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556号 「かかりつけ薬局」強化と医薬分業の見直し 2016年度診療報酬改定で調剤報酬見直しへ

2015年06月15日

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■「患者本位の医薬分業ではない」と政府の規制改革会議が厳しい指摘

「高齢者や車いすの人が医療機関から薬局へ移動するのが困難なケースもあり、患者の視点に立っていない」など、医薬分業の問題点を指摘した政府の規制改革会議の提言を受け、厚生労働省は、大病院の前に集中する「門前薬局」が受け取る調剤報酬を縮小する一方、患者本位の医薬分業の実現に向けて複数の医療機関の処方せんをまとめて扱い、飲み合わせのチェックなどに力を入れる「かかりつけ薬局」への移行を促す診療報酬改定を次期2016年度改定で行う検討を始めた。

 規制改革会議は、①医薬分業の政策については、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返すことによって業務を継続的に改善 するPDCAサイクルによる評価を行うべき、②医薬分業を推進する観点から、コストに見合ったサービスを提供すべき、③患者の利便性の観点から、薬局が医療機関から構造上独立していること求めている規制(構造規制)を見直すべき-と指摘。

 これを受け厚労省は、①患者本位の医薬分業の実現に向けて患者にとって身近なところにある「かかりつけ薬局」の機能を明確化するとともに、薬局全体の改革の方向性について検討する、②患者にとってメリットが実感できる「かかりつけ薬局」を増やし、「門前薬局」からの移行を推進するため、地域のチーム医療の一員として活躍する薬局への評価のあり方等について中医協で検討する、③医薬分業の質を評価できる適切な指標を設定し、定期的な検証を実施しながら医薬分業を推進する、④「かかりつけ薬局」への移行を進めることに併せて、構造規制に関しては、「経営上の独立性」「患者の自由な薬局選択」を確保した上で、「形式的な参入規制」から「薬局の機能の評価」へ転換。患者本位の医薬分業を実現できるよう中医協で検討する-ことを表明した。

■「かかりつけ薬局」による薬学的管理と調剤報酬見直し

 医薬分業の導入は1956年(昭和31年)と60年近い昔だ。医薬分業にあたって厚労省は、医療機関と薬局に、①経営を別にする、②道を挟むなど分かれて立地することなどを義務づけた。元々は薬を医師と薬剤師が二重チェックするという趣旨だったが、次第に薬価差益を得ようとする医療機関側の「過剰投与」を抑え、年々増加する薬剤費の抑制、引いては医療費の抑制を図ることに力点が置かれるようになった。

 病院と薬局の経営が一体の「院内処方」では医療機関によるいわゆる「薬漬け医療」がやまないことから、厚労省は薬局が医療機関から独立した「院外処方」を普及させるため、調剤薬局の「調剤基本料」を高めに設定するなど、病院など医療機関から独立した方がもうかるよう経済的インセンティブを進めてきた。しかし、院外処方での調剤薬局による服薬指導が形式的で十分行われていない例が目立ち、「サービスの割に調剤報酬を受け取り過ぎている」との批判も多い。また、院内処方に比べて院外処方は、患者の自己負担が多く、「患者の視点に立ってない」との声も多い。

 院外処方、年々医薬分業率は上昇し、2013年度は67.0%にまでアップした。さらに厚労省が医薬分業の旗を振るとともに力を入れてきたのが、「かかりつけ薬局」の普及だ(図1 医薬分業率の年次推移・かかりつけ薬局による薬学的管理)。

 

 かかりつけ薬局による薬学的管理によって、複数の医療機関から処方されている患者も、薬を受け取る薬局は1カ所にし、そこで薬の飲み合わせに問題がないか、飲み過ぎはないか(相互作用や重複投与、副作用等の観点から処方内容が適切か)などを確認してもらうことを目指している。

 厚労省は2016年4月に予定される診療報酬改定で調剤報酬を大幅に見直すことにした。具体的には中医協で検討するが、同省は、①在宅での服薬管理・指導や24時間対応など地域のチーム医療の一員として活躍する薬剤師の評価。②かかりつけ医と連携した服薬管理の評価。③薬剤師の専門性を生かした後発医薬品の使用促進に対する評価。④いわゆる「門前薬局」に対する評価の見直し-をイメージしている。

 

塩崎厚生労働大臣の閣議後のコメント

 規制改革会議の指摘を受け、来年4月に予定される診療報酬改定で調剤報酬を抜本的に見直すことを表明した塩崎厚生労働大臣は、5月22日の閣議後の記者会見で、「病院前の景色は変わる」と述べ、調剤報酬が見直されれば、医療機関の周辺から門前薬局が減るとコメントした。

調剤薬局利用者の声
<ある高齢者>
 投与した薬剤の飲み方や必要な説明、重複投与の回避、相互作用の回避などをしっかり 行い、患者のサポートをしてくれるなら、望ましい存在です。
 しかし、調剤薬局のレベルにも格差があるようです。
 総合的にみて、コスト効果はどうなのかについても、医療費財源の少ない今、一考を要すと思います。

 

<一児の母>
 私は門前薬局ではなく、顔なじみの調剤薬局が2件ほどあり、調剤はいつもそこでお願いしています。薬剤師には私の症状も把握してもらっているので、やり取りがとてもスムーズで助かっています。もし薬局自体を変えなければならないとしたら、いくら「お薬手帳」があるとはいえ、新たに最初から薬剤師との積み重ねをするような面倒なことはしたくありません!
 ところで、門前薬局って大病院で処方されやすい薬の在庫を手厚く持っているんでしょう?だからあまり待たずに欲しい薬が手に入るんだと思います。いつ出るかも分からないたくさんの薬を在庫しておくのは、使用期限問題もあるし、どうしても集約化していくと思うんです。その薬局に処方箋を持って行っても、薬が変更されたり(思っていた銘柄でない)、場合によってはその店に在庫がなくって取り寄せてもらうなどで2~3日薬が手元に来ない、といった状況になるかもしれませんよね?薬局側だって沢山の薬を在庫しておくこと自体が経営を圧迫するのではないかなあ。
 これから門前薬局が淘汰されるかどうかは分かりませんが、その影響でいつも行っている調剤薬局が混雑するようになって時間がかかったり、場合によってはなくなりでもしたら本当に困ります。それって本当に患者目線の政策なんでしょうか?

調剤薬局運営事業者のコメント
 「かかりつけ薬局」が導入されると、公立病院、総合病院前では大きな変化が訪れるだろう。
 このような病院を受診する患者さんは自宅の近くにも通っている場合が多く、「かかりつけ薬局」を自宅近くとする人が増えると、門前には「1薬局あれば十分」という可能性も出てくる。
 逆に、地域の個人病院がかかりつけ病院として機能するようになれば、その門前の薬局は自ずから「地域のかかりつけ薬局」として定着することは十分に考えられる。

 

<ポイント>
 個人病院前→ 場合によって総合病院の処方が増える
 総合病院前→ 全体の処方枚数が減り、薬局の数も減る

 

事務局のひとりごと
 厚労省の本来考えていた医薬分業とは、門前薬局のような「点分業」ではなく、これから大ナタを振るって変えていこうとしている地域のかかりつけ薬局が点在する「面分業」なのだろう。調剤薬局を運営しようとする業者が、患者がたくさん通りそうな大病院前の土地を確保して開店しようとする動きは、企業活動としてはある意味当然なのかもしれない。そしてたまたま大病院の近くに土地を持っていた地主さんにとっても、非常に高く土地が売れる「調剤薬局バブル」とも言えそうな現象を起こしかねない。このままいくとそれはさらにヒートアップしていくことだろう。
 「保険医療」の財源は公的な資金であり、調剤薬局がそこから収入をいただくとなると、民間の競争原理が最大限働いてしまうような今回の事態には「お上が黙っていないぞ」、ということなのだろうか。
 足の不自由な高齢の患者が、病院の帰りに薬をもらうために近くの薬局で、しかもあまり待ち時間が気になることもなく薬を手にすることができるようになったのも、門前薬局の台頭がもたらしたものだろう。財源論だけでいえば今回は非常に悪者扱いされている門前薬局だが、「調剤難民」を生むことにでもなりはしないか。体の不自由な高齢者が徒歩で移動することは、若者がすたすた、ほいほいと歩けるのとわけが違う。数十メートル遠くなるだけでも、それは大変なことなのだ。むしろ昔に戻って院内処方の方が患者のためではないのか?という意見も出るのではないか。
 調剤報酬が下がるということは、収入側が下がるのと同時に、支払う側の支払いは安くて済む。もしかかりつけ薬局には手厚い報酬を、ということならば、支払う側の支払いは高くなる。同じ薬をもらうなら、お金が安く済む門前薬局で、淘汰された後の門前薬局は結局資本力のある会社が一人勝ち、お上の狙いとは違う方向に行ってしまう、などということにはならないだろうか?
 門前薬局がこれまでもたらした、(敢えていえば)「功罪」の、今回は「功」にはあまり焦点が絞られなかったということか。財源論が主流になってしまっている次回改定に、患者の視点は果たして入っていくのだろうか?

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 

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