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No.777 武見厚生労働大臣、大手後発品企業13社社長に集め、 安定供給で業界再編を要請

2024年08月15日

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◇「武見厚生労働大臣、大手後発品企業13社社長に集め、安定供給で業界再編を要請」から読みとれるもの

・供給不安3年以上続く後発医薬品市場の立て直し求め、業界再編提起

・130社の多くが中小メーカー、少ない生産ラインで少量・多品目を製造という構造的問題

・厚労省検討会も「業界再編が必要」との報告書

 

■武見大臣、後発医薬品の業界再編を要請、安定供給には「1成分5社が理想」

 武見敬三厚生労働大臣は7月4日、省内で後発医薬品メーカー13社の社長らと面会供給不安が3年以上続く後発医薬品市場の立て直しに向け、「業界の中核を担う自覚と気概のある企業には、業界団体を通じて産業構造改革の動きを牽引して業界再編 を行った上で、生産能力を持ち、安定供給を担う活動をぜひ示していただきたい」と、業界再編を促した。 さらに、安定供給の観点から、「1つの成分について多くの企業が参入し、少ないシェアを持ち合う状況は安定供給や生産性の向上に資するとは言えない」と指摘。「理想的には、1成分ごとに5社程度が適当ではないか」との見解を示した。

 後発医薬品は、一部のメーカーの品質不正を受け供給不安定となっており、武見大臣は「異常事態というべき状況である」とした上で、「品質の確保された後発薬を安定供給する産業全体の責任は果たされていない」「業界再編は待ったなしだ」と、主張。 経営統合などを促すため、独禁法に関する論点整理や財政的支援に取り組む方針も示した。

 

 後発医薬品メーカーは2023年時点で190社あるが、その多くが中小企業で各社は少ない生産ラインで少量・多品目を製造している。 このため、非効率が指摘され、不測の事態に陥った際には各社の増産余力がなく、業界をあげた対応は困難。さらに、製造や品質管理を担う人材不足も指摘されている。

 

■厚労省検討会が「構造的課題を解決するには業界再編が必要」との報告書

後発医薬品の安定供給を巡っては、厚労省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」が5月22日、安定供給に向けて企業間の協業や連携など個々の企業の取組みだけでなく、 「産業全体として、先を見据えた業界再編の機運を高めていかなければならない」と指摘。①大手メーカーや外資ファンドによる中小メーカーの買収、②医薬品卸会社や薬局による中小メーカーの買収、 ③複数のメーカーが集まり製造品目や機能を集約する-ことを求めた報告書を取りまとめた(図1 後発医薬品産業の在るべき姿)。

 

図1 後発医薬品産業の在るべき姿

 

 報告書は後発医薬品業界を巡る現状と課題について、①後発医薬品の使用割合は過去15年間で約35%から80%に拡大、②新規上市を繰り返し少量多品目生産(品質不良リスク、生産効率、収益の低下)、③流通慣行等により薬価が下落、④品質管理に係る不適切事案が続いている、 ⑤製造ラインに余力がなく、増産対応困難、⑥一社が供給停止になると、一定の在庫を確保するため同効薬に限定出荷が拡大する-ことをあげた。

 「創薬モダリティの変化もあり、低分子の後発医薬品市場の大きな拡大は見込めない。 これまでのようなビジネスモデルは、今後は成り立たない」と指摘。 「個々の後発医薬品企業は、それぞれ、生産効率の向上と増産、シェアの拡大により収益性を向上させ、筋肉質の収益構造を目指さなければならない-と、収益構造の改善を求めた。

 「何よりも、国民に品質の確保された後発医薬品を安定的に供給するという産業全体の責任を果たさずして、後発医薬品が国民から真に信頼を得ることはあり得ない」と強調した上で、後発医薬品産業の在るべき姿と、 ①製造管理・品質管理体制の確保、②安定供給能力の確保、③持続可能な産業構造-の3つの柱に対応した対策を実施するため、厚労省において法的枠組みの必要性も含めて検討を行い、早急に実行に着手すべきと提言した。

 

 

 


 

先月号もであったが、こちらも

「待ったなし!!」

なのだそうだ。

 

業界再編。

 

 この言葉を聞くと、これまで何度かドラマ化されてきた、山崎豊子原作の社会小説、「華麗なる一族」を想起させる。

 

 筆者が毎週観ていたのは、2007年1月に放映がスタートした、北大路欣也、木村拓哉が主演のシリーズであった。

 

 「社会小説」とは、『早稲田文学』1898年2月号「所謂社会小説」で下記の四分類に定義されたそうだ。

「近世の社会主義に関する事態」

「社会の個人に対する関係」

「漠然謂ふ小社会に関する事態」

「全体として社会の行動」

 これらのうちのどれかをテーマとし、丹念な取材に基づき、積み上げられた事実を基にしたストーリーが社会小説ということになる。他に山崎豊子原作でドラマ化した社会小説としては、「白い巨塔」、「沈まぬ太陽」も有名だ。

 

 本文によれば、武見厚労相より

「業界の中核を担う自覚と気概のある企業には、業界団体を通じて産業構造改革の動きを牽引して業界再編を行った上で、生産能力を持ち、安定供給を担う活動をぜひ示していただきたい」と、業界再編を促した。

 

「促した」

 

 こちらの業界再編は自覚と気概のある企業が自ら立ち上がり、自分たちで行わなければならない業界再編である。

華麗なる一族では実際には、いわば官主導(裏側で絵を描く)による銀行再編であったが、表面的には「小が大を喰う」というフレーズで、銀行間の熾烈な企業間競争によって再編が進んだように社会的な演出がなされていた。

 果たして後発医薬品業界において、

 一つの成分に多くの企業が参入するのではなく、一成分ごとに5社程度

 と掲げられた、官が設定した目標に向かって民間企業が主体的に動く業界再編が進んでいくことになるのだろうか?

 たくさん処方される成分に多くの企業が参入しようとするのは、市場拡大を目指そうとする企業であれば、当然なのかもしれない。それを一成分ごとに5社とは、どのように決めていくのか?成分ドラフト会議でもするのか?

 なんだか、いっそ国営化した方がこういうことは早く進むのではないか?とすら思えなくもないが。

 建前上、我が国においては民間主導の健全な経済活動によって発展すべき という民主資本主義的な考え方に基づいている筈なので、おそらくそうはならないだろう。

だからこそ、後発医薬品メーカーは、当然「売れる」成分にターゲットを絞って参入する、「成分偏在問題」が発生するのだ。

あれ?「偏在」とか、どこかで聞いたような言葉だなぁ(※1)。

 

 今回のテーマは、大手後発品企業13社に対する業界再編要請についてである。

 

 まずはこんなコメントを。

〇厚労省官僚:「少量多品目生産といった後発品産業の構造的課題に取り組む」

 2022年6月末の組織再編により医政局に創設された医薬産業振興・医療情報部門の内山博之医薬産業振興・医療情報審議官は、2024年の年頭所感で、「医薬品は、後発品産業においては少量多品目生産といった構造的課題がある中で、メーカーの医薬品医療機器等法違反を契機とした供給量の低下等により供給不足の事態が生じているとの認識を示した上で、産業構造上の課題解決について、「後発品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方検討会において、品質が確保された後発品を安定供給できる企業が、市場で選ばれる仕組みの検討など、有識者のご意見をうかがいながら議論を行っているところであり、こうした取り組みを今後、着実に進めていきたい」と述べた。さらに、2024年度薬価改定において、供給不足が生じていて不採算品と考えられる品目について、薬価上の対応をするとした。


 特許切れの先発品が築いてきた市場を、あくまで薬効は同じ成分を使用しているとされる後発品が席巻していく、安価に、安全に医療費の適正化が進み、製薬メーカーは新たな開発を行い、次の新たな薬効を開発し人類社会に貢献する…。

 教科書的な建付けはそうなのだろうが、昨今の、製薬業界に限らない、メーカーの品質不正問題を鑑みるに、少し考えてしまう。加えて昨今の世界情勢だ。世界のパラダイムは確実にシフトしている。

 いっそ先発品の点数を下げるという行為だけで事足りるのでは?そんなことも考えてしまいたくもなる。

 仮に点数を下げられた先発品メーカーが、その市場から撤退するというようなことがあるのであれば、つまりその点数は下げすぎなのだろう。ましてや新たに設備してまで参入する後発医薬品メーカーでは、土台、体力的に覚束なくなるのは当然なのかもしれない。

 上がらない(むしろ下がる一方)と分かっている収入のために、厳格な品質管理と設備更新を繰り返す。当然生産効率を高めるなどの企業努力はあったとしても、何かそこに虚しさを感じてしまうのは気のせいだろうか?

 

 今度は経産省のコメントを。

〇経産省官僚:「創薬ベンチャーのエコシステム強化のためリスクマネーを供給」

 都内で開かれた「ヘルスケア産業における日本の強みとは何か」をメインテーマとしたシンポジウムで、「我が国バイオ産業(創薬分野)の競争力強化」について講演した経産省の下田裕和氏(商務・サービスグループ生物化学産業課長)は、ベンチャー企業への支援策と製造拠点整備、再生医療分野への取り組みについて説明。創薬分野の課題として、「新薬の創出にあたっては、開発段階に応じた対応策を講じる必要。特にアカデミアの研究開発と産業化の間には溝があり、アーリーステージからの切れ目ない支援が重要である」と指摘。創薬ベンチャーに対し、認定ベンチャーキャピタル(VC)の出資額の2倍相当の補助を行い、薬事承認につなげる目的の同省のリスクマネーを供給する「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」を紹介した。「国内市場は縮小傾向にあるため、海外のベンチャーキャピタルも対象としている。鍵となるのはVCで、パイプラインのグローバル開発による価値最大化、IPOではなくM&Aを基本とした Exit戦略、IPOの場合は医薬品上市のためのIPOを行うといった観点を求めていきたい」と、ベンチャー企業への支援策と製造拠点整備、再生医療分野への取り組みを強調した。

 


 「魔の川」、「死の谷」、「ダーウィンの海」。

 とにかくあらゆる技術が世に生まれ、社会から受け入れられ、継続発展するために越えなければならない3つの難所を指す言葉だ。

 ありていに言えば、とにかく時間・労力・お金がかかる。

 経産省はそのお金、「リスクマネー」の供給事業をシンポジウムで紹介している。

 

 医師のコメントを。

〇安定確保医薬品の定期的なリスト見直しは、医学会と協働で

 日本医学会連合(門脇 孝会長)は6月13日、「医薬品安定供給に関する提言」を取りまとめ、厚労省の浅沼一成医政局長に手渡した。提言では、「安定確保すべき医薬品の種類は年を追うごとに変化することが考えられるものの、3年前から変更が行われず、多くの医療系学会の幹部が“リストを知らない”ことも判明した」と指摘。安定確保医薬品の定期的なリスト見直しを厚労省と協働で行い、「関係者に周知し、薬価を含めた政策に反映すべき」と促した。さらに、厚労省の会議体に日本医学会連合を代表する委員が招集されてこなかったとも指摘し、「会議体の構成員ないし参考人を招集し、発言の機会が与えられる」ことを要望した。

 

〇第一選択薬が不足し使えない。感染を繰り返す子が増えている

 都内の小児科開業医。主に子どもが感染し発熱やのどの痛みなどの症状が出る「溶連菌感染症」に繰り返し感染する患者が増えている。第一選択薬が不足していて使えないことが、感染を繰り返す子が増えている原因の1つだと思う。再感染したり、体の中に残っている菌がまた増えたりして、本来早く治るべき病気が早く治らなくなってしまっている。

 


 俗に「人食いバクテリア」と言われる溶連菌。

そうか。最近大人でも感染者が増えていると聞くが、もしかするとこういった背景があるのかもしれない。

 

 薬剤師のコメントだ。

〇処方医に処方日数の短縮や効果の似ている他の薬への変更の相談

 連日、薬剤師は「薬が納品されてこない!どうしよう!」と頭を悩ませている。来局される患者さんが次に来られるまでになんとか納品できるように手配したり、別の製薬会社の同成分の薬の発注を試みたりとできる限りの対応をしている。それでも用意が難しい場合は患者さんの了承を得たうえで、処方医に処方日数の短縮や効果の似ている他の薬への変更の相談をしている。

 

〇患者さんにご協力をお願いしたいこと

① かかりつけの薬局で調剤してもらう。出荷調整が続いている今、医療機関の実績に見合った配分でしか納品されない。いつもと違う薬局に行っても用意ができない可能性がある。

② 残薬があれば持参する。薬が簡単に手に入りにくい状況になっている。自宅に飲み忘れて余ってしまっているお薬があれば、受診時に持参し、ぜひ医師や薬剤師に相談して欲しい。


 我々が、これまで当たり前のように入手できると信じていたものは、実は多くの方の労力によって手元に届いているのであり、どこか一つでも綻びが生じると、あっという間にこのような状況になる。

 この状況を生んだ背景にあるのは

 世界情勢か?

 それとも医療政策か?財政問題か?

 はたまた、先ほど筆者が不用意にも使用してしまった「当たり前」という表現、多くの人の目に見えない努力によって提供されているサービス、いわば「恩恵」が、さも「当たり前」に、一定のお金を払えば当然の権利として享受できる と思ってしまっている、多くの人の理解不足によるものなのか?

 

薬品卸のコメントも紹介したい。

〇医薬品供給不足のあおりを受けるのが、医薬品の流通を担う卸売業者

 関西地方の中堅卸。医薬品供給不足のあおりを受けるのが、メーカーと医療機関・薬局の間に立つ医薬品の流通を担う卸売業者。医療機関や調剤薬局から「なんとかしろ」「期日まで納品しないと取引をしない」と、電話越しに恫喝や取引を盾にしたカスタマーハラスメントが横行。こうした電話対応に1日の半分を費やし、精神的に追い詰められて休職者が続出しているという。

 

〇医薬品の在庫を一括把握するシステム構築を

 医薬品の在庫に関する国内情報を迅速に一括把握できるシステム構築を。製薬会社から薬局に至るまで各段階に在庫がどの程度あるのか把握できるシステム開発を早急にして欲しい。海外では薬の流通状況を一括把握できるシステムの運用が広がっている。米食品医薬品局(FDA)は米IBMなどの協力のもと、ブロックチェーンを活用して製薬会社から卸、医療機関、薬局までの各段階での取引情報を管理する仕組みを構築した。厚労省も医薬品の在庫に関する国内情報を迅速に一括把握できるシステムを開発し、2027年度にも運用を始めると聞く。

 


 品薄、欠品。

流通に関わる方にとっては聞きたくない言葉だ。

 「なんとかしろ」

 「期日まで納品しないと取引をしない」

 電話越しの恫喝にカスタマーハラスメント…。

 それだけの勢いで納品を迫る医療機関や調剤薬局にも、おそらくそれなりの理由があるのだろう。

 それを分かっていても、この流通に関わる関係者にとっては、

 「欠品への対応」

という行為が一番嫌な行為の最たるものなのだろうとしみじみ思う。

 20代の頃、中堅食品メーカーに勤めていた筆者も、この負のスパイラルの渦中にいた。

 絶対的に不足している自社商品を、社内で頭を下げて、時には本社まで掛け合って(少ないが)数量を確保し、今度は卸問屋に必要数が納品できない旨を連絡しながら頭を下げて納品し、足りないのでまた倍の数量を発注され、当然不足のまたお詫び。さらにもっと不足すると、卸問屋の先にある、その商品が納品された小売店に客として買い物に行き、その商品が追加発注されない程度に(2~3個)売価で購入し、それをかき集めて会社に帰り、納品荷姿に箱詰めし、さらに卸値で問屋に納品する、日々これの繰り返し。

 挙句の果てには、ようやく増産され、安定供給された頃にはそこまで売れもせず、今度は返品対応…。嫌味のように、「あんたらがあれだけ作れ作れっちゅうたんやで。弾(商品)はたくさんあるんやから、たあんと売ってきて~や。これで売上100%も間違いなしやな。」

 …少し売れ筋商品が発売になると大体このパターンだ。

 こんなことやっていて将来はあるのか?真剣に悩んだものだ。

 

 またある日のこと。

 始業開始間もなく、新入社員なので、会社にかかってくる電話をとれば(3コール以内と言われていたので。ところが先輩社員は誰も取ろうとしない)、それは大口取引先からの注文だ。

 「今から出ないといけないのに…」と思いつつ、何十品にも渡る注文の数々。注文書3枚コース。これはヘビーだ。しかも自分の数字には全くカウントされない注文だ。会社のためではあるが、自分にとっては全くの無駄骨である。思えばそれが分かっているから先輩社員は電話を取らなかったのだろう。

 その上、欠品中の人気商品も大量発注だ。

 「絶対にその数量入れてんか!」

 社内の欠品事情を知っており、自分にだって思う数量が回ってこない筆者は、

 「申し訳ありませんね。その商品はもしかしたらご発注通りの数量は入らないかもしれません。」

 真面目に答えると

 「なんやと?!…(中略)…お前いったいどういうつもりや?!あんた、名前は?」

 若気の至り。

 「大変申し訳ありませんが、商品が欠品気味なのはどうしようもなくて、私だって自分の担当先にも商品回してもらえずめっちゃ困っていて、内心は怒ってるんです。私は○○(筆者の名前)と申します。よー覚えとってください!!」

 と、多少語気も荒めに切り返してしまった。

 言ってしまって、少し青ざめた。支店長に怒られるかもしれない。いや、この会社との取引すら危ぶまれるかもしれない。始末書か?色んなことが頭をかすめたが、後の祭りだ…。

 ところが。

 その卸問屋の発注担当者はトーンダウン。

 「まあ…、あんたも大変やな。悪かったな。〇〇さん。とにかく担当営業から連絡させてや。」

 その晩、担当営業の先輩にお詫びをする羽目にはなったが、事なきを得たのか? 欠品問題は全く片付いてはいなかったが。

 とにかく欠品・品薄が発生するとろくなことにならない。

 あれから時代は30年も経っている。IT技術の進化、さらにはAIの台頭と、多くの改善がなされていると思われる流通業。しかし、未だこんなコメントを紹介することになろうとは…。

 関わっておられる多くの方々が、一日も早く精神的安寧を取り戻すことができる日が来ることを、心よりご祈念申し上げたい。

 

 渦中の後発医薬品メーカーのコメントだ。

〇自社製造できる企業としてあるべき姿の実現に貢献したい

 武見厚生労働大臣の面談で、サワイグループホールディングスの澤井光郎代表取締役会長兼社長は、「安定供給の確保のためには自社製造ができる企業の貢献が不可欠であり、あるべき姿の実現に貢献したい」と意欲をみせた。「重複投資を続けることは社会的損失が大きい。公共事業の考え方で大規模設備や多品目生産の改善に取り組みたい」として、サワイグループ内の生産能力を活用し、他社から依頼のあった不採算品目を引き受け、増産することを検討していることを明らかにした。

 

〇他社アライアンスによるバックアップ体制構築で安定供給へ「官民あげた努力の必要性」指摘

 Webで参加した東和薬品の吉田逸郎代表取締役社長は、個社として「バックアップ生産体制」を含む安定供給の強化を進めていると説明。長期的には、「他社とのアライアンスによるバックアップ生産体制の構築により、供給の安定性を回復させ、堅牢な生産体制の構築に努めていきたい」と意欲をみせた。ジェネリック業界全体としては、「産業構造の見直しと強化に、官民上げて努力をするべきだ」と述べた。

 

〇増産に向けた人手の確保ができない

 工場では、品質管理のために、専門知識のある作業員が計画に沿った細かい品質のチェックを行う必要がある。効率化したくても、こうした手順は省くことができない。人手不足の中で、専門知識のある人材を育成するのは半年から1年かかり、なかなかすぐに増産に向けた人手の確保ができない。

 

〇すぐに増産できない低い利益率

 設備投資をして製造ラインを増やすことも増産のための選択肢の1つだが、それも難しい。そもそも後発医薬品は薬価が低く、例えば薬価の低い去痰薬を作っても利益は上がらなくなる。さらに、原材料の高騰も追い打ちをかけている。利益率の低い薬であるが故に、設備投資に回すほどの余裕がない。利益が出にくい薬価の仕組みが変わらなければ状況は改善しない。


 後発医薬品メーカー大手の公式的なコメント、一方で企業は異なるのだろうが、実際の本音部分。ただ、それが分かっていての後発医薬品への進出ではなかったか…。世の中なかなかうまくいかないものである。

 

 医業系コンサルタントのコメントはこうだ。

〇長い目で見た薬不足の解決策が、電子処方箋など医療DX普及

 マイナ保険証、電子処方箋など医療DXが普及すると、患者自らが、自分の医療情報についてマイナポータル上で確認できる。病院での診療情報の履歴や、薬局で処方された薬剤の情報を素早く簡単に閲覧でき、自分自身の健康管理に活かせるようになってくる。健康への意識が高まって、病気になる確率が下がれば、治療や薬の需要も抑えられる。長い目で見ると、医療DXは薬不足のリスクを下げることにつながる。


 それはそうなのだが。人間の感情はルール通りに働かない。

 いざという時のために薬は余分に取っておきたいし、そのためのハシゴ受診だってなくなるとは言い切れない。かなり前に紹介した、子を持つ働き手などは、母親の場合が多く、その傾向も強い。特に子どもが小さい場合はなおさらだ。やれルールだ、なんだかんだ言ってもそんなことはどうだっていいのだ(医療保険制度上はよくないことを承知の上で読んでください)。自分はまずルールを守るかもしれないが、いざ子どものこととなれば話は別だ。子を持つ親は、我が子のためにできることは何だってしてあげたいのだ。

 そんな親心と、制度上のルールを同一線上で論じることはとても難しいなぁ。

 

 最後にこんなコメントを紹介して締めくくりとしたい。

〇ある患者:政策決定には、「最大の被害者」である患者の意見を聴取すべき

 不安定な医薬品供給の最大の被害者は患者・家族である。政府は供給不安に対する政策を検討する際は、水際で対応を迫られる医療者や、不安や戸惑いを抱く患者の意見を聴取し、ニーズを汲み取るべきである。


 …。

 10年以上も前のことだが、ある勉強会での官僚とのやり取り。

 「私は先輩に教わりました。『現場の声に耳を傾けすぎるな。現場は(時として)噓をつく』と。」

 なるほど。「嘘」はともかくとして、官僚が広く意見を汲み取ると、使命感の強い官僚であればあるほど、百人いれば百通り、千人いれば千通りの異なった正義に押しつぶされてしまい、信念を持った政策の立案につながりにくいのかもしれない。

 

 後発医薬品の安定供給問題は、それを必要としている患者にとって非常に切実な問題である。

 世界中からリスペクトされる、譲り合い、他者を思いやる心を持つ、そんな日本は、果たしてどのような答え、どのような処方箋を出していくべきなのか?

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…一成分ごとに5社程度 という、参酌標準的なものが示され、その考え方を良しとするのであれば、はるかに着地困難が予想される、本命の「待ったなし偏在問題」にも参酌標準をお示しいただければ、少しは解決に進む道筋も見えてくるのではなかろうか?

<筆者>

 

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