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No.700  2021年度から医療機関等に外国語対応状況の報告義務づけ

2021年05月15日

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「医療機能情報提供制度」で医療機関等は自院の外国語対応状況を報告

 2021年度から医療機関等には、自院の外国語対応状況を毎年度、都道府県に報告することが義務付けられることになった。

 厚生労働省は3月30日付け医政局長通知「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等について」を発出し、(1)「医療機能情報提供制度」にかかる報告事項の見直しとして、医療機関等に対し、自院の「外国語対応状況」などを毎年度、都道府県に報告することを義務付ける、(2) 将来、すべての地域医療支援病院の院長では、「医師少数区域等での勤務経験」を持つことを要件化する-ことを求めた。

 

 厚労省の「医療機能情報提供制度」は、国民が「どの医療機関を受診すればよいのか」を手助けするために、医療機関等(病院、診療所、歯科診療所、助産所)に自院が有する機能を毎年度、都道府県に報告することを義務付けている。都道府県は報告された情報を整理して、ホームページ上に公開している(図3 医療機能情報提供制度について)。

 

 同省は医療機能情報提供制度を、将来的に全国統一システムに移行するため、診療報酬改定や社会環境の変化を踏まえた「逐次の報告項目見直し」を実施してきた。今回は、①院内サービス等に係る報告事項のうち「対応することができる外国語の種類」を「外国人の患者の受入れ体制として厚生労働省令で定めるもの」に改める、②費用負担等に係る報告事項のうち「クレジットカードによる料金の支払いの可否」を「電子決済による料金の支払いの可否」に改める、③費用負担等に係る報告事項のうち「クレジットカードによる料金の支払いの可否」を「電子決済による料金の支払いの可否」に改める-ことにしたもの。

 

■医療通訳の導入、対応言語、外国人患者受け入れの総合的な対応など報告

 このうち、①の院内サービス等に係る報告事項のうち「対応することができる外国語の種類」を「外国人の患者の受入れ体制として厚生労働省令で定めるもの」に改めることは、訪日外国人や在留外国人が医療機関を受診する際に「外国語に関してどういった対応を行っているか」を明確にすることを目指したものである。

 具体的には、「医療通訳を導入しているのか、また対応できる言語は何か」「多言語音声翻訳システムを導入しているのか、また対応できる言語は何か」「病院については、外国人患者の受け入れに関する総合的な対応(担当者の配置、担当部署の設置)を実施しているか否か」について報告を求める(図4 医療機能情報提供制度における「外国人患者への対応」報告内容:2020年10月29日医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会)。

 

 今年夏開催予定の東京オリンピック・パラリンピックを踏まえ、訪日外国人や在留外国人が医療機関を受診した際に「外国語での対応を行っているか」をどの程度行っているのかを明確にするものである。また日本語が不得手な在留外国人労働者も傷病にかかることから、「外国語対応が可能な医療機関」を明示しておくことが重要となる。

 

 厚労省による多言語への対応状況調査では、①病院単位では、医療通訳配置:6.0%(前年に比べて1.7ポイント増)、電話通訳利用:19.5%(同10.7ポイント増)、ビデオ通訳利用:4.1%(前年は調査せず)、タブレット等の活用:25.3%(同18.6ポイント増)、医療通訳・電話やビデオ通訳・タブレット等のいずれかを活用:39.7%(同24.5ポイント増)、②2次医療圏単位では、医療通訳配置:37.3%(同0.3ポイント減)、電話通訳利用:69.6%(同20.6ポイント増)、ビデオ通訳利用:24.8%(前年は調査せず)、タブレット等の活用:78.5%(同27.8ポイント増)、医療通訳・電話やビデオ通訳・タブレット等のいずれかを活用:88.4%(同18.0ポイント増)となっており、「通訳配置」や「翻訳システム導入」などは相当程度の医療機関で実施されているとみられる。

【事務局のひとりごと】

 

 2021年オリンピック・パラリンピックイヤー(本当は2020年だが)。大型連休を前にして、「人流」を抑えるために3度目の緊急事態宣言が発出された。背景にはコロナウイルス感染者の受け入れ医療機関の病床(というより医療スタッフ)逼迫がある。なかなか減少しない緊急事態宣言下にある、主に大都市の新規感染者。なかなか行き渡らないワクチンと、その接種。当然と言えば当然か、5月11日までとされていた緊急事態宣言も、5月末まで延長の声。だが、連休の人流が抑えられたので、百貨店の再開や、イベント開催、飲食店の時間限定営業(但し酒類提供は無し)など、2~3月の様相を呈した恰好だ。

 つまり、連休でないと休みが取れない勤め人が、まとまった休みが取れたのでお出かけしよう、という動きを抑制したのが緊急事態宣言、ということになろうか。

 変異株という要素は、これまで感染しにくいと言われてきた若年層まで感染拡大の恐れがあるという。大型施設の休業、これまでもだが、さらなる感染拡大の恐れと、受け入れ施設がないことへの不安、そんなことも相俟って、大型連休の風物詩ともいえる、新幹線乗車率100%以上、飛行機満席、高速道路の数十キロにわたる大渋滞、そんな光景は見られない黄金週間であった。新規感染者の減少を除いては、思惑通りの結果となった緊急事態宣言の発出であった、と言えるだろう。閉塞感。トンネルの出口はまだ先である。

 

 ではあるが、聖火リレーも、こぞって応援はできないが、確実に実施され、雰囲気的にはとてもそう思えないが、オリンピック・パラリンピック開催に向けたカウントダウンは確実に始まっているのだろう。

 本来なら大勢の海外からの選手団・応援団への「お・も・て・な・し」も売りであった東京開催であったが、当初の予想されるインバウンドは望むべくもないだろうが、開催されるのならば、場合によっては外国人が医療機関のお世話になる可能性もある。

 

 今回のテーマは、医療機関の外国語対応状況の報告義務付けである。これは本文にもあるが、「医療機能情報提供制度」の報告事項見直しによるものだ。

 

 今、タイムリーな情報として利用者が欲しいのは、外国語対応状況より、「新型コロナウイルス感染者への対応が可能かどうか」なのだろうが、患者が殺到しても困るし、風評の問題、地域との関り、もろもろ考えるとそれも難しい。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇厚労省医政局総務課長:外国語できちんと通訳が配置されていることが大変重要

 2020年9月に開かれた第15回医療情報の提供内容のあり方に関する検討会で医政局の熊木総務課長は、外国人患者への対応で「総合的な対応の実施有無」では、外国語できちんと通訳が配置されていることが大変重要であると説明した。

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 本文によれば、二次医療圏単位では医療通訳配置が37.3%、電話通訳利用69.6%、ビデオ通訳利用24.8%など、相当程度の医療機関で実施されているようだ

 しかし、折角ある便利?な制度だが、どれだけの方が医療機能情報提供制度を活用されているのだろうか?

 

 病院管理者からのコメントを紹介したい。

 

〇医療機能情報提供制度、国民の認知度低い

 医療機能情報提供制度は患者・国民が適切な医療機関を選択できるよう、都道府県がホームページを通じて医療機関の情報を提供するもの。2007年度からスタートしたが、認知度が低く、あまり活用されていないとの課題がある。また、掲載情報やシステムの作り方が都道府県でばらつきがある。お金をかけるのだから利用率を上げる方法を真剣に考えないといけない。

 

〇外国人患者の総合的対応実施、積極的に取り組んでいるところは提示できるようにして欲しい

 外国人患者への「総合的対応の実施の有無」について、病院以外は義務を課すまでではないというのには異論はないが、地元のクリニック、歯科医院はそれなりにきちんとやっていたりする。義務化しないと公平ではないのかもしれないが、積極的に取り組んでいるところがうちはやっていると示せるほうがよいのではないか。

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 目立っても良くない。カドが立つ。口コミで何となく広まるのが望ましい。本音のところでは先のコメントとなるのだろうが、いざ自分のところだけがそれをしようとすると、ちょっと気後れせざるを得ない。グルメサイトとは異なり、医療機関の比較対象でそういった情報が一般化されないのには、いろいろと遠慮もあるのだろう(※1)。

 

 しかし、筆者が日本人で、日本の医療機関にかかっている限り、あまり通訳の必要性を感じないからかもしれないが、外国語対応の医療機関は先の数字ほどあるとは思ってもみなかった。

 

 こんなコメントを。

 

【病院で受付業務に関わる方々】

〇夜間の対応は大学病院レベルでも難しい

 昼間に外国語対応できる人がいても、夜はいないのが通常で、おそらく大学病院レベルでもないのではないか。

 

〇零細な歯科診療所に専任職員を配置することは無理

 歯科は非常に零細な診療所が多く、専任的な職員を配置することは無理であり、義務づけとなると難しい。

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 正直なところ、筆者の感覚としては、こちらのコメントの方が実情を表しているような気がする。しかし、データ上は相当程度の対応がなされている。

 

 医業系コンサルタントからはこんなコメントだ。

 

〇外国人患者の費用トラブル回避のため医療費概算の事前提示を

 現在、訪日外国人旅行者に対する診療価格は自由診療であり、医療機関が任意に価格を設定してよいものとされている。厚労省は「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について」を発出し、社会医療法人等は、必要とした経費を訪日外国人患者等に請求できることを改めて周知した。外国人患者の中には、民間の医療保険にも加入しておらず、その医療費が全額自己負担となる人もいる。そのため、外国人患者には医療費の支払いや治療内容に対するトラブルを防止するため、事前に医療費や内容について説明し同意を得ておくことが重要となる。自院において、どのように概算医療費を算出し提示するか等について具体的に検討し実施することが求められる。

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 回らない寿司屋に入り、「時価」としか書かれていない。そんなお店に入る勇気はなかなかない。寿司なら高級なものを我慢すればよいが、医療となると話は別で、必要ならいくらかかるか分からなくてもかからざるを得ない。払うつもりは当然ある外国人でも、持っている予算を大幅にオーバーしてしまうとなれば、恥ずかしいし、弱るし、おまけに言葉はデリケートな部分では通じないだろうし…。

 そうですわねぇ。知りたいですよねぇ。日本人相手でも、受付で、「今度入院することになったんだが、いくらくらいかかるのか?概算でも教えて欲しい」こんな質問は当然ある。病棟から医事課にこういった問い合わせが飛び、それには医事課の対応も様々だろう。だいたい、を知りたい患者(もしくはその家族)と、その「だいたい」がマイナスはともかく、プラスに振れてしまえば、その差はどれだけ許されるのだろうか?など、良かれと思って考えれば考えるほど袋小路にハマってしまう問いかけである。

 であるので、ある程度万人受けするような、分かり易い掲示の仕方を、よくよく練っておかねばなるまい。その割に、そういったひな型を厚労省が示してくれるというわけでもないが、どう考えるべきなのか?

 

 英語(とは限らないが)会話については、TOEICの1級、と履歴書に書かれている学生も少なくない昨今、外国語でコミュニケーションできる日本人は、筆者が小学生だった頃に比べれば明らかに増えている筈だ。ただ、「医療」となるとどうだろう。

 

 こんなコメントを紹介したい。

 

【外国語スクールに勤めている方】

〇多国語対応の医療通訳養成は少ない

 医学関連国際会議の通訳の養成プログラムは、以前からあるのだが、実際の診療をサポートできる通訳、特に多国語対応の養成施設は、意外と少ないのではないか。

 

〇職業化が進まない医療通訳

 日本の急速なグローバル化により、医療機関を受診する外国人患者も必然的に増加し、在留外国人が多い地域を中心に、ボランティアやNGO 団体、病院をはじめとする医療機関による日本語を母語としない人々に対する、通訳を主とする医療関連支援が行われている。 しかし「医療通訳」としての職業化は進まず、ボランティアがその業務の大半を請け負うなど課題が多い。

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 ボランティアの方には頭が下がる思いだが、しかし、ニーズはあるのに少ない、というのであれば、医療用語を理解して、外国語のコミュニケーション能力を身に付けた方なら、遠からず、確固たる職業にありつけるのではないか?しかも格好良いではないか!新たなビジネスチャンスかもしれない。

 医療通訳 という職業が、子どもが大人になったらなりたい職業にランクインするのはいつの日か。

 

 最後に日本に住む外国人で通訳を必要とする方々のコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇宗教習慣を理解できる通訳が欲しい

 イスラム教徒の女性は宗教上の理由から、家族以外の異性に肌を見せられず、男性医師の診察に抵抗がある。特に、急病で診てもらう私たちの宗教習慣を理解できる通訳がいると安心だ。

 

〇聴覚障害のある外国人患者に手話ができる通訳を

 新型コロナウイルス感染症の拡大で国や自治体などは様々な形で感染症に関する情報提供をしている。最近では、聴覚障害者やその関係者の働きかけもあり、一部のメディアでは記者会見等にも手話通訳者が映されるなど、大きな変化があった。しかし、まだなお全ての番組に手話通訳がついているわけではない。特に日本に住む外国人の聴覚障害者は、得られる情報がほとんどない。聴覚障害者のための国際手話ができる通訳がいれば、安心して医療をうけることができる。

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 通訳、外国語、ある程度の医療知識、手話、宗教観…。

とてもマルチな才能だ。

 「バカとブスこそ東大へ行け!」と、今流行りの熱血教師のドラマがあるが、しかしそれでも東大合格、というのは難関だろう(※2)。

 世のため人のためになり、おまけに必要とされているのが分かっており、そんな存在が現在少ない。もしかしたら医療通訳を目指す方が、東大合格を目指すよりも、はるかにメリットがあるのではないか?

 もし自分がもっと若ければ、その道の第一人者になっていたかもしれない…。おっと、少し妄想的な夢を見てしまった。

 

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 

※1)…もちろんないわけではない。例えば病院情報局は、診断軍分類別にDPC病院、またはDPC準備病院が厚生労働省に報告しているデータに基づいた、医療機関の診療実績を「見える化」した、「信頼できる」画期的なサイトである。

 他にも、口コミサイトを見ることで、自分の調べたい医療機関の情報が出てくることもある。ただ、こちらは「口コミ」なので、口コミした利用者の主観が入っており、客観的に信じられるかどうかは、判然としない。料理のように画像をアップして一目瞭然、というわけには、医療はいかない。

 

(※2)…ドラゴン桜(阿部 寛 主演)。TBS系で日曜夜9:00より放送中。

 

 

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