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No.779 2025年4月スタートする「かかりつけ医機能報告制度」で厚労省分科会が報告書

2024年09月17日

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◇「2025年4月スタートする「かかりつけ医機能報告制度」で厚労省分科会が報告書」から読みとれるもの

・病院・診療所は毎年度、かかりつけ医機能を報告

・「医療情報ネット(ナビイ)」で住民・患者に公表

・17診療領域・40疾患の一次診療の対応有無など報告

 

■背景に国民への情報提供の強化、毎年度かかりつけ医機能を報告

 2025年4月からスタートする「かかりつけ医機能報告制度」における報告事項の内容などを議論してきた厚労省 「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」は7月31日、「議論の整理(案)」について議論、厚労省案をおおむね了承した。 同分科会は、国民への情報提供の強化などが盛り込まれた改正医療法が2023年5月に成立したことを受けて、「国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討会」の分科会として同年10月に設置された。

 かかりつけ医機能は、2025年4月1日施行予定の改正医療法で「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と規定されている。 「かかりつけ医機能が発揮される制度」は、「医療機能情報提供制度の刷新」「かかりつけ医機能報告制度の創設」「患者等に対する説明」という3つの柱からなり、 特定機能病院と歯科医療機関を除く病院・診療所は、2025年度以降に毎年度、17診療領域・40疾患の一次診療の対応有無などを都道府県に報告することになる(図1 かかりつけ医機能が発揮される制度整備)。

 

図1 かかりつけ医機能が発揮される制度整備

 

 かかりつけ医機能報告の流れは、①慢性疾患を有する高齢者等を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能について、医療機関から都道府県知事に報告。 ②都道府県知事は、報告をした医療機関がかかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認し、外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに、公表。 ③都道府県知事は、外来医療に関する地域の協議の場において、地域でかかりつけ医機能を確保するために必要な具体的方策を検討し、結果を取りまとめて公表-で行われる(図2 かかりつけ医機能報告の流れ)。

 

図2 かかりつけ医機能報告の流れ

 

 医療機関が報告した情報は、医療機能情報提供制度の刷新の一環で2024年4月に始まった「医療情報ネット(ナビイ)」で住民・患者に公表される

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html)。 かかりつけ医機能報告制度のスタートは2025年4月。初回のかかりつけ医機能報告は、2026年1月~3月に実施される予定だ。

 

■17診療領域・40疾患の一次診療の対応有無などを都道府県に報告

 かかりつけ医機能は医療機関が有する機能のことで、医師個人の役割などを指すものではない。また、複数の医療機関の連携によって満たされることも想定されている。 報告内容は1号機能2号機能とに分けられ、「1号機能を有する」と報告している医療機関には、2号機能についても報告が求められる。

 

 1号機能とは、「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療を行うとともに、継続的な医療を要する者に対する日常的な診療において、患者の生活背景を把握し、 適切な診療および保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する機能」と定義。1号機能のうち、 (1)かかりつけ医機能を有することおよび院内掲示による公表(2)かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無、総合診療専門医の有無(3)17診療領域および40疾患についての対応状況の有無-のすべてを報告した場合に、2号機能の有無を報告する(図3 (例)一次診療に関する報告できる疾患案(40疾患))。

 

図3 (例)一次診療に関する報告できる疾患案(40疾患)

 

 また2号機能では、通常の診療時間外の診療、入退院時の支援、在宅医療の提供、介護サービスなどと連携した医療提供などの機能の報告が求められる。

 

 分科会では、医療機関が対応可能な一次診療を「診療領域」または「症状」のどちらで規定すべきか意見が分かれた。 また、かかりつけ医機能に関する研修の修了を要件に盛り込むべきかといった点などについても、議論が紛糾。結局、最終的な取りまとめでは、17診療領域と40程度の疾患の組み合わせという形で決着した。

 

 

 


 

 「最強に近い」台風10号は、日本各地に大きな爪痕を残していった。いつ、誰が被害に遭ってもおかしくない自然災害。ここ数年は、降水量の多さに比例しているのか、台風や大雨などの天候による大きな被害が目立つような気がする。

 公共交通機関、特に鉄道関連は予報の精度向上が背景にあるのかもしれないが、「安全第一」を錦の御旗に、日本横断の大動脈でもある東海道新幹線の大規模な計画運休が実行され、大幅な予定変更を余儀なくされた方のなんと多きことか…。

 筆者もその一人なのだが、これだけ科学技術が発達した現在でも、人類は台風(大型の低気圧)に対してなす術はないのか。

 民間ロケットの企業がスタートアップするくらいだし、人工の流れ星すら任意の時間に落下させることが可能な時代だ。例えば台風の目に何らかの「核(コア)」を撃ち込んで、海上で文字通り「雲散霧消」させるとか。

 今この時もおそらく活躍されているのだろうか。頑張っておられることとは思うが、しかし「天気の子」頼みだけでは如何ともしがたい…。

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 「風邪だと思うのですが…。」

 「それを決めるのは医者である私。患者のあなたが決めることではない。」

 

 学生時代に医療機関を受診した時、(おそらく)60~70代と思しき医師に言われた。医療法上は確かにそうなのだろう。

 先入観も良くないし、「薬を飲めばすぐ直る」くらいに病気を軽く考えてしまっている目の前の若者に対する、年長者の嗜めだったのかもしれない。

 

 そうはいえども、令和に突入し、「患者の視点」が叫ばれている現在、患者からすれば医師にそんな言われ方をしたならば、

 「恐れ入る」

 というより

 (高圧的に言われたことに内心は腹を立て)「二度と来るか!!」となってもおかしくはない時代となってしまった。

 一応、初診のルールは診療所での受診が奨励されている。医師の偏在による医師不足があまり感じられないような都心部なら、開業医も客商売。医療技術(病気の見立て)は当然だろうが、患者受けが良くなければ、ネットに書き込まれかねないような時代だ。

 古風な先生だったのかもしれないが、もし筆者が学生でなく、50代の男性として受診した時、あの先生はどんな対応をなさったのだろうか。

 少なくとも、臓器別に患者を診る流れ、診療科の専門性が高まってきた現在、初診で診療相談ができるような大病院にかからないようにするならば、自分が何の病気なのか、患者自身がある程度予想しながら診療所を選び、受診するしかないではないか。

 受診前に、患者は自分の病気を決めてかかっているのだ。

 さらには「セルフメディケーション」の時代でもある。もはや自分の病気を自分で決定し、ドラッグストアで第〇類医薬品を購入し、熱い風呂に入って薬を飲んで一晩寝てスッキリ治った、というのは、保険財源は使っていないが、それはある意味患者自身の医療行為ではなかろうか。

 レセプト上の(保険診療上の)病名をつける権利は医師にしかないのだろうが、病気を見立てる手前の行為(風邪だと思う、など)は、患者自身が当然すべき時代であるということなのかもしれない…。

 そういった意味で、常に同じ先生にかかっていれば、それまでの診療データを基にした医学的知見から、いち早く正しい病名に近づき、早期治療につなげることができるだろうし、患者から医師に相談しやすい関係性も生まれやすいだろう。

 「勝手知ったる」

は、患者にとっても、医師にとってもある程度お互いにメリットがありそうだ。

 患者にとって、いわゆる「かかりつけ医」とは、そんな医師像を想起させる。

 

 平成25年の日本医師会による提言によれば、

 かかりつけ医はこう定義されている。

 

 「健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」

 

 読者諸氏の身近に(距離の問題ではなく、まず第一に思い浮かぶ という意味かも)、こんな医師はいらっしゃるだろうか?

 

 などといろいろ考えてしまったが、今回は、その「かかりつけ医機能の報告制度についての議論が整理されたというのがテーマである。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇大臣官房参事官:かかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育研修を充実

 分科会で高宮裕介大臣官房参事官(医療提供体制改革担当)。患者の生活背景等も踏まえて幅広い診療領域の全人的な診療を行う医師の増加を促していくため、「リカレント教育・研修を体系化して、行政による支援を行いつつ、地域医療機関での実地研修も含めた研修体制を構築する」など、地域で必要となるかかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育や研修の充実を図りたい。


 リカレント教育か。学校教育から離れた後も必要なタイミングで再び教育を受け、就労と教育のサイクルを繰り返すことらしい。

 もともと医師や看護師には勉強熱心な方が多いので、学ぶことに関してはそこまでのアレルギーはないのだろうが…。

 

 続いてのコメントを紹介したい。

〇永井分科会長:医師のキャリアパスの中で「かかりつけ医機能の発揮」

 医師のキャリアパスの中で「かかりつけ医機能の発揮」という選択肢もあることを明確化すべき。

 

〇香取未来研究所臥龍代表理事:すべての高齢者がかかりつけ医を持つまでには何年もかかる

 元厚生労働官僚の香取照幸未来研究所臥龍代表理事。今回の制度施行で「かかりつけ医機能」の社会実装はかなわない。すべての高齢者がかかりつけ医を持つまでには何年もかかり、新たな地域医療構想の中でも、そうした点を明確化していくべき。

 

〇健保連専務理事:5年後を目途にかかりつけ医機能報告の見直しを

 河本滋史健康保険組合連合会専務理事。患者が「自分はどの疾患に罹患しているのか」を正確に判断することは不可能であり、やはり5年後を目途に、どのような症状、症候に対応できるのかをかかりつけ医機能報告してもらう仕組みへと見直すべき。

 

〇全日病副会長:研修は極めて重要であるが、かかりつけ医機能の要件とはすべきでない

 織田正道全日本病院協会副会長。医師は自身の専門性を中心に、研修を通じて診 療の幅を広げていくものだ。研修は極めて重要であるが、かかりつけ医機能の要件とはすべきでない。


 香取照幸氏は元厚労省官僚だ。そのご経験と見識を引っ提げ、退官後もご活躍である。

 「今回の制度施行で『かかりつけ医機能』の社会実装はかなわない」か(※1)。

 現役官僚でいらした頃は、さぞかし歯痒い思いを数多くなさったことだろう。そもそも制度を作る側にいらした方がいうのだから、おそらくそうなのだろう。お役人でいるうちには到底できないご発言である。

 ある意味、この制度の結論は出た、と言える。

  …見事な変わり身の早さだ。

 

 が、それでは身もふたもないし、まだこれから始まろうとしている制度である。できるためにどうすべきか?それを真摯に議論し、医療提供側・患者側ともに国民的な理解を得、ゴールに向かって積み重ね、「かかりつけ医」機能を確保し、青写真を描いた日本にしていく…。

 厚労省官僚を目指す学生(に限ったことではないだろうが)は、今でも当然このような大志を抱いてご入省されることだろうし。

 現官僚は、社会実装はかなわない、なんて露ほども思っておられない。

のだろう。

 

 次はこんなコメントを。

〇城守国斗日医常任理事:かかりつけ医機能は「地域で面として果たすべき」ものである

 5年後の見直し論議の際には、医療提供体制も人口構造も大きく変わってくるが、かかりつけ医機能は「地域で面として果たすべき」ものであることを継続確認すべき。


 5年後か。2029年。遠い未来のような気もするし、あっという間の気もするが、昨今の世界情勢を思うにつけ、予測がつきにくい。何が起こっているかわからないなぁ。

 

 自治体からはこんなコメントだ。

〇富山県の保健所がかかりつけ医連携支援をサポート

 多職種連携ネットワークの構築などは、医療機関単体で取り組むには少々ハードルが高い。自治体や医師会が、かかりつけ医機能の向上に向けた事業を手掛けるケースも出てきた。富山県では、県東部の新川医療圏(黒部市など)では、保健所のサポートにより5病院、22診療所に加え調剤薬局29件、訪問看護ステーション6件が連携し、在宅患者に24時間対応できる診療体制を構築した。医師だけでなく多職種が連携し、患者の医療・療養に関する情報を共有している。その背景に、高齢化に伴い在宅診療に移行する患者が徐々に増え、24時間対応する診療所の医師の負担が増えていったことがある。

 

〇公的病院統廃合で開業医ゼロの地区も

 新潟県の自治体。特に山間地では公的病院の統廃合に公的病院が減り、人口減少による患者減も伴い、その病院出身の開業医が急減。開業医ゼロの地区も少なくない。かかりつけ医確保は困難。

 

〇市町村は医療行政に詳しい職員が少ない。都道府県のよるサポートが必要

 市町村は医療行政に詳しい職員が少ない(とりわけ小規模自治体)ため、「都道府県等によるサポート」を十分に手当すべき。


 医師偏在。医療行政に詳しい職員を欲されている自治体におかれては、何としてもこの制度を成功させようとする厚労省にご相談されては如何?

 医師偏在問題も、あらゆる手段を使って解決に導こうとしておられるのだ。先月号でもふれたが武見厚労相は本気(のはず)だ。

 小規模自治体に、(仮に)無理やり行かされる医師がいるとするならば、お役人も無理やりにでも崇高な使命感を持って行っていただくべきだろう。でなければ「医師偏在問題の解決待ったなし」が泣いてしまう。

 

 今度はこんなコメントを。

【地域医療構想調整会議メンバーのコメント】

〇紹介患者中心の病院とそれ以外の病院とでは、かかりつけ医機能が異なる

 地域医療支援病院など「紹介患者中心」の病院でも、診療科によっては「かかりつけ医機能」を持つことは理解できるが、紹介患者中心の病院とそれ以外の病院とでは機能が異なる。医療界の中で、そうした機能・役割の分化を進めてほしい。

 

〇最後は看取りを要する高齢者を支える医療提供が必要

 医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上が増大する中、在宅を中心に入退院を繰り返し最後は看取りを要する高齢者を支える医療提供が必要であるが、その際「かかりつけ医機能の確保、在宅医療の強化、介護との連携強化」などが求められる。


 「医療界の中で」というご発言からすると、前者の有識者は医師ではないのだろう。医療界のなかで「決めてくれ」。そのメッセージに、医療界はどう応じるべきか?

 

 医師のコメントを。

〇かかりつけ医レベルでは専門医は必要ないということなのだろうか?

 分科会で示した かかりつけ医機能をみると、まず、それぞれの科目の専門性は必要なく、総合診療科的な機能を求めているように思える。ということは、かかりつけ医レベルでは専門医は必要ないということなのだろうか?

 

〇かかりつけ医機能報告制度自体、医師の業務量を無駄に増やす「嫌がらせ政策」

 患者一人一人状況が異なるのに、ふさわしい指標などあるわけがない。かかりつけ医機能報告制度自体、医師の業務量を無駄に増やす「嫌がらせ政策」ではないか。


 「今回の制度施行で『かかりつけ医機能』の社会実装はかなわない」by香取 照幸氏

 頭の中にこだまする。

 

 医業系コンサルタントからはこんなコメントだ。

〇かかりつけ医機能とは、連携を通じて地域全体で住民を支えるための指揮機能

 2024年度診療報酬改定では、かかりつけ医機能を発揮できる環境を作るために、生活習慣病管理料による慢性疾患管理の厳格化や医療DXの積極的な推進が評価されている。かかりつけ医機能とは、医療機関単独で患者を支援するという発想ではなく、医療資源を含めて連携を通じて地域全体で住民を支えるための指揮機能ともいえる。


 指揮機能か。

 「ゲートキーパー機能」という呼称であれば、将来的にこの制度によって役割分担が明確になった暁には、かかりつけ医とならない医師からは受け入れられそうだが。

 一方、「指揮機能」となると、かかりつけ医以外の医師から、果たして受け入れられるのだろうか?

 

 最後にこんなコメントを紹介して締めくくりとしたい。

〇かかりつけ医は、何人いてもいい

 かかりつけ医は、何人いてもいい。医療が専門分化しているなか、かかりつけ医は内科、外科、精神科と何人いてもいいのではないか。必要なのは、各科をつなぐコーディネートとして総合医ではないか。


 おお、そういう意見も患者目線としては分かり易い。

 「コーディネート」か。新しい言葉も出てきた。

総合医。

 地域毎の医療圏において総合診療医がコーディネーターとなって指揮機能を発揮し、患者の流れをスムーズに持っていく。

 素人にも分かり易い図式、素人、つまり患者の視点からすれば、やっぱり

 こーでないと(コーデネート)。

そんな思いがこの制度の起点なのではなかろうか。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…

未来研究所臥龍か。「臥龍」という名前の由来は、あれか。やっぱり三国志なんだろうな。
「臥龍(がりょう)」と「鳳雛(ほうすう)」。
一人でもいたら天下を獲れる、とまで言われる稀代の軍師、諸葛孔明、龐統士元、なんと二人とも手に入れた劉備は、それでも残念ながら天下統一を果たすことができなかった。
フィクションで構わないので、是非とも蜀が天下統一を果たす という痛快ストーリーを読んでみたいものだ。
そういえば諸葛孔明は、女性シンガーソングライターの軍師として戦乱の世を離れ、現代に舞い降りていたんだった。

<筆者>

 

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