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No.704 新型コロナ後の医療体制のあり方見据え、第8次医療計画の検討がスタート
2021年07月15日
■2024年度スタートする第8次医療計画を巡り、外来機能報告など3つワーキンググループ設置し議論
新型コロナウイルス感染症の流行を受け、病床確保問題など地域医療構想や医師の確保対策などのあり方が議論となっている。そのような中、厚生労働省の第8次医療計画に関する検討会(座長:遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)の初会合が2021年6月18日に開かれ、コロナ後の医療体制のあり方を見据え、都道府県が2023年度から策定を進める第8次医療計画(2024~2029年度)の基本方針作成に向けたスケジュールや枠組みが示された(図3 第8次医療計画に向けた取組(全体イメージ)【案】)。
同検討会では今後総論について検討を行うほか、改正医療法を受けた外来機能報告制度の2022年度スタートなどに備え、「地域医療構想および医師確保計画」「外来機能報告等」「在宅医療および医療・介護連携」の3つのワーキンググループを立ち上げて各テーマについて検討し、それらを踏まえた上で2022年末の取りまとめを目指して議論を進める(図4 第8次医療計画の策定に向けた検討体制(イメージ )【案】)。
3つのワーキンググループのうち、「外来機能報告等に関するワーキンググループ」では、2022年度開始予定の外来機能報告制度で新たに導入する「医療資源を重点的に活用する外来(仮称、「重点外来」)」の詳細を検討していく。
医療計画とは、都道府県がそれぞれの地域の実情に応じて、必要な医療提供体制を確保するための計画のこと。「医療圏の設定と基準病床数の算定」「特定の疾病・事業と在宅医療に関する現状把握や目標設定、評価」「地域医療構想」「医師の確保に関する事項」「外来医療に関わる医療提供体制の確保に関する事項」などが盛り込まれる。
第8次医療計画は2024年度からスタートする。各都道府県が計画策定を開始する2023年度までに、同検討会では、6事業目として位置づけられることになった「新興感染症」や、これまで医師需給分科会で検討していた「医師確保計画」、新たに導入する「外来機能報告」などについて検討を進めていく。
■焦点となる「医療資源を重点的に活用する外来(重点外来)」
検討会で焦点となる「重点外来」については、対象を明確にするために2022年度中に「外来機能報告」(仮称)を開始する。設置される外来機能報告等に関するワーキンググループでは、2022年度からスタートする「外来機能報告」制度の詳細、「医療資源を重点的に活用する外来(重点外来)」とは何か、「重点外来」を基幹的に提供する医療機関の各地域での明確化などに関する詳細な議論が行われ、2021年度中に急ピッチで制度設計を進めていく。
6月18日の検討会では、構成員から、「外来医療の機能分化、明確化」に向けては、「重点外来」を基幹的に提供する医療機関(一般的には「大病院」が該当する)と同時に、「かかりつけ医」の明確化が必要であるとの指摘が相次いだ。かかりつけ医機能についても議論をするのかという質問に対しては、事務局は2021年度「かかりつけ医機能の強化・活用にかかる調査・普及事業」を行っているとし、2022年1月以降に予定しているガイドライン改正の中で議論していく考えを示した。
またワーキンググループでは、外来機能報告制度の詳細を固めた後、2022年1月からは「外来医療計画」(診療所医師の偏在状況を見える化し、診療所医師が多数の地域で新規に診療所を開業する場合には、当該情報を提供するとともに、在宅医療などの提供を求めるもの)の見直しに向けた議論を行う予定となっている。
【事務局のひとりごと】
ゲームチェンジャー。
日本における自動車産業は、重厚長大である。仮に内燃機関の自動車が、モーター駆動の電気自動車に取って代わられ、本当にこの世からなくなってしまうとすれば、それは自動車産業の競争の土俵、ルール、ものさしが根底から変わってしまうことを意味する。ゲームチェンジャーとなる新たな企業や新たな仕組みの登場によって。
あらゆる業界は、現在想定している自社の競合相手が、いつまでも現状と同じとは限らない、と心のどこかでは思っているが、しかし、それでも自分たちの置かれている業界に、まったく異なる考え方を持ったプレーヤーが出てくるのは良い気がしないと思うことだろう、と思う。
しかし、それはやがては起こってしまうのだろう。昭和の時代、ステータスシンボルの代表格はといえば、それはやはり「自動車」ではなかったか。
平成、いや間違えた、時代はすでに令和である。移動手段は当然必要であるし、自動車が便利だということは変わらないが、「マイカー」を持つことによってそれを実現しよう、とする考え方すら人生の目標に置かないような世代が増える中、自動車業界には変革の波が訪れている。
現在、アップル社のiPhoneを使用している若い世代は、Y世代(1980年代序盤-1990年代中盤生まれの世代)、Z世代(1990年代後半-2012年生まれ頃まで)と呼ばれているそうだ。この世代には、昭和のステータスシンボル、例えばカッコよいマイカーを持つ、などの考え方など通用しない。しかしこの世代はアップル社の作ったものになら食いつくだろう、とも考えられているのだそうだ。仮に自動車で「アップルカー」が出てきたならば、自動車業界は「アップルカー」に駆逐される、そんな近未来も全くありえない話ではない。
自動車に対する価値観が「モーター中心」から「コネクト中心」に変わってしまう。Y世代やZ世代の考え方は、アップル社の製品が辿ってきた歴史とともにあるようだ。
この考え方を「別世界の考え方だ」と捉えるのは、もはや時代遅れの考え方なのだろう。ゲームチェンジャーはどの業界にも現れる。そう考えておかねばなるまい。
これからの世界を創るのは、これからの世代だ。だがそれは若い世代だけを指すのではない。人生100年時代である。そう考えれば、仮に70代ですら、あと30年も人生がある。今を生きる全ての世代もある意味、これからの世代だ。
これまであった「常識」という考え方は、常に塗り替えられていく。それが、ニューノーマルということなのだろう。
コロナ禍を奇貨として起こった「ニューノーマル」は、医療体制にも新たな視点を投げ入れた。今回のテーマは「新型コロナ後の医療体制のあり方を見据え、第8次医療計画の検討がスタート」についてである。
〇厚労省医政局長:エビデンスに基づく医療提供体制のあり方の議論を
6月4日の社会保障審議会医療部会で厚労省の迫井正深医政局長は、「医療制度は現に動いており、これをストップしてオーバーホールするというわけにはいかない。『医療提供体制のあり方』という原点を常に意識し、動かしながら制度改革を議論し、実行していかなければならない。その際には、永井部会長が常々指摘されるように『エビデンスに基づく議論』が重要であり、既存・新規も含めてデータをベースにした議論を進めてほしい」と要望した。
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第8次医療計画の検討には、3つのワーキンググループ(WG)が設置される。すなわち、
地域医療構想及び医師確保計画に関するWG
外来機能報告等に関するWG
在宅医療及び医療・介護連携に関するWG
である。
〇医政局総務課長:まず、医療資源を重点的に利用する外来の詳細を詰めていく
6月18日の第8次医療計画に関する検討会の初会合で、厚労省医政局の熊木正人総務課課長は、「ワーキンググループでは、まず外来機能報告制度や『医療資源を重点的に活用する外来』の詳細を、タイトなスケジュールの中で詰めてもらう」ことを説明した上で、①ワーキンググループと並行して、2021年度には『かかりつけ医機能の強化・活用にかかる調査・普及事業』も実施し、かかりつけ医機能の強化等に関する好事例収集や、専門家による提言などを受ける予定である、②検討会や社会保障審議会医療部会などさまざまな検討の場を活用して、かかりつけ医も含めた外来医療の機能分化、明確化の議論を進めていく-とのスケジュール案を示した。
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外来、フリーアクセスに関するゲームチェンジ、今医療計画の目玉は外来における医療政策についてだろう。「基幹的医療機関」なるものがキーとなるのだそうだ。この基幹的医療機関は地域医療支援病院とは別物ということらしい。一体、どれだけの類型が生まれてくるのだろう。
経済界からのコメントを紹介したい。
〇諮問会議民間有識者議員:「医療機能の分化・強化」の遅れが新型コロナで鮮明に
4月26日の経済財政諮問会議で民間の有識者議員(新浪剛史サントリーホールディングス代表取締役社長ら)は、「医療機能の分化・強化」の遅れをはじめとする課題が新型コロナウイルス感染症でより鮮明になったとして、機能分化の推進やデータ利活用などについて提言した。医療提供体制に関しては「緊急時」と「平時」に区分け。現在のような「緊急時」には、①感染症対応病床の確保・上積みに直ちに取り組み、国は大病院を中心とした病床確保の進捗状況の見える化を図り、支援を行う「当該地域への医療従事者を含めたワクチンの重点接種などを進める」、②国公立病院だけでなく、民間病院を含めて「緊急時に必要な医療資源を動員できる仕組み」「都道府県を超えて患者の受け入れを迅速かつ柔軟に調整する仕組み」を早急に構築する-ことを提案した。あわせて「感染症患者を受け入れる病院への診療報酬による減収分補填」「民間病院に対する都道府県知事の権限・手段の強化」なども提案した。
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今月号の別テーマでも触れたが、医療業界の制度に関する変化は経済界から見ると「遅い」と捉えられているようだ。
診療側のコメントも紹介したい。
〇日病会長:外来機能報告のデータを見て、ゼロベースで外来機能分化のあり方を議論しなおす必要がある
6月4日の社会保障審議会医療部会で相澤孝夫日本病院会長は、「外来医療のみを切り離して議論することは困難である。医療は入院・外来・在宅と一体的であり、わが国の医療提供体制のあり方を基本的な部分から考え直して、グランドデザインを描き、その中で『外来医療のあり方、機能分化をどう考えるか』などとブレイクダウンさせていく必要がある。拙速に議論すれば日本の医療はめちゃくちゃになってしまう。外来機能報告のデータを見て、ゼロベースで外来機能分化のあり方を議論しなおす必要がある」とコメントした。
〇全日病副会長:定額負担を先行させ、紹介元の かかりつけ医が不明ではナンセンス
6月4日の社保審医療部会で、全日本病院協会の神野正博副会長は、「外来医療機能分化に向けては、『大規模病院の定額負担』だけでなく、『かかりつけ医機能』とセットで議論する必要がある。定額負担のみを先行させ、紹介元となる『かかりつけ医』がどのクリニック・病院なのかが不明ではナンセンスである」と指摘した。
〇全自病会長:医療提供体制の最大の課題は医療人材の不足・偏在。解決することがすべてのベース
6月4日の社保審医療部会で、全国自治体病院協議会の小熊 豊会長は、「医療提供体制の最大の課題は医療人材の不足・偏在であり、ここを解決することがすべてのベースとなる。外来医療に関しては、例えば、いわゆる『かかりつけ医』が自身のかかりつけ患者の病態等に一定の責任を持ち、夜間の急変時にも、救急外来に直接かかるのでなく、まずかかりつけ医が対応する、といった体制が必要である。これは、とりもなおさず『働き方改革』にもつながってくる。こうした点を一般国民、患者に分かりやすく説いていくことも重要だ」と述べた。
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今月号の別テーマでは、在宅医療をテーマとした映画について触れたが、それとは別にドラマにも触れた。今夏の新ドラマ「ナイト・ドクター」では、夜間救急医療がテーマになっており、一時問題となった小児のコンビニ受診についてのエピソードもあった。まだ第3話程度しか進んでいない段階だが、コンビニ受診といわれる時間帯にしか、子どもを病院に連れていけないような生活を余儀なくされてしまう共稼ぎ夫婦の実情にもフォーカスが当てられており、一概にコンビニ受診はやめよう、というメッセージ性の強い内容ではなく、医療現場の実情と人々の思いが丁寧に描写されているドラマとなっていたと感じる。
小熊 豊全自病会長のコメントにもあるように、「働き方改革」というテーマを、一般国民、患者とともに一緒に議論して解決に導いていく必要があるということには論を俟たない。
筆者の、あくまで個人的な見解であるが、これまで夜診を専門とする医療現場を舞台としたドラマはいくつかあったが、やはり機能分化という側面からすれば、8:30~17:30まで、という時間帯に全て押し込んだ考え方にするのは如何か、と思う。夜診専門で、しかもいくらそれが標榜時間であっても時間外加算を算定して可ということにした医療機関があっても良いのではないか?持ち回りで夜間救急を受け持つ仕組みを導入している都市部もあるが、「24時間眠らない」のではなく、「夜は起きて昼間は休む」のである。昼間はたくさんの同業者にお任せすればよいではないか。
「そんな医療機関に来る医者や看護師などいるものか!」というご批判が聞こえてきそうであるが、提供者としてのニーズにはそれが来ない(非常に難しい問題なので)ことはよく分かる。しかし、よく言われる患者の視点、患者・患者の家族のニーズに立ったならば、必ずしも「ノー」ということにはならないのではないか?あくまで筆者の個人的見解、ということでご容赦賜りたい。
患者のコメントを紹介したい。
〇外来を受診する患者の意識も変えなければならない
外来を受診する患者の意識も変えなければならない。いくら制度的に枠組みを構築したとしても、患者が、風邪や、非常に軽い外傷などで大学病院をはじめとする地域の基幹病院の外来を受診し続けたのでは、機能分化は一向に進まないではないか。
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そうなんです。診療側も、受診側も、一緒になって考えなければ真の意味での機能分化が実現することはないだろう。病気は眠らない。一日において、朝から夕方までの8時間と、準夜帯から深夜・早朝にかかる時間は16時間、どちらが多いか、しかもそれが7日間(1週間)だと、昼間計40時間と準夜・深夜・早朝計112時間、と大きな差である。果たしてみんな40時間に集中すべきなのか?では昼間しか医療機関にかかることのできない勤め人はどうすればよいのか?これまで何度も考えられてきた問題ではあるが。
議論の遡上に、ほんの少し上がっても良いのではないか?そう感じる。
話は変わるが、6月16日開かれた中医協診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)で、DPC標準外れ値病院への実態把握のためのヒアリングが開催されることが決まったそうだ。その件について医業系コンサルタントからのコメントを紹介して締め括りとしたい。
〇DPC制度を含めた急性期医療提供体制のあり方も第8次医療計画の重要な課題
DPC制度において「不適切に医療資源投入量を低く抑える病院」や「あまりに早期に患者を自院の他病棟(地域包括ケア病棟など)へ転棟させる病院」などがあれば、制度が歪み、DPC病院全体が不利益を受けてしまう。このため、「著しく医療資源投入量の少ない病院」や「著しく自院他病棟への転棟割合が高い病院」(いわゆるDPC標準外れ値病院)について、実態把握のためのヒアリングを行うことが、6月16日開かれた中医協診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)で決まった。
「在院日数の短縮」は、医療の質の向上(院内感染リスクや廃用リスクの軽減)・患者のQOL向上(早期の社会復帰・家庭復帰)・医療費の適正化につながるため、一般に「好ましい」と言える。しかし、在院日数の短縮のみに目を奪われ(DPCでは効率性指数・係数が高まり、病院収益の向上につながる)、必要な医療提供が疎かになったのでは本末転倒である。DPC導入から18年経ってきており、きちんと調べる重要な時期に来ていると思う。DPC制度を含めた急性期医療提供体制のあり方も第8次医療計画の重要な課題になるのではないか。
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今回は、外来医療の機能分化について多くのコメントを紹介させていただいたが、急性期医療提供体制のあり方も、これまでの議論の延長線から当然重要な議論だ。
タイトなスケジュールの中だが、議論が深まることを願いたい。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
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