ワタキューメディカル
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ホテルリネン業界のつぶやき
2024年06月17日
~他力本願~
先月17日に発表された2023年のインバウンド(訪日外国人)の国内消費額が5兆2323億円とあっさり政府目標値の5兆円を突破してしまった。23年のインバウンド数が2506万人なので一人当たり20万円強の消費額となりこちらも政府目標の一人当たり20万円を突破した。2024年のインバウンド数目標が3310万人に対し既に1~4月迄の累計で1160万人に達しているので、この調子で行くと2024年は3400万人ペースとなりインバウンドの消費額も6兆円越えが予想される。
2023年の日本の主力産業である自動車輸額が17兆円なので今や半導体4.9兆円を抜く第2の輸出産業になった。円安が悪と言われる中で観光業は国家計画に基づき着実に実績を積み上げている。流石に国策となると政府も力の入れようが違うな。と、絶賛したい所だが、「いやいや、それは違うでしょう?」 円安の恩恵が大きく貢献しているのはだれが見ても見え見えだ。他力本願の結果オーライでしょう! 政府目標を2023年、2024年と改訂しているが、これまた為替レートの設定がない。円安不況と大騒ぎしている割には、$=¥200になったら易々と2030年の政府目標を達成しちゃうよ。本当に政府はこんな茶番な国策で良しとするのか?
そもそも将来的に衰退するであろうと思われる自動車産業に危機感を持ち、外貨獲得代替手段として日本政府が観光立国基本法まで設定して長期的視野で観光業を育ててきたもの。
2019年のインバウンド消費額4.8兆円の時は$=¥109だったので、これを$換算すると$4400億に 。2023年の平均為替レートは$=¥144なので1.32倍に。と言う事は、2023年は$換算で$3630億消費となり2019年の8掛け程度しかインバウンドに落として貰ってないと言う事になる。今は$=¥156だから、2020年に掲げたインバウンド4000万人での消費額は8兆円ではなく11.4兆円、2030年もインバウンド6000万人、消費額15兆円ではなく21兆円を稼ぎ出して、初めて帳尻が合うというもの。
これらインバンド消費額の達成は為替の絡繰りもあり時間が解決すると思われるが、問題はインバウンドを受け入れる器が育っていないと言う事だ。一人当たりの売上25万円への引上げは可能かも知れない。然し、6000万人の受け入れ態勢作りにはハードルが高い。器もなければこれから器を増やすにも人手が足りない。建設資材は円安で高騰しており、お先真っ暗状態だ。半導体にも力を注ぐ必要もありと思うが、政府には手早く外貨獲得が可能な観光業界にも真剣に取り組んで頂きたい。
既に大都市でのホテル稼働率は85%を上回っているが、ホテルで85%と言えば実質的には満室状態である。後3000万人を受け入れる為には最低でも1億泊分(約4万室)の器が必要になってくる。今のホテル旅館件数で事足りるとでも思っているのか、アクションが見えない。オーバーツーリズム問題もあり東京・大阪等の大都市を経由せずに直接地方観光地に入出国できる体制も徐々に整いつつある。それでも足りない器は新設せねばならない。後5年以内にそれも人手不足、建設資材高騰条件の中で。大阪万博ですら工期が危ぶまれている有様だ。
その一方で外資系ホテルがどんどん増えている。新設のラグジュアリーホテルもあるが、潰れかかったホテルを円安の恩恵で買い漁り看板挿げ替えてリニューアルオープンしているんだから市場のキャパは余り変わってない。然も、売上総利益の30%程度のロイヤリティは外資に確り持って行かれるんだよ? 円高に対するマイナス要因なんだから外資系ホテルが増えるって糠喜びしている場合ではない。
インドネシアのジョコ大統領が「誰の為の改革なんだ!」と国会で吠えてライドシェアの参入を渋る政治家たちの意識を改めさせ、タクシー業界に一石を投じ経済改革を実施したのとは対照的に、台湾有事発言で中国大使に脅迫されても日本の政治家は抗議もせず、自分たちの交際費の逃げ道探しに日夜没頭している。またそれが新聞・TVのTOPニュースになるんだから平和な国なんだなとつくづく実感する。
然し乍ら保身にばかり走らず、後世に必要な事だけは確実に進めて貰いたい。全産業の根幹である労働力不足問題にしても、$=¥200になったらもう海外から出稼ぎ労働者は来ない。ならば限られた労働力で将来どの様に経済を回して行くのかが課題になる。日本に永住権のある外国人の子供や孫達が安心して進学や職に着く事が出来る様に今からでも制度改革を行ない、労働力流出を止める抜本策を講じる事も必要なのではないかと思う。最早単なる労働力搾取では外国人は日本に魅力を感じない。長期的視野で外国人が永住出来る制度改革は待った無しだ。
観光業界は今でも65%の人手不足と言っているし、現在7100万人の生産年齢人口も10年後には500万人、20年後は1500万人の減少が見えている。となると、この業界だけでも80%の人手不足状態となる。輸出産業をけん引する業界第2位の観光業界がこんな状態で真面な経済成長を続けて行けるとは誰も思わないだろう。もう結果オーライは懲り懲りだ。子孫がちゃんと日本で飯を食って行けるだけの資産を残してあげるべきではないだろうか?
経済的に強い国家を形成するには製造業は欠かせない。ロシアや中国の様に武力で海外進出し相手国の資源を奪い取ろうとする国々は別として、自国に資源がない国は、第1次、第2次産業を復活させ作った付加価値製品を海外に輸出し外貨を稼ぐ事で国力を強めて行くしかない。次の時代を担うIT企業ですら2030年迄に79万人不足していると言われており、高校生辺りから青田買いを初め、囲い込みやら一気通貫でIT戦士を確保して行かねば間に合わない。国家存亡に関わるIT戦争は熾烈を極める為、これは已む無しかも知れない。
国家の制度改革を待っていては時代の波に乗り遅れる。今や転職は当たり前の時代となり魅力のない企業は淘汰される運命にある。学生のインターンシップよろしく外国人育成を実施し、多少なりとも企業へ目を向けてもらう様な取り組み、また彼らの子息子女迄も面倒を見る様な制度も真剣に考えたらどうだろう? 今年の梅雨入りは1週間程度遅いようだが、世間ではそろそろ青田買いの季節に入っている気がする。
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