月14日の衆議院総務委員会で松本剛明総務大臣は過疎地域の医師不足に対する質問に、「総務省においては限られた医師、看護師などの医療資源を最大限効率的に活用するという視点を重視した公立病院経営強化ガイドラインを2022年3月に策定し、各地方自治体に経営強化プランを作成するよう要請した。経営強化プランにおいては、病院間の機能分化、連携強化、医師派遣などの取組について記載をすることとしており、このような取組を通じて、過疎地域においても持続可能な医療提供体制が確保されるよう、公立病院の経営強化を推進している。過疎地域など不採算地区においても必要な医療が提供されるよう、医師、看護師などの派遣に要する経費や、不採算地区の病院の運営に要する経費などに対して、財政措置を講じ、持続可能な地域医療提供体制の確保に取り組んでいきたい」などと答弁した。
答弁としては見事だ(ろうと思う)。
次は厚生労働省のコメントを。
〇医師提供体制の均てん化のため、地域の声を政策に反映する意見交換を進めている
2月14日の衆議院総務委員会で2022年11月の地方6団体及び全国自治体病院協議会からの要望書の中で医師確保、医師偏在解消など医師提供体制の均てん化を早急に実行することを政府に要望したことについて、厚労省の大坪寛子大臣官房審議官は、「6団体からいただいた御指摘もそうだが、地域の方からもこういうような政策をやっていただきたいみたいなお話はふだんから意見交換をしており、こういった細かいところも拾い上げながら、医師偏在、診療科偏在是正に努めていきたい」などと答えた。
一時脚光を浴びた大坪審議官であるが、しっかりとご活躍のご様子。
今度は自治体のコメントを。
〇人口減少の地方都市で進む公的病院の統合・再編 下関市では1527床削減計画
下関市では2次救急医療を担う4つの急性期の公的病院の統合・再編(4病院から3病院に)が大きな問題となっている。2022年11月に作成された「第7次山口県保健医療計画(素案)」では、高度急性期1141床、急性期2678床、慢性期4189床を削減、回復期を1939床増やし、県全体で6449床削減する。下関市では2023年1月末の医療対策協議会で、高度急性期医療を担う4病院(市立市民病院、済生会下関総合病院、関門医療センター、下関医療センター)のほか急性期、回復期、慢性期を担う医療機関の計5009床(2016年6月)を2025年に3482床へと、1527床削減する計画を明らかにした。内訳は、高度急性期126床、急性期617床、慢性期820床、休棟179床を削減する一方、回復期を215床増やす。1527床と大幅な病床削減の背景には、下関市の人口が2025年に24万人台まで減り、2040年には約19万7000人へと減少すると推計され、外来患者数の減少が顕著になることがある。この急性期病院の再編に対する市民のパブリックコメント(意見募集)が3月13日から4月20日まで行われており、その結果も注目される。
〇三田市長選、市民病院の再編統合が争点に
兵庫県三田市では市民病院の再編統合が市長選挙の争点になっている。任期満了に伴う兵庫県三田市長選(7月16日告示、同23日投開票)について、現市長が進める三田市民病院(三田市)と済生会兵庫県病院(神戸市北区)の再編統合に反対する市民有志らによる候補者公募に応じ選ばれた候補者が立候補。市民病院の再編統合が市長選挙の争点となっている。済生会兵庫県病院は、神戸市北区に位置し、「兵庫県保健医療計画」で定められた二次医療圏のうち神戸医療圏に属している。しかしながら、病院の立地場所は市境に近く三田市および西宮市に隣接し、二次医療圏を超えた患者の流出入がある。北神・三田地域で急性期を担う中核的病院である済生会兵庫県病院と三田市民病院の両病院は、直線距離で9.4kmと比較的近い位置関係にあり、新病院は2つの病院のほぼ中間点となる神戸市北区長尾町宅原に建設される予定。再編統合されれば、北神の人口8万人、三田市の人口約11万人が主な対象診療圏になる。再編統合の背景には、医師確保の難しさや施設の老朽化、経営難といった課題がある。一方、病院の再編統合について一部の地元住民からは、車などを持たない高齢者は通院が困難になるとか、救急患者の受け入れが縮小するのではないかなど、反対や不安の声が出ている。
下関市のパブコメ結果も大変気になるところだが、三田市の病院の再編統合が争点、というのは、住民にとって非常に身近な話題であるので、そこはとても理解できるのだが、もし、仮に再編統合反対派の市長が誕生すると、総務省は、今度はこの地域の医療構想に、一体どんな注文を付けるのか?はたまたつけるべきでないのか?市民が反対で、その住民の意を受けた市長が再編統合をしない、というのであれば、そもそもこれまで積み上げられてきた話はどうなってしまうのか?
地域医師会のコメントだ。
〇仙台医療圏4病院の再編問題、仙台市医師会長が市の検討会議座長として発言
村井嘉浩宮城県知事は2023年2月20日、仙台医療圏の老朽化が進む4病院(仙台赤十字病院(仙台市)、県立がんセンター(名取市)、東北労災病院(仙台市)、県立精神医療センター(名取市))を2拠点に再編する構想について、整備の方向性に関する協議確認書を各病院の設置者と取り交わしたことを発表した。再編構想では、仙台赤十字病院と県立がんセンターを統合(名取市が候補地)、東北労災病院と県立精神医療センターを移転・合築(富谷市が候補地)する。村井知事が5選を果たした選挙公約ともなった同構想では、仙台市の病院が減ることから市民から反対意見が多い。このため、2022年度中を目指していた基本合意の時期は2023年度中に先送された。影響が大きい仙台市は、有識者による仙台市における医療のあり方に関する検討会議(座長:安藤健二郎仙台市医師会長)を開き、再編によって東北労災病院や仙台赤十字病院が市外に移転した場合、仙台市内から新病院への救急搬送は限定的になるとし、別の病院の確保が必要であるなどとの提言案を2月3日まとめた。仙台市民の医療、受診環境に著しく影響を与える可能性があるなどと移転に反対してきた検討会座長の安藤仙台市医師会長は、「4病院移転ということが仮にあった場合にそこから慌ててもしょうがないので、移転を想定した仙台の医療体制を整えていくべきだ」とコメントしている。
仙台育英高等学校のある仙台市。今や代表的な東北の大都市だ。再編統合→病院が減る、というのは、市民の賛成は得にくい。皆、その地に根差して生きている以上、国全体のこと、もう少し広域の圏域のこと、そういうことは異国の出来事のように感じてしまうのだろうか。無理のない話であることは理解しているつもりだが。
地方都市の議員のコメントだ。
〇慢性的に赤字の市民病院の具体的な経営改善
市民病院の慢性的な赤字に悩む地方都市市議会での議員の質疑。市民病院の病床数140床では、到底黒字経営にはできないというのが病院経営のセオリーらしいが、あれだけの病院を建設して、いまだに誰の責任なのか全く明確になっていない。しかし、過去を責めても改善はしない。この慢性的な赤字体質の病院事業を悲観せず、病院経営の改善に取り組めば、逆に市の財政は明るい展望が開け、医療の提供だけでなく多方面で市民サービスの向上が図れるのではないか。具体的な経営改善として、後発医薬品の積極的な導入、診療科を適正規模に縮小し効率を高める、非常勤医師を適正規模に縮小、効率を高める経営と医療を分離させるべきであると思うが、地方独立行政法人や指定管理者制度などの運営形態の変更を検討しているのか。
いずこかの地方都市での議会の質問風景だろうか。病院経営の改善にどの自治体病院も取り組んでいれば、公立病院改革ガイドラインに始まり、公立病院強化ガイドラインの策定が求められている現在になってはいない。過去を責めても改善はしない。悲観せずに取り組む。経営効率を高める。地道なことだし、皆分かっておられる筈のことであるのだが…。
今度は病院団体からのコメントを紹介したい。
〇全自病会長:民間病院が9割占める大阪府の地域医療構想実現取り組みを評価
地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループの会合で大阪府の独自の病院プラン提出について、全国自治体病院協議会の小熊 豊会長は「大都会の大阪で、民間が占める割合が9割でありながら、良く整理ができているというのが偽らざる思いだ」とした上で、「今後、全国でも民間含め地域医療構想を進めていかなければならない中で、ほぼ100%の民間医療機関が素直に地域医療構想調整会議の話に則り、自院の役割を見直している。都道府県の言うことを聞かないところもあるのに、大阪は9割が民間なのに言うことを聞く。厚労省事務局はこの違いを十分に分析し、全国に広げていただきたい」と要望した。
〇医療法人協会長:医療機関の再編・統合の民間病院対応の厚労省資料に反論
第8次医療計画等に関する検討会で、健保連の河本滋史委員などが、厚労省の発表資料で地域医療構想調整会議における医療機関の再編・統合の民間病院の遅れを指摘、取組みの加速化を求めたのに対し、大阪府で加納総合病院を経営している加納繁照日本医療法人協会長は、「大阪では多くの民間病院が協議に参加し、合意している。都道府県別にみないと実態を見誤る」と反論。また、織田正道全日本病院協会副会長は、「データの出し方については、実数もきちんと示してほしい。主に民間病院の『その他』の母数は1万494で、その3割は3150ぐらい。公立・公的病院は合わせて1200程度なので、対応している民間病院の方がずっと多い」と指摘した。
民間病院と自治体病院。公立病院経営改革強化ガイドライン。
民間病院経営層のコメントだ。
〇過疎地に働く医師への経済的インセンティブを
高齢化が進む山間地の100床の民間病院長。3代続いて地域医療を守ってきたという自負で小さな病院を運営している。過疎地域の病院が不採算なのはやむを得ない部分があり、これらも勘案しての病院の統合・再編への評価が必要である。我々のような小規模な民間病院は常に医師確保に悩まされており、再編を考えるなら医師の過疎地域への配分も含めて(過疎化で働いてくださる医師には経済的インセンティブを出す等)考えてもよいのではないか。
〇県立と民間病院の統合・再編で苦労したのが給与体系の調整
県立病院と民間病院の統合・再編を果たした民間病院出身の事務長。給与体系も県と民間では異なっている。民間は初任給が高くても伸びが緩やかで、反対に県立の初任給は抑えられていても、その後は徐々に上昇するパターンがある。2病院の再編統合の場合、職種によっても事情が異なっており、それらを細かく調整するのに苦労した。
ひとくちに再編・統合、と言っても、仮にそれが進んだとしても、大きく横たわる膨大な解決すべき諸課題の数々…。働き方改革が叫ばれ、DXが叫ばれている現代、そういったことをこそ、事務処理的な変革という意味合いとしてのDXでなく、あらゆるステークホルダーを納得させるような、それこそ手法としてのDX化で推進できぬものか…?
看護師からのコメントも紹介したい。
〇病院の統合・再編は、子育てにも大きな影響を及ぼす
県の地域医療構想に基づく公的病院と民間病院の統合・再編で、今まで勤務していた病院から自動車で30分もの町に新病院が移転した。3歳の息子を子育て中であり、院内保育体制は十分でなく、結局、病院から徒歩圏内のアパートに引っ越した。病院の統合・再編は、子育てにも大きな影響を及ぼすことを理解してほしい。
〇地域医療構想によって、「看護師といえば病院勤務」の時代ではなくなるかも
地域医療構想によって「病床が減る=看護師の必要数が減る」ということになる。2013年実数(134万7千床)から、2025年には115万床までが削減目標。2025年には高齢化により152万床まで増えるという試算もある。「152万床」まで増える可能性がある病床を「115万床」まで削減する目標を実現するためには、自宅や介護施設で29万7千~33万7千人の受け入れが必要、自宅や介護施設でケアを受け、最期を迎える方が増えるということなので、看護師のニーズもおのずと在宅へシフトしていく。「看護師といえば病院勤務」の時代ではなくなるかもしれない。
国としては、異次元の少子化対策に予算を振り分けようとしているさなか、今度は再編・統合で働く看護師の子育てに影響が…。
一方で病院勤務でなく、いわゆる訪問看護の分野へ、今のうちから転身し、確固たる地位を築く、そんなビジョンがあってもいいのかもしれない。病院勤務によって看護師は何を目指すのか?
生きるための糧=ライスワーク
患者のため・自らの理想実現のため=ライフワーク
回りと横並びで安心= ???
最後の考え方は 何ワークというべきか、筆者は思いつかないが、考え方として、確実に存在するのだろうとは思う。
医療系コンサルタントのコメントだ。
〇経営戦略の見直しには、徹底した情報収集、DPCなどデータ分析による現状把握が必要
地域医療構想実現に向け大転換期にある病院は、大きな経営戦略の見直しが求められている。中長期の病院のあるべき姿を見据えて、院内の関係者はもちろん、地域の医療機関や住民が納得できる戦略が必要である。そのためには、徹底した情報収集、DPCなどデータ分析による現状把握が必要。先進事例から得られる知見やノウハウも、大きな経営戦略の見直しには欠かせない。
…ですね。
いよいよ、病院再編・統合に向けてコンサルタントの役割が問われる。そんな時代の到来か?
最後にこんなコメントを紹介して締め括りとしたい。
〇免許証返納の高齢者は、統合・再編によって病院が遠方に移転すると困る
我々高齢者は免許証を返納すると、病院は交通アクセスの便利な所でないと困る。これからずっと病院でお世話になることを考えると、統合・再編で病院が遠方に移転すると死活問題だ。
コンパクトシティ。例えば過疎地のライフライン維持のためのお金の使い方、例えば過疎地を放棄し、ライフラインが維持可能な場所での住まいを提供するためのお金の使い方、いろいろと考えはめぐるが、「完全な正解」はないのかもしれない。
トーナメント戦の勝者は、どうしても1人(1チーム)になってしまう。しかし、地域医療構想の勝者は1人(1法人)であるとは限らない。たとえ牛歩の歩みであったとしても、知恵を絞って、自分たちのことは自分たちのことが一番よく分かっている自分たちで、全員が勝者となる正解に辿り着くための議論を尽くしていくしかないのだ…。
せめて自治体が破綻するより先には正解に辿り着く必要はあるのだが…。
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