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No.780 10月から始まる患者負担増となる「長期収載品の選定療養」とは?

2024年09月17日

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◇「10月から始まる患者負担増となる「長期収載品の選定療養」とは?」から読みとれるもの

・患者が「後発医薬品でなく先発品(長期収載品)」を希望した場合、患者負担が発生

・選定療養の対象外となる「医療上の必要性」基準を明確化

・後発品の発売後5年未満かつ置換率50%未満の先発医薬品は選定療養の対象外

 

■2024年度診療報酬改定で長期収載品の選定療養導入

 2024年10月1日から、医療上の必要性がないにもかかわらず、患者が「後発医薬品でなく先発品(長期収載品)を使いたい」と希望した場合には、患者自身が負担する仕組み選定療養)が導入される。 ただし、長期収載品を選択する「医療上の必要性」がある場合や、在庫状況から後発品の提供が困難な場合などは、選定療養の対象外とされている。 長期収載品の選定療養化は今回が初めて

 選定療養とは、特別の療養環境(差額ベッド、大病院の初診・再診等)など、被保険者の選定に係る療養で、保険適用外部分として、患者が追加費用を負担する。

 

 2024年度診療報酬改定では、新薬創出等加算の拡充等イノベーション推進と国民皆保険の持続性確保を両立する観点から、長期収載品の保険給付の在り方の見直しとして、選定療養の仕組みを導入長期収載品と後発医薬品との価格差の一部を選定療養、つまり患者負担とすることになった。対象となる長期収載品は、後発医薬品の上市後5年以上経過したもの、 または後発医薬品の置換率が50%以上となったもので、自己負担割合は後発医薬品の最高価格との価格差の4分の1となる。

 

■疑義解釈で選定療養の対象外となる「医療上の必要性」基準を明確化

 厚労省保険局医療課は、2024年7月21日と8月21日、長期収載品の選定療養に関する疑義解釈(その1、その2)を発出した。

 7月21日の「疑義解釈その1」では、医療上の必要性を判断する基準として次の4点を示した。(1)長期収載品と後発品の効能・効果に差異がある。 (2)当該患者が後発品を使用した際に、副作用や服用薬同士の相互作用が生じる。(3)学会作成のガイドラインにおいて、後発品への切り替えが非推奨。 (4)後発医薬品の剤形の違いにより、飲みにくい、吸湿性により一包化できないなど、服薬や調剤に影響がある。ただし、単なる剤形の好みや使用感の良さについては、医療上の必要性に当たらないとした(図4 長期収載品を処方等又は調剤する「医療上の必要がある場合」について)。

 

図4 長期収載品を処方等又は調剤する「医療上の必要がある場合」について

 

 (1)(2)(3)に関して、医療上の必要性について懸念することがあれば、 医師等に疑義照会することが考えられる。(4) に関しては、医師等への疑義照会は要さず、薬剤師が判断する ことも考えられる。なお、この場合においても、調剤した薬剤の銘柄等に ついて、当該調剤に係る処方箋を発行した保険医療機関に情報提供すること。

 

 厚労省は7月21日の「疑義解釈その1」で、選定療養費が発生する場合、患者負担額の計算方法を示した。

 基本的な費用構造は、選定療養による「特別の料金」(図のA)と「選定療養を除く保険対象となる費用」(図のB)とに分けられる。「特別の料金」とは、長期収載品と後発品の価格差の4分の1から算出される費用で、各品目における「価格差の4分の1」の値は、厚労省のウェブサイトで公表されている対象医薬品リスト(厚労省マスタ)に示される。これに数量を乗じるなど薬価の算定告示に基づき、薬剤料に係る点数に換算。この値に10円を乗じた額に消費税分を加えたものが「特別の料金」となる。

 「選定療養を除く保険対象となる費用」の計算には厚労省マスタに記載される「保険外併用療養費の算出に用いる価格」を用いる。「保険外併用療養費の算出に用いる価格」とは、長期収載品の薬価から、「価格差の4分の1」を引いたもので、この価格から、算定告示に基づき、薬剤料に係る点数に換算する。 この値に10円を乗じた額が「選定療養を除く保険対象となる費用」に当たる(図5 長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法(イメージ))。

 

図5 図5 長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法(イメージ)

 

 8月21日の「疑義解釈その2」では、主に、制度施行前に処方された長期収載品の扱いと、生活保護受給者に対する選定療養の考え方を示した。 選定療養の対象となるのは、24年10月1日以降に処方された長期収載品。従って、24年10月1日以降に保険薬局へ持ち込まれた処方箋であっても、処方日が24年10月1日より前(24年9月30日以前)であれば、長期収載品の選定療養の対象外となる。 リフィル処方箋や分割指示のある処方箋についても同様で、調剤日ではなく処方日で判断する。

 処方箋は、長期収載品の選定療養化に先駆け、2024年6月1日からその様式が変更となっている。 具体的には、「変更不可」欄に「(医療上必要)」との文言が追加、さらに「患者希望」欄が新設され、両者を区別できるようになった。

 また、生活保護受給者については、長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとされている。このため、生活保護受給者が、医療上の必要性が認められていないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品を希望する場合は、医療扶助の支給対象とはならない。

 

■保険局、長期収載医薬品の選定療養について、施設内ポスターなど患者周知求める

 長期収載医薬品の選定療養については、患者への周知・理解が欠かせない。長期収載医薬品の選定療養に伴う「費用徴収その他必要な事項」については、既に必要事項を院内に掲示することが定められている。 このため厚労省のホームページに掲示用ポスターの見本を掲載していることを疑義解釈(その2)に示し、ダウンロードして使用するよう求めている。

 患者のみなさまへ」と題する施設内掲示ポスターには、「後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬で、先発医薬品の処方を希望される場合は、特別の料金をお支払いいただきます」と明記。 さらに、「この機会に、後発医薬品の積極的な利用をお願いします」と表記した。またポスターにはQRコードも掲載し、厚労省ホームページの関連ページに患者自身が直接アクセスできるような設定も導入した(図6 患者のみなさまへ)。

 

図6 患者のみなさまへ

 

 また、掲示ポスターの裏面には、患者向けに今回の制度の概要を理解するためのQ&Aや特別料金の計算方法も記した(図7 窓口での案内チラシ)。

 

図7 窓口での案内チラシ

 

 

 


 

 選定療養。そこに来たか。

 通常、保険適用外の治療と保険診療を併せて受けた場合、それは「混合診療」扱いとなり、そこにかかった医療費は保険診療分も含め、すべて患者負担(10割負担)となる。

 その中で、選定療養と認められた医療サービスであれば、選定療養分の医療サービスと保険診療の混合診療が可能になる。

 このことを「混合診療」という言葉を使って表現するとややこしくなる。

 正確に言うと「保険外併用療養費制度」に基づき患者が保険外のサービスと保険診療を併用して受けることができるその時の保険外のサービスのことを「選定療養」という。 選定療養は2018年中医協資料によれば以下の16類型が存在している。

 

① 特別の療養環境の提供

② 前歯部の材料差額

③ 予約診察

④ 時間外診察

⑤ 金属床総義歯

⑥ 200床以上の病院の未紹介患者の初診

⑦ 医薬品の治験に係る診療

⑧ 小児う蝕治療後の継続管理

⑨ 200床以上の病院の再診

⑩ 医療機器の治験に係る診療

⑪ 薬価基準収載前の承認医薬品の投与

⑫ 180日を超える入院

⑬ 薬価基準に収載されている医薬品の適応外使用

⑭ 保険適用前の承認医療機器の使用

⑮ 先進医療

⑯ 制限回数を超える医療行為

 

 これを大きく分けると以下のようになる(必ずしも若い番号順でないのは選定医療として認められたのが早い方が先に掲載)。

 

【医療技術系】

 ⑮

【医薬品・医療機器系】

 ⑦、⑩、⑪、⑭、⑬

【快適性・利便性系】

 ①、③、④、②、⑤

【医療機関の選択系】

 ⑥、⑨

【医療行為等の選択系】

 ⑯、⑫、⑧

 

 さて、今回のテーマである、いわゆる「先発品」、「長期収載品の選定療養」、おそらく⑰類型目は、何系に当たるのか?

 

 そもそも医薬品なので、【医薬品・医薬機器系】なのかもしれないが、話の流れからしてそぐわないような気がする。どちらかというと【医療機関の選択系】に近いような気がする。

 ⑥、⑨は、入院外、いわゆる外来は、患者は診療所または200床未満の病院で受診することが促されている(入院は病院へ、外来は診療所へ の大きな考え方)。

 そこを、保険診療上の考え方では、患者の好み(?:もしかすると「わがまま」と捉えられているのでそうなる?)で大病院(200床以上の病院)の外来を受診しようとするならば、紹介状を持ってこられない初診患者を診察するための費用を、保険の一部負担金に加えて払ってください。しかもそれは設定料金の3割負担でなく、全額負担(10割負担:自費)いただきますよ、という建付けだ。

 一般論として医療費が高くつく とされる先発品より、薬効成分が先発品同様で、先発品に比較すると先発品のそれよりは医療費がかからない とされる後発品を原則使用することで【図-7】窓口での案内チラシ の最下段、

 

 「将来にわたり国民皆保険を守るため皆さまのご理解とご協力をおねがいいたします」

 

と書いてあるが、すでに特許期間も切れ、利益も含め開発費もとうに回収済 という建付けのはずの先発品に、多くの医療費財源が使用されると(特許切れ先発品メーカーに今後も保険財源が回ると)、本来、これからもっと必要とされるかもしれない医療技術や新薬などの開発費用や、医療従事者等への人件費増対応など、これから必要とされる財源のために、

「無駄遣いはやめて」

ということだろうか(※2)。

【医療機関の選択系】に近いような気がする と書いたのは、そんな理由からだ(※3)。

 

 先発品はもはや「贅沢品」。贅沢なのだから、それを使いたいのであれば受益者が応分の負担をしなさい、ということだ。なお、生活保護給付対象として医療サービスを受けている患者については、原則後発品を使用する(ほぼ先発品の使用を認めず)、という方針がより強く示されている。

 

 前置きが長くなった。コメントを紹介したい。

〇田村自民党政調会長代行:なるべく早く基礎的医薬品になれるような道のりも作った

 2024年3月4日の「第35回 製薬協政策セミナー」の基調講演で2024年度薬価制度改革について田村憲久自民党政調会長代行(元厚生労働大臣)は、「特許切れや、後発薬がすでに発売されている長期収載品については、ある程度ジェネリックに置き替わっているものは選定療養の対象品目として検討していく。不採算なものは採算が合うようにしていき、基礎的医薬品に関しても25年間の収載基準を15年間に見直し、なるべく早く基礎的医薬品になれるような道のりも作った」とコメントした。


 多くのステークホルダー(利害関係者)の理解を得ながら道のりを作る道程はさぞや大変だったことだろう。「大変」などという二文字で言い表すことすら失礼な気がする。

 しかし、田村元厚相だけのご努力でそうなったわけでもないだろうが、歴代の政治家のご努力によって、

 「『ある程度』ジェネリックに置き換わっている」

 とのことだ。

 「もの言わぬ薬(メーカー・卸は当然ものを言われるだろうが)」。医師会管轄でない薬剤、ですら、「ある程度」でも相当な道程であり、大変だった、のである。

 横道にそれるが、医師の偏在「待ったなし」問題の落ち着く未来は「ある程度」なのだろうか。

 

 厚労省官僚のコメントだ。

〇保険医療企画調査室長:国民の皆様の理解が大事

 7月17日の中医協総会で米田保険医療企画調査室長。「国民の皆様の理解が大事だと思っておりますし、医療現場で混乱が起きないようにしたいと思っておりますので、広報については御指摘も踏まえまして、適切に対応していきたい」と答えた。


 その通りでもあるし、結局は「つもり」であり、結果の責任は「国民の理解」にすり替えられている、そんな風にもとれる。

 

 中医協委員のコメントだ。

〇日薬副会長:患者の説明で調剤薬局に大きな負担が

 7月17日の中医協総会で森昌平日本薬剤師会副会長は、「患者の説明で、調剤薬局に大きな負担がかかる。なぜこのような仕組みになったのか、対象となるケースとならないケース、長期収載品を希望したときの負担金額や消費税負担などについて説明を求められることになるのではないか」などと懸念し、特に複数薬剤を処方した場合などは負担金額の計算が複雑になり、トラブルを防ぐための対応が求められる指摘した。

 

〇健保連理事:患者の視点からも可能な限り後発医薬品を使用することが良い選択肢

 7月17日の中医協総会で、健康保険組合連合会理事の松本真人氏は、「後発医薬品を使用するインセンティブを働かせることが目的でもあり、保険財政の面だけではなく、患者の視点からも可能な限り後発医薬品を使用することが良い選択肢」と述べ、国民の正しい理解につながる広報を要望した。


 診療側(調剤薬局)、支払側(健保連)と、意見は対極だ。

 【図-5】長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法

 

図5 図5 長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法(イメージ)

 

 これを一見しても、良くわからない。具体的な数値があればもっと分かり易いのだが。ただ、お役人はこの手の計算やルールを作るのは大得意(のはず)だ。

 図をよく見れば先発品1錠100円(10点)で後発品が60円(6点)の場合、1~3割の患者一部負担金の他に、別途10円がかかる、と書いてある。

 たった1錠だけが処方されることは稀なので、

 毎食後2錠×30日分(1か月)の処方だとすると、

  2(錠)×3(1日3回)×10(別途10円)×30(日) → 1,800円(‼)となった。

 さらにこの金額には別途消費税がかかるので、税込み負担は1,980円となる。

 この他に、患者は1~3割負担分の金額を支払うことになる。

 一瞬、たった10円か!と思ってしまったが…。

なんだか結構、大きい金額のような気がしてきた。1錠あたりのたとえにするのは、現実的でないような気がしてきた。事実を矮小化して見せ、パニックを起こさせず、事実を明らかにすることはマスコミに任せ、事実が明らかになったときには、さも当然のように「そう説明してきましたよね?」と、通りいっぺんのコメントを返す、お役人の常套手段を見せられているのかもしれない。

ところでこれ、確定申告時の医療費控除の対象になるのだろうか?

 仮に毎食後1錠だとしても、1か月処方で別途負担金はこの半額、990円(税込)だ。

 調剤薬局での支払いの際、患者との金銭的な問題に関するトラブルは避けられそうにない。もっとも、なので「後発品」で良い(ですよね?)、と誘導し易いということにもなろうか。

 贅沢は敵 である。

 

 今度は医師のコメントを。

〇面倒な規則を増やす前に万全の供給体制を整えてほしい

 先発品好きはブランド志向と同様なので少々値が張っても先発品を選ぶだろう。それより問題は薬品の供給が不安定なことではないか?面倒な規則を増やす前に万全の供給体制を整えて欲しい。

 

〇患者にペナルティ的な負担を強いるのはナンセンス

 患者にペナルティ的な負担を強いるのはナンセンス。患者によっては先発品でなければ薬効が劣る場合もある。

 

〇クレーマーが絶対出てくる。現場は疲弊する

 先発品の値段を下げれば済む話で、なぜ負担を現場に押し付けるのか理解に苦しむ。事実上の混合診療では?クレーマーが絶対出てくる。現場は疲弊する。


 いみじくも筆者がこれまで書いてきたことが、あながち想像でないことを如実に物語るようなコメントだ。

  ブランド志向

  ペナルティ

  先発品価格を下げる

  混合診療

  クレーマー

  そして現場の疲弊…。

 それでも財源論優先(にならざるを得ない)厚労省は、一問一答的に、すべての問題に対する答えを用意しているに違いない。ご苦労様です。

 

 先発品メーカーのコメントだ。

〇後発品内の数量シェアは50~90%と高水準のオーソライズド・ジェネリック(AG)

 後発医薬品の供給不安が解消されない中、存在感を発揮しているオーソライズド・ジェネリック(AG:先発医薬品メーカーから許諾を受けたジェネリック医薬品)。2024年3月期の各社の販売状況を見ると、依然として多くの製品が高い市場シェア。ただ一方で、厚生労働省の有識者検討会が報告書で「形を変えた長期収載品依存」と指摘される。2024年3月期決算では数社がAGの売上高を開示したが、いずれも後発品内の数量シェアは50~90%と高水準である。

 

〇中堅や長期品主体の製薬企業では、売り上げ減少が懸念

 企業別では21成分49品目と選定療養の対象となる品目が最も多い田辺三菱製薬は「長期品に依存しない製品ラインアップの整備を進めてきたので、影響は限定的」と分析している。大手新薬メーカーでは事業活動の中心からは外れるため、「後発品への置き換えは一定程度進むとみられるが、選定療養を織り込んだ予想は立てていない」といった対応が主流。一方、中堅や長期品主体のビジネスを展開する企業では、売り上げの減少が懸念される。ただ、窓口負担の増加で患者の行動がどう変わるのか、見通しは立てづらい。6製品15品目が対象となる杏林製薬は「ムコダイン」「ペンタサ」「キプレス」の3成分だけでも売り上げ全体の20%(235億円)を占めるが、「影響が明確に見通せないため予想には加味していない」との見通しだ。なお、2013年度に3兆円あった長期収載品市場は、2023年度に1.4兆円にまで縮小し、この10年間で市場規模が半減した。


 10年前の3兆円が、今や1.4兆円か。ただ、薬剤費全体の市場が伸びていることは変わらない。時の主役がどんどん入れ替わっていく、いわば戦国時代のようなものか。

 そうやって新陳代謝が繰り返され、時代はどんどん良い方向に進化していく…というシナリオなのだろうが、本心からあまりそれを感じることができないでいるのは、筆者の目が曇っているだけなのか?

 

 今度は後発品メーカーのコメントだ。

〇最適セールミックスで収益改善を図る後発医薬品メーカー

 薬価が改定されるたびに収益性が悪化する後発医薬品の製造販売において、製薬企業各社はセールミックスの変容に注力することで収益性の改善を模索してきた。セールスミックスとは、各製品(または各セグメント・各事業)における「生産量・販売量」の組み合わせ。また、最も収益性の高い製品の生産量および販売量を最適セールミックスと呼ばれる。東和薬品株式会社は、他社に先駆けて積極的なセールミックスの改善に取り組んでいる。2023年8月に発表された第1四半期決算では、売上高が前年同期比20.2%増の54,548百万円、営業利益は123.1%増の4,096百万円だった。


 さすがは大手のコメントである。そつがない。

 しかし5,400億円規模41億円営業利益率0.7%だ。41億円は絶対額として決して小さい額ではないが、この金額で製薬に関する更新も含めた設備投資が可能となるのか? 甚だ疑問だ。また仮に、これが企業規模数千億規模の企業と比較すると小さい、例えば数百億円の後発品メーカーであれば(数百億円を小さいといってよいのか分からないが)、利益がプラスに跳ねるかどうかも危ういのではないか?そうなれば設備投資、更新などどこから原資を持ってくることになるのだろう?

 こんなことで健全な競争原理が働く企業群が生まれるのだろうか?非常に考えてしまうところだ。それ故の近年起こって問題となっている、不正や撤退・品薄などの問題の背景となっているのではないか?

 

 調剤薬局運営事業者のコメントだ。

〇複数薬剤を処方した場合などは負担金額の計算が複雑に

 なぜこのような仕組みになったのか、対象となるケースとならないケース、長期収載品を希望したときの負担金額や消費税負担などについて説明を求められることになるのではないかと懸念される。特に複数薬剤を処方した場合などは負担金額の計算が複雑になり、トラブルを防ぐための対応が求められる。

 

〇使用感などの付加価値で長期収載品の使用を選択していると推察される品目も

 後発品への置き換えが進まない長期収載品について、薬価収載から長期間が経ち、長期収載品の薬価も低く、その薬価の差も少ないような成分では置き換えが進みにくい。また、外用剤(貼付剤・点眼剤)などで効果には差がないものの、使用感などの付加価値で長期収載品の使用を選択していると推察される品目もある。


 計算に関しては、とても難易度の高い診療報酬レセプトに関するモジュールを、診療報酬DXで対応してくださる厚労省だ。まさかと思うが、調剤については事業者でご勝手に、なんてことはない、と筆者は信じたいのだが?

 トラブル可能性については、もうこれは確信犯だろうな。調剤薬局が保険医療機関の位置づけとなっているので(ちなみに位置づけを明確にしたのは厚労省)、なぜか調剤薬局には至極まっとうな指示が来て、それを当然実行しなさい、という流れになってしまう。…水は上流から下流に流れるものだ。逆転はしない。

 

 医業経営コンサルタントのコメントだ。

〇生活保護受給者では、選定療養の対象となるケースがそもそも生じない

 厚労省の疑義解釈(その1)では「生活保護受給者については、長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとされている。このため、生活保護受給者が、医療上の必要性が認められていないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品を希望する場合は、医療扶助の支給対象とはならない。この場合、生活保護法(第34条第3項)に基づき、後発医薬品が処方・調剤されることになる。つまり、生活保護受給者では、患者希望で長期収載品を選択するケースが生じないため、長期収載品の選定療養による「特別の料金」を徴収することはない」との解釈が示される。


 基本的人権の尊重と、嗜好、贅沢?わがまま?

 原則処方が後発品でも、今のところ日本においてはその実効性が担保されている、とは思うし、生保の方々にとっても、セーフティーネットは担保されているようには思うのだが。

 しかし、平等を謳っているが我が国であるが、それでも法律上の線引きについては結構冷徹だ。いや、正しく運用できているというべきだろうか?

 

 最後に、ある薬品についてのコメントを紹介して締めくくりとしたい。

〇看護や介護のスタッフに必要な保湿薬「ヒルドイド」

 保湿作用のあるヒルドイドは、皮膚科外来でも処方される頻度が高く、同薬の必要性が低い軽症例にも処方されることが多々ある。また、その汎用性の高さや保湿効果への期待から、美容を目的とした不適切使用が問題視され、「医療上の必要がない」場合選定療養の対象となり、自己負担額が2024年10月より増額される。看護や介護の現場では、保湿薬としてのヒルドイドは必須の薬であり、美容を目的とした不適切使用には怒りを感じる。

 

〇不適切な薬剤の使用は、結果的に患者・家族に不利益となる

 美容を目的としたヒルドイドの不適切使用は、結果的に子供の医療費無料化にも影響を与えかねない。小児科では保湿薬としてヒルドイドを処方している例が多いことから、選定療養の指定で小児科医の処方に少なからず影響を及ぼす。結果的に、不適切な薬剤の使用は、各自治体で進む子供の医療費無料化に水を指し、患者・家族に不利益となる。


 ヒルドイドソフト軟膏は、「愛用者」も出てしまうほどに、非常に良くできた外用薬なのだろう。小児科においては、別途負担が発生してしまうことにより、処方をためらうことによって、医療的な不利益を被る患者が出てくる可能性もある。ただ、保険財源を使用しての美容目的処方は、患者から始まったのか、医療側から始まったのか、何とも分からないが、罪作りなほどに物議を醸す問題となっていることは間違いない。

 

 先発品を使用したいということをある種の「わがまま」的な位置づけ、ペナルティ的な自己負担、選定療養化。

 他品をもっての用に代え難く(銘柄指定)、医療保険でも処方されるので、7割引きで入手しようとする人が増加したことによっての選定療養化。

 とにかく、財源論を起点として、医療保険制度を維持すべくお役人、官僚たちによる、批判覚悟のルール作りは続いていく…。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※2)…

先月も書いたと思うが、それならば先発品の単価を下げればよいのでは?先発品メーカーは困るだろうし、「何を?」と思われるかもしれないが、その結果の不正や、品薄状態が起こり、厚労相をして業界再編の上に一つの成分に5社、などと国営企業並みのルールの割には、他人が発明して製法が分かっている薬を作るんだから安く作りなさいよ、さらに経営責任は経営者のあなた方だ!と言われる現象が起こっているのだ。
いちいちそこに企業間競争を促すよりも、先発品の単価を下げる方が、手間がかからないのではないか?その結果、先発品メーカーの収益性が悪くなって事業撤退するのであれば、それはその医療政策が悪いのだし、その医療政策を認めた(政治家を選んだ)国民が悪いのであり… つまりそういうことなのではないか。筆者も国民の一人であるが。

<筆者>

 

(※3)…

但し、⑥、⑨は、200床以上の病院に外来受診すると、医療費が高くつくかといえば、初診に関してはそうかもしれないが、再診に関して言えば、患者負担も処置等も含めて外来診療料に包括され、併科受診の診療料も1回分しか算定できないのだから、むしろこちらは患者にも医療費にも優しいはずなのだが。
つまり大病院が再診患者を受け入れると、
「労多く実入り(少)なし」
状態となる。入院にリソースを割かなければならない大病院の、人的資源も含めた医療資源の、ある意味「安遣い」が問題となってくる。特に「忙しい」とされる勤務医の、「医師の働き方改革」にも大きく連動してくる話でもあるわけだ。

<WMN事務局>

 

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