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No.665 オンライン診療実施は、病院24.3%、診療所16.1%にとどまる。一方で患者はメリットを評価
2019年12月15日
■2018年度改定新設のオンライン診療料、届出施設と実施施設にギャップが
2018年度診療報酬改定で新設されたオンライン診療料の届出は、病院51.4%、診療所47.6%にもかかわらず、実際にオンライン診療(保険診療外も含む)を実施している施設は、病院24.3%、診療所16.1%にとどまることが明らかとなった(図1 かかりつけ医機能に関する評価等の影響調査(施設調査)の結果⑦)。
厚生労働省は11月15日開かれた中医協の総会と診療報酬改定結果検証部会で、2018年度改定の結果検証に係る特別調査「かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査」の結果を公表した。治療上の必要のためオンライン診療の対象となり得る患者がいても、「患者の希望がない」などの理由から実施していないケースも見られたが、実際にオンライン診療を受けた患者への調査では、「対面診療と比べて待ち時間が減った」などメリットをあげる患者が多かった。
調査は2019年7月から9月にかけて実施。オンライン診療料届出施設(2281施設、悉皆調査。有効回答数717施設、有効回答率31.4%)、「機能強化加算」届出施設(オンライン診療料届出以外の500施設)、同加算未届施設(同500施設)を対象とした。これらの点数の算定患者と算定しない患者への調査も実施した。
「治療上の必要性のため、オンライン診療の適用となり得るが実施していない患者」がいる施設は、病院29.7%(1施設当たり該当患者数60.6人)、診療所28.3%(同16.7人)。オンライン診療を実施しない理由としては、「患者の希望がないため」と「オンライン診療に用いる機器やシステムの導入・運用コストが高いため」が多かった。
■「対面診療と比べて待ち時間が減った」と、患者はオンライン診療を評価
オンライン診療に対する患者調査では、受診経験患者の受け止めについては、「対面診療と比べて十分な診察を受けられないと感じた(直接触って異常を見つけてもらうことができない等)」(14.9%)、「対面診療と比べて十分なコミュニケーションを取れないと感じた」(10.3%)、「映像が遅れる・声が途切れる等により診察がスムーズに進まなかった」(16.1%)、「機器や診療システムの使い方が難しかった」(14.9%)など、オンライン診療のマイナス面について「そう思う」のは1割台だった(図2 オンライン診療に関する意識調査(患者調査)の結果③)。
その一方で、「対面診療と比べて待ち時間が減った」(90.8%)、「対面診療と比べて受診する時間帯を自分の都合に合わせられた」(87.4%)、「オンライン診療の手間や費用負担に見合うメリットがあると感じた」(79.3%)など、メリットを評価する回答が多かった(図3 オンライン診療に関する意識調査(患者調査)の結果④)。
さらに、「外来その2」として生活習慣病を主な議題に開かれた11月22日の中医協総会では、厚労省から「生活習慣病管理料について、生活習慣病の重症化予防を推進する観点から、糖尿病の患者の定期的な眼科受診の必要性や患者の受診頻度、患者が受診を中断する理由を踏まえ、算定要件の見直しを検討してはどうか」との論点が示された。
これに対して、診療側からは受診間隔が長くなり長期処方が増えることで残薬が増加することの懸念が示された一方で、支払側の幸野庄司健保連理事は、「保険者として一番怖いのは重症化である。これを予防するのが大事だ」と指摘。治療の中断理由で最も多いのが「仕事のため忙しい」という厚生労働科学研究「患者データベースに基づく糖尿病の新規合併症マーカーの探索と均てん化に関する研究~合併症予防と受診中断抑止の視点から」の調査結果(図4 治療を中断した生活習慣病の外来患者数及び中断理由)をあげ、「仕事のために中断させない方法、その一つがオンラインである」とオンライン診療の活用を訴えた。
【事務局のひとりごと】
世の中に“テレビ電話”という概念が形になったものが人々の前にあらわれたのは大阪万博の頃だったか?そのテレビ電話機が発売(※1)されてそのような技術存在自体は結構浸透して久しいはずだが、ではテレビ電話機があるという家庭は、当時どれほどあったことだろう。今はSkypeを使い、パソコン上での身振り手振りのやり取りが主流だ。テレビ電話専用機というものは結局浸透していないように感じる。
また、携帯電話においては、宇多田ヒカルがCMに出ていたFOMAという機種の記憶があったが、それも果たしてどれほどのユーザーが利用していたのか。筆者もFOMAを持っていたがテレビ通話など一度もしたことがない。
一方で、“テレビ会議”というのは、結構浸透しているのではないか。使用する技術は向上し、ネット環境を使ってコストも低減され、便利に利用できるようになってきている。
それでも、テレビ会議の画像の精度で医療における診察が可能なのだろうかといえば、そこは何ともいえない。あくまで会ったことのある人が、カメラの向こうにいてその話が、通信環境を使って再現された音声で喋っているのが見えるという感じだ。表情は分かるかもしれない。また、カメラが向いているエリアの人しか見えないのも特徴だ。カメラの陰に隠れていても会議に参加することは可能だ。
コメントを紹介したい。
○禁煙オンライン診療は対面診療と比べて効果が劣らないことが学会で報告
禁煙治療は、オンライン診療に適しているといった意見がある中で、今なお対面診療による禁煙外来のみ保険適用となっており、例外的な要件(健保組合など保険者での自由診療に基づいた導入など)を除いて、喫煙者が広く利用することができない状況にある。現行の保険による対面診療の場合、3カ月に5回の通院の手間や負担は利用にあたっての障壁となっており、加熱式たばこの流行と相まって、禁煙治療の利用者数は近年減少している。
そのような中、一般社団法人CureApp Instituteは、2019年10月6日に開かれた第23回遠隔医療学会学術大会で、9~12週における継続禁煙率は、オンライン診療群が81.0%(47/58例)、対面診療群が78.9%(45/57例)と、「オンライン診療による禁煙治療プログラムは、従来の対面診療のみの禁煙治療プログラムと比較して臨床的に劣らない治療効果がみられた」と報告した。
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禁煙治療は、オンライン診療と相性の良い、代表的なものではないだろうか。筆者は煙草を吸ったことはないのだが、周りの方々を見ていると、吸ってしまうと、なかなかやめるにやめられないものなのだろうな、と感じる。
○「オンライン診療の蓄積で、医療とデータの融合。将来の病気の可能性の予測も」
医師で、スタンフォード大学でMBAを取得、米国マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社したキャリアを持ち、医療機関向けにオンライン診療サービスを提供するMICIN社を2015年創業した原 聖吾CEOは、オンライン診療による「医療とデータの融合」を強調する。
同社のオンライン診療サービス「curon(クロン)」は、1000件ほどの医療機関が導入している。原氏は、「クロンでは、従来の対面コミュニケーションで抜け落ちていた情報をデータとして蓄積できるようになる。オンライン診療サービスを通じて蓄積したデータがある程度たまり、解析できるようになると、将来は色々な予測が可能になると期待している。例えば、毎日牛乳を飲む人とそうでない人がいたとする。それぞれが20年後、どんな病気になる可能性があるのかなど、データと医療が組み合わさると、色々なことが分かる」と、オンライン診療を行う個々の医師による実臨床データ(リアルワールド・データ)の蓄積がもたらす効用について強調している。(MICIN社ホームページより)
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先進的な取り組みで、オンライン診療の将来性を予見させる。早くこのような医療現場が実現できれば良いのに、と一般的には素直に思うところだ。
だが、日本の現状はそこまでいっていないのは周知のとおりだ。
経済界からのコメントである。
○日経連など支払側「生活習慣病治療の継続に資するオンライン診療の適切な推進」を要請
日経連など支払側が11月27日、加藤勝信厚生労働大臣に提出した『令和2年度診療報酬改定に関する要請』の中で、「加入者が適切な医療を受けられる体制の確保を前提として、効率的・効果的な医療提供の促進を基本方針の軸に据えた上で、入院、外来、在宅ではそれぞれの医療機能において患者像の適切な評価の推進、また、調剤では、対物業務から対人業務への転換を薬局機能に応じた評価体系への見直しなどで患者本位の医療を実現しつつ、診療報酬全般にわたり、適正化・効率化・重点化を図っていくべきである。併せて、医薬品の適正処方に向け、有効性・安全性を前提に経済性も考慮した処方の推進策を診療報酬上で講じるべきである」と指摘。さらに、「生活習慣病治療の継続に資するオンライン診療の適切な推進を図るべきである」と、オンライン診療の推進を求めた。
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経済界としてはなかなか推進できていないオンライン診療に物申すといったところだろう。
しかし、である。こんなコメントを紹介したい。
○「保険診療だけで、オンライン診療のような新しい医療には追いつけない」
ただでさえ保険財政が厳しい保険診療だけで、オンライン診療のような新しい医療には追いついて行けない。自由診療にしないと採算が合わないのではないか。その一方で、薬の通販みたいにならないように、公的な管理は自由診療でも、必要と思う。
○「通院より診療報酬が少ない場合、オンライン診療への移行患者が増えるなど不安が多い
通院診察より診療報酬が少ない場合、オンライン診療への移行患者が増え、検査が必要な場合でもできないといった状態になるのでは。第三者による不正に薬剤(眠剤や安定剤など)をもらう行為が増え、また、診察料の未払いが増えるのではないか。不安な点は数えきれない。
○「安易なコンビニ受診の増加を助長する」
開業医。導入のみを急ぎ(過ぎではないか?)、診療報酬を見合ったものに設定しないと、本来必要な僻地・在宅医療患者よりも安易なコンビニ受診の増加を助長するのみに終わってしまう懸念がある。結果として、医療従事者の疲弊を助長する恐れがある。
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こんな現場の意見があることは大いにうなずけるところがある。考え出したらきりがないが、現場になかなか浸透しない背景であるのだろう。
というわけで、厚労省保険局からはこんなコメントだ。
○「医療機関へのアクセスによって、オンライン診療の算定要件にメリハリ」
中医協のオンライン診療を巡る論議の中で、厚労省保険局の森光敬子医療課長は、オンライン診療について「離島・へき地等の医療資源の少ない地域における利活用」と「それ以外の利活用」に分けて考えてはどうかと提案した。医療機関へのアクセスのハードルの高さが大きく異なる点を考慮し、算定要件などにメリハリをつける(離島・へき地等でのオンライン診療は要件を緩和する)ことなどが考えられる。
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まずは、医療へのアクセスに不便な患者に焦点を当てようというわけだ。禁煙治療などとは異なるが、確かに賛成を得られやすいと考えられる。
だがこんなコメントも。
○「へき地のオンライン診療で看護師が診察する可能性があり、法的整備が必要」
オンライン診療を活用したへき地医療では、医師は現地に赴かず看護師が代わりに診察する可能性がある。最終的に責任は誰が取るのか心配。きっちりとした法整備が必要である。
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看護師の立場としてはそうなってしまうのか。ある意味、これもタスク・シフティングなのだろうが、法整備が重要だ、という点においてはうなずけなくもない。提供者の視点で論じるとこのような慎重論が主流になってしまう。
一番忘れてはならないはずなのに、こういった異論では「患者の視点」は後回しになりかねないが、患者の視点のコメントをいただいた。
○「がん術後の通院でオンライン診療が活用できれば有り難い」
がん手術後、郊外から都内の専門病院に通院している。ラッシュ時に電車を乗り継いで通院するのは負担が大きく、なんとかならないかと思っていた。がんなど専門性の高い病気で、外来への通院でオンライン診療を活用すれば、がん患者の負担が軽減されるのではないか。
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患者にしてみれば、何らかの不自由があるから病院に行こうとするわけで、その中で定期的に病院に足を運ぶのは、交通費・時間・労力(待ち時間や乗り物に乗る前の徒歩等による移動も含め)、がかかるわけで、リハビリも兼ねていると言えばそうかもしれないが、これを苦痛と表現するのであれば、この苦痛から少しでも解放されるというのは素晴らしいことだと思う。素直にそのような観点に立った議論は起きないものだろうか。
最後に、海外のオンライン診療事情を調べてみた。
○米国では退役軍人の遠隔医療で、入院日数が25%減少、来院が19%減少
欧米ではオンライン診療が確実に成果をあげている。米国で最大の遠隔医療のプロバイダーとなっている退役軍人省(VA:Department of Veterans Affairs)は2003年から2007年、慢性疾患のケアや不要な医療を避けるため、テレヘルス(Telehealth=遠隔医療)プログラムを実施。退役軍人を対象に、診療所での生中継動画による診療や自宅での健康管理、ストアアンドフォワード方式(情報を中継地点で一旦蓄積して転送する方式)の医療サービスを提供している。約1万7千人を対象とした同プログラムの調査結果では、退役軍人の入院日数が25%減少、来院が19%減少するなどコストを抑えられたという。また同プログラムでは、糖尿病や慢性心不全、心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった症状をかかえる退役軍人を対象に、自宅で症状をチェックするサービスも提供されている。
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よく、日本は米国の10年うしろを歩いている、といわれる。先の議論の延長線上、10年後(2030年)の我が国は、果たしてこのようになっているのだろうか。令和2年の初夢で、オンライン診療の未来を占ってみる、なんてことには、まあ、ならないか…。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※1) …1987年、ソニーから静止画テレビ電話「みえてる」が本体価格49,800円で発売。
<ウィキペディアより>
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