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No.743 医療・介護・障害福祉の2024年度トリプル改定に向けた論議が中医協でスタート
2023年03月15日
◇「医療・介護・障害福祉のトリプル改定に向けた論議が中医協でスタート」から読みとれるもの
・新たな検討の場「2024年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」を設置
・ポスト2025年を踏まえ、医療介護総合確保促進会議で「総合確保方針」を見直し
・2024年度改定では、医療・介護連携が一層重視
■トリプル改定となる2024年度改定、新たな検討の場「2024年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」を設置
診療報酬と介護報酬制度および障害福祉サービス等報酬制度のトリプル改定になる2024年度改定を巡る論議が中医協でスタートした。
中医協は1月18日開いた総会で、2024年度診療報酬改定に向けた検討の進め方について、厚労省当局から、①その1として4月から夏頃まで、第8次医療計画、医師の働き方改革、医療DXについて幅広く意見交換を行い、その後、入院、外来、在宅、歯科、調剤、感染症、個別事項等について議論、②その2として秋から12月にかけて、個別具体的な改定論議を行うスケジュールが示され、了承された(図1 令和6年度診療報酬改定に向けた中医協等の検討スケジュール(案))。
また、トリプル改定になることから、新たな検討の場として「2024年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(仮)」を設け、3月頃から3回程度の意見交換会を行い、課題等の共通認識を醸成することが示され、了承された。
2024年度診療報酬改定は、①ポスト2025 年も見据えた介護報酬及び障害福祉サービス等報酬との同時改定である、②2025年に向けて地域医療構想の取組を進めるとともに、さらに厚労省の医療介護総合確保促進会議で「ポスト2025 年の医療・介護提供体制の姿」がとりまとめられる、③新興感染症対応を含めた第8次医療計画が2024年度からスタートする、④医師の働き方改革として2024 年4 月に労働時間上限規制等、改正労働基準法および改正医療法が施行する、⑤医療DX の実現に向けて、医療DX 推進本部等において議論が進められている、⑥革新的な医薬品等の上市、医薬品の安定供給が極めて重要な課題となっている、⑦プログラム医療機器(SaMD)の評価体系を検証し、今後のあり方について検討が求められている-ことを背景に、人口動態や社会情勢の変化や医療提供体制改革等を踏まえた大幅な改定が予想される。
■ポスト2025年を踏まえ、医療計画・介護保険事業計画、介護保険事業支援計画の上位指針となる「総合確保方針」を見直し
特に、2024年度改定は、診療報酬・介護報酬の同時改定、さらに障害福祉サービス等報酬も含めたトリプル改定でもあり、中医協、社会保障審議会・介護給付費分科会のメンバーによる「2024年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」を開き、各報酬の対象者が今後直面すると考えられる課題として以下のテーマを議題に取り上げ意見交換を行う。①地域包括ケアのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携、②高齢者施設・障害者施設等における医療、③認知症、④リハビリテーション・口腔・栄養、⑤人生の最終段階における医療・介護、⑥訪問看護、⑦薬剤管理、⑧その他。課題や方向性を確認し、改定方針は決定せず、改定論議は中医協、介護給付費分科会でそれぞれ実施する。
一方、「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」について取りまとめを進めている厚労省の医療介護総合確保促進会議(座長:田中 滋埼玉県立大学理事長)は2月16日の会議で、医療計画・介護保険事業計画(市町村が作成)・介護保険事業支援計画(都道府県が作成)の上位指針となる「総合確保方針」について、2025年から先を見据えた内容に見直すため、2022年度内に告示改正を目指すことを決めた(図2 (参考)今後のスケジュール:2月16日開催第19回医療介護総合確保促進会議 資料1)。
医療介護総合確保促進会議では総合確保方針の見直しに関して、2025年から先の「生産年齢人口の減少加速」を踏まえ、総合確保方針の基本的方向性として次のように見直すことにした。①「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築、②サービス提供人材の確保と働き方改革、③限りある資源の効率的かつ効果的な活用、④デジタル化・データヘルスの推進、⑤地域共生社会の実現-の5本柱。
中医協での2024年度改定に向けた本格的な議論は4月以降に始まる。前回の2018年度診療報酬・介護報酬同時改定では中医協と介護給付費分科会の意見交換会が2回、リハビリ・訪問看護・看取りをテーマに行われたが、今回は3回に増え検討内容も拡充し実施されることから、2024年度トリプル改定では、少子高齢化、生産年齢人口の減少が進む中で、医療・介護提供体制を維持するため、医療・介護連携が一層重視されそうだ。
春めいてきた。縦に長い日本列島。
北は北海道から南は沖縄まで、最低気温・最高気温は様々あれど、それでも確実に春の息吹を感じることが出来る時期となった。
どうやら今年の桜の開花は例年より早くなるとのこと。桜の街路樹を遠目に見やる。
当然花は咲いていないが、真冬の頃からは明らかにその枝の先々に蕾がつぼんで、まだ「枝」でありながらも、寒々しさとは異なる、生命の息吹を感じる。
春めいてきた。
先日、娘とともに、鬼を倒すのがテーマの大人気アニメ映画を観てきた(※1)。筆者は正直言ってあまり話の筋を知らないのだが、社会現象となるほどの話題性だ。満員である。小学生の娘が観たい、というのも無理はない。Web予約をして映画館に向かった。しかしながら、とんでもない車の渋滞で、チケットの予約時間を完全に見誤ってしまった。
現在上映しているのは3話構成で、遊郭を舞台とした「遊郭編」の最後の2話と、新シリーズである「刀鍛冶の里編(だったか?)」の第1話が同時の3本上映だ。やっとの思いで渋滞を抜け、大型ショッピングモールの駐車場の、結構奥に車を止めさせられ、ようやく席に着いたらクライマックス終盤もいいところ、鬼の首が二つ並んでいた。とにかく悪が倒された。それしか分からなかった。ただ、このアニメが人気なのは、悪には悪の置かれた背景が子細に描写されているところなのだろう。悪が倒れてめでたしめでたし、といったはずが、観るものに一抹の悲しさも思わせる。何とも心憎い演出である。
映画の話で始まったが、この映画は3本立てであった。
世の中には、なぜか3つセットで成り立つものの何と多き事か。
ハンバーガーチェーンのセットメニュー(ハンバーガー・ポテト・ドリンク)
色の3原色(赤・青・黄)
光の3原色(赤・青・緑)
麻雀の面子(刻子・順子)
キャンディーズ
良い子・悪い子・普通の子(欽ドン)
3時のヒロイン
たのきんトリオ
少年隊(ジャニーズ)
シブがき隊
評価の最上級(AAA:トリプルエー)
インド映画の大ヒット作(RRR)
特撮ヒーロー、トリプルファイター
松・竹・梅
うどんチェーンでトリプルでもシングルでも同一料金
フィギアスケートのトリプルジャンプ
などなど。
三つ揃い、いわゆる「トリプル」に因んでみたが、今回は、医療・介護・障害福祉の2024年度「トリプル改定」に向けた議論がいよいよスタートした、というのがテーマである。
コメントを紹介したい。
〇加藤厚労大臣:診療報酬改定DXに期待
2024年度診療報酬・介護報酬同時改定では、診療報酬や診療報酬改定にかかわる作業をDX化させることで大幅な効率化を行い、システムエンジニアの有効活用や費用削減を目指す「診療報酬改定DX」の活用が注目される。2022年12月22日に開かれた「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームの第2回会合で、加藤勝信厚生労働大臣は「診療報酬改定DX」について、「推進チームの診療報酬改定DXタスクフォースの報告によると、各ベンダーがそれぞれ行っている作業を1つにまとめる観点から、診療報酬算定・患者の窓口負担金計算を行うための全国統一の共通的な電子計算プログラムである共通算定モジュールの開発がかなり進んでいることがわかった。支払基金の資産である電子点数表を有効に活用することが、効率的な開発につながると期待できる」と述べた。
以前も触れた「共通算定モジュール」、期待大なのだろうか?10月に聞いた内容とさして変わっていないような気もするが…。
「かなり進んでいる」
この部分だけは追加されたと思う。やはりこれは診療報酬DXにおいては「期待大」として良いのだろう。
続いてはこんなコメントだ。
〇厚労省保険局医療課長:医療に “生活者の視点”、介護に“医療の視点”を入れた見直しを
保険局医療課の眞鍋馨課長は中医協等で、2024年度トリプル改定について、慢性期や在宅医療など課題も多く残されている。特に医療と介護両方を要する方に対して、必要なサービスが途切れることなく提供できる仕組みが求められている。医療に“生活者の視点”、介護に“医療の視点”を入れた見直しを進めたいなど、と説明した。
医療に対する財源、介護に対する財源、それぞれ規模と出自が異なることが大きな問題。医療側からの介護に対する歩み寄り、介護側からの医療に対する歩み寄り、これらが上手く成立するために、トリプル改定ではどのような点数誘導が図られるのだろうか。介護現場の処遇改善の道筋はいろいろあるがつけられた。看護の処遇改善の道筋は、首相肝いりで準備された。
介護現場における医療スタッフの収入に関してはともかく、
医療現場の介護スタッフの処遇改善、
この財源をどうするのか、介護スタッフが介護では収入増となる可能性はあっても、医療では収入増となる可能性が少ない、というのであれば、不公平だ、そんな議論もある。とても重要な課題となりそうだ。
今度は「医師の働き方改革」に関するコメントだ。
〇病院経営層:医師の働き方改革では、医師確保に伴う給与を配慮した診療報酬改定を
2024年度改定とともに、医師の時間外・休日労働に上限規制をはじめとする医師の働き方改革もスタートする。既に制度開始を見据えて多くの医療機関が宿日直許可を取得する動きがみられる。そこで課題となるのは、医師確保に伴う給与である。2次救急で夜間に患者を受けて当直勤務を時間外でさせた場合、地域によっては1晩で医師1人に支払う給与は約20万円といわれる。とてもこのような当直料は払えない。医師の働き方改革を進めるための診療報酬上の評価をしないと、地域で2次救急を担う病院の経営はますます厳しくなり、撤退する病院が増えることが懸念される。
…ですね。看護スタッフに対する収入増の道筋はつけられ、医療の財源の全体量は変わらず、薬価は下がる。薬価が下がった財源は医療だけに回ってこない。もし、この構図が変わらないとするならば、このコメントどおりの「撤退」が増えていくのだろうか。
撤退など、誰も望んでいないというのに。
医師のコメントを紹介したい。
【医科医師】
〇介護の視点や知識を持つ医師が必要に
現在多くの人が医療保険と介護保険を同時に利用しているが、医療側、介護側が別々の立場で対応すると連携がスムーズに進まない。ポスト2025年を見据え、診療報酬・介護報酬の同時改定となる2024年
【歯科医師】
〇保険診療で収益性が高い歯周病治療や訪問歯科も将来的にはどこかで梯子を外される
2024年度改定に向けてまず取り組むべきなのが、保険診療部分の生産性向上である。歯冠修復及び欠損補綴における平均点数は下がり続けており、保険診療においても収益性の良い部分の治療のウエイトを増やしていく必要がある。保険診療において今は収益性が高い歯周病治療や訪問歯科であっても将来的にはどこかで梯子を外される。これからは医療も介護も病気を改善する効果が高いことを科学的に証明できない治療法は保険収載が困難になっていくとみられる。
医科も歯科も、連携の重要性は充分ご認識いただいているようである。
今度は看護師のコメントだ。
〇国の財政支出がかさむ中、2024年度改定でも看護職員処遇改善が継続されるのか心配
2022年10月から看護職員の処遇改善として収入を3%程度(月額1万2000円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みとして、「看護職員処遇改善評価料」が新設された。岸田内閣は、今後も継続的な給料アップを図りたいと述べているが、防衛予算増額やこども関係予算の増額など、次々と国の財政支出が明らかになっている。果たして2024年度トリプル改定で看護職員の処遇改善が継続されるのか心配だ。
看護師はその数において、医療における最大勢力だ。折角つけられた道筋が、梯子を外されてはたまったものではない。心配はごもっともだ。首相の肝いり政策は、首相が変わってしまえば、肝いりの方向が変わってもおかしくはない。今のところ、首相が交代する、などという政局にはなっていない…。
介護側のコメントだ。
〇介護施設経営者:12年ぶりに創設される新しい「複合型サービス」指定基準の行方が気になる
2025年以降、後期高齢者が急増する都市部では介護ニーズが急拡大する一方、訪問介護を中心に担い手不足が深刻化する。ホームヘルパーは高齢化などで担い手が減っており、地域の介護提供体制の持続可能性への影響が懸念される。その対策として注目されるのが、2012年度の看護小規模多機能型居宅介護の導入から12年ぶりに創設される新しい「複合型サービス」である。新しい複合型サービスの指定基準や介護報酬の内容を検討する社会保障審議会・介護給付費分科会の議論の行方が気になる。
2022年1月31日時点の看多機(看護小規模多機能型居宅介護)事業者の事業所素総数は、795 だ。
障害福祉系施設のコメントも紹介したい。
〇障害福祉系施設経営者:口腔衛生管理、摂食・嚥下等の口腔機能維持の取組を評価する改定が行われると期待
医療・介護分野以上に、障害福祉の分野では食べる喜び、話す楽しみ等の生活の質の向上を図るためには、口腔機能の維持・向上が重要であること等が指摘されている。2024年度トリプル改定では、口腔衛生管理及び摂食・嚥下等の口腔機能の維持等の取組を評価する改定が行われることが期待される。
「食べる喜び」、「話す楽しみ」、味覚を知った生物である人間、言葉を持った生物である人間、他の生物と決定的に異なる人間ならではの感情だ。人間である以上、食べる喜び、話す楽しみはどんな場においても必要な要素だ。
今度は薬剤師のコメントだ。
〇日薬副会長:高齢者施設等での薬剤管理の議論に期待
2024年度トリプル改定に向けた意見交換会では、高齢者施設等での薬剤管理についても議論する。中医協で日本薬剤師会の森昌平副会長は、多様な施設で生活する高齢者が近年増加しており、施設入所者への訪問薬剤管理指導も増加していることに触れ、「施設では施設の特性に合わせて、薬局薬剤師が施設スタッフと密に連携し、本人の生活状況、服薬状況、状態の変化等の情報を収集し、医師、施設スタッフと連携した服薬支援や薬学管理が重要となる」と述べ、意見交換会で薬剤管理の議論を行うことに期待を寄せた。
医療と介護の連携だけでなく、医療と薬剤、介護と薬剤、当然のことだが、連携には、数多くの登場人物が存在し、有機的結合をはかることが期待されている。
最後にこんなコメントを紹介して締め括りとしたい。
〇医業系コンサルタント:トリプル改定を契機に病院再編が進み、民間病院は淘汰の時代に
2024年度に予定されている各種医療制度改正、報酬改定により、「ポスト2025年」の2040年を見据えた医療提供体制に大きくかじが切られる。人口減少など地域の医療需要の変化、制度改正の方向性を把握し、柔軟な姿勢で病院経営に取り組まなければ民間病院は淘汰される時代がやって来る。
医療費・介護費のトータル、年金も含めて社会保障費は増加の一途、患者・利用者、それに関わるスタッフの数も増加の一途。
薬剤費はトータルではあまり上がらず、看護師の処遇は改善、介護スタッフの処遇も改善、保育士の処遇も改善、そんな中で生産年齢人口と、これから生産年齢人口に差し掛かる社会の担い手はこれから増えない、どころか減少することが見えてしまっている。
これらの条件から導き出せる答えは、自ずと見えてくる。
医業系コンサルタントのコメントは、そんな未来を予見しているのか?
トリプル改定がもたらす未来。今を生きる我々にとって、そう遠くない未来である。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
※1…筆者の記憶と独断で例えるなら、現代に蘇った、ギャグ要素もふんだんに織り込まれた「和風 聖闘士星矢」、前作の無限列車編を観てそんな印象を受けた。
少年ジャンプ の王道漫画だ。
<筆者>
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