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No.734 患者負担増の秋。紹介状なし大病院受診、一定以上所得後期高齢者の窓口負担が増額
2022年10月15日
◇「患者負担増の秋。紹介状なし大病院受診、一定以上所得後期高齢者の窓口負担が増額」から読みとれるもの
・2021年度医療費が過去最高。後期高齢者の増加で医療費増ペース速まる
・10月から一定以上所得後期高齢者の窓口負担が原則1割から2割に
・紹介状なし大病院初診の特別負担が7000円以上に
■2021年度医療費が過去最高の44.2兆円。負担と給付の見直しが急務に
2021年度の「概算医療費」が過去最高の44.2兆円に達した。厚労省は9月16日、国民の病気やケガの治療にかかった「国民医療費」のうち労災保険や全額自己負担を除いた「概算医療費」を公表、対前年伸び率は4.6%(約2兆円)の44兆2000億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大による受診控えの影響で2020年度は医療費が減少したが、再び増加に転じ、過去最高になった。2021年度に大幅な増加となったのは、2020年度の反動増が大きい。コロナの影響が本格化する前に2019年度に比べても1.4%増加した。高齢化や医療の高度化の影響に加え、1日当たりの医療費が2019年度比で7.3%、2020年度比でも1.3%増えた影響が大きい(図4 医療費の推移、伸び率)。
その一方で、コロナの影響の少ない2019年度と比べると、1年当たりの医療費の伸びは 0.7%。医療機関を受診した延患者数に相当する受診延日数は2019年度と比べると5.5%減で、依然として受診控えなどでコロナ前の水準には戻っていない傾向もみられた。特に、入院では2019年度比では0.3%減となった。
2022年からは団塊の世代が75歳以上の後期高齢者入りし医療費の増加ペースは速まるとみられる。後期高齢者の1人当たりの医療費は75歳未満の約4倍に上っており、後期高齢者の増加は公費負担に大きな重しとなる。後期高齢者医療制度は国や地方の公費負担で約4割強を賄い、後期高齢者は2021年から2025年にかけて約300万人増加し2025年には約2180万人に達する。このため、所得や資産といった支払い能力に応じた負担を求めなければ、医療保険制度の維持は困難といわれ、負担と給付の見直しが急務となっている。
■10月から一定以上所得の後期高齢者、紹介状なし大病院受診など、医療費負担が増加
後期高齢者医療制度の見直し論議が高まるなか、2022年10月1日から一定以上所得のある後期高齢者の窓口負担が原則1割から2割になった。具体的には、課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合200万円以上、複数世帯の場合合計320万円以上の方は、窓口負担割合が2割となる。窓口負担割合が2割となる被保険者は、全国の後期高齢者医療の被保険者全体のうち約20%が該当する。なお、現役並み所得者は、10月1日以降も引き続き3割となる(図5 窓口負担割合2割の対象となるかどうかは 主に以下の流れで判定します)。
また、10月1日から紹介状を持たずに大病院などを受診する場合の料金(特別負担)も増加した。高度な医療を提供する大学病院等の特定機能病院、地域の中核となる200床以上の地域医療支援病院が対象で、従来は初診で5000円以上、再診で2500円だったのが、それぞれ7000円以上、3000円以上となる。地域の診療所や小規模病院等との役割分担を明確にするのが狙いである。
病院と患者との間でトラブルが発生することも予想されるため、厚労省は9月8日、「紹介状を持たずに特定の病院を受診する場合等の 『特別の料金』の見直しについて」を提示。医療機関(とりわけ200床以上の病院)に注意を呼び掛け、説明を求めるとともに、一般国民に対し「大病院受診の際には、予めクリニックや中小病院で紹介状を入手する」よう求めた。また、「特別負担」には消費税がかかり、「特別負担と消費税の合計」で基準額(医科の初診時には7000円)以上となるように特別負担額を設定することも注意喚起した(図6 制度の内容と患者支払いのイメージ)。
10月から食料品をはじめ様々な分野の料金値上げが相次いでいる。医療も例外ではなく、高齢化や医療の高度化に伴い、医療保険制度の維持を巡ってさらに患者負担増の論議が高まりそうだ。
【事務局のひとりごと】
日本の季節の移り変わりを肌で感じて常々感じるが、つくづく「四季に富んでいる」といって良いのではないかと思う。
先月までのうだるような暑さも、どんどんなりをひそめ、いたる所で「秋」を見つける今日この頃である。
10月から「私たちの暮らしはこう変わる」
というような、半年に一度はお馴染みの、新聞の一面をご覧になられた方も多いことだろう。ニュースもそうだ。
当然のことながら、あまり「安くなる」ということにはならず、「値上がり」という表現の方がはるかに目立つ。そして街角インタビューで、値上げに対してネガティブなコメントの消費者の声が全国に流れる。
「値上げ歓迎」
などのコメントなど聞いたことがない。誰だって良いもの(サービス)をより安く手に入れたいのだ。そのような中で我が国は長い間物価が上がらずよく頑張ってきたのだろう。
世界との比較で、日本は、高品質の商品が比較的リーズナブルな価格で手に入る、むしろ住んでいる国民にとっては良い国だったのだ、ということを、海外旅行などをして帰国すると、そう感じたことのある方も多かったことだろう。日本の再発見、とでもいうべきか。
為替相場さえなければ、それはそれで良かったのかもしれない。しかし現代社会は多くのことが世界と密接につながっている。日本だけで完結できることが、特にモノづくりではあまりなく、結果的に世界的な資源高、物価高に引っ張られる形となる。
世界に物価が追いつく
というわけでもないのだろうが、
物価は上がる
収入(手取り)はあまり上がらない
という世論の趨勢や政権に対する批判はなかなか止められない。
本文中にあったが、「2021年度の「概算医療費」が過去最高の44.2兆円に達した。新型コロナウイルスの感染拡大による受診控えの影響で2020年度は医療費が減少したが、再び増加に転じ、過去最高で、2021年度に大幅な増加となったのは、2020年度の反動増が大きい」のだという。
こちらは過去最高額だが、
値上がりの結果
というわけではない。
平成30年度の厚生労働省の推計によれば、日本人の生涯医療費の平均は約2,700万円だった。どうしても70才以上が多くの財源を使用する傾向にある。少子高齢化、2020年問題、もろもろの要素が重なり、70才以上の人口に占める割合が多ければ、必然的に全体額は増えることになる。
44.2兆円という過去最高と言われた数字は、為替がどうだ、というよりは医療の高度化もさることながら、高齢者の頭数の問題である、というのが筆者の認識だ。
であるので、診療報酬改定がたとえマイナス改定になったとしても、医療費の全体額が前年を下回ることは、2040年頃まではないだろう。2040年といえば、例えば筆者は生きていることができているとすれば、70才を迎えていることになる。あまり遠い将来の話とは思えないのが寂しい。
今回は、他業界の「値上げ」とはいささか趣を異にするが、紹介状なし大病院受診時の患者負担額増、一定所得以上の後期高齢者の窓口負担が増、と、10月から患者が負担すべき金額が変わる、というのがテーマである。
コメントを紹介したい。
〇窓口負担割合が2割となる対象者の配慮措置
9月8日の社会保障審議会医療保険部会で、田中保険局高齢者医療課長は、窓口負担割合が2割となる対象者の配慮措置について、外来の負担増加額を月3000円までに抑え、この払戻し先口座が登録されていない方に対しては、プッシュ型で各都道府県広域連合や市区町村から申請書を郵送した。周知・広報について、口座登録に当たって消費者被害が生じないよう、関係省庁とも連携して、詐欺への注意喚起も実施している-などと説明した。
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医療費の財源に際限がないということはなく、これからしばらくは増え続けるのを、のびの額を如何に抑えるか、というのが焦点であることは誰もが知るところだと思いたいが、医業系コンサルタントからはこんなコメントである。
〇高齢者は複数の医療機関に受診。経済的心理的な負担は予想以上に
厚労省は、後期高齢者の窓口負担増となる対象者は全体の20%程度と影響は大きくないように説明しているが、対象の患者からすると毎月の医療費が倍になる。高齢者は複数の医療機関を受診していることが多いため、1カ所のクリニックを受診した際の負担だけでなく、2~3医院すべてのクリニックでの医療費が倍となり、経済的、心理的な負担は予想以上に大きくなる。
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財源論としては理解できても
負担増
というのは、どうしてもネガティブなイメージに捉えられかねない。
紹介状(診療情報提供書)持参なしで200床以上の病院を受診すると、患者の窓口負担は10月から増えることになった。もはや、ペナルティという表現の方がしっくりくるようなルール変更である。
大病院からはこんなコメントだ。
〇検査結果が比較的速やかに出る、いろいろな科が受けられる大病院は患者にとって魅力的
検査種類が豊富、検査結果が比較的速やかに出る、いろいろな科が受けられるところは患者にとって魅力だと思う。軽症で大病院を受診された患者さんに対しては、こちらで検査種類の制限など適宜考えながら対応しないと大病院の日常診療が回らなくなってしまう。
〇ついで受診が多い
現在同じ施設で他科受診している場合は免除など独自ルールがあるので、ついで受診が多い。強制力を持たせて一律化してほしい。生活保護も紹介状必須も強制力を持たせて施設レベルで動いてほしい。
〇聞き分けのいい患者以外はなかなかクリニックに行ってくれない
聞き分けのいい患者以外はなかなかクリニックに行ってくれなくて、外来患者数が膨大になって、外来前日とか非常に憂鬱。
〇フリーアクセスであり、大病院に直接受診する際は保険診療でできないくらいにしないと難しい
フリーアクセスである以上は来てしまうので、大病院に直接受診する際は保険診療でできないくらいにしないと難しいかもしれない。
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これらのコメントは、臨床現場の勤務医が思っておられることなのだろう、と筆者は思う。
病院経営層は、単純に外来患者の減が医師の働きやすさを呼び、反比例して入院収入が増え、医療の効率化が図られる…
などと考えはすまい。入院患者が増えるには、紹介(連携)も当然重要だが、一定程度、外来患者を獲得する必要はある、そうお考えなのではあるまいか?
今度は開業医からのコメントを紹介したい。
〇疾患ごとに紹介する医師を選ぶのが最善。大都市ではそれが可能
大病院と言っても、全ての疾患に対応できるわけではない。各クリニックがそれぞれの疾患の専門家とつながりを持ち、疾患ごとに紹介する医師を選ぶのが最善だと思う。大都市ではそれが可能である。
〇受診制限ではなく、かかりつけ医の立場をもっと向上させる工夫を
どの病院でも自由に受診できることが望ましく、受診制限ばかりするのではなく、かかりつけ医の立場をもっと向上させる工夫が必要ではないか。
〇年1~2回ある程度の規模で検査ができる病院を紹介する場合に配慮を
糖尿病の合併症の検査など、ある程度の規模で検査ができる病院を年1~2回で医院から照会する場合には(初診であっても)、患者さん達の負担にならないような対応が取られても良いと思う。
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外来は診療所へ。
入院は病院へ。
大枠としての流れは理解できるが、どうもすっぱりときれいに切り分けるという訳にもいかないようだ。
勤務医と開業医のコメントを比較して拝見しながらそう感じた。
医業系コンサルタントからもう一度コメントだ。
〇外来医療の高度化も進展、質の高い外来医療の提供体制の確保・調整が課題に
コロナによる影響で外来などの受診控えが進んではいるが、中長期的には、地域の医療提供体制は、人口減少や高齢化等により、地域差を伴いながら「担い手の減少」と「需要の質・量の変化」という課題に直面する。都市部では外来需要が増加する一方、多くの地域では外来需要が減少していくことが見込まれている。また、これまで入院で提供されていた医療が外来でも提供されるようになっており、外来医療の高度化も進展していく。このような地域の外来を取り巻く状況の変化に対応して、地域で限られた医療資源をより効果的・効率的に活用し、不足する医療機能の確保など、質の高い外来医療の提供体制を確保・調整していくことが課題となる。
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言うは易し、行うは難し。横山やすし。
患者の窓口負担が増えるということで、患者一人一人にとっては、結果として支払った医療費が増える傾向なのだろう。
ここで閑話休題。
確定申告
という観点で、今回は税務署からのコメントを紹介したい。
〇税務署より
一定規模の病院(大学附属病院、公立病院など)で紹介状がなく初めて受診する際には、初診料とは別に「選定療養費」などの名目の費用がかかることがあるが、こちらも医療費控除の対象となる(平成26年12月15日国税庁のホームページ「診療情報提供書に係る診療情報提供料の自己負担額の医療費控除の取扱いについて」)。
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という訳で、これまでより医療費の利用者負担が増えた場合は、確定申告で対応してください、ということだ。
マイナンバーカード申請、健康保険証とのデータ連動、銀行口座との紐付け、e-TAX、税務署も業務の効率化に向けた広報活動と、個人のお金の「入り」と「出」を掴みに行く行為を、日々怠っていない。
最後にこんなコメントを紹介して締め括りとしたい。
〇そもそも全ての人がかかりつけ医を持っているわけではない
患者サイドに立ってみると全く良くない制度。そもそも全ての人がかかりつけ医を持っているわけではない。いざと言うときにそう簡単にはかかりつけ医からの紹介状を書いてもらえるわけではない。
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「かかりつけ医」。
この言葉のもつ意味合い、位置付けも、厚労省の見解、日本医師会の見解が少し異なる。
言うは易し、行うは難し。横山やすし(古いか?)。
いずれW・M・Nでも「かかりつけ医」制度をテーマとして紹介したい。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
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