ワタキューメディカル
ニュース
No.590 介護ロボットやICT活用の事業所に人員配置基準など緩和を検討 調剤医療費、高額な新薬登場し前年度比9.4%の増加
2016年10月15日
■ ロボットやICTを活用する事業所に「介護報酬上の人員・設備基準の緩和」
厚生労働省は9月7日開かれた社会保障審議会・介護保険部会に介護ロボットやICTを活用する事業所に対し、人員・設備の基準を緩和する方針を明らかにした。また、9月12日に開かれた「未来投資会議」(議長=安倍首相)の初会合で、医療や介護の分野では規制改革や介護報酬の見直しで、現場でのロボットなどの活用を促進する方針が示された。
9月7日の社会保障審議会・介護保険部会では、介護人材の確保が議題の1つとなり、①ロボットやICTを活用する事業所における「介護報酬上の人員・設備基準の緩和」、②書類の作成・提出義務軽減、③各事業所における介護手順・基準の明確化―などについて厚労省が提案。①は、ロボットやICTによって介護従事者の負担が軽減されることを見据え、「人員配置基準などを一定程度緩和できるのではないか」という内容で、具体的には介護給付費分科会で検討することになった。
介護ロボットの開発支援に関しては、経済産業省と厚生労働省が2012年(平成24年)に「ロボット技術の介護利用における重点分野」を公表。高齢化に伴う要介護者の増加を見込み、介護ロボット産業の社会的必要性が高まったことを受け、介護ロボットの研究開発および実用化に向けて動き出している。両省は、「ロボット技術の介護利用における重点分野」の中で、移乗介助や排泄支援など8つの分野を具体的にあげ(図4 介護ロボットの開発支援)、既に各企業や研究機関によりそれぞれの分野においてロボット介護機器の開発が進められている。重点分野の内容を見てみると、一口に“ロボット”といっても人型ロボットのようなイメージではなく、認知症高齢者の見守りをサポートする技術や、要介護者の自立を促す技術、介助者の身体的負担を軽減するための技術など各項目で様々な技術開発が進んでいることが分かる。
■ 背景には、介護人材の不足問題が
介護ロボットやICTを活用する事業所に対し、人員・設備の基準を緩和しようという背景には、介護人材の不足問題がある。厚労省は、2025年における介護人材需要を253万人と推計。供給面では、現状のまま推移した場合には215万人にとどまり、「約38万人の不足」が見込まれる。このため、「介護人材の確保」が喫緊の課題となっている(図5 2020年代初頭に向けた介護人材確保について)。
政府は今年4月26日に開催した第7回一億総活躍国民会議で、アベノミクスの新・第3の矢として「介護離職ゼロ」を掲げ、介護の職場の魅力向上策として「業務の生産性・効率性の向上」をあげ、介護ロボット等次世代介護技術の活用促進、文書のICT化の推進、行政が求める帳票等を含め文書量半減を進めることを明らかにしている。
さらに、アベノミクスの新・第3の矢となる成長戦略を加速させるための「未来投資会議」の初会合を9月12日に開催。医療、介護の分野では、規制改革や介護報酬の見直しによって、現場でのロボット等の活用を促進する方針が示された。具体的には、ロボットや人工知能(AI)、医療機器を含む様々なモノをインターネットでつなぐ「IoT」などの利用促進策などを議論する。
介護スタッフの介護現場での負担増大はそのままサービスの質低下にもつながることから、介助者のサポートをしたり、要介護者の自立支援をしてくれるロボット技術は人手不足を補うための技術として注目される。
関係者のコメント
<厚労省所管部署 三浦 明老健局振興課長:「各事業所における介護手順・基準の明確化」も重要>
9月7日開かれた社会保障審議会・介護保険部会で、厚労省老健局振興課の三浦 明課長は、「介護事業所・施設では中堅の職員から新人に向けた介護技術の伝授など引き継ぎが十分に行われておらず、自身の技術に不安を覚える職員も少なからずいる」とした上で、「各施設・事業所で蓄積された経験則を明確化するため、長年の介護業務の中で得られたコツなどをマニュアルのように整備するなど、各事業所における介護手順・基準の明確化も重要ではないか」と提案した。
<介護施設の経営者の声:1台数百万円もするロボット導入できる施設は限られる>
まだまだ介護ロボットの需要は少なく、大量生産は難しいと聞く。ただでさえも、職員の人件費を捻出するのに苦労しており、実用化が進んだとしても1台当たり数百万円もすれば導入できる介護施設は限られるのではないか。
<介護スタッフの声:冷たいイメージの機械を使うことに抵抗感>
「介護はサービス業」。ホスピタリティや要介護者への気遣いが大切な仕事であり、人と人とのふれ合いが大切な仕事に、冷たいイメージの機械を使うことには抵抗を感じる。
事務局のひとりごと
○介護者の労務・精神的負担軽減ができる(センサータイプのロボット)
介護ロボット(入居者の睡眠・覚醒・起き上がり・離床が分かる)を導入することにより、介護のタイミングが図れる。
夜間は介護者の人数が少ないので、介護のタイミングを図れることは介護者の労務・精神的負担の軽減と繋がり、入居者へより良いサービスの提供が可能になる。
○介護ロボットの取扱いによっては負担増になる可能性も
介護ロボットの活用で介護負担の軽減に繋がることはよいことだが、使いこなせないと介護職員の負担増となってしまう。操作が複雑、介助に時間を要するとなれば職員が介護した方がよいと感じる。また、利用者も介護ロボットが介助することで、人との温かみを感じなく、全て事務的に介護が行われ、人としての尊厳が失われる可能性がある。介護ロボット導入は介護職員の運用次第で成功か失敗の明暗が分かれるであろう。
○介護施設運営の立場から、ロボット導入について
AIロボットが高齢者の方々を癒し、GPSやIoT技術によって徘徊した高齢者を早期発見できた事例もある。人の仕事をロボットに置き換える発想でなく、ロボットの得意分野を上手く使い、人ならではのサービスに注力できるような、職員が働きやすい環境が作られる事を望む。
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介護施設運営事業者の方々(複数社)より、コメントを頂戴した。
最近「ドラえもん」が好きになった子どもが聞いてくる。「ドラえもんの誕生日はいつ?(※5)」、「ドラえもんで一番感動するお話は?(※6)」
今やロボットは、鉄腕アトムやドラえもんのような、ありそうであり得ない存在までは行かずとも、思考面においては、ある部分において人間を上回る存在であったり、行動面においては、プログラミングを必要とするものの、人間のように「疲れた」などと口にすることもなく、ただ黙々と成果を出してくれる。AIとミックスさせれば、大枠の指示を与えるだけで自ら答えを導き出し、そして進化する。そんな時代まで来てしまった。自動車の自動運転技術も目覚ましい。
筆者はまだ実物のペッパー君にお目にかかったことはないが、テレビで見る限り、かなり滑らかな動きや面白い会話をしてくれそうだ。このままで行けば、ひみつ道具は出ないにしても、ドラえもんのような存在があと約100年後に生まれたとしてもおかしくはないだろう。
ロボットが我々の仕事を奪うのか、労働力が不足しているので、賢い(?)人類が上手にロボットを使役して、理想的な共存できるような世の中になるのか、はたまたガイコツ型の恐ろしいロボットによる侵略に対し、人類がレジスタンスを率いてロボットに反撃していくようなことになるのか。「ロボット」と聞くとついついそんな空想をしてしまいがちだが(※7)、もはや現代社会の生活において切っても切り離せない存在になりかけているロボットだ。是非とも悪用されずに正しい利用ができることを望みたい。
「アベノミクス」新・第3の矢に向けたこの取り組み。ロボットに対する給付が高すぎるので販売価格が急に下げられてしまう、そんなことになりはしないか。活用法だけでなく、財源論も並行して進めていく必要があるのかもしれない。
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<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※5)…… 2112年9月3日。あと95年先の話である。
(※6)…… 筆者個人としては「さようならドラえもん」、「台風のフー子」と答えておいた。異論のある方、すみません。だいぶ記憶の彼方の話なので。
(※7)…… このコーナーはあくまで事務局のひとりごとである。
<WMN事務局>
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