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No.707 連続勤務制限・インターバル確保で勤務医の働き方は極めて複雑に~医師の働き方改革検討会
2021年09月15日
■2024年度以降勤務医時間外労働の上限規制の対応を検討
2024年度から勤務医に新たな時間外労働の上限規制が課される。「厚生労働省の医師の働き方改革の推進に関する検討会」は8月4日開いた会合で、連続勤務時間制限・勤務間インターバル・代償休息などの「追加的健康確保措置」について論議した。厚労省は臨床研修医、連続15時間を超える手術に従事する医師について、一定の要件下で例外的に代償休息の付与を認める方向性を示した。これに対して検討会のメンバーから、「勤務シフト」作成が非常に複雑になり、国による何らかの支援が必要ではないかなどの意見が出された。
2024年4月からの勤務医の時間外労働は、原則として「年間960時間以下」が上限(いわゆるA水準)となるが、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(いわゆるB水準)、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(いわゆるC水準)などでは、「年間1860時間以下」までに上限が緩和される。ただし、医療機関の管理者(院長等)には、「28時間までの連続勤務時間制限」「9時間以上の勤務間インターバル」「代償休息」「面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)-といった「追加的健康確保措置」を講じる義務が課される(図1 医師の時間外労働規制について)。
検討会では、医師の働き方改革の制度化(法令等の整備)に向けて、B水準、C水準の対象医療機関や指定の枠組み、追加的健康確保措置の内容と実施確保などを検討。その内容を盛り込んだ改正医療法が2021年5月21日に成立した。これを受け検討会では、医師働き方改革の2024年4月実施に向けて、働き方改革が地域医療に及ぼす影響を踏まえた対応、医師労働時間短縮計画の作成支援、追加的健康確保措置の詳細、大臣指針―などの詳細を詰めている。
このうち、「追加的健康確保措置」とは、上述のとおり、一般労働者と比べて「多くの医師が長時間労働に携わらなければならない」状況を踏まえ、医療機関の管理者(院長等)に対して、次のような義務を課すものである。
(1)追加的健康確保措置1(①B水準・連携B水準・C水準医療機関で年960時間を超える時間外労働を行う勤務医について「28時間までの連続勤務時間制限」「9時間以上の勤務間インターバル」「代償休息」などを義務とする/②A水準医療機関の勤務医、およびB・C水準医療機関で年960時間までの時間外労働となる勤務医ではこれらを努力義務とする)。
(2)追加的健康確保措置2(月の時間外労働が100時間以上となる勤務医については産業医等が「面接指導」を行い、必要に応じて就業上の措置を行うことを義務とする(前月の労働が80時間を超えた場合、翌月に100時間以上となることを見越して面接指導の準備等を行う))。
このうち、(1) 追加的健康確保措置1の①については、「通常の日勤および宿日直許可のある宿日直に従事する場合」は、始業から24時間以内に9時間の連続したインターバルを付与しなければならない(つまり15時間の連続勤務(上限)+9時間のインターバル)。「宿日直許可のない宿日直に従事する場合」は、始業から46時間以内に18時間の連続したインターバルを付与しなければならない(つまり28時間の連続勤務(上限)+18時間のインターバル)-という規定が設けられている。
このインターバルは「事前に勤務シフトで予定する」ことが原則で、またインターバル中にやむを得ず労働が発生する場合(緊急の呼び出しなど)には事後的に代償休息を付与することが求められる。
また、「宿日直許可のある宿日直」(労働密度がまばらで労働時間とは見做されない)に連続して9時間以上従事する場合は、「9時間の連続した休息時間が確保された」と考える(つまり当該宿日直を休息時間と考える)。しかし、「宿日直許可のある宿日直」中に、急患などで「通常の勤務時間と同態様の労働」が発生した場合は、医療機関管理者(院長等)は「当該労働時間に相当する時間の休息」を事後的に付与する配慮義務を負うことになる。
■連続勤務時間制限・勤務間インターバルをどう組み込むか、「勤務シフト」が複雑に
8月4日の検討会では厚労省から、勤務パターン別に「連続勤務時間制限・勤務間インターバルをどう組み込むか」というイメージが示された。
まず、オーソドックスな(a)ケースとして「8時に始業」した場合には、15時間後となる「23時」までに勤務を終える必要がある。そこから翌日の始業開始まで「9時間以上の勤務間インターバル」を付与する必要があることから、23時に終業する場合には、次の始業開始は早くても「翌日の8時」となる。また(b)として8時に始業し、その後、連続して「宿日直許可のない宿日直」に従事した場合には、最大でも「翌日の12時」に勤務を終えることが求められ(連続28時間勤務)、その後に18時間以上の勤務間インターバルを付与する必要があるので、次の始業開始は、早くても「その翌日の6時」となる(図2 15時間又は28時間連続勤務する場合)。
「始業」は「勤務シフト等で予定された業務の開始時」とされる。このため、例えば「8時始業、13時で終業。同日17時に再び始業、同日23時に終業」などのシフトが組まれる場合には、それぞれの始業から24時間以内に「9時間以上のインターバル」を確保しなければならない。ただし、「お昼休み」などの短時間休憩について、その終了後を「始業」と考えることにはならない。さらに、20時から「宿日直許可のない宿日直」を12時間行い、宿日直明けにも勤務をするようなケースでは、上記(b)に該当し、始業(20時)から46時間以内に18時間のインターバルを付与する必要がある(図3 1日の間に短時休息と労働が繰り返されることが予定している場合/15時間を超える宿日直勤務を含む勤務が予定されている場合)。
一方、「9時間以上のインターバル」、例えば11時間のインターバルをシフト上確保したが、急患等が入り、実際には10時間のインターバルとなったという場合には、「9時間以上のインターバル」は確保されているので代償休息は不要となる。また、「9時間のインターバル」の間に業務が入りこんだ場合には、事後に代償休息を付与する必要があるが、シフト上「後に休憩時間」が予定されている場合に、その一部を代償休息に充てることも認められる(図4 9時間を超える休息時間が付与されている場合/9時間の連続した休息時間より後の休息時間が確保されている場合)。
一方、「宿日直許可のない宿日直」と「宿日直許可のある宿日直」とが混在するような場合には、勤務状況等を踏まえて、上記(a)(b)のいずれかを選択して勤務間インターバル等を確保することが認められる(図5 当直中に宿日直許可の有無が異なる時間帯がある場合)。
さらに勤務医が副業・兼業を行っている場合には、病院間で調整して(a)(b)に抵触しないシフトを組むことが求められる。
このように、勤務医のシフトは非常に複雑となることから、医療現場では「シフト表作成」に難渋すると予想される。このため、検討会の多くの委員から、「国主導で、シフト作成を支援するアプリケーションなどを開発してほしい」との要望が相次いだ。
大学病院など高度医療施設で「15時間を超える長時間の手術」が予定されている場合には、上記の(a)ルールに基づくシフト作成は難しく、「代償休息を組み込んだシフト」で運用せざるを得ないという問題も生じる。そこで厚労省は、①個人が連続して15時間を超える対応が必要な業務(現時点では「術後対応を含む長時間の手術」を想定)が予定されている場合には、「代償休息の付与を前提とした運用」を認める、②ただし、医師の健康確保の観点から、当該代償休息は「当該業務の終了後すぐに付与する」こととする-といった特別ルールを設けることを提案した。
「勤務シフト作成」は、個別医療機関での対応は難しく、「国による一定の支援」(技術的支援、財政的支援)を検討する必要で、厚労省の対応が注目される。
【事務局のひとりごと】
コロナ禍2年目の夏休みシーズン、東京オリンピック・パラリンピックという世界的なイベントも終わった。日本人選手の活躍、メダルラッシュ、開会式直前から物議は醸したし、ご意見は様々あるのだろうが、この情勢下の中で閉会式まで漕ぎつけることが出来たことに対し、まずは関係者、参加者への賛辞をお送りしたい。そしてその間隙を縫うように開催された全国高等学校野球選手権大会、いわゆる「夏の甲子園」も、突然の陽性者発生によって辞退を余儀なくされる学校もあり、悲喜こもごもであったが、少なくともスポーツにおいて人類は、コロナに立ち向かい、何らかの結果を残せるまでになったことは、昨年よりも進歩したと言えるのではないか。
暑さ厳しい夏真っ盛りの8月を過ぎると、秋は目前である。通勤の早朝の若干の肌寒さ、帰宅時の秋の虫の声、昨年よりもやや季節感を感じることが出来るようになったと思えるのは気のせいだろうか。
そして秋になると世の中は確実に来年度に向けた動きが活発になる。それはたとえコロナ禍の真っ只中であっても変わらない。次年度の予算編成、税制改正、診療報酬改定、大変な中ではあるが、議論の歩みが止まることはない。
リモート会議、リモートワーク、時差出勤、ワーケーション、働き方改革の名の下、新たな働き方が提唱され、コロナ禍も契機の1つとなって、昔は未来の働き方とされていたようなことが現実になった。果たして「未来の働き方」とは、イコール「夢のような働き方」であったかどうか、それは別として、雇用主の、被用者に対する拘束時間(給料のベースとなる労働時間)を、労働基準法の定めるとおりに運用しようという動きの一環だ。
今回は非常に大きな問題である、医師の働き方改革についてのテーマである。
以前触れたが、
数年前、厚労省官僚に質問をした。医師の時間外労働規制について、(最終的には財源論や病院経営の問題に踏み込まなければならないのだろうから、それでも)本気に取り組むのか?という趣旨で。
真剣な答えが返ってきた。
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労働者である以上、労働基準法は守らなければならない。それは医師も例外ではない。もし、労働時間に対する対価を支払っていない医療機関があったとして、その医療機関の実態が明るみに出たとして、その結果その医療機関の経営が傾き、病院経営が成り立たなくなったとしても、そもそも、その医療機関はきちんと労務管理と経営ができていなかったということなのだから、果たしてそんな医療機関を残すことに意味があるのか?
また、本当に医師の労働時間に見合う対価が現実に不足しているのであれば、それならばそれを堂々と国民に示し、その上で中福祉・低負担のままで行くのか、中福祉・中負担、あるいは高福祉・高負担などの議論を行うことで、国民に問うていく必要があるだろう。
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とにかく。
厚労省は、今も昔も時間外労働問題には本気なのである。被用者である以上、そこには医師だ、看護師だ、あるいは会社員だ、などの線引きや、ましてや聖域などないというスタンスだ(但、国家公務員は別なのかもしれない)。
(WMN No.684 2020年9月号 事務局のひとりごと の一部を再掲)
であるので、医師の働き方改革に関する議論は今が本番だ。
もう一つ再掲。
※「連続勤務は28時間まで」、「勤務と勤務の間は、9時間のインターバル(休息)を設ける」など、医師の働き方改革に関する検討会の提案に対して、
○「医師はついつい働き過ぎる。しかし、死んだら元も子もない」
労働自体は医師にとっては楽しいことが多く、ついついやり過ぎてしまう。だが、働き過ぎて死んだら元も子もない。せめて睡眠だけは確保したい。
○「9時間インターバル。幻想に近い」
連続勤務28時間、9時間インターバル。夢というより幻想に近い。
○「手術が夜中まで続いたら、翌日の外来や定時の手術を遅らせることができるか」
9時間のインターバルが必要なら、夜24時まで残業したら、翌日の始業時間は朝9時以降にしなくてはならない。この案を考えた人たちは、手術が夜中まで続いたら、翌日の外来や定時の手術を遅らせることができると思っているのだろうか?
○「結局お金にならない時間外が増えるだけだ」
時間外何時間までとか連続勤務何時間までとか、そんな制限したところで、実際目の前に対処しなければいけない患者がいたら帰るわけにはいかない。結局お金にならない時間外が増えるだけだと思う。
○「地方病院で外科医の数が少ない病院は絶対無理な案。医師の都市集中化を助長した厚労省の責任は重い」
地方病院で外科医の数が少ない病院は絶対無理。医局制度を崩壊させ、研修医の行き先も自由に選べるようにし、医師の都市集中化を助長した厚労省の責任は重い。
(WMN No.643 2019年1月号 事務局のひとりごと の一部を再掲)
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読みながら筆者は驚いたのだが、1年半も前のコメントなのに、まるで今頂戴したコメントと思えるくらい色褪せない声だ。医師の働き方改革に関する議論が活発化している(風化していない)とも言えるし、非常に難しい問題だけに抜本的な解決策がもたらされるには至っていないとも言える。
コメントを紹介したい。
〇厚労省医事課長補佐:臨床研修医の24時間の連続勤務時間制限が連続すると、研修期間の大部分を休日とせざるを得ない状況が生じる懸念への対応策
8月4日の医師の働き方改革の推進に関する検討会で、厚労省の土岐医事課長補佐は、臨床研修医が夜間・休日のオンコールや宿日直許可のある宿日直に従事する際、通常の勤務時間と同態様の労働が少しでも発生した場合に「始業から48時間以内に24時間の連続した休息時間(24時間の連続勤務時間制限)」が適用され、翌日を終日休日とする必要があると説明。これが連続すると研修期間の大部分を休日とせざるを得ない状況が生じる懸念があると指摘。
これを踏まえ厚労省は臨床研修医について、「始業から24時間以内に9時間の連続した休息時間(15時間の連続勤務時間制限)」「始業から48時間以内に24時間の連続した休息時間(24時間の連続勤務時間制限)」のパターンに加え、一定の要件下で代償休息の付与を認める考え方を説明した。
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日本は法治国家である。また、つとめて日本人は生真面目な国民的気質であると思う。法律で決まったことは必ず守ろうとする。このコロナ禍の非常時においても、何かを動かすには法的な問題のクリアが前提だ(※1)。
病気の発症直前1か月に100時間
発症前の2か月から6か月は1か月平均で80時間をいずれも超えた場合
など、過労死ラインとされる時間外勤務に関する線引きは、科学的な根拠に基づいているので定まってきた経緯がある。
自らが定めてきた法律を、無理があるからといって 医師は例外だ などとは言えないし、医師も人間である。働きすぎれば疲労もするし、パフォーマンスも低下する。であるので休息は絶対に必要だ。そこに反対する人は誰もいないだろう。
しかし、何らかの枠組みを作ろうとすると、やはり矛盾を感じてしまう。
一体何がいけないのだろう?
労働基準監督署からはこんなコメントである。
〇36協定届の押印廃止で協定締結・届出が厳格化
デジタルガバメント推進の流れを受け、2020年8月27日の厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会が、36協定を含めた約40種類ある会社の労働関係書類について、押印が必要という原則を見直し、2021年度から法令上も押印または署名を求めない(押印廃止)となった。一見、「手続きが簡素化される」と思われるが、36協定に関して、締結・届出方法によっては、従前どおり、届出書に押印または署名が必要となる。それは、労使協定書を作成せず、届出書に押印または署名して労働基準監督署へ届出を行っている場合で、小規模の医療機関に多くにみられると聞く。
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100%ハンコレス社会 というのは、当分実現しないな、そう思った。100%キャッシュレス社会 というのが実現しない(だろう)のと同じように。ハンコも便利な側面があるしなぁ。
医療機関からのコメントを紹介したい。
〇民間中小病院長:ブラックな病院というイメージも出かねないか心配
民間中小病院長。2021年の通常国会で成立した改正医療法で、2024年度に始まる罰則付き時間外労働上限の特例水準の指定を医療機関が受ける前提となる医師労働時間短縮計画(医師時短計画)の評価結果について、都道府県知事が「公表しなければならない」と規定されている。評価が低ければ、ネガティブな病院の評価になってしまう。ただでさえ、医師の確保に頭を悩ませているのに、ブラックな病院というイメージが出かねず心配だ。
〇大学病院長:勤務シフトを説明するのは至難の業で、管理も煩雑になる
大学病院長。厚労省の検討会で示された勤務シフト作成は課題が多い。数多くの勤務医を抱える大学病院では、一人ひとりに説明するのは至難の業で、管理も煩雑になる。仕事の効率化を図るだけでも働き方改革に反する作業になる。
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ですね。法律を守れ、という方は簡単だが、その複雑さ故に、どこに照らしても穴がない運用をしようとすると、総務担当者や中間管理職層に、ものすごいしわ寄せがいくのかもしれない。しかし、それもしわ寄せがいかないようにマネジメントするのが「良い経営」であり、今ふうにいえば「ホワイト企業」なのだろう。それが出来れば苦労しないが、病気にも、もし願いが届くなら、是非とも労働基準法を守ってもらいたいものだ。
働き方改革の対象者、勤務医からのコメントを紹介したい。
〇後期研修医:週初め月曜から既に疲れていて、慢性的疲労がたまっている
後期研修医2年目の内科医。大学勤務で1日平均の労働時間が14時間なのに、給与は20万円程度。外勤で給与を補うため、土日も外勤で外来・日当直しており休む時間がない。週初めの月曜から既に疲れていて、慢性的疲労がたまっている。
〇臨床研修医は、通常の時間内に多くの症例を診ていくことを基本とすべき
臨床研修医は時間外、宿日直の時間でなければ症例を経験できないことを当然とするのではなく、原則として通常の時間内に多くの症例を診ていくことを基本とすべきだ。
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もうすぐクールが終了するが、現クールで放映中の医療ドラマ、ナイトドクター(フジテレビ系)の中で、主人公の女医が一つでも多くの症例を学びたいので、自らが勤務する病院での夜勤明けに(彼女にとってはその時間が通常勤務の時間帯)、別の医療機関でバイトをし、頑張り続けて過労で倒れてしまう、というエピソードがあった。ドラマでは、量をこなして自らの技を磨く、という従来的な考え方から、映像で学ぶ、互いに教えあう、などの現代的な手法でも技を磨くことが出来る、という解決法を主人公が見出していくことで、彼女の「働き方改革」が描かれたのだが、さて現実ではどうか?
通常の時間内、とにかく、すべからく全員がこれを守ることに尽きる。例外なく。
開業医からのコメントを紹介したい。
〇開業医による病院外来支援
静岡県西部の山間地にある公立森町病院(静岡県周智郡森町)が属する2次医療圏では、2006年度に医師不足のため救急医療体制の維持が課題となった。町内に開業医数も少なく、北部に広大な中山間地をもつ森町の町立病院である当院には1次、2次救急への対応が求められた。このため、町内にある6診療所の医師が週1回18~22時まで救急外来業務に参加。病院勤務医の労働時間の削減につながった。
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ちなみに開業医は一般的に被用者ではないので、被用者に対する雇用者の義務に比較すると、自らに対する勤務時間の考え方の縛りは、恐ろしいほどその制約が外れる。雇用側がいくら働いても、あるいはいくら休んでも、法的なお咎めはないのだ。
シェアリング、互助の精神、これからの時代のキーワードになるだろう。
一方で看護師は、医師の働き方改革についてどう考えているのだろうか。
〇看護師の勤務シフト作成は作りやすい
看護師の勤務シフト表の作成については、看護師の場合は勤務時間がある程度決まっているので作りやすいと思う。勤務形態が複雑な医師の勤務シフトの作成は難しいのではないか。
〇医師の働き方改革で効果がありそうなのが、看護師の特定行為研修
千葉大学医学部附属病院では、看護師の特定行為研修を2020年度から3人で開始。2021年度は10人の募集のところ、7人が手をあげ、2022年度からは毎年12~13人養成していく予定。院内の看護師のほか、他の病院から募集を行い、計50人の養成を一つの目標としている。研修修了後は、主に手術室や集中治療室での業務を担当し、医師のタスクシェア・シフトを図っている。
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確かに、7:1が登場した頃に比べればましになった感覚はあるが、看護師に関しては、不足さえしていなければ、医師よりは働き方改革が推進しやすいのだろう。
こんな事例を紹介したい。
〇朝礼をやめ業務用SNSで一斉配信。ICT活用した働き方改革
ICTを活用した病院運営で全国的に有名な愛媛県四国中央市のHITO病院は、2020年4月、理事長直轄で「働き方改革推進室」を設置。室長は看護部長で、薬剤部や人事部のほかDX(デジタルトランスフォーメーション)推進課も加わった。室長が各部署に困っていることをヒアリングし、課題を仕分けして関係部署と調整。改善例としては、看護師やリハビリスタッフのシフトを工夫して食事介助を効率化、朝礼をやめ、各職員のスマートフォンに業務用SNSを通じて一斉配信した。時間外勤務や経営に関するデータはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で自動取得し、タイムリーに分析、行動に移すプロセスにも取り組んでいる。
〇在宅勤務を導入、放射線科の読影業務作業を効率化
兵庫医科大学病院では、育児中の放射線科医師の要望を受けて在宅勤務制度を開始。これまで1日約200件の読影業務を16名の医師で分担していたが、在宅勤務の医師が集中して診断することで、内勤医師の負担軽減に成功。医師はキャリアを続けることができ、内勤医師は医療処置や研究などに時間を充てられるようになった。
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ちなみにHITO病院では、病棟薬剤師を配置して、病棟の薬剤管理業務を看護師から薬剤師に移譲する取り組みによって、看護師が病棟の薬剤を整理するために始業の1時間ほど前に出勤して薬剤の確認や整理を行うことが慣例化していたのが改善できたのだそうだ。
また、環境整備や清拭を看護助手に任せている病院が多い中、これらの業務を通して得られるケアに生かせる情報が多いので、薬剤整理の時間が削減できた分、「環境整備は看護師の仕事」と義務付け、今はこれが習慣化しているのだという。
看護師の時間外勤務時間も減少し、業務の負荷が軽くなると気持ちにも余裕ができ、病棟での朝の申し送り後、病室の患者のもとへ向かう時間が20分早まったそうだ。
関係各位がしっかりと問題点の肝心な部分と向き合い、計画した改革案がビチッと嵌まった好事例である。
(参考:JAHMC(ジャーマック)8月号、(公社)医業経営コンサルタント協会発行)
今回は医師、「先生」の働き方改革に関するテーマだが、「先生」といえば学校の教師も「先生」である。こちらも働き方改革が叫ばれている職種の1つだ。コメントを紹介したい。
〇IT担当になった若手教員の時間外労働は月80時間超え
3年目の小学校教諭。ITに詳しいということで学校内のIT担当になった。コロナ禍でオンライン授業のプログラム作成で時間に追われ、かつITに弱い中高年の先生のお世話をして、時間外労働は月80時間を超えた。
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いずこも同じ、なのかもしれないが、私立の学校にはITに長けた人材を登用する動きもあるように見受けるが、こちらは公立の小学校なのだろうか?便利に使われてしまうこの先生、教師から見れば同じ「先生」でも、学校内のヒエラルキーの中ではなかなか辛いお立場だ。校長先生、文科省管轄でも労働基準法に例外はない、と厚労省の官僚なら仰ることだろう。
働き方改革、DX、今や時代の要請ともいえるIT化、IoT化。IT系企業からのコメントを紹介したい。
〇優先的に取り組むべきなのが、医療現場の業務効率化。IT技術の利活用が役立つ
医師にとって望ましい働き方と患者に必要な医療の確保のバランスを図るために優先的に取り組まなければならないのは、医療現場の業務効率化である。今後の医療現場では、限られた人員や就業時間の中で効率のよい業務を行うことが必要になる。その環境作りにはIT技術の利活用が役立つ。例えば、ウェアラブルデバイスを活用した患者モニタリングシステム、AIツールを活用してWEB問診を行う治療支援システム、テレビ会議やチャットツールなどの情報共有ツール、リモート環境でも医療業務が行える環境構築など、医療現場における通常業務や診療業務の効率化が、今後のポイントになるかと思う。
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ですね(※2)。病院では物凄い金額の投資といえる電子カルテシステム以外にも、IT技術への投資はまだまだ必要ということか。働き方改革の結果得られるであろう果実(効率化による経費削減など)を得るその前に、結構な投資が必要だ。イタチごっこのような気もするが…。
最後にこんなコメントで締め括りとしたい。
〇医師の働き方改革の第一歩は、医療機関の管理者が現状の勤務医の労働時間を正しく把握すること
医師の働き方改革の第一歩は、医療機関の管理者が現状の勤務医の労働時間を正しく把握することである。現状の勤務医の労働時間を把握するに当たって、注意していただきたいこととして、①診療科ごと、業務ごと、医師ごとの把握、②年間の時間外労働の水準を推測する、③健康確保措置との関係、④2024年4月に向けてどのように労働時間の短縮が可能か-の4点である。勤務医の労働時間を把握し勤務シフトを作成し、救急担当の勤務医の労働時間短縮を実現した民間病院が増えている。
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…ですね。
とにかくこれからの時代は、何でも「見える化」することだ。実態が分かれば、そこから改善策が生まれるに違いない。
2024年まであと2年だ。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※1)…そういう日本の法律で雁字搦めになっている現状を皮肉ったようでもあり、しかしそれを逆手にとって日本の官僚の優秀さも描いた「シン・ゴジラ」はなかなか面白い作品であった。一見、総理大臣なら何でも好きなように出来るような錯覚を思わせるがとんでもない。日本が独裁国家となることはないだろう。法律が圧倒的な盾なのだ。しかしそれ故に、良かれと思って「こうだったらいいのに…」と考えられたことすら阻もうとするのもまた、法律なのだ。
<WMN事務局>
(※2)…今クールの医療ドラマ、東京MERの主人公、喜多見医師のセリフ。相手の言葉を一旦嫌みなく肯定しつつ、さらにそこから自分の主張に持っていき相手をも動かす。扮する鈴木亮平の、真摯に命を追い求める姿勢が、迫真の演技が心を打つ。治療の場面では、あれだけ一瞬の出来事で患者の救命を行った、そのレセプトは、誰によって一体どうやって作成されるのか?実務的な疑問は残るが、筆者が今号を編集している9月8日時点、最終回をあと1話残すのみとなってしまった。終盤でやや現実離れした展開となってしまったのは番組を盛り上げるために仕方のない演出なのだろうが、ドラマを見終わったあと、子どもとお互いに顔を見合わせながら、「ですね。」の連発で週末を終えるのが恒例になっていたが、夏が去るのと同じで少し寂しい気がする…。
<WMN事務局>
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