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No.660 2020年度税制改正要望で病院団体、「保険診療に係る消費税を課税化」要望
2019年09月15日
■四病協、保険診療の消費税課税化で控除対象外消費税の抜本的解決を
「保険診療に関する消費税を課税化し、補填の過不足問題を完全解消すべき」と、2020年度税制改正要望で、病院団体が声をあげた。
日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会(四病協)は8月9日、「社会保険診療報酬等の非課税に伴う控除対象外消費税の抜本的な解決」をはじめとする13項目の『令和2年度(2020年度)税制改正要望の重点事項』を根本厚生労働大臣宛て提出した。
四病協の税制改正要望は、次の13項目。
(1)社会保険診療報酬等の非課税に伴う控除対象外消費税問題の抜本的な解決(2)医療機関に対する事業税の特例措置の存続(3)認定医療法人制度の実施機関の延長および認定期限の緩和(4)持分のある医療法人に係る相続税の納税猶予・免除制度の創設(5)社会医療法人に対する寄附金税制の整備および非課税範囲の拡大等(6)医療法人の法人税率軽減と特定医療法人の法人税非課税(7)特定医療法人の存続と要件の緩和(8)訪日外国人向け医療提供体制の整備と医療税制の整合性の確保(9)介護医療院への転換時の改修等に関する税制上の支援措置の創設(10)中小企業関係設備投資減税の医療界への適用拡大(11)病院用建物等の耐用年数の短縮(12)社団医療法人の出資評価の見直し(13)医療従事者確保対策資産および公益社団法人等に対する固定資産税等の減免措置。
病院の消費税問題について課税化転換で抜本的解決を求める要望は、既に日本病院会(相澤孝夫会長)が8月7日付けで、『令和2年度税制改正に対する要望』として根本厚生労働大臣に提出している。同要望は、国税5項目、地方税2項目、災害医療拠点としての役割と税制に関する要望1項目からなり、“要望の優先順位上位三項目”として、①医療機関において控除対象外消費税が発生しないように税制を含めた抜本的措置を講じること、②医療機関における社会保険診療報酬等に係る事業税非課税措置を存続すること、③病院関連不動産について、固定資産税および都市計画税ならびに不動産取得税、登録免許税の非課税措置等を整備すること-をあげた。
特に①では、「病床区分ごとの補填は診療報酬点数の設定方法を精緻化すればある程度可能だが、病院ごとの個別状況に応じて発生する控除対象外消費税の完全解消が診療報酬制度上の対応のみで実現できるか否かについては疑問が残る」と問題点を指摘。「令和2年度(2020年度)診療報酬改定における税率5%から8%改定時の発生分を含み控除対象外消費税の解消状況が適切と認められない場合は、社会保険診療報酬の課税化転換を行う、」「あるいは社会保険診療に係る設備や材料の仕入を非課税扱いにする、といった税制上の措置を講じることによって医療機関が控除対象外消費税を負担しない抜本的措置を講じるべきである」と要望した。
■病院団体と日本医師会で異なる消費税対応に、与党税調がどう判断するか注目
現在、国税の「消費税」については、保険診療は「非課税」となっている。したがって、医療機関等が物品購入等の際に支払った消費税は、患者・保険者負担に転嫁することはできず、医療機関等が最終負担している(いわゆる「控除対象外消費税」)(参考:図3 課税経費率について)。この医療機関等負担を補填するために、診療報酬改定の度に特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)が行われているが、当然、「医療機関等ごとに診療報酬の算定内容は異なる」ことから、どうしても補填の過不足が生じる。2019年10月に予定される消費税対応改定では、病院の種類別に補填を行うなどの「精緻な対応」が図られるが、「病院の種類による不公平」是正にとどまり、個別病院の補填過不足を完全に解消することはできないのが現状。
このため、2018年夏に四病協と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)とが合同で、「消費税非課税・消費税対応改定による補填は維持する」「個別の医療機関ごとに、補填の過不足に対応する(不足の場合には還付)」という仕組みの創設を要望した。しかし、与党の税制調査会は「税理論上、非課税制度を維持したまま税の還付を行うことはできない」とし、事実上の“ゼロ回答”を突きつけた。このゼロ回答に対し、日医は「消費税対応改定の精緻化により、消費税問題は解消した」との見解を発表した。
しかし病院では、①物品購入量が多く(特に急性期病院)、補填不足が生じやすい、②診療所と異なり、いわゆる四段階税制(社会保険診療報酬の所得計算の特例措置。概算経費率を診療報酬収入が2500万円以下の医療機関では72%、2500万円超3000万円以下では70%、3000万円超4000万円以下では62%、4000万円超5000万円以下では57%の4段階とする)などの優遇措置もないことから、四病協は「補填の解消に向けた更なる対応が必要」と判断し、今回の税制改正要望を提出したもの。
今回の四病協の要望は、診療報酬改定毎の診療報酬プラス改定では「控除対象外消費税の補填の過不足」が解消できないと指摘し、病院において「保険診療にも消費税を課税する」よう求めたものである。これに対して、日本医師会は「診療報酬での対応の精緻化により控除対象外消費税問題は解消した」との立場をとっている。今後、与党の税制調査会などが、医療界で「足並みが揃っていない」点をどう受け止めるのか、年末にかけての動きが注目される。
【事務局のひとりごと】
全日本病院協会長の猪口雄二氏が、青森県で開催の東北医師会連合会総会・学術大会での講演で、10月に迫った「増税改定に」言及したという。曰く、診療報酬の改定率はプラス0.41%だが、薬価は消費税対応分よりも実勢価格に基づく引き下げ分の方が大きいため、マイナス0.51%になる。そのため「診療報酬のプラスよりも、薬価のマイナスの方が大きい。改定により、初診・再診や入院基本料に(消費税分が)乗るが、実際は薬価が下がるため、トータルとしては今回もマイナス改定」と説明した という。
(メディファクス2019年9月3日 8099号 5/11頁 を参考に、該当部分をほぼ引用)
もうすぐお彼岸、暑かった夏も終わり、季節は秋。台風シーズンの到来だ。日本列島のどこにいても、どのような集中的な暴風・豪雨によって理不尽な被害を受けないとは言い切れない昨今である。昔はどこの地域にでもいたとされる、“雨の巫女”の助けでも借りないと、どこかの地域の社会活動が危ぶまれかねない(※2)。
今年を振り返るにはまだ早い気もするが、今年のトピックは、あくまで国内に限った話としてだが、平成天皇のご退位と令和天皇のご即位が間違いなく一番なのだろうと推察するが、それに次ぐものとしては、消費税増税が挙げられるのではないか?筆者の勝手な予想である。その他、働き方改革が続くのだろうと、これまた勝手な予測である。
これから年末にかけ、税制改正の要望事項が取り沙汰される。
記憶に新しい(?)、5%から8%に増税時の増税分補填が、診療報酬改定でほぼクリアされたとされる調査結果が、厚労省の単純統計間違いにより、実は病床機能別では補填すらままならない状況であり、それを自ら公表して批判は受けたものの「天晴」の姿勢で臨んだ厚労省が、その改善策として10%への増税時に、“過去の分も併せて補填できるような形にする”とした増税改定は目前である。
コメントを紹介する。
○医療課長:「消費税率引き上げに伴う診療報酬改定は、通年実績NDB データ(全国のレセプト集計データ)を用い、より実態を踏まえた補填点数を計算する」
4月11日開かれた日本医師会の都道府県医師会税制担当理事連絡協議会で、厚労省保険局の森光医療課長は、2019年10月の消費税率10%引き上げに伴う診療報酬改定について、平成26年度(2014年度)の消費税率5%から8%への引き上げに伴う診療報酬での補填率について集計ミスがあったことを陳謝するとともに、「消費税率が2%引き上がることに合わせて、診療報酬上、補填措置を講ずる。その際、平成26 年に消費税が5%から8%に引き上がった部分も含めた、5%から10%の部分についてより正しい補填となるよう配点する方針である。そのために、直近の通年実績のNDB データ(全国のレセプト集計データ)を用いて、より実態を踏まえた形で補填点数を計算するということが見直しの点である」と説明した。
そういった経緯もあり、日本医師会の見解としては、すでに保険診療に関わる診療報酬は非課税であるという考え方は崩せないとした上で、「先の診療報酬での対応の精緻化で控除対象外消費税問題は解消」したことになっている(本文やこれまでのW・M・Nバックナンバー、No.635 医療機関の怒りの矛先はどこに向ければ良いのか?! 厚労省の消費税対応改定の補てん率調査に誤り「損税」問題、No.571 医療機関の消費税問題は「2017年度税制改正で結論」与党「2016年度税制改正大綱」が決定 をご参照)。
これまでの議論から、消費税の損税問題は、規模の大きい病院、さらには急性期医療に重きをおいた病院ほど、その影響を受けやすいとされてきたので、日本医師会と病院団体の、損税問題に対する捉え方は、どうしても異なってくるのかもしれない。
両極の立場のコメントだ。
○全日病会長:「国民に診療報酬における消費税について知っていただく必要がある」
今年10月の消費税引き上げに対応した診療報酬改定を巡る中医協の論議の中で、猪口雄二委員(全日本病院協会長)は、「国民に診療報酬における消費税について知っていただく必要がある。また、今回、できる限りの精緻化を図ったが、元より限界がある。将来の医療費も正確な予測はできない。それよりも、結果を速やかに検証し、改善を図る必要がある。また、医療における消費税のあり方そのものを考える、より大きな議論が必要ではないか」と述べた。
○「国民や社会の反対を押し切り課税転換することは困難。ソフトランディングを選択した」
「2019年度与党税制改正大綱」決定を受けて、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会と四病院団体協議会が2018年12月19日開いた合同記者会見で、横倉義武日医会長は、「今回のように非課税のまま診療報酬で精緻化するというソフトランディングか、国民や社会の反対を押し切って、社会保険診療報酬を課税転換するハードリセットにするか、という2つの選択肢しかない。今回は、非課税のまま診療報酬で精緻化するというソフトランディングを選択した」と説明した。
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何度も触れてはいるが、どちらにしても政治の問題と財源論の2つが大きな要素だ。もともと消費税という仕組み自体、国民からの受けは良くないのだ。しかも“税収”はこれまでの実績を元に、財務省がしっかり予測した上で税制改正を行うのだ。財務省(官僚)に、診療報酬を課税にして医療機関の控除対象外消費税問題を解決し、つまり損税がかからないようにするための数千億円という規模の財源をあきらめる(つまりプライマリバランスの悪化)、または他所から見つけてこようという行動がとられない限り、簡単にいくものではないのである。いろいろな場面で医療機関の損税問題の話題に触れるにつけ、素人の筆者にはそう感じざるを得ない。
こんなコメントを紹介したい。
○「消費税は、極めて政治色の強い問題。病院が技術的に『こうするとうまくいく』という対策はできない」
札幌市で開かれた第69回日本病院学会の経営セミナーで「病院施設の視点からの消費税増税の対応~令和の時代の始まり、再出発を願って」をテーマに講演した石井孝宜・石井公認会計士事務所長(日本病院会監事)は、「30年の時を経て平成の時代は終わったが、平成元年に施行された消費税は新たな令和の時代において、ますます国と地方の税収の根幹として位置づけられていくものと考えられる」と述べた上で、「消費税は、そもそも極めて政治色の強い問題であり、なおかつ現時点においては税の問題・矛盾を診療報酬において解決しようとしているため、当事者としての病院が技術的に『こうするとうまくいく』というような対策を打つことはできない」と指摘した。
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財務省のコメントも紹介したい。
○主税局税制第二課長、8%の軽減税率の例を説明
日本医師会の都道府県医師会税制担当理事連絡協議会で財務省主税局の田原税制第二課長は、消費税率10%への引き上げとともに実施が予定されている「消費税軽減税率制度」について、8%の軽減税率の例として、売上では、病院の売店や自動販売機による飲食料品の販売、仕入では、病院食の食材、待合室用の新聞購読料、売店や自動販売機等で販売するための飲食料品の仕入れなどをあげた。さらに、軽減税率対象の売上がない医療機関においても、仕入税額控除に当たっては、軽減税率対象の仕入れについて「区分経理」を行うなどの対応が必要になると説明した。
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ずっこけた読者もおられたかもしれない。ただ、この問題についてどう思うか を突撃インタビューで財務省官僚が回答してくれるとも思い難い、というのはお分かりいただけるだろうか。
先般、筆者は税務署の方と意見交換したのだが、まさに軽減税率への対応が、比較的中小の企業(ということは実は多くの企業)が、対応策を講じていない(この制度の考え方が浸透していない)ことに大いなる危機感を持っておられた。
であるので、先の財務省官僚のコメントは、実は今財務省が最も注目しているトピックでもあるのだ。財務省としては損税問題よりも軽減税率対応が目下の優先課題である。
コメントを紹介したい。
○民間急性期病院の事務長:「医療材料や医療設備の使用割合が高い急性期病院は控除対象外消費税の負担が増える」
一般病院・療養型病院・精神科病院では医業収益に対する医業費用の割合が異なり、医療材料比率が大きい一般病院と療養型病院・精神科病院では課税仕入れ等の割合に約10%の開きがあり、また、1床あたりの固定資産額も約3倍となっている。特に医療材料や医療設備の使用割合が高い急性期病院は控除対象外消費税の負担が増えることによる経営への影響は避けられない。診療報酬改定でいくら上がっても、消費税負担で帳消しになってしまう。
○地方自治体の病院事業管理者:「消費税はもともと、消費者に負担を求めるべきもの。病院事業者に求めるものではない」
消費税は控除対象外消費税、損税と言われ、病院の大きなコストとなっている。消費税はもともと、消費者に負担を求めるべきものであり、事業者に求めるものではない。従って、この控除対象外消費税は適切に過不足なく補填されるべきと考える。今後、病院機能の多様化はさらに進むと推測され、診療報酬改定での対応には限界があると想定される。
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大規模病院の考え方は、やはり“原則課税”がすっきりするのだろう、ということだろう。
一方、開業医からはこんなコメントだ。
○都内の無床診療所の開設者:「診療所ではなかなか個別に補填状況を調査できる体制にない」
補填が不足していたことが明らかになり、非常に大きな衝撃で、中医協で議論されている他のデータに対する信頼も揺らいでいる。診療所ではなかなか個別に補填状況を調査できる体制にない。補填状況調査、補填率発表の際にはどのようなプロセスで調査分析したのか納得できる形で示して欲しい。
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納得感は重要である。
医業系コンサルタントからのコメントを紹介したい。
○「今後の資金計画、事業計画には消費税引上げ時の対応を見込む必要」
医療材料や医療設備の使用割合が高い急性期病院は控除対象外消費税の負担が増えることによる経営への影響は避けられない。実務の面では、消費税額の計算が複雑化することが考えられ、税理士の正しい制度理解が求められる。今後の資金計画、事業計画には消費税引上げ時の対応を見込む必要があり、負担の大きい高額な設備投資の時期については慎重な経営判断が求められる。
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何かの投資をする際に、必要であるのならば税金は当然かかるものとして受け入れざるを得ない。そう考えてしまう向きもあるかもしれないが、何せお金の上では10%の上乗せで必要になる。確かにおっしゃるとおりだが、消費税分が賄えないので高額設備投資がためらわれる、というのは、どうも本末転倒のような気がしないでもない、と財務省に伝えたい。
最後にこんなコメントで締め括りたい。
○ある患者:「消費税率10%引き上げで、難病を抱える患者の医療費負担が不安」
下垂体機能低下症と特発性過眠症という難病を抱えている。後者は1カ月に約1万円の負担で高額だが、睡眠発作に対する薬は生活の質の維持には不可欠だ。患者仲間には痛みなどから就労が難しく、支払いの問題から自分に合った受療が難しい人もいる。消費税引き上げで医療費負担が増えることが不安だ。指定難病とは別の基準から、慢性疾患の患者の医療費負担軽減をお願いしたい。消費税が引き上げられる10月以降にこれまでと同じ薬で値段が違うとなると、非課税なのになぜと驚く人もいるかもしれない。
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全国民から、広く薄く(?)徴収できる、ある意味公平な税であるとされる消費税。そこに対する思いは様々だ・・・。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※2)・・・公開前から大注目されていた「天気の子」。筆者は新海誠監督の前作を劇場で見たことはなかったが、今作は折角なので劇場で見た。それなりの年齢になってしまったことで涙もろいからなのか、あるシーンで涙が出た。悲しい運命を背負った“雨の巫女”が、果たしてその悲しい運命通りの結末を迎えることになるのか?見ておられない方の手前、あまり語ることは控えたいが、筆者としては、もしかすると近未来の日本が迎えるかもしれない重い未来を、しかしそれでも希望を持って明るく描いた、意外ではあったが、現代人が求めるラストシーンではなかったか、と感じた。
<素人映画批評家>
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