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No.736 2021年度健保組合の半数超が赤字、高齢者医療への拠出金増が影響

2022年11月15日

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◇「健保組合の半数超が赤字、高齢者医療への拠出金増が影響」から読みとれるもの

・全国1388組合の53.3%に当たる740組合が赤字

・高齢者医療拠出金は、保険料収入の伸びを大きく上回るペースで増加

・2023年度以降、毎年増加する拠出金によりさらなる財政悪化が見込まれる

 

全国1388健保組合の53.3%に当たる740組合が赤字

 

 健康保険組合連合会(健保連)は10月6日、2021年度(令和3年度)の決算見込みを発表した。全国1388組合の53.3%に当たる740組合が赤字と、2020年度の33.0%から大幅に増加した。健保組合全体の収支でも、①経常収入:8兆3841億円(対前年度比+1.1%)、②経常支出:8兆4666億円(同+5.8%)で、収支差引額(①-②)は825億円の赤字となり、赤字は2013年度以来8年ぶり。現役世代の保険料から払う高齢者医療への拠出金増が響いた。新型コロナウイルス禍の「受診控え」の反動などでも医療費が伸びた図4 令和3年度決算見込(1388組合):経常収支の状況)。

 

図4(クリックで拡大)

 

 保険料収入は前年度比+810億円、1.0%の微増。足元の標準報酬は、月額0.3%、賞与額2.9%と、前年度に比べ回復基調にあるものの、新型コロナ感染拡大前の2019年度決算と比べて、月額▲0.2%、賞与額▲1.6%と、依然として低いままである。一方、保険給付費は2020年度比+3408億円、8.7%の増加、高齢者等拠出金は同+1057億円、3.0%の増加と、保険料収入の伸びを大きく上回るペースで増加した。

 

2023年度は団塊世代の増加により高齢者拠出金は+2700億円と急増

 

 経常収入では、総額8兆3841億円のうち、保険料収入が8兆2652億円で全体の98.6%を占める。一方、経常支出では、総額8兆4666億円のうち、①保険給付費:4兆2469億円(構成比50.2%)、②後期高齢者支援金:2兆132億円(同23.8%)、③前期高齢者納付金:1兆6377億円(同19.3%)、④保健事業費:3698億円(同4.4%)となっている。

 

 保険給付費(加入者の医療費)に次いで支出の大きなシェアを占めるのが、拠出金(高齢者の医療費を支えるために拠出)である。拠出金が義務的経費(法定給付費と高齢者医療への拠出金)に占める割合は46.7%と、2020年度から1.4ポイント上昇した。この割合を健保組合ごとに見てみると、40%未満が183組合・13.2%(2020年度に比べて3.1ポイント増加)、40~50%が793組合・57.2%(同6.9ポイント増)、50~60%が380組合・27.4%(同10.1ポイント減)、60%以上が31組合・2.2%(0.1ポイント増)—となった(図5 令和3年度決算見込:義務的経費に占める拠出金負担割合)。

 

図5(クリックで拡大)

 

 今後の財政見通しについて健保連は、①2022年度は、一時的な高齢者拠出金の精算戻り等の支出減により、収支が一時的に改善することも見込まれるが、7月以降、外来医療費が予想を大きく上回る勢いで伸びており、今後の動向を慎重に見極める必要がある。②2023年度は、75歳に到達する団塊世代の増加により、拠出金は+2700億円(対2022年度比+7.9%)と急激に増加収支は▲1700 億円と再び赤字に転じ、2023年度以降、毎年、増加する拠出金によりさらなる財政悪化が見込まれる-と推計している。

 

【事務局のひとりごと】

 

 「06」で始まる数字といえば何か

 大阪の市外局番ではない。

「06」で始まる保険者番号、それは健保組合であることを示す

 以下、代表的な保険者番号を列記してみる。

 

01  全国健康保険協会(協会けんぽ) 中小企業の従業員

02    船員保険 船員

03    日雇特例被保険者の保険(一般療養)

04    日雇特例被保険者の保険(特別療養費)

06    組合管掌健康保険 大企業の従業員

07    防衛省職員給与法による自衛官等の療養の給付

31    国家公務員共済組合    国家公務員

32    地方公務員共済組合    地方公務員

33    警察共済組合 警察職員

34    公立学校共済組合/日本私立学校振興・共済事業団 教職員

39    後期高齢者医療制度    後期高齢者

63    特定健康保険組合(特例退職被保険者) 

67    国民健康保険 国民健康保険法による退職者医療

なし 国民健康保険(便宜上、69+県別番号)

 

 診療報酬請求事務業務、いわゆる「医療事務業務は、通信講座などで人気の講座の一つだ。その取っ掛かりで医療保険制度については学ぶのだろうが、その殆どを、レセプトを起こすために必要な診療報酬算定について学ぶことになる。

 この「診療報酬算定」については「楽しい」と思える領域なのだろう。その関係で通信講座では人気上位なのだろうが、実際に医療事務の現場に配属されたとすると、多くの場合、せっかく習った診療報酬算定業務よりも、保険(主保険)の種類や医療証(従保険)の種類の多さや、それを見て瞬時に当該患者が一時負担金の発生する方なのか、あるいはそうでないのか、などを判断する必要性から、

 

 「点数算定が楽しいから私にとって天職だわ」

 

 などと考えておられた方にとっては、診療報酬算定も重要な業務ながら、他にもたくさん覚えるべき業務、必要な知識、外来医療の午前中の多忙など、思っていたような業務と大きなギャップを感じることが多いのではないか

 知的労働でありながら、かなり肉体労働や、対人業務も入ってくるのが医療事務業務なのである。

 特に保険証の種類については、医療証との組み合わせなど、いろいろなパターンがあるので、覚えるのが大変である。

 

 健康保険は、会社や事業所で働く人々(その家族も含む)が、ケガや病気をしたときに必要な医療費や手当金等を支給して、生活上の不安を少しでもなくすことを目的とした制度で、そのための財源は、社員と事業主が出し合っており(折半)、これを「保険料」という。

 つまり健康保険は、相互扶助の精神により、お互いに助け合う制度である。「社会保険」といわれる制度だ。

 社会保険職業についておられる方が一定の条件のもと、凡そ加入することとなるのだが、一方で、職業についておられない方自営業の方も含む)は地域保険、いわゆる国民健康保険に加入することになる。こちらの保険料被保険者の全額負担だ(なので被保険者にとっては国保の方が割高に感じることになる)。

 

 そして健康保険組合は、社会保険に分類される中で健康保険の仕事を行う公法人である。常時700人以上の社員がいる事業所同種・同業で3,000人以上従業員が集まる事業所が、厚生労働大臣の認可を得て設立することができる。

 

 働いている人、つまり現役世代は、高齢者(現在何才以上を高齢者とお呼びすれば良いのか、非常に難しい時代ではあるが、仮に後期高齢者と呼ばれる75才以上だとして)に比較して、当然若く、大病を患う可能性がないわけではないが、確率としては少ないだろう。社員の健康管理・健康増進も健保組合の業務の一つであるからだ。

 従って、健保組合は、比較的医療費のかかりにくい集団で構成する互助集団なので、保険料率を低く設定することで、企業(個人も)の保険料負担を抑制することが可能だ。この場合、全国一律の保険料率が設定される協会けんぽより低い設定であることが一つのメリットである。

 その仕組みから考えれば、本来なら健保組合の財政が赤字になる、ということは考えづらいはずだ。

 

コメントを紹介したい。

 

〇加藤厚労大臣:健康保険組合は公的医療保険制度の重要な担い手。財政支援を検討

 加藤勝信厚生労働大臣は閣議後の記者会見で、「健康保険組合は公的医療保険制度の重要な担い手の一つであり、大変重く受け止めなければならない」と述べ、その上で、「健康保険組合に対する財政支援を行うことなどを検討している」と、健康保険組合を維持するために財政支援を行うことも含め支援策を強化する方針を示した。一方で、高齢者の医療費を賄うための負担金については「かなりの割合で負担してもらっているが、高齢者医療は国民全体で支える制度であり、理解をいただき負担をお願いしていきたい」と述べるにとどめた。

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 「かなりの割合で負担してもらっているが、高齢者医療は国民全体で支える制度であり、理解をいただき負担をお願いしていきたい」

 こちらのテーマでもご登場いただいた加藤厚労相のお言葉が示すとおり、そして本文中【図‐4】、【図‐5】が示すとおり、

 

図4(クリックで拡大)

 

図5(クリックで拡大)

 

健保組合自体が保険料収入約8.2兆円のうち、半分の4.2兆円しか保険給付に使用していないにもかかわらず、高齢者への支援金として3.6兆円を拠出しているのだ。「国民全体」で支えるのが制度設計の礎なので、仕方がないといえば仕方がないが…。

 

 健保組合からのコメントを紹介したい。

 

〇佐野健保連副会長:2割強が保険料率で存続の利点薄れる“解散ライン”に達する

 健保組合の2021年度決算見込みの記者会見で佐野雅宏健康保険組合連合会副会長は、今後の財政見通しについて、「健保組合の半数超が2021年度に赤字決算となる見通しで、全体の2割強が保険料率で存続の利点が薄れる“解散ライン”に達する。高齢者の医療費を賄うための負担金の増加は保険料率の引き上げで対応するしかなく、現役世代に大きな負担を強いている今の制度はおかしい。高齢者の負担を増やすことも含め、早急な制度の見直しが必要だ」などと危機感を露わにした。

 

全国3番目の加入者を抱える「人材派遣健康保険組合」が解散

 健康保険組合をめぐっては、高齢者の医療費を賄うための負担金などによる財政の悪化で解散が相次いでいて、全国3番目の加入者を抱える「人材派遣健康保険組合」が2019年で解散した。年に1度の定期健診利用や健康相談、メンタルヘルスカウンセリングの利用など手厚いサポートで派遣社員の健康を陰から支えてくれた保険だった。加入者の高齢化が進んだことが、もっとも大きな解散理由としてあげられる。解散後は、被保険者の大半は、協会けんぽに加入したといわれる。

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 それは、そう言いたくもなるわな。しかも「人材派遣健康保険組合」については解散、一律料率の協会けんぽに加入となったのだ。

 組合を設立してメリット(利点)を創出すれば「カネを出せ」と言われるのならば、何のために自助努力しているか分からない、解散した方がましだ、という声が出てきてもおかしくない。

 

 健保組合をもつ企業からはこんなコメントだ。

 

〇コロナ禍で業績悪化した業種の健保組合は解散危機

 健保組合の存続の利点が薄れる“解散ライン”といわれる保険料率が10%を超える企業の健保組合は、コロナ禍で業績悪化した業種が目立つ。「紙製品製造業」「宿泊業、飲食サービス業」「飲食料品小売業」は11%を超えている。保険料率の引き上げは限界に近く、解散危機にさらされている。

 

〇中小企業の健康経営に力入れる総合健保組合

 デパート健保組合は、全国の様々な規模のスーパーマーケット、百貨店、ドラッグストア等約280事業所が加入する総合健保組合である。事業所規模は100人以下が5割を占め中小企業が多く、今後、医療費適正化の取り組みや生活習慣病予防、がん等の疾病対策が必要になっている。同健保は、総合健保・企業・健診機関が協働(コラボヘルス)で、健診事業や健康づくりなど健康経営を展開した結果、健診受診率が向上した。

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 解散危機。

 一方で、健診受診率の向上に向けた独自の取り組み、どちらも健保組合を持つ企業の現在の姿だ。

 

 また、「組合立」の病院を持つ健保組合も存在する。また、「企業立」の病院もある。コメントを紹介したい。

 

〇企業立、健保組合立病院は減少傾向

 医療を巡る環境が劇的に変化する中で、設立母体を企業とする企業立病院や健康保険組合立病院においては、経営状況は厳しく病院の数も年々減少し、2022年10月現在で企業立が30病院、健保立が8病院となっている。企業が自らの事業そのものの選択と集中を図るなか、収益事業として位置付けられていない病院事業に、今後も経営資源を投入することが可能であろうか。特に企業の業績が不安定で、病院単体の事業として経常損失を計上している病院や、建替えなど大型投資が必要な病院を有する企業にとっては、病院経営を継続すること自体が、今後大きな課題になると考えられる。

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 いやはや、これはなかなか厳しい現状だ。

 

 「収益事業として位置付けられていない病院事業」

 

という部分、これは組織によってすべてがこの意見というわけでもないのだろうが、「集患」できない病院、つまり採算の悪い組合立や企業立の病院は、やはり組織にとって「大きな課題」となることは間違いないか…。

 

協会けんぽからのコメントを紹介したい。

 

〇協会けんぽ、過去最高の6183億円の黒字

 健保組合では保険料が10%を超えると協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入したほうが労使とも保険料負担は少なくなるところも出てきている。協会けんぽには国庫補助がある上、2020年度は新型コロナによる受診控えなどが要因で、6183億円と過去最高の黒字となっている。医療費を含む支出は1・8%減の10兆1467億円。支出の減少は、協会けんぽができた2008年度以降で初めてという。ただし、21年度に入ってからは医療費支出がコロナ感染前の水準に戻りつつある。75歳以上の医療費を支えるために出している支援金も少子高齢化によって増える見込みだ。担当者は「(昨年度の)支出減は異例で、今後の収支は楽観できない」とコメント。

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 いずれ健保組合が全て協会けんぽに加入してしまえば、今度は協会けんぽが存続の危機、というよりは、保険料率が上がる、ということを意味する…。

 

 国保側からのコメントを紹介したい。

 

 〇健保・国保に限らず、健康保険料はもはや無視できない存在に

 主に自営業者が加入する国民健康保険の保険料率は、自治体・所得によって異なるが、均等割り額と所得割り額を合わせると10%を超える程度になる。40歳以上はこれに介護保険料が加わる。健保・国保に限らず、健康保険料はもはや無視できない存在になってきている。

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 医療保険制度の財源は、国庫補助があるとはいえ、原則は加入者の保険料だ。支出が増えれば(医療費を使用する人とその単価の掛け算の和が保険料の和を上回ったら)、保険料が上がる。国庫補助の財源にしても、もとは国民の税金だ。つまり国民の負担増なのだ。

 

 最後にこんなコメントを紹介して締め括りとしたいい。

 

【高齢者】

〇ハッピーリタイアメントは、今の日本では、もはや死語に

 ハッピーリタイアメントは、今の日本では、もはや死語。定年後、旅行三昧の生活を夢見ていたが、今後負担増が予想される医療、介護のお金を確保しなければ、人生100年時代は生き抜けない。

 

【現役世代】

〇時が経てば誰もが高齢者になる

 賃金が上がらないなか、少しでも負担を軽くしてほしいという現役世代の足もとをみて、高齢者との分断を生じさせようというのか。時が経てば誰もが高齢者になる。その時を想像し賢明な判断をしなくてはならない。

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 収入と支出、若年世代と高齢世代、健保組合と協会けんぽ、社会保険と国民保険、都市と都市、国と国、価値に対する対価がぐるぐる移転していく経済活動のなかで、一体何がその流れに淀みを作ってしまうのか?

 

 「一億総活躍社会」

 

 最近あまり耳にしなくなったが、その言葉の意味の深さを思う秋である…。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

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