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564号 2016年度診療報酬改定の基本方針で厚労省案が提示 診療報酬改定で病床機能の分化・連携など医療提供体制改革
2015年10月15日
■厚労省、「病床機能の分化・連携」など診療報酬改定のたたき台を提示
来年4月の平成28年度診療報酬改定に向けた論議が活発になってきた。厚生労働省・社会保障審議会の医療保険部会と医療部会が9月11日と16日にそれぞれ開催。厚労省から、「次期診療報酬改定の基本方針の検討について(改定に当たっての基本認識と基本的視点と具体的方向性)」 (図1)と「医療提供体制改革の観点からの主な論点について(たたき台)」(図2)が示された。
医療保険部会に示された「次期診療報酬改定の基本方針の検討について」は、社会保障審議会で「診療報酬改定の基本方針」策定が始まった平成18年度改定から前回改定の26年度まで5回の「重点課題」「改定の視点」を踏まえて、平成28年度改定の基本認識、基本的視点と具体的方向性について提示。社会保障費適正化に向けた施策、外来医療の機能分化やいわゆる門前薬局の見直し、在宅医療・訪問看護の確保など厚労省案が示された。
また、9月16日の医療部会に示された「 医療提供体制改革の観点からの主な論点について(たたき台)」では、医療需要の変化への対応、医療従事者の確保、質の高い医療の効率的な提供、医薬品・医療機器の産業振興の大きく4つに分類。厚労省の担当者は、この「4つの視点」のうち「医療需要の変化への対応」では、「病床機能の分化・連携」が2025年までの最重要課題であると説明した。さらに担当者は、今年4月からの地域医療構想の策定、医療安全管理体制の向上の関連では、今年10月から施行される医療事故調査制度、臨床研究中核病院の指定などが2014年の医療法改正を受けて諸制度がスタートしており、それらに対してどう診療報酬改定で対応するかが課題であると強調している。
部会の委員からは特に異論はなかったが、次期改定に向けて地域の人口減少や少子高齢化、終末期の看取りや救急医療、調剤報酬のあり方などに関して問題意識が示された。また、次期改定で見直しが必至の調剤報酬に関しては、部会委員の森日本薬剤師会副会長が改定の検討項目にあげられている「かかりつけ薬剤師・薬局」について、一元的で継続的な患者指導や薬剤管理、後発医薬品の使用促進に向けた取り組みを強調した上で、診療報酬改定での評価を求めた。これに対して、支払側の白川健康保険組合連合会副会長は、「医薬分業で果たす薬局の役割は不十分だ。ただ単に点数を付けるためのレセプト記載はやめるべきだ」などと厳しい意見が出された。
社会保障審議会では、医療部会で示された「論点のたたき台」と、医療保険部会にも提示した次期改定に向けた基本認識・改定の基本的視点を反映させた「基本方針」として一本化し、論議することになった。
■基本方針の策定など早まる診療報酬改定のスケジュール
9月16日の医療部会では、厚労省から平成28年度診療報酬改定のスケジュール案(図3)が示された。
前回の平成26年度改定に比べ、改定の「基本方針」策定が早くて11月下旬と例年より半月余り早まっている。このため、改定の参考となる中医協・医療経済実態調査の結果報告も約1カ月早まることになり、社保審や中医協など関係審議会・分科会での議論もスピードアップされることになりそうだ。 診療報酬改定の流れ(図4)は、2004年の日本歯科医師連盟による診療報酬を巡る汚職事件を契機に、中医協から改定率の権限が離れ、改定の「基本方針」ついては、厚労省の社会保障審議会で論議することになった。また、改定率は、内閣が予算編成過程を通じて決定。改定の基本方針、改定率の決定を受けて、例年年明けから、中医協で具体的な診療報酬点数の設定等に係る審議を行い、2月中に中医協が厚生労働大臣に対して答申を行い、3月中に改定内容が官報告示、4月1日から改定が実施されるスケジュールとなっている。
ところで、厚労省は9月3日、2014年度の概算医療費の集計結果を発表。総額約40.0兆円(39.9556兆円)と前年度に比べ約0.7兆円増加し、過去最高額を12年連続で更新。ついに「医療費40兆円時代」に突入することになった。また、一人当たり医療費も31.4万円と2.0%増え、過去最高を更新した。「医療費40兆円時代」を迎える中、次期診療報酬改定を巡っては、既に財務省の財政制度等審議会財政制度分科会が今年春に「マイナス改定の必要性」を主張しており、内閣による年末の診療報酬改定率の決定に向けて関係者の厳しい攻防が予想される。
診療報酬改定に関する各界のコメント
<厚労省・医療介護連携政策課長「診療報酬と医療介護総合確保基金の役割分担を進め、医療体制を再構築」>
「診療報酬と並ぶ財政支援ツールである『医療介護総合確保基金』との役割分担をどう考えていくかがポイント。両者を生かして医療体制を再構築したい」と16日の医療部会で説明したのが、厚労省保険局医療介護連携政策課の渡辺由美子課長。
医療介護総合確保基金は、2014年6月から順次施行されている「医療介護総合確保推進法」で規定されたもので、「新たな財政支援」制度と呼ばれている。財政規模は、2014年度904億円(医療分のみ)、2015年度1628億円(医療分904億円/介護分724億円)で、医療分は次の3事業に充てられている。①病床の機能分化・連携、②居宅などにおける医療の提供、③医療従事者の確保・養成。
<患者団体代表「診療報酬改定で医療安全管理体制充実を」>
患者の立場から、「診療報酬改定で医療安全管理体制を充実すべき」と主張するのが、社会保障審議会の委員でもある山口育子氏(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)。医療安全管理を巡っては、今年10月から医療事故調査制度がスタートする。群馬大学病院の腹腔鏡手術問題にみられるように、大学病院ですら医療安全に関する意識・取り組みにバラツキがみられる。同氏は、「診療報酬で評価するとともに、要件をきちんと設定して医療機関の医療安全管理体制を充実して欲しい」と強調する。
<医療ジャーナリストのコメント「メリハリがきいた改定」>
検討会座長代理の田中慶應義塾大学名誉教授は、「介護療養病床から老健施設への転換を進めているが、今から振り返ると、老健施設は在宅復帰を目指す施設だが、介護療養に入院する患者の多くは死亡退院しており、患者像が大きく異なっている。老健施設以外の複数の転換先を考える必要がある」と指摘している。
【厚労省のある関係者】
「マイナス改定は避けられない」
財務省の財政制度等審議会は9月30日開いた会合で、来年度予算編成に向けた議論を開始。2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する政府目標の達成には、社会保障費を中心とした歳出改革に着実に取り組むことが不可欠との意見が相次いだ。
既に政府は2016~2018年度を集中改革期間と位置づけ、社会保障費を3年間で1.5兆円に抑制することを明らかにしている。単純計算すれば、1年間に5000億円程度に抑える必要がある。概算要求時点では6700億円を超える増額要求をしており、改定率が決まる年末の予算編成で社会保障費の抑制は必至。
改定に携わる厚労省の関係者は「診療報酬の大幅なマイナス改定は避けられないのではないか」と厳しい見立てだ。
事務局のひとりごと
今回のテーマは、No.‐564、565 ともに診療報酬改定に関するテーマだが、内容としては「マイナス改定」、「病床機能の分化・連携」、「調剤報酬の見直し」、これがテーマとなっているのは、本文をご覧いただいたとおりだ。診療報酬については議論が始まる前から「マイナス」という言葉が多用されている。
そんなさなか、第3次安倍改造内閣においては50年後も人口1億人を維持する「1億総活躍社会」実現に向け、「1億総活躍大臣」が誕生した。「強い経済」「子育て支援」「社会保障」がテーマとされているが、なんとなく裏腹な感じがする。 第二次ベビーブーム世代が40代に差しかかった現在、パイが少ない中で特殊合計出生率向上実現は、並大抵のことではない。これから子を持つ新婚世代は、最低でも3人の子どもをもうけなければ追いつかないだろう。母子の健康状態を鑑みるに、そのために初産は、できれば20代前半での出産が望ましいのかもしれない。
ということは社会人として世に巣立ったばかりの成人は、大学を出たらすぐにでも結婚してもらわなければ間に合わない。収入とのバランス、子の面倒をだれが見るのか、親だって現役世代だ。保育所不足、教育への投資、教育には湯水のような投資が必要だ(※1)。
子の世代の世話に追われる大人たち、結果としての社会機能の停滞、もはや大都市指向型社会のような現代においては不可能とすら思われることばかりだ。日本の人口の約半数は関東圏に集中しているのだ。これは首都圏一極集中を是正しなければ無理な話ではないのか。「一億総活躍国民会議」というのは、つまりそういったことを議論する会議なのだろうか。
「活躍」というのは、デジタル大辞泉によると、“めざましく活動すること”なのだそうだ。現内閣が目指そうとしている以上、あと何十年後にそうなるというより、今から全人口の方々に活躍していただこう、ということを考えていかねばならないのだろう。 筆者には「みんな”最期まで”働こう」と言っているように聞こえる。しかしながら、「働こう」とは言っていても、「稼げる社会にしよう」とは聞こえなかった。 「お互いが助け合って何でも金、金ではない。収入のことはさておいて、それでも社会のために全員が貢献する社会を目指しましょう。」この言葉を最初に耳にしたとき、筆者はそう捉えてしまった。 これから明確になっていくであろう「一億総活躍社会」の姿。果たしてどんな姿が待ち受けているのだろうか。 終わりに、たまたま色々な方々から示唆に富んだメールを頂戴するのだが、「一億総活躍社会」という言葉を聞いたあと(聞いてしまったあと)、この詩を読んで、なぜかこちらの方が心に突き刺さったので紹介したい。 —————————————————————————————
「あとからくる者のために」という詩 あとから来る者のために田畑を耕し 種を用意しておくのだ 山を 川を 海を きれいにしておくのだ ああ あとから来る者のために 苦労をし 我慢をし みなそれぞれの力を傾けるのだ あとからあとからついてくる あの可愛い者たちのために みなそれぞれ 自分にできるなにかをしてゆくのだ (坂村真民氏(※2)『念に生きる』より)
————————————————————————————— ※1…遠い(?)将来、2040年問題が終わりにさしかかれば、保育・教育産業が成長産業になり、反対に医療・介護は斜陽産業になるのかもしれない。
※2…坂村真民(さかむら しんみん、1909年1月6日 – 2006年12月11日)は、日本の仏教 詩人。本名昂(たかし)。一遍の生き方に共感し、癒しの詩人と言われる。
(ウィキペディアより引用)
<ワタキューメディカルニュース事務局>
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