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No.781 厚労省「近未来健康活躍社会戦略」公表、医師偏在対策、医療・介護DXなどを強力に推進
2024年10月15日
◇「厚労省「近未来健康活躍社会戦略」公表、医師偏在対策、医療・介護DXなどを強力に推進」から読みとれるもの
・人生100年時代の「近未来健康活躍社会戦略」を公表
・戦略の焦点、「医師偏在是正に向けた総合的な対策」
・2024年末までに総合的な医師偏在是正対策のパッケージを策定
■少子高齢化・人口減少、デジタル化、グローバル化という大変革時代の戦略を示す
わが国は、少子高齢化・人口減少、デジタル化、グローバル化という大変革時代の渦中にある。 国民皆保険の持続可能性を確保しつつ、未来に向けて、イノベーションと社会のダイ ナミズムを医療・介護分野に取り込み、 人生100年時代を健康で有意義な生活を送りながら活躍できる社会の実現が「待ったなし」の課題となっている。そのような問題意識を踏まえ、 厚労省は8月30日、「医療・介護DXの更なる推進」をはじめ、「医師偏在是正に向けた総合的な対策」「後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革」「女性・高齢者・外国人の活躍促進」「イノベーションを健康づくり・医療 ・介護に活かす環境整備」「グローバルな創薬エコシステムの構築」から成る 「近未来健康活躍社会戦略」を公表した。
同戦略では、①国内における改革努力と国際戦略の両面により戦略的に医療・介護産業を育成。②医療・介護分野における多様なイノベーション・最先端の技術を駆使することや、インバウンド・アウトバウンドの取組を推進することで、 国民皆保険を堅持しつつ、戦略的に医療・介護全体としての収入の拡大を目指し、その成果を広く国民に還元。③国民一人ひとりが可能な限り長く健康で有意義な生活を送りながら活躍できる社会(健康活躍社会)を実現 -を掲げ、目標実現に向けた取り組みを整理した(図1 近未来健康活躍社会を実現するためのコンセプト)。
■焦点の「医師偏在是正対策」、2024年末までに総合的な対策のパッケージを策定
近未来健康活躍社会戦略」で焦点となるのが、「医師偏在是正に向けた総合的な対策」で、①医師確保計画の深化、②医師の確保・育成、③実効的な医師配置を柱として、2024年末までに総合的な対策のパッケージを策定し、これらを組み合わせた医師偏在是正に係る取組を推進する-ことが示された。 「骨太の方針2024(経済財政運営と改革の基本方針2024)」では、医師偏在是正に向けた「総合的な対策のパッケージ」を2024年末までに策定する方針が示されている(図2 医師偏在是正に向けた総合的な対策)。
武見敬三厚生労働大臣は8月30日の閣議後の会見で、自身を本部長とする「厚生労働省医師偏在対策推進本部」を設置し、年末の策定に向けて検討を加速する方針を表明。 9月5日に医師偏在対策推進本部の初会合が開かれ、武見大臣は冒頭の挨拶で、「急激な人口構造の変化や医師の高齢化が進むことを考えると、医師の偏在対策は早急に取り組まなければならない課題だ。厚労省の関連部局が一丸となり、具体的な検討を加速させていく」と述べ、医師偏在の解消を実現すべく具体的な検討を加速化させると強調。出席した厚労省幹部に対し、医師の偏在を何としても解消するという強い覚悟と決意を持って精力的な検討を要望した。 今後、医師の偏在是正に向け、経済的インセンティブや医師養成課程での取り組み、管理者要件の拡大や外来医師多数区域における規制的手法などについて議論を重ね、2024年末までに総合的な対策のパッケージを策定する。
対策推進本部の初会合では主な論点として、(1)医師確保計画の実効性、(2)医師の確保・養成、(3)実効的な医師配置、(4)(1)から(3)の実施に向けて-の4項目が示された。 このうち、(2)医師の確保・養成では、「医師少数区域等での勤務を後押しするため、医学生・若手医師の地域への理解・意識を涵養し、地域での活躍を推進するとともに、臨床研修の広域連携型プログラムの制度化、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の大幅な拡大を検討すべきではないか」「外来医師多数区域における新規開業希望者に対する医療機能の要請等の現行の仕組みをより実効力のあるものとする等の規制的手法について、医療法等における位置づけを含めて検討すべきではないか」。 また、(3)実効的な医師配置では、「新たに選定する重点的な支援対象区域(都道府県において医師偏在対策に重点的に取り組む支援対象区域)における開業・承継の支援や、経済的インセンティブを含め、医師の勤務意欲につながる方策について検討すべきではないか」などの論点が示された。
今後、医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会、新たな地域医療構想等に関する検討会などの厚労省医政局および保険局の審議会・検討会、さらには医療部会や医療保険部会で議論し、 医師偏在対策推進本部で2024年末までに「総合的な対策のパッケージ」を取りまとめることになる見通しだ。
「ようやく」だ。
これを書いているのは10月に入ったばかりのことだが、朝夕の通勤時にかく汗が、「ようやく」幾分か まし になった。今夏は出社前に500mlのPETボトル飲料を2本買わなければ一日を乗り切れなかった。それほど汗をかき、喉が乾いた2024年の夏、とても暑かった。ただ「暑かった」という表現だけでは、日本においてもはや言葉足らずなのかもしれない。
その夏の暑さを冷却してくれたのは他ならぬ「雨」だ。干天の慈雨 という表現もあるが、今夏においては 炎天の豪雨 であった。
たまに降ったと思えば、「安全第一」を錦の御旗に、簡単に公共交通機関が運転を見合わせ、多くの人々の行動予定が狂わされる。それも大いに文句を言いたいところだが、何より無情なのは、地域生活にとんでもない爪痕、いや、傷跡を残していく。大雨が過ぎ去った地域の報道を見るにつけ、言葉を失う。なぜそれほどまでに「偏在」してしまうのか。
なんでも ほどほど が良い(のに)、と考えてしまうのは、それは筆者が日本に住んでいるが故のことなのかもしれない。
世界に目を向ければ、空から降ってくるのは雨水や雪だけでなく、時にはミサイルが、という国すらある。台風とはけた違いの、ハリケーンが地域を根こそぎ襲うなどということさえある(もはや破壊だ)。大陸において起こる自然現象は言うに及ばず、人為的な行為も、日本では考えられないほどのスケールで甚大な被害をもたらすほどの過酷さである。
…それも元を辿っていけば、何らかの「偏在」が要因となっているのだろうか?
もう3代も前のことか。安倍政権時代に打ち出された「1億総活躍社会」。時の厚労相は、今は財務大臣となった加藤勝信氏だ。
そして今回のテーマである「近未来健康活躍社会戦略」。
似たような表現だが、この2つの概念に違いはあるのだろうか。初めて使った生成AIに問うてみた。
曰く
「前者が量的な労働力確保を重視したのに対し、後者は質的な健康増進や生きがい創出に重点を置いているように思える。人生100年時代を見据え、単なる『活躍』ではなく『健康で活躍できる』社会を目指す視点は重要だ。」
とのことである。
一応、プロンプト入力の前に、直近13か月分のWMNの ひとりごと のデータを参照させてみた。論調は自分っぽい気がするが、どうなのだろう?変な感じだ(※1)。
コメントを紹介したい。
〇塩崎彰久衆議院議員:ヘルスケアスタートアップ振興・支援には、民間の発想力と官の調整力で生まれる突破力を
今年6月27日、ヘルスケアスタートアップの振興・支援策をまとめた厚労省「ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討プロジェクトチーム」(ヘルスタPT)チームリーダーの塩崎彰久衆議院議員(当時は厚生労働政務官)は、「政策づくりにおいて「民」と「官」にはそれぞれの得手不得手がある。民間の自由な発想力と役所の緻密な調整力をうまく融合させることができれば、政策立案のフロンティアはさらに広がるはずである」と、ヘルスタPT立ち上げの狙いや医療・介護の課題解決へのインパクト、またこれからの時代の政策立案と官民連携のあり方について述べた。
厚労省ヘルスタPTのまとめたホワイトペーパーには、日本が健康・医療・介護の未来を拓く企業大国になるべく、【総論】、【バイオ・再生】、【医療機器・SaMD】、【医療 DX・AI】【介護テック】の5つの領域から、25の提言が掲げられている(https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001303602.pdf 参照)。
全92頁にもわたる壮大な提言集で、錚々たるメンバーが登場している。横文字が多くてなかなか頭に入ってこないが、例えば下記などは筆者が興味の湧いた提言だ。
提言 5
ヘルスケア分野でトップクラスのグローバル VC を日本に誘致する
提言 8
保健事業を担う保険者によるヘルスケアスタートアップの製品・サービス等の積極活用を推進する新たなインセンティブを創設する
提言 9
医療法人の役員を兼務する医師がスタートアップでの事業活動として行うことが認められる取引について周知する
提言 10
非臨床の消費者向け検査サービスに関する法規制の明確化を図る
提言 15
革新的な治療用医療機器等による米国をはじめとする世界市場の獲得を目指し、医療機器スタートアップへの海外展開支援を拡充する
提言 16
SaMD の開発・事業化の制約となりうる業許可規制及び広告規制等を緩和する
提言 18
マイナポータル等の医療データの民間事業者との持続的な API連携を実現すると共に、連携項目を拡充する
提言 22
介護テックスタートアップを支援する一元的相談窓口として「CARISO:CARe Innovation Support Office(仮称)」を立ち上げる
提言 23
介護テックの導入促進に向け、介護事業所向けの DX 支援を拡充する
遅かれ早かれ我が国が取り組むべき内容なのだろうとは思うし、水面下では進んでいることだってあるだろう。
今度はこんなコメントだ。
〇厚労省官僚:創薬力強化は、内閣府や経産省など他省庁との連携が重要
厚生労働省医政局の内山博之医薬産業振興・医療情報審議官は就任後初めて記者会見で、医薬品業界の課題の一つである創薬力強化については、「厚労省だけでは担いきれない部分もある」として、内閣府や経済産業省など他省庁との連携の重要性を強調した。
創薬は医療でもあるし、成長産業的側面、国策的側面も大いにあるということだ。一方で昨今「財源論」という問題を突きつけられてばかりいる医療業界でもあるが(薬品は特に)、国がいったいどの方向に進めようとしているのか、ちょっと戸惑うところだ。
〇経産省官僚:経産省の創薬ベンチャーエコシステム強化事業
医療科学研究所主催の産官学シンポジウム2024「ヘルスケア産業における日本の強みとは何か」で下田裕和経済産業省商務・サービスグループ生物化学産業課長。経産省は、創薬ベンチャーエコシステム強化事業としてリスクマネーの供給を開始している。創薬ベンチャーに対し、認定ベンチャーキャピタル(VC)の出資額の2倍相当の補助を行い、薬事承認につなげるのが目的だ。国内市場は縮小傾向にあるため、海外のベンチャーキャピタルも対象としている。鍵となるのはVCで、パイプラインのグローバル開発による価値最大化、IPOではなくM&Aを基本とした Exit戦略、IPOの場合は医薬品上市のためのIPOを行うといった観点を求めていきたい。
「国内市場は縮小傾向にある」か。
エコシステム。確かに経産省官僚が仰っているのはエコシステムなのだろう。シリコンバレーにならい、言葉としてはもてはやされているが、我が国でそこから次々にユニコーン企業が誕生、などというのはまだまだ先の話のような気もするが。さらにリスクマネーとして「出資額の2倍相当」は、果たして足りるのだろうか?
今度は諸外国のヘルスケア戦略についてのコメントだ。
〇米国巨大テック企業のヘルスケア戦略
11兆ドル以上の規模を誇る米国の医療・ヘルスケア業界に対し、大量の消費者データを収集する機会があるアマゾン、グーグル、マイクロソフト、エヌビディアなど巨大テック企業によるヘルスケア戦略が目立つ。各社はクラウドコンピューティングや人工知能(AI)、ハードウエア機器などでの既存サービス・商品を活用し、医療提供者や製薬会社にサービスを提供している。このうち、マイクロソフトは臨床研究、医薬品開発、医療提供を改善するAIツールを医療機関に提供。エヌビディアは、ハード機器での長年の支配的立場を武器に、スマート病院の未来で主な役割を担っている。
〇EUのヘルスケア戦略
EU(欧州連合)のヘルスケア戦略には、①保健のためのEUプログラム(2021年から2027年までの予算プログラムで、健康の改善・増進、公衆衛生危機からの市民保護、医薬品・医療物資のアクセス確保、保健システムの強靱化などが目標)、②EU世界健康戦略(世界の健康安全保障を強化し、全ての人の健康向上を目指す戦略)、③EHDS(European Health Data Space)(EU域内であれば誰でも自分の医療データにアクセスし、最善の治療を受けられるという権利をEU市民に与えることを目的。また、研究やイノベーション、政策立案、規制活動のために個人の医療データを使用するための仕組みも整備)、④eヘルス戦略(インターネットの利活用を推進し、臨床情報システム(CIS)や遠隔医療、在宅ケアなどの取り組み)、⑤EU4Health(ポストコロナのデータ駆動型健康戦略)-がある。
〇中国政府の医療・健康分野における政策目標「健康中国2030」
中国のヘルスケア戦略のうち、中国政府が医療・健康分野における政策目標として掲げた計画綱要「健康中国2030」は、衛生・健康領域の活動方針を明確に示し、健康教育の推進や医療衛生サービスの充実、安全な食品・医薬品の保証、健康産業の促進などを目指している
米国は企業の動きが中心となっているような戦略だ。だから本当に進むと言えば進むのだろう。中国も共産党が進めと言えば進むのだろうから、何らかの成果は出てくるのだろう。EUは一見すると日本と根底にある思想は似通っている気もする。
米国、EU、中国。
そして日本。とにもかくにも戦略は立てた。いかにして実行するのか?実行力・突破力こそが問われる時代だ。
今度は医師のコメントだ。
〇公的医療保険にばかり頼らない経営を考えることがこれから求められる
戦略のうち「イノベーションを健康づくり・医療・介護に活かす環境整備」で注目したいのは、保険外併用療養費の見直し。医療機関としても、公的医療保険にばかり頼らない経営を、大学病院に限らず考えていくことがこれから求められていく時代に入ろうとしている。10月から始まる後発医薬品のある長期収載品の選定療養は、まさにこのテストケースともなる。
なるほど。「混合診療」でなく、「保険外併用療養費」か。意地悪な言い方だが、新しい取り組みはすべて混合診療扱いにすれば、どんどん保険財源が減ることはなくなる。財務省的には保険財源(税金も含め)が多く出ていくことを抑えたいだけなのだろうが、自費も入った新たな医療費のハイブリッド財源として考えれば、それもあるかもしれない。
創薬メーカーのコメントはこうだ。
〇医療用医薬品以外の製品やサービスを強化、複数の新しいビジネスモデル
「イノベーションを健康づくり・医療・介護に活かす環境整備」に対応するため、塩野義製薬は、「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」を掲げた「2030年Vision」とビジョンを達成するための戦略「中期経営計画STS2030」を策定。医療用医薬品以外の製品やサービスの強化など複数の新しいビジネスモデルにより、高利益率と経営基盤の安定両立を進め、アンメットニーズに取り組み、「感染症の脅威からの解放」「健やかで豊かな人生への貢献」の実現を目指している。
アンメットニーズ(Unmet Needs)。
人々の欲求やニーズの中でまだ満たされていないものを指すのだそうだ。我々が抱えている諸問題の中で、まだ解決されていない課題や未開拓の領域をいうそうだ。
創薬メーカーがアンメットニーズに対する解を商品として提示するならば、それは「創薬を通じた」ものになるだろう。なるほど。一つ賢くなった。
医療機器メーカーのコメントだ。
〇デジタルヘルスの取り組みを強化、スタートアップとの協業を視野
経産省、厚労省、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の主催で9月3日開かれた第4回SaMD産官学連携フォーラムで、日本の大手医療機器メーカー・テルモの大森真二氏(執行役員最高技術責任者)は、デジタルヘルスの取り組みを強化しており、スタートアップとの協業を視野に入れていることを説明。自社の強みを生かしたソリューション提供を目指しており、データの利活用環境の整備なども重要視していることを明らかにし、「各地域や疾患領域における明確な臨床ニーズに対応し、ビジネスとして実行可能で、現地の規制やデータと AI の倫理的使用に準拠したデジタルソリューションを提供することを目指している」と述べた。
スタートアップとの協業。エコシステムの一つの形の結実である。主に医療データの「見える化」は最も技術力が発揮しやすいのではないか。SaMDと医療の相性は良いと感じる。そうなると、今度はこれに保険点数が付き、財源の奪い合いとなった時、SaMDはどのような扱いを受けるのだろうか?
近未来の社会戦略に比較すると非常に生々しい話題となるが、医師偏在についての様々な立場からのコメントを紹介したい。
【政治家】
〇医師確保はかつての公共事業のように、票に結びつく
国会議員が医師不足に悩む地元自治体のため、医師確保に奔走するケースが出ている。医師の人数が限られる県内では確保が難しいため、公立病院を抱える自治体側も、東京など大都市とパイプを持つ国会議員を頼りにする傾向がある。医師確保はかつての公共事業のように、票に結びつく地元貢献の一つになりつつあるようだ。
【厚労省官僚】
〇自由度の高さが良さでもあるが、過剰供給やアンメットニーズなどの問題も生じている
7月6日開かれた第10回地域包括ケア病棟研究大会で講演した厚労省の迫井医務技監は、「日本の医療提供体制は、民間主体で自由度が高い一方、調整が難しいという課題がある。フリーアクセスや診療科の自由選択など、自由度の高さが良さでもあるが、過剰供給やアンメットニーズなどの問題も生じている。このため、政府による司令塔機能と、データに基づく合理的な意思決定が重要である」と指摘した。
【医師】
〇基幹病院からの医師派遣は非常に大切
大学からの医師派遣だけではなく、基幹病院からの医師派遣は非常に大切になる。地域と基幹病院とを行ったり来たりできるような仕組みを構築して、それに対するインセンティブを与えてもらえれば、基幹病院からの医師派遣がより活発にできるのではないか。
〇基幹病院である県立病院自体、医師が不足
基幹病院である県立病院から医師を派遣してもらいたいという意見が来るが、県立病院自体、医師が不足している。
〇管理者要件」拡大に疑義
「医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の大幅な拡大を検討すべきではないか」との論点提示があったが、院長のなり手を探すのに非常に苦労している。院長になりたくはない若手医師も結構おり、認定されると院長を押し付けられるかもしれないという、逆のインセンティブになりかねない。
〇規制的手法は「医師が他産業に流れてしまう」リスク
若手医師をターゲットにした対策は限界にきている。「規制的手法は『医師が他産業に流れてしまう』リスクもある。インセンティブをメインにした偏在対策を考えるべき。
「医師偏在対策待ったなし」を謳った、前 武見厚労相の考えは、新 福岡大臣にも継承されるのだろうか?それはそうだろうな。厚労省のお役人の面々は変わっていないのだから…。
最後に、これも深刻な問題となりつつある医師偏在について、こんなコメントを紹介して締めくくりとしたい。
〇ある患者:美容外科に進む若手医師が増えている。診療科間の偏在が問題
テレビCMや駅の看板で目立つのが、「美容外科」の宣伝。それも院長は若手医師が多いように感じる。手っ取り早く「稼げる」のが、美容外科なのか。「美容外科」に進む医師が20代、30代で増加しているらしい。医師偏在以上に診療科間の偏在が問題だ。
なるほど。今や美容医療のCMや広告が目に入らない日はない。
去る10月2日(水)東京 日本教育会館 一橋ホールで第34回「国民の健康会議」が開催された。
第1部は各界報告、
在宅医療・総合診療医
患者給食の現状
ある自治体病院の現状
医薬品供給の現状と見通し
第2部は総合討論、登壇者は
横倉 義武氏(日本医師会 名誉会長)
山口 育子氏(認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML理事長)
邉見 公雄氏((一社)全国公私病院連盟 会長)
司会:行天 良雄氏(医事評論家)
であった。
第1部での各界発表を踏まえた討論、国民皆保険制度の堅持、かかりつけ医機能報告制度、医師偏在、美容医療、医療人材紹介料高騰(保険財源がビジネスに利用されているという観点)、東京一極集中 など、医療を取り巻く時事問題について議論がなされた。非常に良い会議だった。
特に医師偏在問題では、かなり昔から問題意識は持たれ、いろいろな意見が出されていたというエピソードも紹介された。一例として、医師国家試験合格者の上位半数がほぼ希望通りの勤務地での勤務とし、残った半数はその人材を必要としている医療圏とマッチングさせる というもの だ。教員採用試験と似たようなものかもしれないが、結局(紆余曲折もなく)、採用されることもなく現在に至っているというわけだ。
また、先の美容医療についても問題提起があった。
近年、美容医療に関わる医師数が800人増えたのだそうだが、そのうち500人が20~30代の年代の医者であるという。折角、一人の医師を育てるために長い年月とお金が投入されたのに、投入された税金の無駄遣いではないか?という意見だ(※2)。美容医療による医師の偏在も新たな課題として認識する必要がある。
今に始まった議論ではないくらい根の深い「医師の偏在」問題。「近未来健康活躍社会戦略」で「強力に推進」すると掲げられた「実効的な医師配置」。
どのようなもので、果たしてその推進力とはどれくらい「強力」なのか?
それこそが肝心だ。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※1)…
ドラえもんのひみつ道具「まんが製造箱」(ドラえもん:てんとう虫コミックス17巻 『週刊のび太』より)では、そのひみつ道具に見本のまんがを入れると、コンピュータが絵柄や作風を分析して、見本の作者そっくりの能力を身につけた上で、オーダー通りのまんがを描いてくれる、という代物だ。作品の中では手塚治虫先生の作風をコピーした製造箱にのび太がオーダーを出し、「スペースシンドバッド」なる作品が生まれる。
その時のオーダー内容は「SFマンガ!迫力ある宇宙冒険物。笑いや涙ももりこんで250ページ読み切り」であった。
今風に言えば「プロンプト」である。
「あなたは人気漫画家、手塚治虫の作風を身につけている漫画家です。
###手塚先生の作風で
###SFマンガを描いてください
###迫力ある宇宙冒険物
###笑いや涙ももりこんでください
###250ページ読み切り」
こんな感じだろうか?
生成AIに自分の考え方を学ばせ、そこに課題を与えると、どのような結果を出してくれるのか?
ひとりごと を一度生成AIに書いてもらうという、面白い試みだと思ったが(こんな行為はこれまで幾人も試されたことなのだろうけれど)、出来栄えは、良い材料と良いプロンプト次第なのだろうが、まだまだであった。やはり新しいものを生み出すのは、人間の頭でないとダメだと思った。
良い勉強になった。
<筆者>
(※2)…
ところがこちらの医師の偏在問題については、財務省による指摘は全くないのだそうだ。なぜなら、美容医療には殆ど保険財源は費やされないから。財務官僚は、むしろニコニコなのだという。なんだかなぁ。
<WMN事務局>
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