ワタキューメディカル
ニュース
短信:<新しいタンパク質構造を発見> 早稲田大学
2024年08月15日
〈新しいタンパク質構造を発見〉
早稲田大学
今は失われたタンパク質構造が解き明かすRNAポリメラーゼとリボソームタンパク質の進化的繋がり
【発表のポイント】
◆ 地球上の生命はDNAの遺伝情報から機能分子であるタンパク質を合成する遺伝子発現機構を共通して持っていますが、このような精巧なシステムがどのように誕生したかはよく分かっていません。
◆ 本研究では、遺伝子発現機構で働く多種多様なタンパク質の構造に着目し、これらタンパク質間の進化の実験的再現を試みたところ、全く新しいタンパク質構造「DZBB」を発見しました。
◆ この「DZBB」を介してRNAポリメラーゼやリボソームタンパク質などに重要な複数のタンパク質構造へと進化可能であることを実験的に確かめました。
◆ 鳥と恐竜の進化的関連性を示した始祖鳥のように、「DZBB」は複数のタンパク質の進化的繋がりを示すミッシングリンクである可能性が高いと言えます。
◆ 本研究で明らかにした遺伝子発現に関わるタンパク質の進化は、今後、生命がどのように遺伝子発現機構を獲得してきたかを探る上で重要な道標になると期待されます。
早稲田大学人間科学学術院の八木 創太 (やぎ そうた)講師(理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター客員研究員)と理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 田上 俊輔(たがみ しゅんすけ)チームリーダーの共同研究グループは、 進化のミッシングリンクとなる新しいタンパク質構造を発見し、これを用いることで遺伝子発現系に重要なタンパク質構造の進化を実験的に再現することに成功しました。
本研究成果はSpringer Nature社が出版する『Nature communications』(論文名: An ancestral fold reveals the evolutionary link between RNA polymerase and ribosomal proteins )にて、2024年7月18日(木)にオンラインで掲載されました。
■研究の波及効果や社会的影響
本研究では現存する4種類のタンパク質構造(DPBB、RIFT、OB、SH3)の進化プロセスを解明することができました。この結果は今後、リボソームやRNAポリメラーゼなどの巨大な分子がどのように誕生してきたのか、遺伝子発現機構がどのように誕生してきたのかといった謎を探る上で重要な道標になると期待できます。また、古代のβバレルタンパク質の進化は非常に短い期間に完了していた可能性を示しました。これはタンパク質の初期進化を探求する上で重要な視点を与えるものと言えます。
現在、タンパク質の構造を計算科学的に予測する技術が急速に発達していますが、発見したDZBB構造は最先端の技術を持ってしてもその構造を予測することは困難でした。つまり、本研究成果は生命進化分野だけでなく、タンパク質科学の分野の発展にも貢献できる可能性を秘めています。
■今後の課題
タンパク質は特異的な構造を形成し機能を果たすことで生命活動を支えています。そのため、古代生命の進化の謎を解くためには、構造だけでなくそのタンパク質の機能についても検討していく必要があります。本研究で再構成したβバレルタンパク質の一部もDNAやRNAと結合することが分かりました。今後、これらのβバレルタンパク質がDNAやRNAとどのように結合し、どのように機能するかを明らかにしていくことで、タンパク質と核酸による共進化の歴史も解明できるかもしれません。
■研究者のコメント
近年、計算科学を利用した生命進化の研究が活発になってきています。ただし、コンピュータ上で予測される生命現象が本当かどうかは、実験をしてみないと分かりません。本研究でも実験をして初めてDZBB構造を発見でき、さらには多様なタンパク質構造への進化の道筋を再現することができました。「生命の起源」という究極の問いを解明するためには、地道な実験的検証が極めて重要であると感じます。
■論文情報
雑誌名:Nature Communications
論文名:An ancestral fold reveals the evolutionary link between RNA polymerase and ribosomal proteins
執筆者名(所属機関名):八木 創太(早稲田大学人間科学学術院、理化学研究所生命機能科学研究センター)、田上 俊輔(理化学研究所生命機能科学研究センター)
掲載日時(現地時間):2024年7月18日(木)10:00
掲載日時(日本時間):2024年7月18日(木)18:00
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41467-024-50013-9
DOI:10.1038/s41467-024-50013-9
【研究内容に関するお問い合わせ先】
○早稲田大学 人間科学学術院 八木 創太
〒359-1192 埼玉県所沢市三ヶ島2-579-15 100号館596号室
E-mail: sota.yagi@aoni.waseda.jp
○理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 田上 俊輔
〒230-0045 神奈川県横浜市鶴見区末広町 1-7-22 中央研究棟 5F C516号室
E-mail: shunsuke.tagami@riken.jp TEL: 045-503-9205
ワタキューメディカルニュースの最新情報をメールで受け取れます。
下記の個人情報の取り扱いについて同意のうえ、登録フォームへお進みください。
■お客様の個人情報の取り扱いについて
1.事業者の名称
ワタキューセイモア株式会社
2.個人情報保護管理者
総務人事本部 本部長
3.個人情報の利用目的
ご入力いただいた個人情報は、WMNメール送信のために利用いたします。
4.個人情報の第三者提供について
法令に基づく場合及び本人ならびに公衆の生命・健康・財産を脅かす可能性がある場合を除き、ご本人の同意を得ることなく他に提供することはありません。
5.個人情報の取り扱いの委託について
取得した個人情報の取り扱いの全部又は一部を委託することがあります。
6.保有個人データの開示等および問い合わせ窓口について
ご本人からの求めにより、当社が保有する保有個人データの開示・利用目的の通知・訂正等・利用停止等・第三者提供の停止又は第三者提供記録の開示等(「開示等」といいます。)に応じます。
開示等に関する窓口は、以下の「個人情報 苦情・相談窓口」をご覧下さい。
7.個人情報を入力するにあたっての注意事項
個人情報の提供は任意ですが、正確な情報をご提供いただけない場合、WMNの送信及び最新情報などのご案内が出来ない場合がありますので、予めご了承下さい。
8.本人が容易に認識できない方法による個人情報の取得
クッキーやウェブビーコン等を用いるなどして、本人が容易に認識できない方法による個人情報の取得は行っておりません。
9.個人情報の安全管理措置について
取得した個人情報の漏洩、滅失または毀損の防止及び是正、その他個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じます。
このサイトは、(Secure Socket Layer)による暗号化措置を講じています。
ワタキューセイモア株式会社
個人情報 苦情・相談窓口(個人情報保護管理者)
〒600-8416 京都市下京区烏丸通高辻下ル薬師前町707 烏丸シティ・コアビル
TEL 075-361-4130 (受付時間 9:00~17:00 但し、土日・祝祭日・年末年始休業日を除く)
FAX 075-361-9060