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566号 慢性期医療体制見直しで、「医療」「介護」「住まい」組み合わせた新類型 厚労省が療養病床の在り方に関する検討会に提示

2015年11月15日

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■厚労省事務局が「医療」「介護」「住まい」の機能を組み合わせた新たな選択肢を提案


 慢性期医療の提供見直しに関して論議している厚労省の「療養病床の在り方に関する検討会」は10月9日開いた会合で、事務局(厚生労働省保険局医療介護連携政策課)から、「さらにご議論いただきたい事項」(図1)が提示され、2015年内の取りまとめに向けた議論が加速化してきた。

 

 この「議論の事項」を要約すると、

(1)医療療養(25対1)と介護療養の経過措置は2017年度末まで。具体的な改革の選択肢を整理する必要がある。

(2)おもに医療療養(20対1)が担っている比較的医療の必要性の高い患者に対する機能は引き続き維持する。

(3)比較的医療の必要性が低く、介護ニーズを併せ持つ方々に看取りやターミナルケアを中心とした長期療養と一定の医療処置を実施する機能も確保していく必要がある。

(4)こうした観点を踏まえ、現状の療養病床の施設・設備を活用するなどの新たな選択肢を考える。その際、療養病床からの転換が容易(施設設備等に多額の費用を要さない)なこと、医療費の適正化に資すること、低所得者にも配慮したものであることが必要。

(5)上記を踏まえると、「医療」「介護」「住まい」の機能を組み合わせた新たな選択肢を検討してはどうか。

 例えば、①要介護度が低いが、一定の医療が必要で継続した在宅生活が困難な人に対し、「医療」と「住まい」を組み合わせて提供する機能、②要介護度が高く、一定の医療も必要な人の「長期療養」を支える機能、③一定の医療が必要な人に対してショートステイ利用など「在宅療養」を支援する機能、などが考えられる。

(6)その際に、法的な位置づけや人員配置と施設の基準など制度上の枠組みについても、新しい類型を含めて複数の選択肢を検討する。

 



■既存施設を改修した「医療のついた住まい」に議論が収斂か?

 

 以上の厚労省当局の提示を受け、検討会の構成員から、療養病床「医療区分1」の要介護度の高い患者を想定した上で、①25対1の一部を「病院併設型の住宅」に向けたらどうか、②サ高住の併設といった「医療+住まい」に対して、「既存の医療施設の敷地・建物に手を加えて住まいとする」とする考え方がある、など意見が出された。

 このうち、武藤正樹構成員(国際医療福祉大学大学院教授)は、「在宅における医療区分2・3患者の割合は介護療養よりも高く、介護療養病床に入院する患者は医療区分2・3でみることができる」と指摘し、その上で「病院併設型の住宅が選択肢として考えられる。25対1の一部をこちらに回してはどうか」と提案した。

 田中 滋構成員(慶應義塾大学名誉教授)も「医療と介護と住まいを組み合わせることが大切。介護の世界には色々な組み合わせがあるが、医療の供給がない。これから必要となるのは、要介護度が高いが医療必要度が低い人に対するサービスだ」などと、病院併設型の住宅をイメージした施設類型をあげた。

 この日の議論からは、新たな施設類型案として、既存療養病床(25対1及び介護療養病床)を改修した、医療区分1の要介護度の高い患者を想定した「医療のついた住まい」に議論が収斂する可能性が高くなったようだ。

厚労省担当課のコメント

「新しい類型検討に当たっては、人員配置、施設基準などに留意して検討を」

 

 「医療」「介護」「住まい」の機能を組み合わせた新たな選択肢を検討に当たっては、 ① 医療法・介護保険法等における位置づけ ② 人員配置基準(医師・看護職員・介護職員等) ③ 施設基準(入院患者(入所者)1人当たりの病室(療養室)の床面積、必須施設・設備) ④ 新設の可否 ⑤ その他財源のあり方  など留意して検討していただきたい。

 

「医療」「介護」「住まい」を組み合わせた新施設類型に対する関係者のコメント

<中小病院の院長「新施設類型の提案は、転換型老健の失敗が想起される」>

 厚労省が示した新施設類型の提案は、医療費抑制を意識した転換型老健の失敗が想起される。医療費抑制一辺倒の議論ではなく、医療・ケアの質を落とすことなく、病院が健全に運営され、医療従事者の生活が守られるような検討が望まれる。

 

<鈴木日医常任理事「性急な新たな類型型への絞り込みは反対」>

 今よりも患者・利用者の負担額が増え、医療や介護が手薄くなる。これで患者や家族が利用したがるか疑問だ。性急な新たな類型型への絞り込みは反対だ。

事務局のひとりごと

 No.‐560で触れた、2017年度末で廃止が予定されている介護療養病床を含む療養病床のあり方の、議論の方向性がおぼろげながら見えてきた。「医療」「介護」「住まい」を組み合わされた、どんな新類型が今後生まれるのだろうか。
 医療施設動態調査(平成27年度3月末概数)によると、一般病床は約99万3千床、医療療養病床は約27万7千床、介護療養病床は約6万3千床ある。また、老人保健施設は約35万7千床(内約7千床は療養型老健:新型老健)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は約54万床だ。病床に関していえば、全病床数は約169万床(有床診療所含)あり、残る病床は精神病床と結核病床、そして感染症病床である。
 この数字は折に触れて何度か述べてきているが、【図-1】内にある“提供体制の現状”や、“医療法・介護保険上の主な人員配置基準”、“患者・入所者の自己負担額の推計”をご覧いただくと、現在日本にある「公的」とされる床(ベッド)の現状がよく理解できる。これをもとに介護療養病床の方向性が議論されていくのだ。
 とはいえ、この議論で生み出されようとしている“新類型”とは結局のところ、この表のどこに、どんな基準で、どんな金額負担で落とし込んでいくか、というものでしかない。結果として新たな「行」と「列」が追加されるだけに過ぎないのかもしれない。整理されている情報なだけに、そこに一人一人の人生、人間の思いなどが見えてこず、とても無味乾燥なものに感じてしまうからだろうか。
 などと感傷的な気分に浸るだけでは日本の社会保障は財政破綻してしまいかねない。療養型老健の時にあったような、「笛吹けど踊らず」のような状態にならぬよう、踊りたくなるような新類型が生み出されることに期待したい。
 話は変わるが、今回の短信で、情報通信機器を利用した遠隔診療についての記事を掲載させていただいた。今後増加が予想されるへき地や限界集落などの医療過疎化への、「IT」という科学文明を駆使した処方箋となるかもしれない。是非ご一読いただき、考えてみていただきたい

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

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