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No.683 コロナに備え高齢者は早めの「人生会議」を~日本老年医学会がACP提言
2020年09月15日
■新型コロナ感染症流行を受け、「最善の医療およびケア」を人生の最終段階まで受ける権利を保障するためにACP推進を提言
新型コロナウイルス感染症に高齢者が感染し重症化すると、周囲と十分にコミュニケーションがとれなくなる可能性が高くなる。日本老年医学会は8月5日、終末期にどのような治療を受けたいのか、家族や信頼できる人とあらかじめ話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP:Advance Care Planning)」を早めに行うよう呼びかける提言を発表。①医療を受けていない高齢者においても、要介護認定を受ける頃までにはACPを開始することが望ましい、②既に介護施設に入所している高齢者においては、その施設において直ちにACPの開始を考慮すべきである-ことなどを提言した。
同学会の倫理委員会「エンドオブライフに関する小委員会」(委員長=葛谷雅文名古屋大学大学院教授)新型コロナウイルス対策チームがまとめたもので、「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行期の高齢者の医療・ケアの現状と問題点」「提言の対象と目的」「提言」「提言の解説」などで構成。「最善の医療およびケア」を人生の最終段階まで受ける権利を保障するためにACPを推進すべきであるとし、早めに本人と家族、医療従事者やケア従事者が話し合うよう求めた。患者に負担もある人工呼吸器については、治療効果を確かめながら本人の意思を尊重して使用するべきだとしている。
欧米では、感染者が爆発的に増えて人工呼吸器が不足した場合に、若い世代に優先して装置を回す方針を策定した医療機関があることも紹介。提言では、医療提供体制が厳しくなったとしても「年齢だけを基準とした優先順位付けは最大限の努力を払って避けるべきだ」と提言した。
さらに日本老年医学会は、提言の発表に際し、提言に沿ったACPは臨床現場でどのように実施されるのかを全国の医療・ケア従事者にイメージしてもらうため、「病院から在宅へのACPの実践に代弁者(妻)と移行期ケアチームが重要な役割を果たした事例」をはじめ10の事例からなる「ACP事例集」を示した。
■知名度向上のため、厚労省がACPの愛称を「人生会議」と制定
ACPは、高齢化が進み多死社会を迎える中、厚生労働省が「人生会議」の名称で普及を進めている。厚労省の「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」は2018年3月、ACPの普及・啓発の必要性などを盛り込んだ取りまとめを作成。同省はリーフレットなどでACPの普及を進めてきたが、「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針2018)」でACPの「国民になじみやすい名称の一般公募・選定」を求めるなど、知名度が低い課題があった。その後、2019年11月30日厚労省は、ACPの愛称を「人生会議」とすると発表した。愛称公募で1073件の応募の中から決まったもので、また、「いいみとり」の語呂から、毎年11月30日を、ACPについて考える「人生会議の日」に制定している(図1 ACP「人生会議」リーフレット)。
また、2018年度診療報酬改定で新設された「地域包括ケア入院医療管理料1と3」「療養病棟入院基本料」では、2018年3月に改訂された「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、看取りに対する指針を定めていること」が算定要件として盛り込まれた。新設の「在宅ターミナルケア加算」「訪問看護ターミナルケア療養費1」については、「ターミナルケアの実施については、ガイドライン等の内容を踏まえ、患者本人と話し合いを行い、患者本人・家族の意思決定を基本に、他の関係者との連携の上対応すること」が算定要件に盛り込まれた。
【事務局のひとりごと】
「あんたの知り合いで、独身で年収が良くて、ええとこの大学出た人、何人か紹介したってーな。〇〇似のキレイなええ人や!!(昔、小室ファミリーと言われていたソロの女性歌手似だそう)。」
(まーた始まったでぇ…)。引っ越し、子どもの習い事、車、イヌ、イヌグッズ、食パン、周期的に何かにのめり込む家内である。
今回は「仲人」か?いつも行く銀行窓口担当の女性と(あくまで先方は仕事上の社交辞令のはずなのに)、結婚に関する会話をしたそうで(しかも相談を受けたと思い込んでいる)、今結婚相手を募集しているというのだ。
「ちょっと待ちーや。僕はもう50になるかどうかなんやで?僕の知り合いで独身っていったら、そこそこの歳になってしまうやないか!!それにええとこの大学って、一体どのレベルを求めてるんや?」
「ん~、あの人結構賢そうやし、〇〇大(関西の有名私立大学)らしいから、最低でもそのレベルか国公立大卒やな。銀行では役職がついているらしいから、そこそこの年収がないと釣り合わんで。よろしく~!!」
…。寝言は寝てから言って欲しい。そんな都合の良い独身男性、おそらくルックスも問うのだろうが、どこにおんねん!?と言いたい。もしいたとしても、とっくにSOLD OUT ではないか。
「早いとこ2~3人探してきてや!! 私こういう仕事、向いてんとちゃうかな?これ、うまくいったらお母さんと一緒に仲人会社、作ろっかな~?」
-_- …おめでたいにもほどがある。やれやれ すっかり仲人気分だ。起業でも何でも勝手にしてくれ。
にしても一体どうしようか。家内の目が覚めるまで、当分の間、家に帰るたびに追い込みをかけられそうだ。深いため息が出る…。
出会いや結婚は人生の大きな転機の一つであるが、今回のテーマである「エンドオブライフ(終末期)」も、これまた人生の大きな転機である。
ACP(Advance Care Planning)、アドバンス・ケア・プランニング (No.628参照) は、これまで何度かテーマとして取り上げた。そのACPに、日本老年医学会が、コロナ禍を受けてACPの推進を提言したというのだ。
日本老年医学会会員のコメントを紹介したい。
〇名大教授:感染する前になるべく早くACPを始めておいて欲しい
提言をまとめた葛谷雅文名古屋大学大学院教授は、「高齢者は重症化しやすく、急変すれば、家族らとの面会も制限されコミュニケーションなしに決断を迫られる。感染する前になるべく早くACPを始めておいて欲しい」と述べている。
〇介護施設長:介護施設は転院先の病院に対してもACPの内容を伝えることが必須
Web形式で開催された第62回日本老年医学会学術集会の緊急シンポジウム「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)下における高齢者医療への対応」で、高齢者施設における新型コロナウイルス感染症対策について報告した大河内二郎氏(大阪府・介護老人保健施設竜間之郷施設長)は、「COVID-19は指定感染症であり、本人が望まなくても入院が義務づけられる。しかし、介護施設内には終末期を迎えた利用者が安らかな最期を迎えたい患者もいる。COVID-19感染者とは面会もできなくなる。このため施設は、転院先の病院に対してもACPの内容を伝えることが必須となる。今後はACPの内容にCOVID-19罹患時の対応も記載することが望ましい」などと述べた。
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なかなかセンシィティブな話であるが、要は新型コロナウイルスによる感染症に罹患してしまうと、もともと高齢者はリスクが高い症状になるといわれている上に、その先面会もできなくなり、そのまま最期を迎えてしまいかねない。そうなっては逝く側、残された側、お互いに不幸だから、コロナ禍でそういう動きが加速しかねない。だから早めに「人生会議」を、というわけである。
ちなみに人生会議という愛称について、コメントを紹介したい。
〇厚生労働副大臣:人生の最終段階に臨む医療ケアが進展する契機となることを期待
ACPの愛称を「人生会議」とすると決定した発表会で、大口善典厚生労働副大臣は、「愛称や考える日の広報を通じて、ACPのさらなる普及啓発を図り、人生の最終段階に臨む医療ケアが行われるための取り組みが、ますます進展する契機になることを期待する」とあいさつした。
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「人生会議」、この愛称が誕生したのが2018年11月。読者諸氏におかれては、この言葉は耳馴染みがあるだろうか。有名人を起用したキャンペーンも行われた(ようとした)。
〇人生会議の普及で厚労省が吉本興業に委託したPRポスターがネットで炎上
人生会議の普及のための厚生労働省が作成委託したPRポスターがネットで炎上した。これは人生会議のキャンペーン事業を受託した吉本興業が、お笑いタレントの小籔千豊を起用して作成したポスターだが、死の間際に昏睡状態にあると思われる小籔が、「まてまてまて俺の人生ここで終わり?」「大事なこと何も伝えなかったわ」「それとおとん、俺が意識ないと思って隣のベッドの人にずっと喋りかけてたけど全然笑ってないやん」「声は聞こえてるねん。はっず!」「病院でおとんのすべった話聞くなら家で嫁と子どもとゆっくりしときたかったわ」「ほんまええ加減にしいや」「あーあ、もっと早く言うといたら良かった!」「こうなる前に、みんな「人生会議」しとこ」とつぶやいているという内容。
この啓蒙ポスターに対して、がん患者団体が抗議をし、続いてその抗議に賛同する声がネット上で広がり炎上、厚労省は、患者や遺族を傷つける内容であったと、ポスターの配布を中止した。
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小籔千豊は、とにかく文句を言い倒して笑いをとる。毒舌であるがしかし憎まれない、滑らない芸風だ(と筆者は解釈)。こと人生会議のキャンペーンにおいては、その芸風の良さが今一つ生かされなかったようだ。
決して厚労省を非難するのではないが、家族からのこんなコメントを紹介したい。
〇「人生会議」より「終活」のほうが、馴染みがある
厚労省は、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」という小難しい横文字と「人生会議」について、お金(我々の税金)をかけて、吉本興業のお笑いタレントを使い普及させようとした。その結果は、ネット等での炎上。お笑いタレントを使って「お笑い」をとり、炎上した。わざわざお金をかけなくても、庶民の間に定着している「終活」のほうが、よっぽど馴染みがある。本当にお役人は、余計なことに(国民が望まないのに、わざわざ余計なお世話をして)税金を使うことが好きらしい。
〇多死社会を迎え、終活、遺産相続で相談できる公的の「ワンストップ・サービス」を
父を亡くして、僅かであるが遺産相続で大変な思いをした。在宅で亡くなったので、病院での死亡に比べ死亡診断書発行で手間がかかり、死亡届に時間がかかった。さらに面を食らったのが、父親の銀行口座の凍結問題である。超高齢社会、多死社会を迎えた日本では、事前の備えの終活、遺産相続を「ワンストップ」でできる公的サービスが欲しい。既に銀行や保険会社には「ワンストップ・サービス」があるようだが、金融機関は遺産を目当ての口座新設などの勧誘があり、煩わしい。
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少子高齢化、多死社会といわれている所以、厚労省統計の「人口動態統計月報(概数)」(令和2年度4月分)によると、令和2年1月~4月累計で出生271,804人(昨年同期間271,829人)、死亡474,933人(昨年同期間485,149人)、こういった数字に裏付けされているのだ(同資料 3頁)。
ちなみに死因は
・悪性新生物(31,944人)
・循環器系疾患(28,729人)
・呼吸器系疾患(14,483人)
・脳血管疾患(8,701人)
の順となっている(同資料10~12頁)。
先にACPについてなかなか浸透しない、ややネガティブな背景について触れてしまうこととなってしまったが、ここからはそれでもACPはなぜ推進すべきか?というコメントを紹介していきたい。
医師のコメントである。
〇日慢協副会長:ACP推進によって高齢者への不適正処方を改善していく必要性を指摘
日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は2019年12月25日開かれた厚労省の「高齢者医薬品適用使用ガイドライン作成ワーキンググループ」の会合で、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)によって、ポリファーマシーのニュアンスがかなり変わってくる可能性が高い」と述べ、ACPなどの推進によって高齢者への不適正処方を改善していく必要性を指摘した。
〇訪問診療医:在宅から施設、入院になった時、ACPの情報も含め引き継ぎすることが当たり前になればいい
ACPを行う目的は、「もしものとき、本人が本当に望む治療やケアを受けられる可能性を高める」ことである。決して看取りについてだけの話ではない。私は訪問在宅診療の初診時から「今度、どうしていきたいか」を極力確認するようにしているが、在宅から施設へ移る時、入院することになった時などは、ACPに関する情報も含めて引き継ぎすることが当たり前になればいいと思う。
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推進する根拠はしっかりあるのだが、なかなか元気な時に切り出せない話題だし、それこそ終末期になればまともな思考回路での会話にもなりにくい。親と子、家族と家族、とにもかくにも「人生」についてしっかりと向き合うことが大切だ。
看護師からはこんなコメントだ。
〇がん患者さんから「死にたい」と言われた時にどう対応したらいいのか?
がん看護専門看護師。患者さんから「がんとの戦いに疲れた。死にたい」と言われた時に、どう対応したらいいのか? 教科書には「死にたいと思っているのですね」「どうしてそう思うのですか?」とまずは相手の言っていることを反復して受け止め、傾聴すると書いてあるが、その通りやってみても実際はうまくいかない場合が多い。患者さんが、「自分に」「そのとき」伝えてきてくれたことが、一歩踏み込んだケアができるチャンスだと思う。その時、患者さんから逃げたらもう2度とその患者さんは言ってくれないかもしれない。
〇看護師長:最期の時に「よかった」と感じることができる満足の時間をつくる
ベテランの看護師長。患者さんの最もそばにいる看護師は、生活の視点を含めたトータルバランスの視点からのアドバイスが医師よりも得意だと思う。ケアを受ける人とケアをされる人双方が最期の時に「よかった」と感じることができるような満足の時間をつくるようにすべきだ。
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「…一歩踏み込んだケアができるチャンスだと思う。その時、患者さんから逃げたらもう2度とその患者さんは言ってくれないかもしれない。」ドラマの1シーンに出てきそうな人の心の機微を、果たしてどれだけの医師が、はたまた看護師が、もしくは家族が汲み取ることができているだろうか。
ある弁護士はこうコメントする。
〇ACPでは、「話す」「残す」「伝える」「見直す」という4つのプロセスを繰り返し行う
終末期に行われた医療行為をめぐって、医療機関と遺された患者さん家族との間でトラブルになる事例は少なくない。終末期医療を巡ってトラブルを考える場合は生前、患者さんの自己決定権を尊重した医療が行われていたのかどうかがポイントになる。そのために大きな意味を持ってくるのが終末期医療の現場などで導入が試みられているアドバンス・ケア・プランニング(ACP)である。ACPは、医療契約という準委任契約の中で行われる活動ではあるが、それ自体が個別的な契約関係の拘束を生むものではない。患者さんの死後にトラブルになり、法的な紛争に発展する両者にとってマイナスと呼べる事態を回避するために有力な方法ではあると考える。ACPの実施に際しては、「話す」「残す」「伝える」「見直す」という4つのプロセスを繰り返し行うことが重要であると考えている。自己決定権を尊重するという最重要価値判断のもと、その周辺家族なども交えて繰り返し行うことで、より良い生を送り死に向かっていくというプロセスを踏むことができ、プロセス自体に納得感が生まれ、その結果紛争の予防につながると思う。
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後悔先に立たず。
人間は学習する生き物である(と信じたい)。であるので、過去に遭った「痛い目」については、次回にはそうならぬよう、その経験を活かし「転ばぬ先の杖」で対応策を練るはずだ。とはいえ、人生会議は誰もが何度も経験するものではない。従ってほとんどの人にノウハウがない。結局は、
「ああ!あの時、ああしておけば良かった!!」
となるのがオチである。
がしかし、他者のたくさんの事例に学ぶことができる時代である。弁護士のコメントはまさに正鵠を射ているのだ。
それでも人間は、いざ自分の身に降りかからないと、真剣に向き合うことができない。だから声高にACPが叫ばれているのだ。
あと2か月後、11月30日は、いい看取り・看取られ の「人生会議」の日である。
・ ・ ・ ・ ・
ところで、筆者の家内が起業できるかどうか?
目下、花婿候補を結構真剣に募集中である。「我こそ」と思わん男性、またはお勧めの男性の情報があれば、是非とも筆者まで「こそっと」ご一報を。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
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