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No.705 中医協2022年度調剤報酬改定へキックオフ、薬局機能の対物から対人業務の構造的転換で議論

2021年08月15日

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■厚労省、対物から対人業務シフト、かかりつけ薬剤師普及、オンライン服薬指導の3つの論点を提示

 中医協総会が7月14日開かれ、2022年度調剤報酬改定に向けて議論を開始した。2016年度改定以降、対物業務から対人業務への構造的な転換が促されてきたものの、かかりつけ薬剤師指導料をはじめ、対人業務の算定率は依然として低い状況にある。かかりつけ薬剤師機能など、「対人業務へのシフト」を調剤報酬でどう進めていくかが議論の焦点となっている。

 

 この日は厚生労働省が、2020年度改定における見直し内容など総論的な資料を示した上で、(1)薬局・薬剤師が、対物中心の業務から患者・住民との関わりの度合いの高い対人業務へとシフトすることにより、薬物療法や健康維持・増進の支援に一層関わり、患者・住民を支えていくことが重要であることを踏まえ、診療報酬のあり方についてどのように考えるか、(2)かかりつけ薬剤師・薬局の普及の促進、多剤・重複投薬への取り組み、処方箋の反復利用など、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太方針2021)」等を踏まえた今後の対応について、どのように考えるか、(3)オンライン服薬指導について、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際しての時限的措置の実績、医薬品医療機器等法に基づくルールの見直しが行われることなどを踏まえ、診療報酬について具体的にどのような検討が必要か-と、3つの論点を示し、議論を求めた。

 

 論点のうち、「対物業務から対人業務へのシフト」とは、2015年10月に厚労省の「患者のための薬局ビジョン」で提唱された概念で、保険薬局は単に「医師からの処方箋をもとに調剤を行う」だけでなく、①服薬情報の一元的・継続的把握、②24時間対応・在宅対応、③医療機関との連携-を行うべきというもの(図1 かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき3つの機能)。

 

 

 対人業務へのシフトについて中医協の論議で、健康保険組合連合会の幸野庄司理事は、2022年度診療報酬改定における調剤報酬の抜本的な見直しを求めた。特に、調剤基本報酬について、「対物業務から対人業務へ移行させるため、処方箋の枚数や集中率を指標に見直してきたが、大手チェーンは対策を講じ(点数が最も高い)『1』の算定が8割という状況になっている」と、これまでの方策では効果が得られていないと指摘。その上で、「まず、調剤基本料は一本化し、担う機能に応じて(付加的な点数を)設定すべき。対人業務が中心の薬局と、調剤に偏重し効率性のみを追求する門前薬局とは、明らかに差をつけるべき」などと述べ、半ば強制的に対人業務への転換を促す方策が必要との考えを強調した(図2 調剤基本料の見直し①処方箋の集中率が著しく高い薬局の調剤基本料の見直し)。

 

 門前薬局問題では、公益代表の中村 洋委員(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)が、「門前薬局等の調剤基本料引き下げは、患者にとってみれば“負担軽減”となり、かえって門前薬局等に患者を誘導することにもつながる」と発言した。この発言に診療側の城守国斗日医常任理事が「公益側委員の役割は、1号側(支払側)、2号側(診療側)の議論がまとまらないときの中立・公正な立場での調整役だ。必要以上に発言しない姿勢が必要だ」と批判。これに対し中村氏が、「意見が違ったときに裁定する立場は理解している。一方、例えば論点になかったものを公益の立場から、1号側、2号側にも議論してほしいと提示することも重要だ」と反論する場面がみられた。

 

 一方、日本病院会の島 弘志副会長は、病院薬剤師の評価拡充を要請した。2020年度改定で対象病床に「療養」「結核」「精神」を追加した「病棟薬剤業務実施加算」について、「地域包括ケア病棟、回復期病棟でも薬剤管理・服薬指導は重要なので、加えていただきたい」と求めた。「外来での手術前服薬中止やハイリスク薬などに関する薬剤師の患者指導に対する評価も要望した。日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長も、病棟薬剤師の評価拡充の重要性を述べた。「病棟薬剤師の業務が高度化、多様化しており病院での配置を望んでいるが、採用が極めて困難な状況にある。医療機関側の経営努力も必要だが、あまりに市中の調剤薬局と待遇、給与面が違う。待遇改善のため何らかの加算等、診療報酬上のインセンティブが必要である」と訴えた。

 

■中医協で日薬、日医の代表委員が医療機関の敷地内薬局の問題点で意見

 中医協では、近年全国的に広がっている医療機関の敷地内薬局に関しては、2018年度改定以降、調剤基本料が見直されるなど厳しい目が向けられているが、今回も日本薬剤師会(日薬)や日本医師会の委員から厳しい意見が相次いだ(図3 調剤基本料の見直し② いわゆる同一敷地内薬局等の調剤基本料見直し)。

 日薬はこれまで、規制改革に関する要望の1つである敷地内薬局をあげて「その機能として医療機関の調剤所と同一視されるようなものは、保険指定を行うべきではない」などの適正な措置を求めてきた。有澤賢二・日薬常務理事は、「最近の誘致事例や情報を聞く限り、公募要項の中で診療室の設置を求めるなど、病院側と経済的、機能的、構造的独立性という視点であまりにもひどいケースが非常に目立っている。独立性が担保されない、もしくは機能として院内薬局と変わらない薬局であるならば保険指定する必要はない」と指摘し、診療報酬上の対応、制度の見直しを求めた。

 また、松本吉郎・日医常任理事は、敷地内薬局の問題点として、「院内薬局で対応すれば済むことを、薬歴システム等々必要なシステムをわざわざ敷地内に別途用意している」と指摘。敷地内薬局が「実質的に院内薬局と同じような機能を担っているのであれば、それに基づいて考え方を整理することも必要なのではないか」「院内薬局との違いをどう説明できるのか」などと述べ、さらに「地方で敷地内薬局が極度に進むことによって、病院周辺部において地域を支える調剤薬局がなくなっていってもよいというのか、非常に危うさを感じる」と訴えた。

 

【事務局のひとりごと】

 

 (公社)医業経営コンサルタント協会発行のJAHMC(ジャーマック)7月号は、薬局経営についての特集号であった。

 どの記事も興味深く、大変充実した内容であった。筆者がとりわけ感銘を受けたのは、㈱クラスAネットワーク会長 橋本 薫氏の寄稿「ヘルスケアプロシップ構想」であった(JAHMC 2021年7月号 16~19頁)。

 一部引用してみたい。

 

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 ・・・都会の軟弱なゲレンデスキーヤーでいた私が、ひょんなことから新幹線直結のスキー場を作るはめになった。そんな何も知らない人間が200億円もの予算をJR東日本から預けられ、コンセプトを作り、ネーミングや駅などの企画からデザインまでを行って、ガーラ湯沢が出来上がると「これからはスキー場の専門家としてやっていけますね!」との外野の声もあったが、その道を極める専門家やその分野のコンサルタントになることにはトンと興味を持てなかった。それよりも、知らない世界に飛び込み、何かを創ることに魅力を感じていた。

 美術大学を出た私はアパレル会社の宣伝部に入り、当初は少なくとも広告関係で仕事を全うするイメージしかなかった。その後、サントリーの広告プロダクションに転職すると広告制作に絡めて企画の立案に遡って提案するようになった。それをきっかけにハーゲンダッツやサブウェイを日本に持ち込むことになり、ソニーのプロジェクトや大阪駅の再開発、そしてガーラ湯沢などと、結果的に社会に楽しいことを提案し実現する仕事を行ってきた。世間に「ときめき」を作り出す仕事が多かった。(中略)

 当時は社会保障に何ら関心もなく、国民医療費すらまともに理解していなかったものの、今後の医療の在り方と病院の位置付けなどを勝手気ままに書いた企画書を作った。ところが、そんな出すあてのない企画書がきっかけで、業界では中堅の調剤薬局チェーンの経営者を人づてに紹介されることになった。

 先方は「ぜひ、会いたい」という。その頃すでに4万軒以上の「調剤薬局」があったにもかかわらず、正直なところその「保険薬局」の意味合いもほとんど知らなかったし、関心もない存在だった。そんなわけで何を期待するでもなく、会うことになる。経営する調剤薬局を上場させようと考えていた経営者は、私のキャリアを面白く感じたようで、薬局を回って感想を述べてほしいと言う。すなわちコンサルティングを頼まれたわけだ。そんなわけでとりあえず指定された薬局を数件覗いてみた。

 呆れ果てた。

 経営者は上場することしか頭になく、薬剤師はただ食べるために働いているように見えた。そこは思考停止の世界とも言えた。その薬局は何のメッセージも発していない存在であり、患者は病院の近くにあるというだけで、何の疑いもなく薬局へ入っていく。(中略)処方箋と薬を交換する場所にしか見えなかった。(中略)医薬分業制度だとか調剤報酬改定、薬剤師が一体何者なのか、同じ薬を病院の外で売っているだけにもかかわらず、なぜ「調剤薬局」は儲かるかを知る由もなかった。(中略)一般人から見れば医療はブラックボックスの中にあり、多くの税金が投入されているにもかかわらず縁遠い世界だ。

 その原因の1つは、生活者は直接的な関係を持つまで、医療に関心を示さないことが挙げられる。そして元気になれば、記憶の中から患者だった時の苦労は消し去り、それ以降はなるべく思い出さないようにしている。そんな誰にも注目されない環境下で調剤薬局は雨後の筍のように増えていた。

 その後、その調剤薬局の経営者から頼まれて、系列の医療系出版社の経営を任されることになり、あらためて「調剤薬局」の置かれている立場と役割、そこで働く薬剤師の存在を知ることになる。

 埋蔵資産に感じた。これだけ多くの人々が国家資格を持って活動し、・・・

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 筆者が大変不勉強なだけだが、橋本氏は、マーケティング能力において、日本では有数な存在なのだろう。通常、JAHMCは、医業経営に直接関わるか、医療周辺業界に身を置く方々による記事が多いので、あまりこのような書きっぷりにはなかなかならないが、今号は他の記事も含め、「医療」ではなく「調剤」というテーマだったからなのだろうか。筆者としてはマーケティングという観点において他月の号よりも踏み込んだ内容だと感じた。非常に新鮮であった。

 ので、少し長文だがご紹介させていただいた。

 

 コメントを紹介したい。

 

 〇ある調剤薬局事業者の声

 薬局業界は大きな変動時代に入っている。国は薬局に対して「対物から対人業務シフト」を求めている。それ大きな事例が「0402通知」だ。

 2019年4月2日に、厚生労働省から都道府県などに通知された「調剤業務のあり方について」という文書のことで、薬剤師以外の者に薬剤師の補助業務を正式に国が認めたものだった。

 これは調剤室内の医薬品の取り揃え等が薬剤師以外にも許され、その分薬剤師は患者様や多職種連携へ目を向けるものである。

 また、薬機法の改正にて、ここ数年で敷地内薬局が認められ、オンラインでの服薬指導が実施可能となり、今後は薬局を機能で分類され、さらに、電子処方箋が可能となる予定だ。

 薬局は将来を見据えスピード感を持って様々な経営戦略を打ち出し実践することが必要である。

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 とある調剤薬局事業者のコメントを紹介したい。先の橋本氏の寄稿にもあったように、対人業務へのシフトがこれからの調剤薬局が勝ち残るための大きなテーマである。

 

 厚労省からはこんなコメントだ。

 

〇保険局医療課薬剤管理官:調剤技術料で「対物業務」占める割合は50%超

 調剤報酬改定を巡る中医協での説明で、厚労省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官は、2020年度の調剤技術料(算定点数)において、「対人業務に係る評価」(薬学管理料)の占める割合は20%程度にとどまり、「対物業務に係る評価」(調剤料)の占める割合は依然として50%を超えていると報告した。

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 先の動きの中であるが、対物業務、つまり医薬品を取りそろえたり、調剤を行ったりという、モノに対して専門性を発揮している動きがまだまだ多いということだろう。もちろん薬剤に対する専門性が発揮されてしかるべきだが、今や調剤薬局は「保険医療機関」の位置づけであり、医師の処方箋通りに患者にお渡しして終わり、というわけにはいかない。マーケティングの結果、集客ができて、効率的に多くの処方箋と患者をこなすことが出来るようなシステムを、大手チェーン薬局ほど考えがちだ。一般企業的考え方だと普通はそうなってしまうだろう。そこが医療行政を司る厚労省の目にどう映っているのか。効率性を求めること自体、つねにそんなメッセージを発信されている以上特段異論はないだろう(※1)。一見すると今改定は、門前薬局や大手チェーン薬局にとっては「収入減」という試練の内容に見えてしまうことは否めない。

 薬剤師による、地域への医療的見地からの情報発信力が問われている

 

 今度は医師会からのコメントを紹介したい。

 

〇日医常任理事:大学病院や公的病院が保険薬局を誘致する事例が増加している点を批判

 いわゆる門前薬局を巡る中医協の論議で、松本吉郎・日医常任理事は、大学病院や公的病院を中心に保険薬局を誘致する事例が増加している点をあげ、こうした便宜供与に近い状況を「大変遺憾に思う」と批判。病院側が薬剤師を確保できないことが敷地内薬局につながっている可能性を指摘し、「仮にその理由が薬剤部の体制が十分確保できないということであれば、病院薬剤師の確保のための対策を行うべきだ」と述べた。

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 今コロナ禍で患者の、特に外来患者の動きは一変したが、毎日の外来患者からの処方箋は、やはり医療機関から処方箋を受け取ったら、ほど近い場所にある調剤薬局に行くことだろう。門前薬局は、まさに医療機関の門の前にあった方が、集客力が高いのは自明の理だ。あとは早く薬を受け取ることができて(待たない)、快適な環境であればなおよい、多くの患者が調剤薬局に求めているのはそういうことではないか。果たして医療情報の提供まで期待している患者はどれだけいるのだろうか

 であるからこそ、対物から対人業務にシフトし、調剤薬局は患者への、地域医療へのプレゼンスを高めなければならない、ということなのだろう。

 そして、いわゆる「点分業」の門前薬局だけでなく、地域に根差した調剤薬局(「面分業」)が、地域医療の担い手の一つになることが期待されており、奇しくもコロナ禍で患者の流れが変わり、その重要性は高まってきているのかもしれない。

 本文でも触れられていたが、昨今話題の、「敷地内薬局」という類型は、門前薬局よりも処方箋が集まる可能性が高いので、入札などに参加する事業者としては当然、獲得に躍起になるし、病院への条件提示もさぞや魅力的なものなのだろう。しかも大型病院で公立・公的な病院ともなれば、外来患者数1,000人/日は下らないだろう。医師会がいくら「便宜供与」に近い状況を大変遺憾だとご発言されたとしても、特に「経営改善が課題」とされる公立病院が、敷地内薬局を誘致しようとする流れは変わらないのではないか。病院内の薬剤部の体制が十分確保できない、というのも理由の一つであるのだろうが…。

 

 医療側からのコメントを紹介したい。

 

〇日病副会長:調剤報酬の病棟薬剤師指導評価の充実を

 中医協の論議で、診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は「病棟薬剤師の業務」が非常に重要であると指摘。例えば「病棟薬剤業務実施加算」の対象病棟について、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟も追加する、ハイリスク薬を使用する際などの病棟薬剤師指導について評価を新設・充実することなどを提案した。

 

〇薬局に比べて病院薬剤師の給与は低く、医療機関での薬剤師確保は難しい

 病院をはじめ、医療機関での薬剤師確保が難しい。その最大の要因は、調剤薬局と医療機関とで、薬剤師給与に大きな格差がある。薬剤師の育成期間が6年間となったことなどから、奨学金の返済負担が大きくなっている。そうした中では、どうしても「給与の高い調剤薬局」を就職先として選択してしまう。「病棟薬剤師の評価」を充実することで、医療機関での薬剤師給与水準が少しでも上がり、薬剤師の就職先選択が変わってくることに期待したい。

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 調剤薬局においても、都会はともかく、地方での薬剤師確保には苦労しているはずだ。一昔前なら、「病院職員」というステータスの方が、薬剤師というライセンスを持った国家資格者はその狭き門を選択していたのではないか。しかし病院内の人件費の配分ルールだと、当然ながら医師、看護師がまず来るので、薬剤師が集まりにくいからといって、そこだけ給料を上げようとするとどうなるか、想像に難くない。そうなると原資となる評価、つまり薬剤師に関する点数を上げれば、薬剤師の給料を上げても、多職種が文句を言いづらい。そういうことか。先祖返りの議論のような気もするが、「医薬分業」がもたらしたものは何だったのだろうか。

 

 医師からはこんなコメントだ。

 

〇診療所にとって慢性疾患患者の再診料が重要な収入源。長期処方には消極的

 調剤報酬改定を巡る中医協の議論では、医師が例えば「90日分の医薬品を処方するが、患者自身で薬剤の管理等が困難であると思われるので、薬局で1度目に30日分、2度目に30日分、3度目に30日分と調剤を分割してよい」という分割調剤が、処方箋様式など運用の煩雑さから2018年度以降減少している問題が取り上げられている。支払側は、「生活習慣病のように病状が急変しない人や長期で同じ処方が繰り返されている患者は、医師の判断で処方箋が繰り返し利用できるということも選択肢として考えていくべき」と、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方など長期処方への利便性を提案している。しかし、われわれクリニックや中小病院では、慢性疾患患者の再診料が重要な収入源であり、以前から長期処方には消極的である。その一方、新型コロナ感染症拡大で受診回数を減らしたい患者が長期処方を望むケースが増えており、悩ましい。

 

〇ポリファーマシー対策の推進に調剤報酬による評価が不可欠

 外来医療等では、入院患者と異なり「常に医療従事者が傍らにいる」わけではないことから、保険薬局(調剤薬局)が「薬剤交付後の患者状態をフォローアップし、減薬などができないか、減薬によって病状が悪化していないかなどを確認し、必要に応じて医師に意見具申する」取り組みが期待される。高齢者のポリファーマシー対策の推進に対して調剤報酬による評価が不可欠である。

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 どちらも医師のまっとうなご意見だ。いくら患者の視点と謳っても、あまり効率性を求めすぎた点数設定だとうまくいかない

 

 薬剤師からのコメントを紹介したい。

 

○日薬常務理事:対物業務と対人業務の両方が成り立って安全・安心な医薬品提供ができる

 中医協の論議で、有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「対物業務と対人業務の両方が成り立って安全・安心な医薬品提供ができる」と発言した。

 

〇調剤報酬上の臨時特例的な加算「感染対策実施加算」の継続を

 保険薬局についても、2021年4月から調剤報酬上の臨時特例的な加算「感染対策実施加算」が設けられ、感染防止策のコスト増に悩む調剤薬局にとってこの加算は有り難い。新型コロナ感染症拡大による受診控えによる外来患者の減少に伴い、処方箋も激減し薬局経営は厳しくなっている。さらに、10月以降もこの特例的な加算を継続して欲しい。

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 感染対策実施加算については、デルタ株が猛威を振るっている昨今、継続するような気もするが…。ここは診療側も調剤側も同意見だ。

 

 医業系コンサルタントからはこんなコメントだ。

 

〇病院と地域の保険薬局との連携に経済的評価を

 病院に入院する患者の持参薬の鑑別を確実に行うために、病院から地域の保険薬局へ協力依頼を行っているケースがあるが、薬局の経済的メリットがなく、動いてもらえない場合が多い。「病院と地域の保険薬局との協力」が様々な形で進み、診療報酬など経済的に評価されるようになれば、地域連携の在り方も大きく変わり、医療の質も向上するのではないか。

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 経済的メリットは、何を動かすにも最も分かり易い事由だ。もともと診療報酬には、点数による誘導で、国が思う方向に仕向けようとする側面がある。現金なことだが確かに点数誘導は強力なツールであるが、果たして。

 

 今回は多くの薬局からコメントをいただいている。

 

 <ドラッグストア展開の大手チェーン薬局>

〇ウエルシア:調剤薬局併設は、今なお大きな成長の柱

 ウエルシアホールディングスの池野隆光会長は、電話会議で開催した2021年2月期決算説明会で、「ウエルシアはこの15年間、まさに大変革を連続して起こしており、創業者は差別化を以て戦わずして勝つという社訓を残した。調剤併設はその一環であり、今なお大きな成長の柱となっている」と指摘。また、新たな事業として「医食同源プロジェクト」をスタートさせる考えも明らかにした。

 

〇アインHD2021年4月期、調剤堅調もドラッグストア苦戦で増収減益

 アインホールディングスは2021年6月4日、2021年4月期決算を発表。売上高2973億500万円(前年同期比1.6%増)、営業利益109億3200万円(32.0%減)、経常利益126億4900万円(24.8%減)、親会社に帰属する当期利益66億9700万円(27.0%減)となった。調剤薬局の新規出店とM&Aによる事業拡大のほか、コスメ&ドラッグストア事業を推進し、グループの事業規模と収益拡大に努めたが、ドラッグストアでの個人向けリテール事業は新型コロナウイルス感染症拡大による来店控えもあり、194億1900万円(21.4%減)、営業損失は19億9900万円(前期は2億6200万円の営業利益)と減収減益だった。一方、調剤などファーマシー事業の売上高は、2630億9500万円(0.2%減)、営業利益は209億4700万円(0.5%増)と堅調だった。

 

 <調剤薬局運営の大手チェーン>

〇「門前・敷地内薬局」と地域連携ができる「ハイブリッド型薬局」をバランスよく出店

 日本調剤の三津原庸介社長は2020年11月6日開いた2021年2月期(2020年度)第2四半期決算記者会見の中で、専門医療機関連携ができる「門前・敷地内薬局」と、地域連携ができる「ハイブリッド型薬局」をバランスよく出店したい考えを示した。敷地内薬局については、「敷地内の案件は多いが、全国的に対応できるコンペティターは限定的だ」との考えを表明。地域の特定機能病院を含めた実績を説明し、優位性を強調した。また、“自力出店とM&A”のバランスも重視する考えを示した。

 

〇「無印良品」店舗内に調剤薬局の「クオール薬局」がオープン

 「無印良品」を展開する良品計画は、医薬品や健康情報の提供などを含む“健康領域”に参入する。第一弾として2021年8月1日に、新潟・上越市で運営する世界最大級の店舗「無印良品 直江津」(約5830平方メートル)内に、「まちの保健室」コーナー(132平方メートル)をグランドオープン。「無印良品」の商品で、疾病予防や心身の健康維持に役立つアイテムをまとめて陳列すると共に、「クオール薬局」のクオールホールディングスと組んで調剤薬局も展開する。「無印良品」では、こうしたウエルネス分野を予防、維持、治療に分け、薬局など外部企業と協業しながらカバーしていく。

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 さすが大手チェーン、それぞれが強みを生かした独自の戦略で勝ち残り、さらに業容拡大を目指そうという姿勢だ。生半可な規模では太刀打ちできない。効率化を求めたい厚労省と、どこまでも拡大を続けようとする企業側の論理、このあたりが最もそりが合わない部分なのかもしれない。

 

 今度は中小規模の調剤薬局からのコメントだ。

 

 <在宅調剤に力入れる中小薬局チェーン>

〇西東京 田無薬品「在宅調剤に力を入れる」

西東京市周辺で9店舗を展開するミニ調剤薬局チェーン田無薬品は、5店舗が在宅に対応し、市域在宅調剤の3分の2を占める。20年前から取り組んでいる在宅調剤に力を入れている。

 

 <在宅非対応・処方箋集中率95%超の中規模薬局>

〇すべての処方箋に対応できない品揃え「申し訳ない気持ちで一杯」

 在宅非対応・処方箋集中率95%超の中規模薬局に勤務しているが、経済面・業務面とも近隣の病院ありきの状況で、複数の処方箋を持参する患者さんも「在庫がないから、こちらの処方箋はよそに出すからよい」と言って、近隣の病院からの処方箋以外は持ち帰ってもらっている。患者にとって使い勝手が悪く、申し訳ない気持ちで一杯だ。

 

 <個人経営の調剤薬局>

〇コロナ禍でこそ、患者さんの家に近いわれわれ街の薬局が細かい服薬指導をする

 新型コロナウイルス感染症拡大がきっかけとなり、オンライン診療や電話診療を求める患者が増加している。患者さんは密を避け、大手チェーンから街の小規模調剤薬局を選ぶようになった気がする。患者さんの家に近いわれわれ街の薬局がオンラインや電話できめ細かい服薬指導をすることが求められている。

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 大手には大手の生き方中小規模には中小規模なりの生き方がある。品揃えの問題等もあるかもしれないし、細かい服薬指導、在宅調剤への取り組みが、必ずしも効率性が高くなく、収入上の課題もおありだろう。医療人としての矜持をもって街の保険医療機関として地域医療に貢献いただきたい。厚労省にとっては、こちらのコメントの方が、そりが合うのかもしれないが如何に?

 

 最後に、患者(利用者)からのコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇何度か対応してくれる薬剤師には自分のことを覚えて欲しい

 体調を崩しやすいので頻繁に薬が必要となる。調剤薬局で何度か対応してもらった薬剤師さんには、相手が自分のことを覚えてくれると非常に有り難い。

 

〇調剤薬局の「どこの医療機関の処方箋でもOK」という掲示は、考えもの

 調剤薬局には、「どこの医療機関の処方箋も取り扱います」という掲示がある。それも、病院数が結構あったりして、本当にすべて対応してくれるのか疑問に思うことがある。先日、クリニックからある外用剤の処方箋が出され、クリニックのそばの調剤薬局ではなく、自宅のそばの調剤薬局に処方箋を持参したところ、当店ではその外用剤(それもメジャーな品目)の取り扱いはないと言われ、同じチェーン店から取り寄せることになった。その店には、「どこの医療機関の処方箋も取り扱います」という掲示があった。

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 小回り、人と人、同種同効品、いろいろな課題を感じるご意見だ。

 調剤薬局が「対物業務」から「対人業務」へのシフトを行うには、そこにいる多くの患者の声を、より多く聞き、より多く対応する真摯にそれを繰り返し質の向上を図っていくしかない。マーケティングの第一歩である。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 (※1)…効率性という点において、むしろ、一般企業以外が経営する大多数の保険医療機関に対して、「大手チェーン薬局の調剤薬局を見習ってほしい」、などと考えているのではなかろうか。集客、教育、システム導入、サービス向上、24時間対応、どの点を見ても企業経営のチェーン薬局の方が患者の利便性向上に寄与しているような気がする。利便性の向上により、お金が集まってさらに再投資ができて、さらに規模が大きくなる。そうするとそこにお金が集中してしまうのが良くないので点数を減らす。それなら企業側はそれでも経営が成り立つよう、効率化を求めてさらに集客する。これは好循環なのか、はたまた悪循環なのか。

 ただ一点、「かかりつけ薬剤師・薬局」、「地域包括ケアシステムの一翼を担う」ことや、非効率性を排除してしまいがちな企業論理的視点、こんな部分は相容れないとお考えなのだろうか。

<WMN事務局>

 

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