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No.598 ビッグデータを活用し、医療・介護データ集約。厚労省の「データヘルス改革推進本部」が初会合

2017年02月15日

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医療・介護保険のビッグデータを活用、2020年からの本格稼働目指す

 厚生労働省は1月12日、健康・医療・介護の全情報を集約した「保健医療データプラットフォーム」の創設によるビッグデータの活用を検討する「データヘルス改革推進本部(本部長=塩崎恭久厚生労働大臣)」の初会合を開いた。医療保険、介護保険の審査支払機関が持つデータを統合的に分析し、健康・医療・介護の質向上や効率化を目指すための具体的検討に入った。「予防・健康データ」「医療データ」「介護データ」「ビッグデータ連携・整備」の4つのワーキンググループで検討を進め、今夏までに取りまとめ、「骨太の方針」など政府の成長戦略などに盛り込み、2020年からの本格稼働を目指す

 この日の会合で、厚労省が示した工程表図 医療介護分野の工程表)では、2018年から社会保険診療報酬支払基金(支払基金)や国保連合会などの支払審査基金が有する医療・介護のデータの連携業務を開始。会合で配布されたデータヘルス改革推進本部の「趣旨」では、膨大な健康・医療・介護情報が眠っている審査支払機関を『業務集団』から『頭脳集団』に改革し、ビッグデータのプラットホームを構築する必要がある」と指摘。システム構築に当たっては、「我が国のIT史上でもまれに見る大規模なシステム環境整備であることを鑑み、そのシステム設計は、官民の壁を超え、また、特定ベンダー等に偏らない、開かれたものにする必要がある」と強調している。

 

 

■データヘルス改革の「鍵」支払基金は、「頭脳集団」になり得るか?

 このデータヘルス改革の「鍵」となるのが、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)や国保連合会などの支払審査基金が有する医療・介護のデータの活用だ。

 この日の改革推進本部の会合では、2016年9月から議論が行われてきた厚労省「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」の最終報告書が公表された。この検討会報告書は、12月26日が最後の検討会会合だったがまとまらず、座長扱いとなっていた。報告書では、審査支払機関の効率化、統一化が必要とした上で、ビッグデータの活用に対応できるシステムや組織になるべきと提言。支払基金が進めているシステム改修については、業務改革の検討が不足していることから、「全面的に見直しを行うことが必要である」と指摘している。

 最後まで報告書がまとまらず座長扱いとなったのは、都道府県ごとに行われている審査業務の統一、全国一元化について議論となり、地域ごとの特性を配慮すべきとの意見が根強く、両論併記として引き続き検討することになったことがある。また、報告書では「審査委員の利益相反の禁止」の観点から、支払基金各支部の医師が審査委員を務めている点の見直しも指摘されていた。①審査委員が自ら関連する医療機関の審査を行わない、②審査委員が担当する医療機関を定期的に変更していく-という現行の運用上行っている取り組みを規則として明確化するよう求めている。これに対し松原日医副会長は「一番重要なのは、医療の現場が分かっている人が審査をすることだ」と、審査委員は各自が独立して判断し、自身のレセプト審査をしているわけでないと、反論している。

 検討会報告書で、「確実に改革を早期実現していくために、支払基金と厚労省において利用者である保険者等の意見も聞きながら、新たなシステム刷新計画等も見据え、具体的なスケジュールや内容などを盛り込んだ支払基金業務効率化計画・工程表について、平成29年春を目処に基本方針を取りまとめるべきである」と指摘されたように、データヘルス改革の成否は、支払基金の改革が握っているようだ。

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関係者のコメント

 

<塩崎厚生労働大臣:「データヘルス改革で健康・医療・介護のパラダイムシフト」

 データヘルス改革推進本部の初会合で塩崎厚生労働大臣は、「データヘルス改革により、健康・医療・介護のパラダイムシフトを実現したい」と改革実現に意欲を示した。20年後を見据えた保健医療政策のビジョンについて、塩崎厚生労働大臣の私的懇談会「保健医療2035策定懇談会」がまとめた『保健医療2035』でも、「情報基盤の整備と活用」を新たな保健医療システムのインフラに位置づけることを提言。データヘルス改革は、塩崎大臣のライフワークの1つとなっているようだ。

 

ある保険者団体幹部:「国全体としても介護負担が軽減される効果が期待」

 今までは健康・医療・介護についてバラバラにシステムが作られてきた。しかし、健康・医療・介護は相互に関係するため、データも一元化されるべきである。将来的には、個々人の健康・医療・介護の年次的経緯が蓄積されるシステム(コホート)への転換が期待される。医療と介護のデータ一元化には費用がかかる。時間もかかる。しかし、ぜひ進めるべき施策である。若いころから健康増進に取り組むことによって、のちに介護を求める可能性が減るからだ。国全体としても介護負担が軽減される効果が期待できる。

 

<生保業界:医療ビッグデータ活用で保険加入者増を期待>

 従来は加入できなかった事例でも、医療ビッグデータ解析でリスクの細分化が精緻になり、民間医療保険加入対象層が広がる可能性が出てきた。大手生保ではITと金融を組み合わせた「フィンテック」の一環として、査定基準の高度化の動きを活発化させている。ある保険会社は保有する約1000万人ものビッグデータと、外部機関の約300万人分のデータを重ね合わせ、健康診断の結果と疾患の因果関係などをITや高度な解析技術で分析。例えば、特定の病気を患ったとしても、その後の状況を健康診断の結果などで時系列に分析。適切な治療を続けていれば完治の可能性が高まることを仮に定量的に把握できれば、持病の顧客でも査定をクリアできる可能性が高まるという。

事務局のひとりごと

 

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〇医療経済学者の論文「多くの予防医療に医療費抑制効果はない」

 「多くの予防医療に医療費抑制効果はない」。これは「医療経済学の専門家の共通認識」と、日経新聞朝刊の連載([やさしい経済学]予防医療で医療費を減らせるか)の中で康永秀生東京大学教授は指摘している。費用対効果分析などで有名な医療経済学の大家ミルトン・ワインシュタイン米国ハーバード大学公衆衛生大学院教授らが2008年に発表した論文によれば、予防医療の費用対効果に関する1500の研究結果のうち、医療費削減効果を認めた予防医療サービスは20%以下だった。この割合は治療的サービスと同等であり、同じ疾患に対して予防が治療と比べて特別に医療費を抑制するわけではないことも示された。

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 最近、筆者自身が感覚的に感じていたことでもあるのだが、ヘルスケアNOW取材の上記の記事によれば、予防医療に力を入れても医療費抑制にはつながらない、というのはそれなりに客観性もある意見のようだ。

 健保組合を持つ大手企業では、健保組合のレセプトなどの請求データ(つまりビッグデータ)を活用し、組合員の健康状況に対するアプローチで結果として健保組合の支出を減らそうという、イノベーション的な取り組みに着手しているという。「健保組合」という局地的な見方をすれば、ビッグデータの活用で医療費の削減につながるのかもしれない。

 

 こちらもヘルスケアNOWに力をお借りして、医療ビッグデータで拡大が見込まれる3市場について取材頂いた。

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 総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、医療ビッグデータ関連の国内市場調査を実施。

注目市場として、

① 医療関連業界向け医療ビッグデータ分析サービス
② 病院向け診療データ分析ツール・DPCデータウェアハウス
③ 医療向けe-プロモーションサービス

 をあげている。

 ①は、個人情報を外したレセプトやDPC、カルテなどのデータを、統計データとして二次的に分析などして提供するサービスを対象としたもの。この分野の国内市場は、2025年に2014年比で4.1倍の120億円になると見込まれる。

 ②は、レセプトやDPC、カルテなどのデータや病院経営データなどを保管するデータウェアハウスおよび分析システム/サービスを対象としたもの。この分野の国内市場は、2025年に2014年比158.1%の68億円になると見込まれる。

 ③は、製薬企業が利用するインターネットを活用した医師や医療従事者に対するプロモーションサービスで、パッケージ化されたものを対象としている。この分野の国内市場は、2015年に2014年比で2.6倍の372億円になると見込まれる。

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 どの市場も伸張率が著しいが、しめて560億円の市場、決して小さな金額ではないものの、将来的にはもっと新たなビジネスが生まれ、大きなデータヘルス市場が生まれてくることに期待したい


<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 

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