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No.732 新型コロナ対応の看護職員の処遇改善策として、10月から「看護職員処遇改善評価料」が新設
2022年09月15日
◇「新型コロナ対応の看護職員の処遇改善策として、10月から「看護職員処遇改善評価料」が新設」から読みとれるもの
・2022年度診療報酬改定で月収3%引き上げの財源として新設された点数
・対象は、救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関
・算定した費用すべてを看護職員などの処遇改善に充てること
■2022年度改定で看護職員の月額平均1万2000円引き上げとして新設された点数
看護職員の処遇改善に向け、今年10月から新たな診療報酬「看護職員処遇改善評価料」が新設されることになった。中医協は8月10日の総会で、看護職員等の処遇改善に関する個別改定項目案を了承・答申した。
2022年度診療報酬改定において、看護職員等の処遇については、新型コロナウイルス感染症への対応等で、地域において一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員等を対象に、2022年10月以降の収入を3%程度(月額平均1万2000円相当)引き上げる仕組みを創設するとされていた。対象は、救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関および三次救急を担う医療機関となる(図4 看護職員処遇改善評価料の新設について)。
新設される「看護職員処遇改善評価料」は、新型コロナウイルス感染症への対応などに一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員に対する処遇改善措置を実施している場合の評価で、勤務する看護職員数と延べ入院患者数を基に同評価料1~165に細分化した点数が設けられ、入院基本料や特定入院料、短期滞在手術基本料を算定する入院患者に毎日算定できる。
病院ごとの「看護職員数・延べ入院患者数」を元に計算した点数を入院基本料・特定入院料・短期滞在手術等基本料を算定するすべての患者に、入院期間中毎日算定。評価料1~145までは1点刻みの点数。その後は入院患者数が少ないものの看護職員を手厚く配置していることで必要額が高額になる医療機関に対応するために5~10点刻みとし、上限を340点(評価料165)とした。
■賃金改善の3分の2以上は、基本給・毎月手当の引き上げに充当すること
「看護職員処遇改善評価料」の計算方法は、各病院で、「看護職員等の賃上げ必要額」(当該医療機関の看護職員等数×1万2000円×1.165(社会保険料相当))÷「当該保険医療機関の延べ入院患者数×10 円」で計算した値【A】をもとに、自院に適合する評価料を165種類の中から選択し、請求する(看護職員数・延べ患者数などは申請が必要であるが、根拠資料は「適切に院内に保管」していればよく提示までは求められないこととする見込み)。「看護職員等の数」は、直近3か月の各月1日時点における看護職員数の平均値。「延べ入院患者数」は、直近3か月の1か月あたりの延べ入院患者数の平均値。毎年3、6、9、12月に上記計算式で算出し、区分に変更がある場合は地方厚生局長等に届け出る(図5 看護職員処遇改善評価料の点数について)。
医療機関が「看護職員処遇改善評価料」として算定した費用については、「すべてを看護職員などの処遇改善に充てなければならない」「安定的な賃金改善を確保するため賃金改善の3分の2以上は基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げに充当する」ことなどが求められる。また、毎年7月に前年度の取り組み状況を評価するため「賃金改善実績報告書」を作成し、地方厚生局長等に報告することになっている。
看護職員等のほか、歯科衛生士や診療放射線技師、臨床工学技士、管理栄養士、介護福祉士、救急救命士なども賃金改善の対象者に加えることができる。
【事務局のひとりごと】
日本の名経営者としてその名を知らぬものはいないだろう。
稲盛和夫氏。言わずと知れた、京セラ創業者である。
氏の「経営十二ヶ条」の一番目、
一.事業の目的、意義を明確にする-公明正大で大義名分のある高い目的を立てる-
には、「全従業員の物心両面の幸福」を大義名分として謳われた、京セラの筆頭に掲げられた経営理念が根底にある。
経営とは経営者が持てる全能力を傾け、従業員が物心両面で幸福になれるよう最善を尽くすことであり、企業は経営者の私心を離れた大義名分を持たなくてはならない。
公明正大な事業の目的や意識があってこそ、従業員の心からの共感を勝ち取ることができ、そして経営者自身も堂々と胸を張り、経営に全力投球が出来るようになる。
そのような考え方にもとづいており、その考え方をベースに経営を進めてきたことが、その後の京セラの発展をもたらした事実は、多くの人が知るところだ。そして誰もが無理と思ったJAL再生までも、氏の「フィロソフィ」と「アメーバ経営」によって成し遂げられたのだ。稲盛氏が日本の経済界にもたらした好影響は計り知れない。謹んでご冥福をお祈りするばかりである。
企業とは、社員あってのものであり、その社員とそのご家族に物心両面の幸福をもたらすことが、経営の根幹である
対して、
会社は株主のためにある
このような、いわば米国型とでも言おうか、近年、このような資本主義についての考え方もよく耳にするようになった。どちらの考え方がより多くの共感を得ることができるだろう?
今回のテーマは、岸田政権の目玉政策の一つ、いよいよ10月より新設の、新型コロナ対応の看護職員の処遇改善策、「看護職員処遇改善評価料」についてである。
コメントを紹介したい。
〇友納参院議員:処遇改善の対象は全体の3分の1。全体に広げるべき
7月の参院議員選挙比例代表で初当選した自民党の友納理緒議員(日本看護連盟推薦、保健師・看護師・弁護士)は自民党厚生労働部会などで、政府が進める看護職員処遇改善で「看護職員処遇改善評価料」が新設されたことについて、「今回の処遇改善の対象は、新型コロナウイルス感染症を受け入れている医療機関などに勤める方のみであり、全体の3分の1にとどまっている。新型コロナを受け入れていない医療機関でもみんな苦労して働いているので、処遇改善の動きを全体へ広げていかなくてはいけないと考えている。そのためには、国立病院などの職員に適用される医療職俸給表で、約8割の看護師が2級に留め置かれ、なかなか給与が上がらない実態を変えなくてはならない」との考えを示した。
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医療現場で働く看護職員に、感謝していない患者はいないだろう。もちろん看護師も人間である。いろいろな性格の方もおられるので、どこの業界でもそうだが、当然人間的には「?」という方だっておられるのかもしれない。しかし、いざ、
命と向き合う
まさにこの一点において、看護師は何よりも患者を思っての行動を取る(はずだ)。
であるからこその
白衣の天使
である。
友納議員が仰るように、コロナ患者を受け入れている医療機関の看護師ならずとも、
「みんな苦労して働いて」おられるのである。
なればこそ、処遇改善の動きが全体に広がるべきである
「全看護師」が対象なのだ。
という考え方だ。
「そうそう、その通り」
そう思われる看護師も多いことだろう。
筆者は、看護師だけでなく、「医療に携わる方全員」だと思っているが。
続いてはこんなコメントを紹介したい。
〇介護職員の処遇改善を参考に「賃金改善計画書」および「賃金改善実績報告書」の提出を求める
中医協での議論の中で、真鍋 馨医療課長は看護職員処遇改善評価料算定に当たっては、確実に看護職員等の給与改善につながるよう、先に制度設計が完了している介護職員の処遇改善を参考に、「賃金改善計画書」および「賃金改善実績報告書」の提出を求めることを明らかにした。
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そうでした。いろいろ言われながらも、介護職員の処遇が全産業平均に比して低い、という状況を打破すべく、先に介護分野から目的を明確に定めた財源配分が行われたのは記憶に新しい。この事例に倣う、ということか。
日本看護協会からはこんなコメントだ。
〇人事院が医療職俸給表(三)改正に着手したことを受けた見解
人事院が8月30日、公的価格評価検討委員会の場において国家公務員医療職俸給表(三)の級別標準職務表を改正する検討を進めていることが明らかにされたことを受け、日本看護協会は、「国家公務員医療職俸給表(三)表が適用される看護職員数は1800人程度に過ぎないが、看護職員の場合、公的・民間を問わず、同表を参考とする医療機関が多いことから、看護職員の賃金の「公定価格」としての性格を持っている。協会が求めてきた看護職員の職責、能力に応じた処遇改善の実現に資する改正となるようお願いしたい」との見解を明らかにした。
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因みに、医療職俸給表(三)の2級は、
看護師の職務
保健師または助産師の職務
3級は、
医療機関の看護師長の職務
と、級が上がるにつれて収入のテーブルは上がっていく。指標があれば当然、その指標に基づいた設定がなされるのも、世の常だ。
日看協としては、
看護師の処遇改善の実現に資する
ことが大義名分である。
一部の看護師、ではなく
看護師全員
というのがポイントだ。看護師同士で団結にひびが入っては元も子もない。
ここで、介護現場のコメントを紹介したい。
〇特定処遇改善加算を算定しないと、近い将来 優秀な介護人材はいなくなるとの声が多い
介護施設の特定処遇改善加算は、議論の余地なく加算算定すべきであり、算定をためらう事業者からは近い将来 優秀な介護人材はいなくなるとの声が多い。介護福祉士養成校の就職担当教員は、「特定加算を算定していない事業者には学生を紹介しない」と言い切っている。介護福祉士の資格を持つ就職希望者も、この加算については敏感に反応しており、今後の就職活動では加算算定の有無を重要な職場選択の要素と考える傾向がみられる。
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介護現場においてはすでに導入されていた処遇改善加算だが、導入当初は現場に不公平感が生まれかねないとして、算定しない(できづらい)、という選択をする施設の声も聞いたものだが、働き手不足が叫ばれている我が国において、さらに人が集まりにくいとされる介護業界。不公平につながりかねないから、いっそのこと算定しない、現場に波風を起こさない。当時は確かに処遇加算を算定せずにやっておられる施設もあったことだろう。
それで何とかなっていたのもそれは少し前の話。そういう考え方では、もはや施設運営そのものが立ち行かなくなってしまいかねない。人材確保のためには、波風が起こることも織り込み済みで、加算を算定し、配分されるべき方に配分する必要があるというメッセージなのだろう。
病院経営者からのコメントだ。
まずは処遇改善評価が算定可能対象医療機関から。
〇病院薬剤師が患者の治療に役立っている
中医協での議論で島弘志委員(日本病院会副会長)は「医療機関に働く薬剤師を入れた方がいい。手術前の薬剤チェックなど病院薬剤師が患者の治療に役立っているとの声を聞いている」と述べ、薬剤師も対象に加えるべきだとした。
〇処遇改善の配分に関しては現場の裁量を捉えてあげた方がいい
同じく中医協での議論で池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「処遇改善の配分に関しては現場の裁量を捉えてあげた方がいい。病院薬剤師も十分に対象になり得る」と述べた。
次に処遇改善評価が算定可能対象とならない医療機関から。
〇中小民間病院の薬剤師確保がさらに困難に
われわれ中小民間病院は病院薬剤師の確保が大変。調剤薬局の給与が良いということで採用に苦労している。給与差が大きな問題になっている中で、看護職員等処遇改善で薬剤師が外され、薬剤師確保がさらに難しくなってきた。
〇看護職員処遇改善評価料は、病院、職種間の分断を生む
薬剤師や事務職員などが対象になっていないことで「職種間の分断を生んでいる」。また、同じ法人内や開設主体別でも、処遇改善の対象になる病院とならない病院があるために、この点も分断を生んでいる。経営側はこれらを回避するために、対象外の職種や病院についても持ち出しで処遇改善をする傾向にあり、経営が苦しい中、分断が生まれないように手当しないといけない。四苦八苦している。
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今評価料に関する疑義解釈では、薬剤師も配分の対象に入れるべきという要望も強かったが、それでも算定対象とはならないと明記されている。
医業系コンサルタントのコメントもいただいた。
〇想定する処遇改善金額と実際に得られる金額に過不足。慎重に処遇改善の制度設計を
診療報酬による医療機関の収入は、患者数などの影響で変動する。想定する処遇改善の金額と実際に得られる金額に過不足が生じることが考えられる。そのような過不足を最小限に抑えるためにはどのように行うべきか、慎重に処遇改善の制度設計を行うべきである。
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これについては、厚生労働省保険局医療課9月5日付事務連絡「看護職員処遇改善評価料の取扱に関する疑義解釈資料の送付について(その1)」において、想定を上回る収入が生じたなど、やむを得ない場合に限り、差分について翌年度7月に「賃金改善実績報告書」を提出するまでに改善措置を行えばよい扱い なのだそうだ。不足の場合はどうなるのだろう?
最後に、薬剤師からいただいたコメントを紹介して締め括りとしたい。
〇コロナ対応で病院薬剤師も大変苦労している
対象に薬剤師が入らなかったことについて、中医協での議論で有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「対象となる病院については200回の救急受け入れ、三次救急の要件があるが、コロナ対応で医療機関勤務の薬剤師も大変な苦労をしている。薬剤師を対象に含めなければ他のコメディカルとの不公平感が増す」などと不満を明らかにした。
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・・・ですね。岸田総理が約束されたのが看護師だった、ということに起因しているのか?政治が絡むことによってなんとも難しい話でもあるのだが、ロビイ活動と集票力がモノをいった結果だったのだろうか。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
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