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No.640 2018年度改定「追い風」に、地域包括ケア病棟・病床は2262病院・7万4600床に
2018年11月15日
■2018年度改定の入院料の再編・統合が、地域包括ケア病棟に「追い風」
2014年度診療報酬改定で地域包括ケア病棟(病床)が創設されて4年余りとなる。地域包括ケア病棟の役割を評価する点数設定が行われた2018年度診療報酬の入院料の再編・統合を「追い風」に、2018年9月20日時点で地域包括ケア病棟算定病院は2262病院・7万4600床に達した(図4 地域包括ケア病棟算定病院は2262病院に)。
2018年度診療報酬改定では、入院料の再編・統合が行われ、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料について、①200床未満の病院に設置され、診療実績が高い病棟(自宅等から入棟患者割合が10%以上、自宅等からの緊急患者受け入れ件数が3カ月で3人以上、在宅医療の提供など)については、高額の基本報酬を設定(入院料1・3)、②「救急・在宅等支援病床初期加算(1日につき150点)」を、急性期病棟からの患者受け入れを評価する「急性期患者支援病床初期加算(1日につき150点)」と、在宅や老健施設・介護医療院などからの患者受け入れ、治療方針に関する患者・家族等の意思決定を支援することを評価する「在宅患者支援病床初期加算(1日につき300点)」に区分する、③在宅復帰先から老人保健施設を除外するなど、地域包括ケア病棟の役割を評価する点数設定が行われた(図5 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の再編・統合のイメージ)。
■質の低下が懸念される200床以上の急性期ケアミクス型の地域包括ケア病棟
地域包括ケア病棟の役割について厚労省は、①急性期治療を経過した患者の受け入れ、②在宅で療養を行っている患者等の受け入れ、③在宅患者支援-をあげている。一方、2014年に設立された地域包括ケア病棟協会(仲井培雄会長)では、地域包括ケア病棟について独自に、「ポストアキュート機能(PA)」「サブアキュート機能(SA)周辺機能・緊急」「周辺機能・その他(予定入院)」「在宅・生活支援復帰機能」の4つの病棟機能に分類している(図6 地域包括ケア病棟の役割と4つの病棟機能との整合性)。
2018年度改定で注目されている地域包括ケア病棟だが、質の向上が課題となっている。地域包括ケア病棟協会の調査によると、急性期ケアミクス型では、200床以上の病院が40%強と多く、また「自院の高度急性期・急性期病棟での治療を終えた患者」が大半を占めているため、2018年度改定の「入院料1・3」を取得または取得予定の病院は46.8%と半数に届かない。さらに「在宅患者支援病床初期加算」を取得していない場合には、「在宅復帰支援・在宅医療提供などの実態が見えず、ポストアキュート機能に関する検証が行われず、結果として地域包括ケア病棟の機能、質の低下が懸念される」と仲井会長は指摘する。
急性期ケアミクス型では、地域の急性期基幹病院で旧7対1(現行の急性期一般入院料1)を維持するため重症度、医療・看護必要度の低くなった患者を回復期機能等の他院に転院させたいが、地域の医療資源が少ないため転院がままならないため、自院の急性期病棟の一部を地域包括ケア病棟に転換した病院が多く、新設の入院料1・3による経営的メリットは低い。
この点について仲井会長は、「200床以上が40%強を占める急性期ケアミクス型では、在宅支援機能と自院での急性期後を担う病院が混在しているのではないか」と分析。「地域包括ケア病棟の質向上を目的に、急性期ケアミクス型の亜分類を調査検討し、全ての病院機能について、特に200床以上400床未満の病院と、400床以上の病院における地域包括ケアに関する実績とポストアキュートの質評価について検討すべきではないか」と述べ、厚労省に対しても提言を行ったことを明らかにした。
【事務局のひとりごと】
ひろし君は2,080円、けんじ君は480円持っていました。お母さんから同じ金額をもらったところ、2人の持っている金額の比は9:5になりました。お母さんからもらった金額は何円ですか?(※5)
週末になると、小学校の息子から、算数で分からない問題の質問攻めに合う。比の問題は学生時分、結構苦手であった。すぐに“χ”を使って解きたくなるが、小学校は、そこは“☐”などを使う。余計にややこしい感じがするが。
賢明な読者におかれては、この程度の問題は造作もないことだろう(と思う)。筆者は息子の問題集の例文の解き方を見て、ようやく思い出した。
地域包括ケア病棟について振り返ってみる。
今を遡ること3年前、2015年6月10日、厚生労働省が中医協総会に報告したデータによれば、当時4月時点の届け出施設数が約1170施設、届け出病床数は3万1700床に達したという。2014年10月時点の約920施設・2万4600床に対し、施設数は約250施設増、初めて1000施設を突破した。特に、7対1・10対1一般病棟入院基本料と亜急性期入院医療管理料からの転換が9割以上を占めていた。届け出を行った医療機関の病床規模については、100~200床の医療機関が過半数を占める一方、200床以上の医療機関も一定程度存在していた(※7)。
本文によれば、2018年9月20日時点で地域包括ケア病棟算定病院は2262病院・7万4600床に達したという。
つまり、比であらわすとこうなるだろうか。
2014年:2015年:2018年
920施設:1,170施設:2,262施設
24,600床:31,700床:74,600床
4年間で施設数は2.4倍、病床数は300%増となったわけである。
コメントを紹介したい。
○医業コンサルタント:「急性期病院からの紹介に頼らない地域包括ケア病棟の運営を」
200床未満の病院の地域包括ケア病棟を優遇した2018年度診療報酬改定は、地域の1つか2つの中学校区で200床未満の地域多機能型病院を中心に在宅ケアを実施し、在宅療養患者の急変時対応もして欲しいというメッセージと言える。今後は、急性期病院からの紹介だけに頼ることなく、地域で軽・中等症の急性期患者を受け入れる努力をしなければいけないと思う。
○厚労省医療課長:「地域包括ケア病棟は、面倒見の良い病院というのが本来の姿」
今年7月に開催された地域包括ケア病棟研究大会のシンポジウムで、厚労省の迫井正深医療課長(現在、大臣官房審議官)は、「地域包括ケア病棟は面倒見の良い病院というのが本来の姿。地域での生活を支える診療機能が前提の入院医療施設で、急性期と長期療養の中間に位置づけられ、2018年度改定では在宅復帰、リハビリなどの体制を評価した」などと述べている。
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地域包括ケア病棟は最大60日間、患者を入院させることが可能だ。であるので、大病院(7:1若しくは10:1算定病院)が、1~2病棟を地域包括ケア病棟に転換すると、DPCの入院期間Ⅱが終わった段階でまだ入院を必要とするような患者は、この病棟に転棟してもらった方が、経営的にも非常に良いだろう。この、自院からの転棟に対し、問題意識を持っている、ということだろう。あくまで「地域」がキーワードになっているのをあらためて認識できる。
医療機関からのコメントを紹介したい。
○民間中小病院長:「地域包括ケア病棟は、競争の時代に入った」
地域包括ケア病棟を有する日本海側の200床未満の民間病院長。地域包括ケア病棟算定病院は2262病院、7万4600床と2015年の倍以上となり、日本の病院の中で大きなポジションを占めるようになった。私の地元の済生会病院も地域包括ケア病棟を設置するなど、高度急性期病院も地域包括ケア病棟を設置する動きが活発化している。既に、地域包括ケア病棟は「競争の時代」に入り、いかに地域に密着した特色ある地域包括ケア病棟を運営するか岐路に立っている。
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高額医療機器のテーマでも触れた「激戦」が、地域包括ケア病棟でも起こっていることを物語るコメントだ。
○地域包括ケア病棟勤務の看護師:「退院後の生活を想定し、患者の生活リズムに合わせた看護が必要」
以前は急性期病棟に勤めていたが、同院で初めての地域包括ケア病棟の担当に替わった。それまで急性期病棟で患者さんの急変に対応しながら忙しく立ち働いていたが、真逆の環境となり、最初は戸惑った。以前は、絶えず時間に追われていたが、今思えば、医療側の都合だったと反省している。地域包括ケア病棟では、退院後の生活を想定し、患者さんの生活リズムに合わせて食事やトイレの介助をしていく看護が求められる。
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日本に押し寄せている少子高齢化の波は、病院に入院している患者像にも変化を及ぼしている。食事・トイレの介助は、ある意味「生活」でもあり、もちろん医療現場でも必要であることは間違いないが、一昔前は、医療よりもむしろ「介護」の現場で必要とされる行為であったはずだ。「医療」でも「介護」でもない、シームレス(段差がない)な連携、厚労省が求めているケアの姿は、名称だけでなく患者の実像を捉えて欲しい、というメッセージなのだろう。
地域包括ケア病棟と連携している医療機関からのコメントを紹介したい。
○「在宅医療の後方病床としての地域包括ケア病棟の役割」
家庭医として無床診療所で外来・訪問診療に従事してきたが、近年の病棟再編の動きの中で、在宅医療における後方病床として、また緊急時の入院に対応した地域包括ケア病棟の役割の重要性を感じている。今後も、積極的に地域包括ケア病棟を有する病院に患者さんを紹介し、連携を深めたい。
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こういう考え方が医療現場に浸透していけば、高額医療機器のテーマでも挙げたが、ある意味、地域包括ケア病棟とは、「地域」がこの病床を共同利用している姿でもあるのだろうし、本来は大病院が一部の病棟を転換することを企図してはいなかったのではないだろうか、とも考えられる。もちろん、大病院においてさまざまな病床機能を有し、一つの病院で医療を完結させようとする動きがあることも理解できるところだが。
最後に、最も重要な視点である、地域包括ケア病棟に入院した患者からのコメントを紹介して締め括りとしたい。
○「安心して療養・リハビリに専念できるようになった」
これまで入院していた急性期病院と比べれば、骨折の手術後に、リハビリの時間もないまま自宅に帰されることなく、安心して療養・リハビリに専念できるようになった。また、家族からも、自宅で療養できない病気やケガが起きた際に、緊急入院させて一時的に患者を預けることができると、地域包括ケア病棟に移って安心したと言っている。
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皆が使い勝手が良い、とされる存在であれば、この先も際限なく、とはいわないが地域包括ケア病棟は増えていくことだろう。高額医療機器のテーマの「激戦区」という言葉がちらつくが、地域の中で患者を、利用者を獲得するための施策は、国が介入しない限り果てしなく繰り広げられ、その先にはやはり「淘汰」が待っているのかもしれない…。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※6)・・・(2080+χ):(480+χ)=9:5
5(2080+χ)=9(480+χ)←☆
10,400+5χ=4,320+9χ
4χ=6,080
χ=1,520
A. お母さんから1,520円ずつもらった。
(“χ”は“☐”として息子に説明した。)
学生時分、機械的に外と外、内側と内側をかけるように覚えていたのだろうが、☆の部分がどうしても得心できていなかったことを思い出す。
<息子からの質問攻めでふらふらの筆者>
(※7)・・・地域包括ケア病棟は、「急性期からの患者の受け入れ」「在宅等からの患者の緊急時の受け入れ」「在宅への復帰支援」のおもに3つの機能を担う。
入院期間は60日以内。入院早期からの充実したリハビリや退院調整が不可欠で、円滑な退院に向けて訪問診療や訪問看護などの在宅部門の強化、連携が求められる。
2014年度改定以前は、「亜急性期病棟」が急性期からの患者を受け入れていたが、病床機能の分化、連携を進めるために、2014年度診療報酬改定において、施設基準等の厳格化により、7対1入院基本料算定施設がふるいにかけられた。亜急性期病棟の診療報酬上の評価は昨年9月末で廃止となり、その受け皿としてこの時の改定で新設されたのが、地域包括ケア病棟である。
厳格化の影響で7対1病床数は減少し始め、2014年10月には約1万4000床減の36万6200床になった。2015年6月10日に厚労省が発表した調査では、7対1病床はさらに減少、2015年4月時点で36万3900床だった。
<WMN No.561より(2015年8月号)>
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