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No.737 財務省、医療機関の経営は近年になく好調、新型コロナ特例の診療報酬・補助金の縮小・廃止求める
2022年12月15日
◇「財務省、医療機関の経営は近年になく好調、新型コロナ特例の診療報酬・補助金の縮小・廃止求める」から読みとれるもの
・財務省試算で、医療機関の経営は近年になく好調
・新型コロナ特例の診療報酬・補助金の早急な縮小・廃止求める
・医療法人経営透明化で「職種ごと1人当たり給与額が確実に把握できる制度設計」提案
■医療機関の経営は「好調」、コロナ特例の診療報酬・補助金の早急な縮小・廃止を
財務省主計局が「一定の仮定を大胆に試算すれば、令和4年度の医療費見込みに補助金収入見込みを足した計数は約49兆円と見込まれ、医療機関の経営は近年になく好調となることが窺える」と挑戦的な試算を示し、新型コロナ特例の診療報酬・補助金の早急な縮小・廃止を求めた。
財政制度等審議会財政制度分科会(分科会長:榊原定征東レ社友・関西電力取締役会長)は11月7日に社会保障について議論し、財務省主計局が厚生労働省の「医療経済実態調査」と「医療費の動向」(いずれも2021年度)に、2021年度の補助金収入から2022年度の収入見込みを算出して付け加えて分析したデータを提示。「医療機関の経営は近年になく好調」などとして、新型コロナウイルス感染症の発熱外来などに対する特例の診療報酬や、ワクチン接種などに関する補助金を早急に縮小、廃止することを提案、委員からも同調する意見が多数あがった。さらに同省は、「年明け以降のオミクロン株は当初と比べ弱毒化していると言われるが、既にコロナ前の報酬水準を回復している医療機関に対し、令和4年度に補助金と診療報酬の特例で年間4兆円程度を支援することとなる見込み」と指摘した(図1 最近の医療機関の経営実態)。
新型コロナ対策については「Withコロナへの移行」に主眼を置き、病床確保料、発熱外来への診療報酬上の特例措置、ワクチンの接種体制確保補助金などの縮小を強く主張。病床確保料では10月の見直しを経ても「1日当たり最大40万円を上回る病床確保料は、平時の診療収益に加えて2倍から12倍を支払っている計算となる」とし、引き続き検討の余地があると指摘。ワクチン接種費用については、人材獲得競争などから自治体ごとに人口1人当たりワクチン接種体制確保補助金使用額に格差(最大は最小の約24倍)が生じていることをあげ、人件費単価の上限設定などの効率化を求めた。
また、国公立病院は新型コロナの病床確保料などの「異例の措置」で2020年度以降収益状況が大きく改善しており、国立病院機構と地域医療機能推進機構(JCHO)はそれぞれの根拠法に基づいて積立金の国庫納付義務があると強調した。
■医療法人経営透明化で「職種ごとの1人当たり給与額が確実に把握できる制度設計」提案
さらに財務省主計局は、厚労省で検討が始まった医療法人の経営実態の透明化に向けたデータベースの構築について、新設する経営状況データベースへの報告項目で職種ごとの1人当たり給与額を任意とする厚労省案に対し、「職種ごとの1人当たりの給与額が確実に把握できるような制度設計を行うべき」と提案。財政制度等審議会財政制度分科会の増田寛也分科会長代理(日本郵政取締役兼代表執行役社長)は財政審後の会見で、複数の委員から賛同する声があがったと報告。「見える化により、分配の適正化に資するものだ」との見解を表明し、「(同氏が座長を務める政府の)公的価格評価検討委員会でもこの問題について議論していきたい」と述べた(図2 医療法人等の経営状況の「見える化」②(改革の方向性))。
医療法人の経営実態の透明化については、政府が今年6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針2022)に、「医療法人・介護サービス事業者の経営状況に関する全国的な電子開示システム等を整備するとともに、処遇改善を進めるに際して費用の見える化などの促進策を講ずる」ことが明記された。医療法人では事業報告書の都道府県ホームページなどでの閲覧が2023年度からスタートする予定だが、事業報告書では法人の事業収益や費用は把握できるが、1人当たりの給与額などは把握できない。財務省主計局は、「公的価格評価検討委員会における議論を踏まえ、現場で働く医療従事者の処遇の把握を行い、費用の使途の見える化を通じた透明性の向上を図る観点から、職種ごとの一人当たりの給与額が確実に把握できるような制度設計を行うべき」と主張している。
令和4年もいよいよ年の瀬である。
1年が経つのは非常に速い。
と感じるかどうかはその人の年令によって異なるらしい。
例えば10才の子どもの感覚は、これまでの10年間、
365日×10(年)→3,650日 (うるう年は考慮に入れないものとする)
365日/3,650日→0.1、つまりこれまでの人生の10%程度を1年の時間の長さとして感じる。
一方で還暦を迎えた60才 歳男の感覚は、これまでの60年間、
365日×60(年)→21,900日
365日/21,900日→0.016、つまりこれまでの人生の1.7%程度しか1年の長さとして感じない。
とまあ、これくらい時の経過に関する感じ方が異なるのだ。
であるので、年を取るにつれて一年の経つのが早く感じる、というのは、科学的にも立派に根拠があるようだ。
今回のテーマは、「近年にない好調な経営」と、経営をべた褒めされている一方で(「ほめ殺し」か?)、好調だったら補助金も不要だろうという財務省の「一定の仮定を大胆に」試算した結果を基にした、新型コロナ特例の縮小・廃止についてである。
コメントを紹介したい。
〇財務省主計局主計官:新型コロナによる財政出動で財政はさらに悪化。コロナのようなものは発生する前提で制度面、財政面の対応を
財務省主計局の大沢元一主計官は10月30日、都内で開催された第1回日本フォーミュラリ学会学術総会で講演。「バブル期以降、経済の低成長により税収が増えない一方で、高齢化による社会保障費が増大。新型コロナによる財政出動で財政はさらに悪化している。これからもコロナのようなものは発生し得るという前提で制度面、それから財政面の対応をしていかないといけない」などと述べた。
確かに、これからも新興感染症は発生し得るのだと感じる。新興ではないが、日本にはまず入ってこない(一度入ってきたという報道が数年前にあったが)、エボラ出血熱やデング熱の流行で未だ大変な途上国もあれば、M痘(旧:サル痘と呼称)のような感染症も発生した。季節性インフルエンザにしても、今後毒性の強い株や、動物→ヒト感染からヒト→ヒト感染に発展してしまう可能性も否定できない。北半球の永久凍土が溶け出し、凍土の中で閉じ込められ不活化していたウイルスや菌の活性化による、新たな感染症の登場も否定できない。
…。
一体我々は、医療提供体制を構築すべき国としては、それを担う医療現場はどこまで備えればよいのか?
約3年前に端を発したCOVID-19による新型コロナウイルス感染症は、確かに人類にとって有効な治療法や薬効が見つからないという点において脅威であった。しかもアルファ株やベータ株にはじまり、デルタ株などは毒性も強く、未知なるウイルスへの不安から、今振り返っても、当時世の中があっという間に様変わりしたものだと感じる。
ゆえに財政出動も景気よく(?)行われた。医療人が患者を診てくれなければ、治療してくれなければ生命に危険が及びかねないという状況は今も変わらないが、我が国の医療提供体制の、感染症に対する、ある種の脆弱性がクローズアップされたのもこれが契機であった。
「当たり前のようにこれからも繰り返されるコロナのようなものにより、いちいち特別な財政出動をする必要があるのか?」
というのが財務省の主張である。
続いては厚労省のコメントを。
〇厚労省、コロナ病床確保料の減額調整など緊急包括支援事業実施のルール示す
厚労省は10月28日付けの事務連絡「令和4年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて」で、①新型コロナウイルス感染症の重症患者を受け入れる「即応病床」を確保する場合には、病床確保料による補助が行われるが、コロナ患者受け入れに消極的で、かつ経営状況が良好な病院では、病床確保料の減額調整が行われる。②減額調整のベースとなる「即応病床使用率」(=コロナ患者受け入れ状況の判断)にあたっては「新規病床を計算から除外できる」「周産期病床などを除外できる」とする救済措置を設ける。③経営状況の判断にあたり、「増床やワクチン接種による収入増」は、収入計算から控除できるが、「経営努力による収入増」は控除できない-など、新型コロナ感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たってのルールを示した。
「幽霊病床」が指摘されたことに端を発した新たなルール。「好調」と称された医療機関においても、今後もその体制を維持し、「波」がくればいつでも患者を受け入れる準備を、気を張って行うため、人繰りも含め、様々な台所事情がある中、財務省にその経営手腕を褒められるほど「好調」を自認しておられるのだろうか?
財政制度等審議会の委員からはこんなコメントだ。
〇経営の見える化に関して、人件費の正確なデータが必要
社会保障全体を持続可能な制度としていくために負担の議論も当然だが、給付自体を効率的にしていく改革を着実に行う必要がある。経営の見える化に関して、人件費の正確なデータが必要。職種別給与、データの提出を任意か義務か取り扱いが決まっていないと聞いているが、確実に各医療法人のデータが収集できる仕組みを構築しないといけない。
〇発熱外来への診療報酬は時限を区切って臨時的な措置にしていくべき
発熱外来への診療報酬は時限を区切って臨時的な措置にしていくべき。見える化は職種別の人件費の詳細を報告するデータベースを公表するべきである。
〇医療改革の議論は適正なデータに基づくべき
医療改革の議論は適正なデータに基づくべきで、医療機関の経営データさえまともに取れない状況は改めるべきである。
〇厚労省の資料では、職種別の給料、人数は見える化の対象になっていない
厚労省の資料では、職種別の給料、人数は見える化の対象になっていないように見える。公的価格評価検討委員会の中間整理と矛盾する。中間整理に沿った形にしていくべきだ。
医療は公的な財源が投入されているからこその、正当であるが厳しいコメントだ。一般企業からすると「賃金台帳」を全て出しなさい、ということか。もちろん医療機関にはそれは存在するだろう。数百人、時には千人単位に及ぶ医療従事者の人件費データを、匿名性を担保しつつ正確に提出する、ということを、その労力も含め理解されて求めておられるのだろうか?
確かにマクロ的な数値を使用すると、「平均」などという、本来は仮に存在していたとしても、実際にはそこまで平均額と同等の人数が存在しないはずの金額で議論が進んでしまいかねない、実情に沿っていない可能性が出てきてしまいかねないので、おっしゃることは分からなくもないが。
10月から、主に「看護師の給与」を上げるために新たな評価料がついたことは記憶に新しいが、そこは財政審が求めておられるような細かなデータを基にした議論だったのか?少し疑問が湧かなくもない(※1)。
今度は自治体のコメントを。
〇埼玉県、新型コロナ感染症緊急包括支援交付金(医療分)令和5年度も継続要望
大野埼玉県知事は11月17日付けで加藤勝信厚生労働大臣に対して、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」(医療分)について令和5年度(2023年度)も継続することを求める要望書を提出した。同県では、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」を活用し、受入病床への空床補償や仮設病床である専用医療施設の整備・運用をはじめ、軽症者の宿泊療養先の確保、自宅療養体制の整備、更にはワクチンの接種体制の整備など、感染拡大防止と医療提供体制の整備を行っている。交付金継続の理由として、「2023年3月末までの延長に当たっては、期限終了(2022年9月末)の直前に方針が示されたため、医療機関や関係事業者から不安の声が寄せられた。同交付金の実施方針については、地方自治体の予算編成や事務手続、医療機関等の事業実施に支障が生じないよう、早期に方針を示していただく必要がある」ことなどをあげた。
「予算編成」。確かに、秋口から年内にかけ、3月が期末の組織には予算編成という壁が立ちはだかる。その時点の見込みがくるってしまうと経営企画部門は大ごとになる。
「振り回さないでくれ!!」
そういうことなのだろう。
今度は病院経営層のコメントを。
〇事務の繁雑化もあり、職種別に個々に給与費のデータを作っていない場合が多い
焦点の「職種ごとの年間1人当たりの給与額」の提出。医療法人によって、職種ごとの細分化が困難な場合や細分化できる範囲も異なる。医療法人は事務の繁雑化もあり、職種別に個々に給与費のデータを作っていない場合が多い。職種ごとの給与額は任意であるべきだ。
〇医業外収益と費用については、医療に限定して医業収益等を書くべき
医療法人の経営情報のデータベースで報告する経営情報項目のうち、医業外収益と費用については医療法人の医療がどうなっているかの形を求めるものなので、医療に限定して医業収益等を書くべきである。経営が厳しいために資産を売却した際の収益で黒字になった場合、一時的に経営がいいと言われてしまう。医療外にはさまざまなものが含まれていて、このあたりを外さないと大きな誤解を招く。
医療機関それぞれに異なる事情がおありだろう。もともと、公務員的要素が強い自治体病院は、公務員の給与体系に準じた報酬設定がなされているのだろうが、国立病院機構、地方独立行政法人など、公立から独自の経営に移行した医療機関、また、民間病院にとっては、独自ルールを定めることが可能であるだろうし、一律なのは診療報酬点数だけのはずだ(※2)。そこまでコントロールするのであれば、最初から医師の年収はいくら、看護師は、薬剤師はいくら、など、全て決めてしまえばよいではないか…。
そんなことを思ってしまった(ことはこれまでに何度となくあるのだが、久し振りに口走ってしまった)。
今度は国公立病院のコメントだ。
〇医療現場を理解するため、事務職は管理棟から医療現場の近くに移転
大規模な国公立病院の事務職員は、病院から離れた管理棟という別棟で事務作業を一日中行う場合が多い。こうした状況下、事務職員は医療現場でどのような業務が行われているのかを理解できないまま、日常の書類業務を遂行していくことになる。トヨタが日常の生産現場の改善と購買でコスト削減に繋げていくのと大きく異なる結果、国公立の病院の改善対策が遅れていくひとつの原因となっている。医療現場でどのような業務と課題があるのかを理解するために、事務職員は手術室、ICU、中央材料室など現場に立ち入ったことがほとんどないという。そこで当院では、事務職を管理棟という別棟から医療現場のある臨床棟に移転。医療従事者と面談をして薬剤や医療材料をどのような目的で使用しているのかを確認していくと、ガイドラインは徹底されていないこと、クリティカルパスは実質的に運用されていないことなどの実態が明らかになり、コスト管理の重要性を実感。医師などと協力して薬剤や医療材料の値引き交渉を進め、経営改善が進んだ。
〇国が決めた政策医療の目標達成にこだわり甘い見通し。赤字体質から脱却できない
当院は国が決めた救急医療などの政策医療や医師確保の目標達成にこだわり、地域のニーズを無視した高額医療機器など多額の投資と人員増を進めた結果、赤字体質からなかなか脱出できない。
もともと国公立に勤める職員は優秀な方々のはずだ。どちらもありがちな話で、前者は好事例と取られ、後者は親方日の丸体質。
自らが自らの業務を「自分ごと」として捉え、自分ごとのためにどうすればよいかを考え行動する。
どんな組織においても、大事なのはその一点、ということだろう。
今度は民間病院のコメントを。
〇職員が自ら辞退した夏季賞与が支給できるようになった
コロナ禍に経営悪化で夏季賞与が出せない状況に陥った。これに対し、職員たちが自ら賞与を辞退すると申し出てくれた。コロナ禍により明らかに患者数が減少し、病院経営が厳しいことを察知して、そのような行動に至ったようだ。その後、物品費等コスト管理を進めるなど経営努力や補助金もあり収支が改善。今年の夏季賞与は昨年分を考慮して出せるようになった。
〇職員の退職引き止めのため手当て3倍に増額。その結果、金融機関から膨大な借入
コロナ禍で経営が悪化するなか、経営不安や感染不安が増大し職員の退職が続き、手当てを3倍に増額して退職を引き止めて何とか退職を最低限にとどめた。手当て増額の原資のため、金融機関からの借入を増やし、病院運営のために膨大な資金を注入することとなってしまった。
こちらも経営には独自性が入る余地がふんだんに存在することを示しているのではないか。そしてやはり何でも一律に決めたとしても、その通りでは運用できない、ということも物語っているのではないだろうか。
最後に、医師からのコメントを紹介して締め括りとしたい。
〇医師にとって満足度の高い報酬体系は?
医師にとって満足度の高い報酬体系は、「能力・スキル」や「業務量」が年収に反映される報酬体系と言える。ある調査によると、「能力・スキル」が年収に反映されている場合に年収への満足度は87.9%と高くなっており、「業務量」が年収に反映されている場合も同様に85.2%と高くなっている。
〇この病院には明確な給与体系がないのではないか
大学から派遣された自分と、フリーで就労した医師に大きな給与格差があり、事務長と給与交渉した結果、上げてくれた。そもそも、この病院には明確な給与体系がないのではないか。
何をもって能力・スキルとするか?やればやっただけ(それを単にタイムカードの拘束時間が長いだけ、とは思うまい)評価(給料がもらえる)があがる。確かに働く身からすれば納得性が高い報酬体系なのかもしれない。
就業規則の整備、給与体系の構築、組織改革で、というより巷の企業を相手にしたコンサルタントや社会保険労務士がおっしゃるような内容だが、未だ整備が行われていない医療機関はどれだけあるのだろうか?
後者のコメントの医師が在籍の医療機関は、
稀有な事例
であることを祈りたい。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
※1…そういえば政治判断だったっけ?コロナ補助金も政治判断だったのでは?
<筆者>
※2…ちなみに1点単価=10円 は法律上、県単位で設定を変更できなくもないが、その議論がある県から出てきた際、かなり物議を醸したのは記憶に新しい。
<WMN事務局>
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