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567号 厚労省、高齢者のフレイル(虚弱)対策で専門職による相談・訪問指導などモデル事業

2015年11月15日

 

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フレイル(虚弱)を経て要介護に陥る高齢者が多い

 

 厚生労働省は10月2日開催された社会保障審議会・医療保険部会に、高齢者のフレイル(虚弱)対策に向けて、2016年度から栄養、口腔、服薬などの面から、高齢者の特性にあった保健事業として、管理栄養士・看護師など専門職による相談・訪問指導など行うモデル事業を実施することを報告した。

 高齢者、とくに75歳以上の後期高齢者では受診回数や入院日数が長く、医療費の高騰に大きな影響を及ぼしている。今後、高齢化がさらに進展する中では、後期高齢者の健康を守るための疾病予防や介護予防がこれまで以上に重要になっている。また、塩崎厚生労働大臣も、経済財政諮問会議で、①高齢者のフレイルに対する総合的対策、②「見える化」などによる介護予防などのさらなる促進、③高齢者の肺炎予防の推進、④認知症総合戦略(新オレンジプラン)の推進、などに取り組む考えを表明している。

 フレイル(虚弱)とは、厚労省は「加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や認知機能など)が低下し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの危険性が高くなった状態」と定義(図2)。フレイルを経て要介護状態に陥る高齢者が多いことから、総合的なフレイル対策が迫られていた。

 

フレイル対策の一環で「高齢者の低栄養防止・重症化予防」に10.7億円予算要求

 

 これら動向を踏まえ、厚労省は2016年度予算で、フレイル対策の一環として「高齢者の低栄養防止・重症化予防」などの推進に10億7000万円を要求する考えだ(図3)。

 

 具体的には、次の取り組みを行う。①低栄養、筋量低下などによる心身機能の低下を予防し、生活習慣病などの重症化を予防するために、高齢者の特性を踏まえた保健指導などの実施。②後期高齢者医療広域連合(75歳以上の後期高齢者の医療保険者)において地域の実情に応じて、地域包括支援センター・保健センター・訪問看護ステーション・薬局などを活用して課題に応じた専門職(管理栄養士、歯科衛生士、薬剤師、保健婦など)が対応の必要性が高い後期高齢者に対して相談や訪問指導などを実施する。専門職による相談・訪問指導では、低栄養・過体重に対する栄養相談・指導、摂食などの口腔機能低下に関する相談・指導、複数受診などにより服用する医薬品が多い場合における服薬相談・指導などが行われる。

 専門職による相談・訪問指導はモデル事業で実施されるが、厚労省は、その効果を検証した上で、2018年度から本格実施したい考えだ。

◎フレイル対策に関する関係団体の動き

日本慢性期医療協会高齢者の栄養、口腔指導は重要」>

 日本慢性期医療協会が10月8日に発表した調査で、中枢神経疾患などの患者に対して、言語聴覚士が積極的な摂食嚥下訓練を行うことで、経口摂取率が約6倍に向上することを明らかになった。同協会では、在宅復帰で最優先すべきは「食事・排泄訓練である」と強調。高齢者の栄養、口腔指導は重要と指摘。

 同協会会長の武久洋三氏は、「急性期から療養病棟へ転棟してきた患者の中には、非常に栄養状態の低い患者がおり、その場合、褥瘡などの発生リスクが高くなる。急性期病棟では一般に臓器別の専門的治療が行われるが、高齢者の全身状態を把握し、栄養状態を管理するような視点も重要だ」とコメントしている。

 

<「日本サルコペニア・フレイル研究会」が設立>

 昨年2月には、老年医学研究者の呼びかけで、内科学、整形外科学、栄養学、代謝学、リハビリテーション医学、歯科・口腔外科学など多くの臨床・基礎研究分野におけるフレイル、サルコペニア(進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群)に関する研究の発展を目指すための「日本サルコペニア・フレイル研究会」(代表世話人=荒井秀典・国立研究開発法人国立長寿医療研究センター副院長)が設立。医師のみならず、管理栄養士、療法士、看護師、薬剤師、社会福祉士など様々な医療・介護専門職及び基礎医学分野の研究者との交流の場として活動が期待される

○介護ジャーナリストのコメント:「介護予防事業」と「フレイル対策」との違い

 介護予防事業とフレイル対策。「高齢者が要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止」という視点では、両者が目指す方向は同じと言える。

 ただフレイル対策には介護予防対策より一歩踏み込んだ考え方があるようだ。日本老年医学会でフレイルの提言作成に関わった虎の門病院の大内尉義院長は、「“老衰”や“虚弱”には、元に戻らない印象があるが、フレイルにはなりかけても元に戻るという“予防”の意味がある」など解説。つまり、フレイル対策を進めることで高齢者の心身の機能の回復が期待されるのではないか。

○スポーツクラブで見受ける「フレイルをモノともしない」元気な高齢者

 フレイルの診断基準には、5つの項目がある。① 体重減少 (1年で体重が4.5kg以上、自然に減少)、② 疲労感、③筋力の低下、④ 歩行スピードが遅い、⑤身体活動が低い。このうち3つ以上の項目があてはまると、フレイルと診断される。

 ところが、昼間の都市近郊のスポーツクラブを覗くと、「フレイルと何だい?」と軽口をたたくほど、元気な高齢者が多数見受けられる。かえって現役のサラリーマンの多くにフレイルと診断される人の方が多いのでは…。

事務局のひとりごと

 

「フレイル(高齢者の虚弱)」という言葉を耳にされた方はどれだけいることだろうか。本年5月に日本老年医学会により提唱された定義だそうだ。

今これを読んでいるあなた、今からフレイルかどうか、チェックしてみませんか。3つ以上当てはまったら、あなたは「フレイル」なのかもしれない!?

 

①体重が減った (1年で体重が4.5kg以上、自然に減少)。
②疲労感を感じることがある。
③筋力が低下したと思う。
④歩くスピードが遅くなってしまった。
⑤身体活動が低くなったと思う。

 

 本文内のコメントにもあったように、現役世代でも多くのサラリーマンに「フレイル」の可能性が高いのかもしれない、と一目見るとそう感じる。1つや2つは当てはまることがあってドキッとされた方もおられるのではないだろうか。サラリーマンで“②”を感じない方を探すほうが困難だ。③もそうかもしれない。

 しかしながら、残る3つ目が該当するとなると、それはよほど動かないか、何も食べないか、生活意欲がなくならなければ、サラリーマンなどの現役世代におけるフレイルはなかなかなりそうもないということも分かる。

 健康寿命と平均寿命の間にあるといわれている約10年間。健康と要介護状態との狭間であるこの「フレイル」、どちらに転ぶかは人それぞれのバイタリティ、生きがいなどと深く関わっていくのではないか
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 今、超高齢社会における財政難を背景に、外科的手術を行うことなく心臓が若返るという夢の医療法と、実はその医療法に隠された副作用(心臓が活性化を取り戻してしばらくすると心臓が破裂してしまう)を利用して多くの高齢者をPPK(ピンピンコロリ、番組ではPPP:ピンピンポックリ)でお亡くなりいただこうと画策(「プロジェクト天寿」)する役人(国民生活省)と主人公である心臓外科医の間で繰り広げられる、現代日本の医療費増問題に一石を投じるテーマで、NHKの連続ドラマ、「破裂」が放映されている(※1)。


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 ドラマはドラマとしても、生涯医療費の平均が約2,500万円(平成23年度)の内、さらに生涯医療費の約半分は70歳以上で使用するというのが日本の医療費の特徴である。そこにかかるお金を少しでも減らすのが予防であり、今回の“高齢者のフレイル対策”だ。本当にドラマのようなお役人が出てくる前に(ただ、医療費増の状況が明々白々なだけに、実際にそんなことを考えているお役人がいないとも限らないが)、この対策が好転するような動きを、高齢者ご自身も含め、社会全体で取り組む必要があるだろう。

 筋力を維持してバランスのとれた栄養を摂取し、生きがいを忘れず、人と関わりあうことを止めない

 たったそれだけのことがいかに難しいことか。現代社会の複雑さと、そして何にでも新しい定義が作られてしまう現代人のネーミングセンス について考えさせられるテーマであった。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

※1…毎週土曜日22:00より、NHK総合(全7回)。11/21が最終回。すでに今回のWMNが更新されている頃には6回目の放映が終了している。原作は久坂部羊の小説「破裂」。

 

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